著者
William. E. WILSON
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.A67-A76, 1998-05-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
25

On July 18, 1997, EPA promulgated new standards for fine particles, with PM2.5 as the indicator (15μg/m3, annual average; 65μg/m3, 24-hour average). EPA also retained the existing levels of the PM10 standards (50μg/m3, annual average; 150μg/m3, 24-hour average) to pro-. tect against exposure to coarse particles. This decision was based on an extensive review of the scientific information regarding effects of PM. The upper 50% cut point of 10μm was chosen because it provides a measure of thoracic particles (i.e., those particles entering the lung). The 50% cut point 2.5μm was chosen to divide thoracic particles into fine and course particles because of their differences in sources, composition, and properties (chemical, physical, and biological). The time required for determining compliance or noncompliance with the revised PM standards is such that the next periodic review of the PM standards (required every 5 years) will take place before new particle control measures will be required. Monitoring requirements for determining compliance and research needed for the next review have been identified by EPA. Research needs include improved measurement techniques for finemode particles.
著者
鹿角 孝男 薩摩林 光 佐々木 一敏 鹿野 正明 太田 宗康 畠山 史郎 村野 健太郎
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.282-291, 1996 (Released:2011-11-08)
参考文献数
34
被引用文献数
6

山岳地域における環境大気中の浮遊粒子状物質 (SPM) と大気降下物の特徴を把握するため, 唐松岳入方尾根および長野市においてSPMを1ヵ月毎に採取し, 化学成分濃度を測定し, 各種発生源寄与率の推定を行った。また, 大気降下物を1ヵ月毎に測定し, 酸性物質降下量を調査して, 渓流水への影響について検討した。八方尾根におけるSPM中のSO42-濃度は春季~ 夏季に高くなる変化を示した。春季 (3~4月) には黄砂の影響が見られ, 黄砂粒子の濃度は約4μg/m3と推定された。調査地点近傍の土壌粒子の寄与は少なかった。大気降下物のpHは平均5.1であり, 長野市 (平均5.3) よりもわずかに低く, 春季に高くなる傾向があった。nss-SO42-の降下量は長野市の約2倍あり, またNO3-の降下量も多く, 清浄地域と考えられる山岳地域にも多量の酸性物質の降下が認められた。八方尾根付近の渓流である平川の水質は, pH7.6, アルカリ度0.48meq/lと十分な中和能があったが, 梅雨期には希釈効果により一時的にアルカリ度の低下が認められた。NO3-濃度は融雪期 (3~4月) に上昇したが, pHの低下は見られなかった。
著者
鹿角 孝男 薩摩林 光 佐々木 一敏 鹿野 正明 太田 宗康 畠山 史郎 村野 健太郎
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.282-291, 1996

山岳地域における環境大気中の浮遊粒子状物質 (SPM) と大気降下物の特徴を把握するため, 唐松岳入方尾根および長野市においてSPMを1ヵ月毎に採取し, 化学成分濃度を測定し, 各種発生源寄与率の推定を行った。また, 大気降下物を1ヵ月毎に測定し, 酸性物質降下量を調査して, 渓流水への影響について検討した。<BR>八方尾根におけるSPM中のSO<SUB>4</SUB><SUP>2-</SUP>濃度は春季~ 夏季に高くなる変化を示した。春季 (3~4月) には黄砂の影響が見られ, 黄砂粒子の濃度は約4μg/m3と推定された。調査地点近傍の土壌粒子の寄与は少なかった。大気降下物のpHは平均5.1であり, 長野市 (平均5.3) よりもわずかに低く, 春季に高くなる傾向があった。nss-SO<SUB>4</SUB><SUP>2-</SUP>の降下量は長野市の約2倍あり, またNO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>の降下量も多く, 清浄地域と考えられる山岳地域にも多量の酸性物質の降下が認められた。<BR>八方尾根付近の渓流である平川の水質は, pH7.6, アルカリ度0.48meq/<I>l</I>と十分な中和能があったが, 梅雨期には希釈効果により一時的にアルカリ度の低下が認められた。NO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>濃度は融雪期 (3~4月) に上昇したが, pHの低下は見られなかった。
著者
早崎 将光 大原 利眞 黒川 純一 鵜野 伊津志 清水 厚
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.225-237, 2008-07-10
被引用文献数
14

2007年5月8-9日に観測された注意報レベルに達するオゾン(O_3)高濃度事例を対象として,全国の1時間平均大気汚染物質濃度測定値を用いた動態調査をおこなった。O_3濃度上昇は,8日の早朝に日本列島西端の五島から観測され始めた。壱岐における日最高O_3濃度は深夜に観測された,日本海沿岸では,日最高O_3濃度は東側ほど遅い時刻で観測された。離島では,二酸化硫黄と粒子状物質もオゾンと同期した濃度変化を示した。後方流跡線解析とライダーによる人為起源粒子の鉛直分布から,汚染気塊はアジア大陸を起源とすることが示された。9日は主に東日本でO_3高濃度を観測した。日本海側では,前日と同様に東側ほど遅い時刻で日最高O_3濃度を観測した。それに対して,関東平野では観測時刻の遅れは内陸側に向かう方向でみられ,O_3濃度も日を追う毎に高くなった。高濃度期間の汚染物質濃度と気象条件の時空間変動から,関東平野では,大規模海陸風循環の継続による都市汚染の蓄積の影響も大きいことが示唆された。以上の結果から,日本列島規模の広範囲では越境汚染がO_3高濃度の主要因であり,都市近郊では国内起源汚染がそれに上乗せされていたと考えられる。
著者
鹿角 孝男 川村 實 薩摩林 光 西沢 宏 村野 健太郎
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.75-80, 2002-01-10
被引用文献数
3

2000年8月から9月にかけて,関東,中部,東海地方の広い範囲で環境基準を超える高濃度の二酸化硫黄(SO_2)が観測され,異臭騒ぎが発生した。長野県内でも高濃度のSO_2が観測され,9月13日の1時間値の最高濃度は県南部の飯田市で383ppbを記録し,北部の長野市でも76ppbに達した。後方流跡線の解析結果から,これらは活発に活動している三宅島の火山ガスが原因であると考えられた。このような火山ガスの影響を調べるため,長野県北部の長野市,八方尾根および白馬村において4段ろ紙法によるガス・エアロゾルの測定を実施した。その結果,エアロゾル中の硫酸イオン(SO_4^2-)は9月14日10〜14時に長野市で44.4μg/m^3の高濃度が出現し,八方尾根と白馬村でも15日12〜18時に30μg/m^3を超えた。陰イオンの過剰分を水素イオン(H^+)と仮定して算出した3地点の粒子状硫酸(H_2SO_4)の濃度は,長野市,八方尾根,白馬村でそれぞれ21〜33,11〜21,6.8〜18μg/m^3の範囲内にあると推定され,SO_4^2-に占めるH_2SO_4の比率(モル比)は,それぞれ46〜72,34〜65,22〜58%と,濃度,比率とも極めて高い値であったと推定された。
著者
新井 一司 久野 春子 鈴木 創 遠竹 行俊 大喜多 敏一
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.184-191, 2002-06-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
21

モミの衰退木の調査方法を確立し, 東京におけるモミの衰退分布を明らかにするために, 1992年から1993年にかけて山間部を対象に衰退度の評価を107地点, 618個体について行った。調査方法は, 小枝の枯損, 枝葉の密度, 樹形と樹勢の4項目の値を合計した衰退度合計指数が評価基準として有効であった。小枝の枯損と枝葉の密度における衰退度階級2以上の明らかな衰退がみられた個体の割合は, 各々45.2%, 45.6%であった。モミの衰退は, 地形的要因である傾斜や起伏の状態とは関係がみられなかった。一方, 広域的な広がりである緯度, 経度との間には相関関係がみられ, 山間部の南東の地域ほど, 衰退が激しく, 北西部で衰退の程度が弱まる傾向がみられたが, 北西部の一部の谷地形では, 被害がみられた。海抜高は, 250m以下の低い地域ほど衰退が激しく, 高い高度で健全な傾向を示すものの, 750m以上という高い地域でも57.9%の地点に弱いながらも衰退現象がみられた。
著者
鈴木 元気 森川 多津子 柏倉 桐子 唐 寧 鳥羽 陽 早川 和一
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.117-122, 2015-03-10 (Released:2015-09-03)
参考文献数
20

首都圏3地点(野毛、九段、つくば)において、野毛および九段では2006~2013年まで、つくばでは2010~2013年までの夏と冬の大気粉塵を捕集し、多環芳香族炭化水素 (PAH) 9種類およびニトロ多環芳香族炭化水素 (NPAH) 3種類をそれぞれHPLC-蛍光検出法、HPLC-化学発光検出法で測定し、その濃度の変遷を明らかにした。PAH濃度は野毛、九段で2006年から2008年の間の冬に低下傾向が認められた。NPAH濃度は、野毛では2006年から2011年の間の夏と冬、九段では2007年から2009年の間の夏および2006年から2011年の間の冬に低下傾向が認められた。つくばでは観測期間が2010年から2013年と短く、PAHとNPAHのいずれについても明確な変動傾向は認められなかった。また野毛および九段で[1-NP]/[Pyr]値の低下が確認され、PAH、NPAH濃度低下の要因の一つとして自動車排ガス規制による粉塵およびNOx排出量の減少が考えられた。

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出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.N10-N12, 2018-01-10 (Released:2018-03-17)
著者
市川 有二郎 井上 智博 大橋 英明 渡邉 剛久 石井 克巳 内藤 季和
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.152-165, 2015-05-10 (Released:2015-09-04)
参考文献数
52

2013年11月4日に千葉県市原市内の一般環境大気測定局で、PM2.5質量濃度の日平均値が「注意喚起のための暫定的な指針」で定める70 μg/m3を超過する可能性があったため、全県を対象に千葉県として初めて注意喚起を行った。なお当該注意喚起は、東日本でも初めての注意喚起となったことから、全国的に注目を集めた。本報では常時監視項目の観測結果、PM2.5成分分析の測定結果および気象状況の解析結果から高濃度となった要因について解析を行った。11月3日から大気環境は酸化雰囲気であったことから、NH4NO3の高濃度化に繋がったと考えられる。さらにレボグルコサン、水溶性有機炭素、Char-ECの測定結果から、バイオマス燃焼も大きく影響していたことがわかった。また、無機元素の測定結果からは、注意喚起日のV、Niの濃度が相対的に高い結果であったことから、重油燃焼による寄与も示唆された。気象状況については11月3日夜に確認された気温逆転層によって、大気汚染質が拡散されにくかったことおよび湿度の影響によるPM2.5質量濃度の上昇に加え、風の収束域により濃縮された汚染気塊が市原市内に移流したと推測された。以上のように、バイオマス燃焼、重油燃焼の人為起源による影響に加えてNH4NO3の高濃度化がPM2.5質量濃度の上昇に寄与したと考えられた。これらの影響を含んだ汚染気塊が拡散されず局所的に収束する気象条件も相重なったことが、11月4日の注意喚起に至った要因であると推定された。
著者
笠原 三紀夫
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.96-107, 2002-03-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
12
被引用文献数
4

The importance of global environmental problem such as global warming and acid rain as well as local air pollution problem has been recognized worldwide, especially over the last decade. Atmospheric aerosols, especially smaller particles less than 2.5μm (PM2.5) have a key role in those environmental problems. Information on the characteristics of aerosols is essential to understanding their behavior in the atmosphere and the resulting effect on the environment. In this paper, the present state and future assignments of air pollution by aerosols are reviewed and the meaning of innovation of PM2.5 is discussed.
著者
松隈 大亮 板橋 秀一 鵜野 伊津志 若松 伸司
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.173-178, 2012-07-10 (Released:2012-10-23)
参考文献数
12

神奈川県北西部に位置する丹沢山地ではブナの衰退が深刻な問題となっている。この一因としてO3が考えられているが、丹沢山地ではO3生成に関わる一次汚染物質であるNOXの排出源、排出量が少ない。このことから、東京湾岸などの都市部で排出された一次汚染物質が光化学反応を起こしながら局地風などの影響により丹沢山地に移流して来ると考えられる。そのため、2007年7、8月を対象期間とし、測定では把握しにくい大気汚染物質の三次元的な濃度分布や動態を見るために領域化学輸送モデルWRF/Chemを用いて再現を行った。また、モデルの気象場の再現結果を使用してFLEXPART-WRFで後方流跡線解析を行い、日中に丹沢山地でO3濃度を高くした気塊の移流経路を示した。その結果、日中に丹沢山地でO3濃度が高くなる場合は、陸風により東京湾岸などの都市部から排出された一次汚染物質が相模湾に流入した後、日中に光化学反応を起こしてO3濃度の高くなった気塊が海風の影響を受けて丹沢山地の南~東南東側から移流して来ていた。また、海風には関東地域を覆うような大規模な海風と小規模な相模湾からの海風が見られ、前者の場合には丹沢山地の南方から、後者の場合には丹沢山地の南東方向から移流する傾向が見られた。
著者
玉置 元則
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.A1-A11, 2000-01-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
10
被引用文献数
2
著者
小林 隆弘
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.271-282, 2007-09-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
61
被引用文献数
3

大気環境中のナノ粒子に曝露される可能性がある。ラッシュアワーのとき道路沿いの大気中では自動車由来と思われるナノ粒子が増加することが観察される。ディーゼルエンジンは多数のナノ粒子を排出する。一方, 極めて粒子径が小さいことから, ナノ粒子は化学的, 電気的あるいは光学的な新たな物性を持ち, 外界からの光や熱や電圧等の刺激に対して大きい粒子に比較し異なる挙動を示す。このようなことから工業的に生産されるナノ粒子は化学, 電子工業, 化粧品, 医薬, 食品, 環境技術といったあらゆる分野で使われるようになりつつある。作業環境中においてもこれらのナノ粒子に曝露される可能性が増加しつつある。しかしながら, 大気および作業環境中のナノ粒子の曝露評価や健康影響評価はあまり行われていないのが現状である。ここではナノ粒子の曝露評価や健康影響評価の現状と課題について概観した。曝露評価については, 屋内・屋外ならびに作業環境中での曝露に関する知見の充実や毒性やナノ材料のライフサイクルを考えた曝露指標の選択とそれに基づく曝露量の計測手法の開発が課題である。また, 健康影響評価においては粒子の物理・化学的性状に基づいた体内動態や毒性評価や評価に必要な曝露手法の開発が課題となる。
著者
熊谷 貴美代 田子 博 飯島 明宏 小澤 邦壽 坂本 和彦
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.10-20, 2010-01-10 (Released:2010-07-29)
参考文献数
40
被引用文献数
5

関東平野の内陸に位置する群馬県前橋市および赤城山において,大気中粒子状物質を粒径別(<2.1μm,2.1-11 μm,> 11 μm)に捕集し,無機イオン成分,炭素成分分析を行った。炭素成分分析では,熱分離法と熱光学補正法の比較により補正を行った。微小粒子濃度の年平均値は,前橋で20.2~22.7 μg/m3,赤城で8.2~10.5 μg/m3であった。微小粒子濃度は春から夏にかけて高濃度となる季節変動を示した。微小粒子における無機イオン成分の96%は,NO3-,SO42-,NH4+であった。前橋も赤城も粒子濃度は同様の変動パターンを示した。前橋では春にNO3-が大きく増加するという特徴が見られた。しかしNO3-は赤城では低濃度であったことから,前橋におけるNH3ガスがNO3-粒子生成に影響していると示唆された。SO42-は夏に高濃度となる変動を示した。赤城でも前橋の8割程度のSO42-が観測され,SO42-粒子は広域的に存在することが分かった。マスクロージャーモデルを用いて,成分濃度から粒子質量濃度を推定した結果,実測値と同等の結果が得られた。モデル推定値から,粒子濃度の成分構成を季節毎に求めたところ,二次生成粒子と有機物が微小粒子の8割を占めると推定された。ECの寄与率は1割程度であった。春は,NO3-,SO42-粒子,夏秋はSO42-と有機物の寄与率が大きいことが分かった。
著者
浅田 正三
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.A56-A64, 2004

ダイオキシン類の測定分析に係る精度管理制度に関するものとして, 環境省関係では 「ダイオキシン類の環境測定に係る精度管理指針」 および 「ダイオキシン類の環境測定を外部に委託する場合の信順性確保に関する指針」 に基づく 「ダイオキシン類の請負調査等の受注資格審査表」 制度があり, 経済産業省関係では特定計量証明事業者認定制度 (MLAP) がある。また, 任意の制度としてISO/IEC17025 (試験所および校正機関の能力に関する一般的要求事項) に基づく試験所認定制度がある。ダイオキシン類測定分析機関は, 現在, これらの制度の下で精度管理の維持を行い, 信頼性の高い測定分析データの確保を行っている。ここでは, これら精度管理制度について経緯, 制度の概要, 比較・相違および現状等について概説する。
著者
中島 虹 高橋 日出男
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.92-99, 2015-03-10 (Released:2015-09-03)
参考文献数
21
被引用文献数
1

関東平野南部における光化学オキシダント(Ox)高濃度域と海風風系との関係を解析した。まず、1990年から2011年の7、8月における海風日を抽出した。Ox日最高濃度に対する主成分分析により、海風日を領域全体でOx日最高濃度が高く、かつその濃度が北側で高い日をType 1、南側で高い日をType 2とした。Type 1では相模湾や東京湾からの海風前線はType 2と比較して早い時刻に侵入した。Type 1、2とも、Ox高濃度域は下降流に伴う上空からのOx供給が考えられる海風前線の内陸側に位置した。海風前線が通過した地域では負のOx移流量を示し、海側から低いOx濃度の空気が供給された。そのため、いずれの場合も日最高Ox濃度の出現時刻は内陸ほど遅れる傾向にあり、Ox高濃度域は海風前線より内陸に位置したが、Ox高濃度域の位置は海風前線の侵入の遅速により異なった。Ox高濃度域は海風前線の侵入が速やかなType 1では対象領域北部に、遅延するType 2ではType 1よりも南側に現れた。Type 1の沿岸付近では、速やかな海風の侵入によりOx濃度の上昇が抑制されたと考えられた。以上から、Ox日最高濃度の分布には、関東平野南部の海風風系の違いによる海風前線侵入の遅速が関わっていることが明らかにされた。
著者
藤田 慎一
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1-22, 2002

電力中央研究所は, 関係諸機関の協力のもとに広域的な観測網を展開し, 1987年10月から足かけ10年にわたって東アジアの酸性雨の調査を行った。観測データをもとに, 降水成分の湿性沈着量, 硫黄化合物の収支, 降水組成の季節変化と経年変化, 東アジアの降水化学などの解析を行うとともに, 長距離輸送モデルの検証を進めてきた。<BR>本論文は既往の研究成果をふまえて, 降水成分の濃度と湿性沈着量の地理分布, 季節変化, 経年変化を解析し, 観測の立場から東アジアの酸性雨について総合的な考察を加えたものである。
著者
吉門 洋 魚崎 耕平
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.63-75, 2000-01-10
被引用文献数
4

濃尾平野を中心とする愛知・岐阜両県の大気汚染データを用い,1994〜1996年度の3年分について気象データと合わせて高濃度解析を行った。他の主要な都市域と同様に,長期的に高濃度が問題となっているのは浮遊粒子状物質(SPM)および窒素酸化物(NOおよびNO_2)であり,季節的には11〜12月に集中するため,解析はこの季節にしぼった。高濃度汚染に関与する気象学的構造を解明するため,SPM濃度が地城中で最も高いレベルにある名古屋市中心部の測定局を代表局として高濃度日(日平均100μgm^<-3>以上)36日を抽出した。対象期間2か月×3年のうちの20%に当たるこれらの日の平均状況を調べた。代表局に対して周辺部の主要測定局の状況を比較すると,名古屋から南南東方向に知多湾東岸に沿って延びる工業地域では同等の高濃度が出現し,しかも夕方から夜の最高濃度の出現は南へ行くほど遅い。この方角以外の局では濃度レベルがかなり低い。このような濃度分布とその変動は,日中も弱い北西風が持続する傾向に加えて,夕方以降の接地層の安定化とともに,平野東方の丘陵地帯からの冷気流が成長し,名古屋から南南東の上記帯状地域で北西風と収束することにより,目立つものとなっている。これと比べ,関東の場合は,東京より内陸側に形成される広いよどみ域で高濃度が現れるのであり,高濃度形成プロセスが全く異なっていることがわかった。