著者
笹山 智仁
出版者
奈良工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

本研究では、治具を必要とする旋盤加工をおこなう場合でも、新たに専用の治具を製作することなく製品加工がおこなえる、汎用性に優れた旋盤用「システム治具」の開発と実用化を目的とした。製作する治具は、ベース(チャッキング)部に工作物を取付けるアタッチメント(軸やプレート)を取付けることで使用が可能となる構造とし、様々な形状の工作物に対応できるようアタッチメントは形状の異なるもの数種類を製作することとした。はじめに、外周加工用治具を、組立て式とすることを検討、本校実習工場で過去に製作した外周加工用治具の詳細を調査すると同時に、治具に関する文献等を参考としながらパーツ構成(部品形状や寸法、材質等)を決定した。その結果、ベース部品3種類(直径がφ30mm/φ40mm/φ50mm)アタッチメント(軸)部品5種類(取付け軸径がφ5mm/φ6mm/φ8mm/φ10mm/φ12mm)と取付け軸径を調整するカラー数種類でシステムを構成することとし、パーツを組み合わせることで、軸径はφ5mm~φ12mmの間で1mm毎に8段階、軸長は0~60mmまで無断階に調整が可能な構造とした。また、ベースとアタッチメントの嵌合部形状については、耐久性や組立て精度などを考慮した最適形状を決めるため、六角形とスプライン形の2種類を製作し検証をおこなった。製作した外周加工用治具は、軸径・軸長の変更や調整ならびに六角形状、スプライン形状の組合せなど「システム治具」としての働きに問題ないことが確認された。また、実際に平板から円盤状の部品を製作し「旋盤による加工に耐えうること」や「従来使用していた治具と同等の働きをすること」など実用性についても確認された。
著者
百田 止水
出版者
山鹿市立来民小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

1 研究の目的本研究では,デジタルコンテンツを活用するにあたって,教師の「授業設計の枠組み」がどのようにその活用に影響を与えているのかを調査し,誰もが授業に効果的に位置づけることができるデジタルコンテンツのための設計の条件を明らかにする.そして,その条件の下制作したデジタルコンテンツの効果を検証する.2 研究の方法本研究では,ベテラン教師5名と初任教師5名を対象として,それぞれの「授業設計の枠組み」を調査する.その上で「授業設計の枠組み」と「デジタルコンテンツの機能」とが合致する条件を明らかにし,誰もが授業への位置づけ方や活用の仕方が分かるようなデジタルコンテンツを小学校算数科を例として開発する.そして,熊本市および山鹿市の算数科教育の研究会に所属しているベテラン教師と新任教師を対象に,開発したデジタルコンテンツを活用する学習指導案を作成する調査をする.学習指導案にどのようにデジタルコンテンツを位置づけたかを分析し,効果を検証する.3 研究の成果初任教師は,デジタルコンテンツを資料提示や問題の説明のために授業に位置づける傾向があることが分かった.それに対して,ベテラン教師は,デジタルコンテンツを児童が問題解決する学習の様々な過程に自分なりに位置づけようとしていることが分かった.このことから,初任教師は解説的な「説明型」コンテンツについては,「授業の枠組み」の有無とコンテンツ機能の有効利用とのかかわりは高くなく,限定された機能故に有効に活用して授業設計することができると言える,しかし,筆者の「授業設計の枠組み」が反映した「ルール発見型」コンテンツは,アイディアの生成・交流の促進・算数のきまりの発見等の「授業設計の枠組み」をもっていることが機能の有効利用のために必要であると考えられる.「ルール発見型」コンテンツを他者に提供する場合は,コンテンツそのものから「授業設計の枠組み」を推察することができる設計にすることが,その効果を十分に反映した授業設計の実現には重要である.
著者
平原 聡
出版者
東北大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

1、研究の目的携帯電話による地震観測のデータ伝送を可能として、地理的制約を少なくする。大地震発生直後から本震に近い場所にオンラインの地震観測点を設置することが可能となり、重要な観測データを即時に解析可能になると期待される。また、ソーラーパネルによる太陽光発電を可能として、保守作業の負担を軽減する。大地震の発生により道路が寸断されて保守が実施できない場所において、メンテナンスフリーで長期間の地震観測が可能になると期待される。さらに、月額約6千円の定額制料金プランを利用可能として、低料金での連続観測を可能とする。また、複数の携帯電話網を利用可能として、通信エリアの拡大とアクセス回線の冗長化を図る。2.研究の実績2-1.携帯電話データ伝送システムの開発組み込み用小型ボードコンピュータをベースとして、下記手順でデータ伝送装置を開発した。(1)携帯電話データ通信モジュールのハードウェアを認識させるための改修を行う。(2)リモートログインに必要なソフトウェア機能を追加する。(3)データロガー内部の観測データをデータ収集サーバへ送信するプログラムを開発する。(4)データ伝送装置と携帯電話アンテナの『屋外設置用ケース』を設計・製作する。(5)DC 12Vの電源で駆動するための『外部変圧回路』を設計・製作する。(6)鉛蓄電池とソーラーパネルを充放電コントローラに接続して、データ伝送装置とデータロガーに電源を供給して、屋外での連続観測を1ヶ月以上実施する。(7)受信したパケットの時間帯別の欠落状況を調査して、データ伝送装置の設定を最適化する。2-2.研究成果連続観測のために常時接続を行っていると、一定時間が経過すると携帯電話会社によって通信を切断されることが分かっていた。そのため、約12時間に1回の頻度で再接続する必要がある。既製品の携帯電話対応ルータでは再接続に対応できなかった。本研究の臨時地震観測点用のデータ伝送装置では、タイマー機能を搭載することで再接続を自動化し、さらに商用電源に頼らないシステムとすることで、機動性を向上できた。
著者
三池田 修
出版者
東京都立翔陽高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

高等学校「化学基礎」におけるイオンの学習では、電気泳動を観察するとイオンを理解しやすくなる。従来の教材では実験時間やイオンの種類、電源装置などに難点があり、イオンの性質を生徒の視覚に訴えかけるのが難しかった。本研究では専用の電源装置の開発と植物染色の応用により「イオンが目に見えて動く」と生徒にその場で実感させ、イオンの性質を理解させる教材を作成することができた。さらにこの実験方法が電気分解の学習にも利用できることを見出した。電気泳動の電源装置は、商用電源から700V直流(20W)を出力するものを設計・製作した。最終的には、回路はハーフブリッジコンバータとし、一次側と二次側を絶縁するトランスを用い、最終段で6倍圧整流するものとした。電気的には出力を大地と絶縁させ、感電の危険を抑えた。この装置により11㎝のろ紙上でのイオンの電気泳動を1~3分間で目視で観察できるようになり、少人数授業では生徒に直接観察させ、教室授業では教材提示装置で指導することができるようになった。陽イオンの電気泳動では、植物染色の媒染法を応用するとIII (HDイオン、銅(II)イオン、アルミニウムイオンなど学習上基本的な陽イオンの泳動を鮮明に観察できることがわかった。すなわち紅茶、スオウ、ログウッドなどで染めたろ紙を食酢希釈液または薄い炭酸水素ナトリウム水溶液で濡らし、そこへ上述のイオンを含ませたろ紙片を乗せて実験した。さらに染色したろ紙を用い、電極に鉄、銅、アルミニウムなどを用いて電気分解を行うと、電極の酸化で生成したイオンの泳動が観察でき、イオンの生成や電気分解の学習にも有効なこともわかった。開発した装置と実験の追試験を他校教員に依頼した結果、高速で鮮明な電気泳動が再確認され、イオンの性質や電気分解の反応の学習に効果的なことが支持された。
著者
澤田 一彦
出版者
滋賀大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

3D映像や組み立て自在の粒子模型を活用し,いかにすれば科学的思考力を高めさせることができるのかを実践で明らかにし,その有効性を検証することを研究の目的とした。3Dは,映像に現実味を持たせることに長けている。3Dによる資料提示は,一度に多くの生徒に注目させる必要があり,以下の点で偏光方式が適していた。●偏光による3Dは,アナグリフ方式と異なり,生徒の色盲・色弱に配慮する必要がない。●偏光による3Dは,片眼の生徒には2Dとなり,新たな差別を生まない。●コンテンツの投影・作成は,安価,簡単に導入できる。自作のマジックテープによる組立て自在な発泡スチロール球は,友だちと考えを交流ながら体験的に理解させることに長けている。従来のものと比較して,次のような利点があった。●みんなからよく見えることは,討論に適している。●価数にあたるマジックテープで組立てることにより,実在の物質を生徒が容易に作成できる。これらの教材を単発的に使用せず,次の点に留意して授業を設計し,関心・意欲を喚起する学びの誘い,生徒の考えを揺さぶる言葉がけ,驚きのある体験のしかけ,明らかにしたことを確かにする場面を構成した。●生徒の持っている知識,概念,イメージの誤謬,半わかりを明らかにして,生徒の科学的思考を高める。●予想や考察をモデルや文章でかかせて,生徒の科学的思考を高める。●的確な指示,考える観点を絞らせるような具体的な発問をして,生徒の科学的思考を高める。●生徒が考えを交流したり,練りあう場を設けたりして,生徒の科学的思考を高める。●学習内容を焦点化して,授業のねらいを明確にして,生徒の科学的思考を高める。成果と課題をまとめるにあたって,授業者による観察と質問紙調査を行った結果,図や文章では表現しづらい粒子概念の定着が図られ,発展的な内容に関して好奇心を満足させている生徒の変容が明らかになった。
著者
小川 正人
出版者
道立アイヌ民族文化研究セン
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題は、近現代日本のアイヌ教育史の中でも、〈アイヌ政策〉が可視的だった1930年代以前とアイヌ民族の権利回復・伝統文化の再評価が唱えられるようになった1960年代末以降との"狭間"に当たり、「アイヌ」という言葉すらタブーとされることが多かった1940~50年代を対象として、この時期の教員や地域のアイヌによる取組や活動をあらためて調査し、当時のアイヌと教育に関わる様々な問題の実態を明らかにすることを目的とした。具体的な作業と成果は次のとおりである。(1)先ず北海道大学附属図書館、北海道立図書館、北海道教育大学附属図書館等において、当該時期の教育行政関係文書、教育雑誌、教職員組合関係文献等を調査し、本研究課題に関わる記録資料の所在に関する予備的確認を行った。(4月~6月)(2)その結果を踏まえ、道内各地域での関係資料調査を順次実施したほか、全国的な教育行政・教育研究組織等の動向を掴むため東京都での資料調査、早くからアイヌの教育問題に関心を持ち人的な交流も確認できる被差別部落地域における情報を収集するため京都、奈良、大阪での資料調査を実施した。(7月~12月)(3)並行して、収集した情報のデータベース(文献目録)化を実施。10月に開催された教育史学会第57回大会での口頭研究発表にその成果の一部を援用した。(4)12月以降は補充調査を実施しつつ、収集した情報の整理・分析作業を継続した。(5)以上の作業を通して、確認できた当該時期の関係資料は、数としては前後の時期に比べきわめて乏しい。しかも、タイトルに「単級複式学校」「地域の低所得者層」「非行等の語のみを記したものが目立つ。予て指摘されてきた"見えない問題"とされていた時期だとする把握は、現象としては確かにその通りである。しかしこれらの記録には、地域のアイヌ児童の問題と取組む教職員や、自ら教育研究団体の場で発言するアイヌの存在が確認できる。そして、これらの人々による、問題の所在と打開の方策を模索する営みは、その困難さに行き当たれは当たるほどに、人々自身の意図を超えて、アイヌ児童を取り巻く諸問題が、「貧困」「僻地」「階層」だけではない淵源―先住者ゆえに抱えさせられてきたもの―を持つことを暗示している、というのが筆者の仮説的な結論である。本研究により筆者は、「アイヌ=先住民族」という理解が与件ではない時期に、実態との不断の取り組みによって、その問題が"予感"されたことが重要ではないかと考えるに至った。本研究の成果については、2014年10月に開催される教育史学会大会にて改めて発表する予定である。
著者
堤 英俊
出版者
旭出学園教育研究所
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

<研究局的>ある一人の発達障害生徒(Z君)の自己語りの分析から、特別支援学校中学部に通う発達障害生徒の自己の様態に関する仮説を生成するとともに、その自己語りが生み出される文化的・社会的文脈について考察することを目的とした。<研究方法>保護者・本人の了解のもと、Z君との個別指導の時間の一部で、インタビュー・データを収集した。エピソードを引き出すことを念頭に、本人の特性を踏まえたライフストーリーワーク教材(ワークシート等)を作成した。データ収集は、主にICレコーダーを使って行った。録音データは、文字起こし作業を行った上で分析材料とした。<研究成果>Z君は、以前在籍していた小学校(通常学級)と現在在籍する中学校(特別支援学校中学部)では学習内容の難易度が異なる(小学校の方か難しい)とし、小学校(通常学級)への在籍には「学力(本人の意味する)」による条件があると語った。ただし、現在在籍する中学校(特別支援学校)の同級生の約半数は「学力(本人の意味する)」の条件をクリアしており、少なくとも自分は「ゆるい学校が好き」という理由から現在の中学校を選択し入学してきたと語った。こうした語りから、Z君において小学校通常学級と特別支援学校中学部は、異なる性質を持つ場として認識されつつも、分離した場としてではなく、質的に連続する場として認識されていることが理解できた。そして、その背景要因として、特別支援学校が障害児の学校であることが意図的に伏せられていること、本人の見なす「幼馴染」「いじめっ子」「自分より頭のいい人」「おしゃべり相手」が両校に共通して存在していることなどが関係していることが分かった。
著者
茅野 理恵
出版者
長野県教育委員会
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

目的:本研究では,児童生徒がどのような体験を喪失体験として感じているのか,そして教師は児童生徒がどのような喪失の体験をしていると考えているのかを明らかにし,さらに兜童生徒の認識と教師の認識との差異を検討することを目的とする。調査方法:質問紙調査法。対象者:大学生268名,教師324名(小103名,中109名,高112名)。調査時期:大学生2010年11月~12月。教師2011年9月~12月。大学生への実施については,臨床心理を専門とする研究協力者が調査実施前に喪失についての質問があることを説明し,最近喪失体験をした者や思い出すことが辛い経験をしている者は回答しないようお願いをした。調査内容:大学生は、小学校から高等学校までを振り返って「失った」と感じた出来事についてその内容を自由記述。教師は,児童生徒が学校生活の中で「失った」と感じるであろう出来事にはどのようなものがあると考えるか自由記述で回答を求めた。結果と考察:自由記述の回答をKJ法によって分類した結果,大学生の回答〔小学生〕,〔中学生〕,〔高校生〕,教師の回答〔小学校教師〕,〔中学校教師〕,〔高等学校教師〕の全てで共通する分類項目は「死別体験」,「親の離婚・不和」,「ケガ・病気」,「いじめ・対人関係トラブル」,「大切な物の紛失・破損」,「部活での敗北」,「学習のつまずき・受験の失敗」,「卒業」,「友人の転校・退学」,「自身の転校」であった。小・中のみに共通であったのは「教師からの叱責」。中・高では「失恋」,「メンバーや委員の落選」であった。児童生徒にのみ見られた項目は,中・高に共通で「キャラを演じること」,「夢の実現が不可能と知った時」,「以前は感じられた感情になれなかった時」であった。教師のみに見られた項目は,小・中に共通で「虐待」,「クラス替え・教師の転任」,「嘘の露見」,中・高で「目標の達成」,「不登校」であった。児童生徒の経験と教師のとらえは多くが共通していた。大学生の回答にのみ分類された項目に注目すると,人や物などの実態のあるものの喪失が伴わず,自分の中での感情の動きによってのみで生じている出来事であるととらえることができる。今後の課題:本研究では,何かを「失った」と感じた出来事についての調査を行ったが,その出来事によって具体的に何を失ったと感じたのかまで検討できていない。今後,この喪失感の構造についてより明らかにしていきたいと考える。また,本研究の結果からは,教師が児童生徒が喪失感を抱いているであろうと思われる体験の多くをとらえることができていると考えられた。しかし,茅野(2010)にあるように,その喪失体験が児童生徒にもたらす影響については十分に認識されてはいない。今後,喪失感がどのような問題につながる可能性がるのかの認識を高め,より適切なサポートの在り方を検討し,いかに実践していけるかが今後の課題である。
著者
川上 昭吾
出版者
蒲郡市生命の海科学館
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

1研究目的前年度に開発したカリキュラムを小学校と中学校で実践して評価を行うとともに、外国の先進例から示唆を得ることを目的とした。2研究の成果(1)科学館で「顕微鏡の達人」講座を開設した。合計9回実施した内容について、30人全員が「満足」、「いろいろなことを知ることができた」、「おもしろかった」と答えた。講座の内容は、「難しかった」が13人、「どちらとも言えないが」13人で、難しいと思いつつも、いろいろ知ることができ、高い興味関心をもつことができ、満足している。実施者の評価:顕微鏡の操作が確実に上達し、研究も深くすることができており、優秀性を育てることができた・科学館では得意分野を伸ばすことができる。このような活動の意義は高い。(2)学芸員による学校の授業実践蒲郡市内はもとより、近隣の小、中学校で化石や地層に関する理科授業を実施した。子ども達は、学芸員の持つ深い学識に触れ、満足していた。この活動の意義も高い。(3)学校の理科学習への助言田原市立中山小学校5年生の「大地の作り」の授業で、化石はどうしてできるかという発展学習の助言をした。足下の大地の作りが深く理解できた子ども達は感動していた。発展学習によって子どもが理科好きになることが確認できた。(4)研究成果を科学絵本として発行するために(平成25年度中に出版)、写真撮影を行った。(5)先進例の調査イタリア、国立レオナルド・ダ・ビンチ博物館を視察した。イタリアの威信をかけて作られた巨大な博物館であるが、子ども達の学習場所を9ヶ所も用意したり、スタッフが応対するなど受け入れ態勢を整えていた。社会全体で科学を追究するという教育的な環境を高めていくことの意義が大きいことを確認できた。
著者
熊谷 幸博
出版者
東北大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は,河川水生昆虫の遺伝子レベルの生物多様性を低下させている環境因子を解明するために,膨大なDNA塩基配列の中で環境選択が起きている領域(遺伝子座)を検索することである。研究方法として,まず宮城県の6水系(名取川水系等)の源流から下流まで分布する計62地点の主要な水生昆虫4種(ウルマーシマトビケラ,ヒゲナガカワトビケラ,シロズシマトビケラ,フタスジモンカゲロウ)のDNAサンプルを得た。そして,個体間の遺伝的変異の大きさを定量化するAFLP法を用いて計1793個体のDNA多型分析を実施して129-473遺伝子座/種をジェノタイピングした。そして,ソフトウェアBayeScan等による遺伝シミュレーション解析に基づき,環境選択が働かない(中立)仮定下で出現する集団遺伝構造を確率論的に予測した。このシミュレーションでは,まずランダム予測を繰り返し,中立下における遺伝的分化係数Fstの理論出現分布を導く。そして,上記AFLP分析によるFstの観測値を,この理論分布の95%パーセンタイル値よりも極端に大きなFstを示したDNA領域を環境選択的領域として決定する。通常,環境選択を受けた領域の遺伝的分化は中立領域よりも大きくなる。以上の解析の結果,7-23遺伝子座/種が環境選択を受けていることを突き止めた。現地調査等で得た環境データ(標高,流速,BODや栄養塩類等の各種水質,河床材料,GISに基づく周辺土地利用状態等)とこれら環境選択遺伝子座の相関分析の結果から,ウルマーシマトビケラとヒゲナガカワトビケラは標高,シロズシマトビケラは河川水中クロロフィルa濃度,フタスジモンカゲロウはアンモニウム性窒素濃度が最も強く遺伝的選択を起こしている環境因子であることを推定した。
著者
飛鷹 範明
出版者
愛媛大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

【目的】近年、大腸がん化学療法においてカペシタビン(ゼローダ[○!R])を含むXELOX療法が汎用されている。一方、副作用として手足症候群(以下、HFS)を誘発し、患者のQOLを低下させる。さらに、HFSが認められた場合は減量・休薬される場合があり、HFSをコントロールしてQOLを維持しながら治療を継続していく上でHFSの治療は極めて重要である。しかし、カペシタビンによるHFS発症機序は不明であり、病態解明や治療薬探索・開発を行う上で重要なモデル動物に関する報告もない。そこで、カペシタビンによるHFS発現状況やHFSに対する対症療法の現状を明らかにし(臨床薬学的研究)、さらに、カペシタビン誘発HFSの実験モデル動物の作成を試みた(薬理学的研究)。【臨床薬学的研究】2012年4月~2013年3月末までに愛媛大学医学部附属病院においてゼローダ[○!R]錠が新規処方された患者を対象に処方調査を行った。【薬理学的研究】実験にはWistar系雄性ラット(6-8週齢)を用い、ゼローダ[○!R]錠(300, 500, 1000mg/kg)を1日1回28日間経口投与した。その後、一般行動(足を振り回す行動、舐める行動、自発運動量計測)と症状(紅斑、発赤、腫脹等)の観察を行った。【結果】処方調査より、調査期間中にゼローダ[○!R]錠は30名に新規で処方されていた。そして、30名中20名に何らかの皮膚障害の発現がみられた。薬剤として、血行促進・皮膚保湿剤、NSAIDs内服、ビタミン剤内服等が処方されていた。薬理学的検討より、ゼローダ[○!R]錠を1日1回28日間反復経口投与したが、各投与量において一般行動および症状の変化は認められなかった。【考察】ラットに1日1回28日間ゼローダ[○!R]錠を反復経口投与したが、HFSの実験モデル動物は作成できなかった。この要因として、ヒトおよびラットにおける各臓器の酵素活性の分布等が異なるためと考えられた。
著者
波平 知之
出版者
琉球大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

合計141個体のウミヘビを採集し、胃内容物の有無を調査した結果、胃内容物をもつ個体はわずか5個体のみだった。胃内容物の大きさとウミヘビの餌生物の摂取量との関係について明らかにできなかったが、胃内容物の種類については、エラブウミヘビは主にベラ類やスズメダイ類を捕食し、アオマダラウミヘビとヒロオウミヘビはウツボ類を捕食する傾向にあった。これらの胃内容物に残存していた餌生物のCP含量はウツボ類が70-80%と高かったのに対し、ベラ類が52%と低かった。ウミヘビの種によって捕食する餌生物の違いならびに餌生物由来の栄養摂取量の違いが認められた。魚粉粉末の人工餌(CP60%)ならびに生餌(ヤマトミズンとヤエヤマギンポ)をin vivo消化試験に供した結果、人工餌と生餌のin vivo乾物消化率はそれぞれ64%と54%となった。エラブウミヘビの消化時間は餌の種類や乾物消化率の違いによる影響は認められず、強制給餌後2=3日以内に初回排泄が認められる傾向にあった。排泄糞尿中の尿酸含量は約5%となり、餌由来の見かけ上のカロリー利用率(見かけ上のカロリー内部保有率)は65%であった。絶食区(140日間絶食)と生餌給与区(45日間絶食、50日間生餌給与、45日間再絶食)におけるエラブウミヘビの体重の推移をモニタリングした結果、いずれの処理区ともに140日間で捕獲時体重から約20%単位まで体重が減少し続けた。しかし、生餌給餌区は2回の絶食時ともに体重が減少したものの、生餌給与によってその減少が止まり50日間体重を維持することができた。このことから、エラブウミヘビの維持に必要な一日当たりの乾物摂取量は0.6gDM(2.2gFW)であり、体重約400gのエラブウミヘビ(♂個体)における見かけ上の基礎代謝量は1.0(kcal/day)となった。エラブウミヘビの排泄糞中のバクテリア相について次世代シーケンサーを用いて16SrRNA領域における細菌相解析を実施した結果、Firmicutes, Proteobacteria,Actinobacteria, Fusobacteriaなどが検出され、中でもFimicutesが優占化する傾向にあった。
著者
中村 直貴
出版者
上越市立春日小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

理科実験中のメタ認知的活動は重要視されている。そこで, 理科実験中の学習者が活動の途中でそのスピードを落としたり立ち止まったりして過去を振り返る(メタ認知する)ためのチェック項目を実装したワークシートを開発し, 実践を行った。ワークシートの開発に当たっては, チェック項目に思考活動を活性かさせるためにメタ認知的活動の基と考えられているメタ認知的知識を含むようにした。チェック項目があることによって, 学習者の何がどのように変わったのかを明らかにするために, 学習者のワークシートの記録や質問紙調査, 実験活動中の様子について分析を行った。その結果, 中学生を対象にした実践では, チェック項目付きワークシートを用いることで, 理科実験中の77.4%の生徒のメタ認知的活動をサポートすることができた。また, 学習者自身もそれらを意識していることが確認できた。さらに, ワークシートの改善点を明らかにするために, うまく活用できなかった生徒について, 人間がどのように考え, 学習し, 問題を解決するかを説明するために用いられる概念(認知処理過程)であるPASS理論の考えをもとに分析したところ, 課題を達成するのに必要な準備を工夫したりそれをうまく使ったりする(プランニング), 問題を解決するために手順通りに行う(継次処理), 競合する刺激に対する反応を抑制する一方で選択的に注意を向ける(注意), 読解スキル(同時処理)などの認知処理過程をうまく用いられないことによりチェック項目を活用できず, メタ認知のサポートを十分に受けられない生徒がいることも示唆された。より多くの学習者のメタ認知をサポートするには, 活動に関連付けやすい内容にすることでプランニングの負担を減らすなど, 学習者の認知処理過程に配慮する必要がある。
著者
野々原 慎治
出版者
熊本大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

1.研究目的国立大学の法人化により、大学経営の効率化・社会貢献などがより強く求められるようになり、大学事務職員の役割は法人化前に比してさらに重要なものとなってきた。今回の研究では、法人化前に行った職員のワークモチベーション(以下「WM」という。)に関する研究成果を検証・発展させることを目的として、(1)法人化後の事務職員のWMの現状把握を行い、(2)法人化前に行った事務職員のWMの調査データとの比較を通して、(3)法人化が事務職員のWMに与えた影響及びこれからの事務職員のWMの向上策について、検討を行うこととした。2.研究方法まずは、(1)の現状把握を行うために、大学事務職員に対してアンケート調査を実施し、種々の分析を行った。(2)の比較については、法人化前に調査を行った機関に対して再度調査を実施することができなかったため、(1)の現状把握に用いたデータを法人化前のデータとの比較に用いることとし、法人化前に行った研究結果と比較を行った。さらに、(1)(2)の結果及び総合的な観点から(3)について考察・検討を行った。3.研究結果(1)の現状把握の結果として、WMは、課長級・副課長級(以下「課長等」という。)及び一般職員が高く、係長級・主任(以下「係長等」という。)は低かった。これらを踏まえて(2)の比較を行った結果、一般職員のWMと課長等のリーダーシップ行動は、法人化後が高かった。これらをもとに、(3)の検討を行った結果、課長等のリーダーシップ行動の向上については、新規業務の増大により業務指示機会が増えたこと、WMについては、係長等は、業務管理と日常業務を遂行しているため多忙な状況にあること、一般職員は、係長等よりも業務量が少ないことがWMに影響を及ぼしていると推察される。これらから、係長等の業務をさらに一般職員に配分し、係長等の業務負担の軽減と一般職員への職務拡大機会の提供を図ることが、双方のWMの向上に繋がるのではないかとの結論に至った。
著者
山内 誠
出版者
仙台高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

本研究は、これまで研究者らのグループが行ってきた、簡易電気自転車開発、競技用簡易電気自動車開発の技術と研究成果を基に、アシスト付電動補助リヤカーを母体とした電源供給や照明設備等を兼ね揃えた災害時支援ミニステーションの構築実現を目的として、以下の研究活動を行った。研究実施計画に沿って報告する。1.災害時用の電動補助付リヤカーの設計・製作駆動システムの試作検討を行い、電流センサを用いたマイコンにての左右二輪トルク制御の駆動システムとダイレクトドライブを用意し、安定した駆動性能と信頼性を実現した。2.双方向型降圧チョッパ回路を利用した人力による電気自転車用発電回路の設計・製作当該回路の発電性能を評価し、発電効率の改善を試みた。データロガーを使用して、システムの完成度と改良点を確認した。3.自作発電システムと市販発電装置の性能比較と安全性の検討実用性と安全性を重視し、リヤカーに搭載する発電装置の比較・検討を行った。今回の製作したリヤカーには、市販の発電装置を搭載し、自作発電システムは引き続き改良と開発を行う。4.電動補助付リヤカーを母体とした発電装置を有した災害時のためのミニステーションの設計・製作リヤカーの駆動輪は荷台の下に配置し、車輪半径分のスペースは、防災用品等を収納可能な二段構造とした。駆動用回路・バッテリーの他、予備バッテリー、LED照明装置、ラジオ・ヘルメット等の防災グッツを収納。荷台サイズは要救助者搬送も考え、1000×2000mm。長イスに変形できる救助用担架も製作、平時は搭載する。5.実用性の評価と商品化の検討、研究取りまとめ駆動方法の検討、発電・蓄電装置の性能と問題点を確認した。設計・製作においては、被災経験から震災時に必要と考えられるコンセプトを最大限に取り入れたことから、やや重量超過の感が認められるも、実用性は十分である。今後は搭載したコンセプトを提示して、必要なものを選択し製作できる、震災用簡易リヤカーの設計・製作に向けて研究活動を行っていきたいと考えている。
著者
蒲生 英博
出版者
名古屋大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

1.研究目的本研究は、単独のMLA(Museum,Library,Archives)が内部に異種のMLA機能を持つ場合の相互の連携について調査し、得られた知見を元にして、名古屋大学附属図書館医学部分館(Library)内にある医学部史料室(Museum)を実践の場として、検証することを目的としている。2.研究方法最初に、MLA連携の全体像を整理するため、図書、雑誌等による文献調査とインターネットによる調査を行った。また、国内の単独館におけるMLA的機能の連携の事例調査を現地調査も含めて行った。次に、この調査結果をまとめ、適度な類型化を行い、実践方針を決定した。さらに、この実践方針に基づき、医学部史料室内の独自に電子化した史料と、附属図書館医学部分館の所蔵資料とをインターネットにより融合させ、単独館におけるMLA的機能の連携に取り組んだ。実践効果の検証は、広報用資料による利用調査と、インターネットによる利用分析を行った。3.研究成果実践の成果は、「近代医学の黎明デジタルアーカイブ」としてインターネットにより公開している。単独館においては、Museum機能を最大限活かすため、機関リポジトリも含めたLibrary機能と連携したインターネットの利用が現時点では最適と考えられる。なお、実践の過程や公開後において、医学部史料室の所蔵史料やデジタルアーカイブが、学内・学外の類縁のMLAでも活用された。
著者
峯崎 正樹
出版者
館林市立第四中学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

1.研究の目的中学校1学年理科学習おいて、複数単元に「粒子概念」を導入したカリキュラム開発を行い、実践、評価すことを目的とした。2.研究の方法「大気圧」、「密度」、「水溶液」、「状態変化」などの単元に粒子概念を導入した学習プログラムをデザインする。その計画に沿った授業実践を行い、単元および粒子概念の理解を見るため、質問紙により事前、事後、遅延(学習後1,2ヶ月後)調査を行う。3.研究の成果「大気圧」において導入した粒子概念は、「空気は粒子からできていること」、「空気の粒子が動き回って衝突していること」の2つである。学習前には約7,8割の生徒が、気圧現象の要因を「真空が引く」など内部の力と考えていた。粒子概念の導入後には、8割の生徒が粒子概念を用いて正しく理解し、2ヶ月後も理解は定着していた。「大気圧」で、真空容器内でマシュマロが圧縮される課題、マグデブルグ半球が離れない課題、真空の注射器のピストンが戻る課題を設定することが、粒子概念の理解に効果的なことが明らかとなった。「水溶液」の学習では、粒子モデルの認識と溶質の質量保存の理解を検証した。事前調査から、現行の教科書の説明で粒子モデルを提示しても、正しく認識できない生徒が多いことが分かった。導入した粒子概念は、「最小の粒の大きさや質量」、「1粒でも物質の性質をもつこと」、「最小の粒はそれ以上小さくならないこと」である。粒子モデルの学習により、分子レベルで粒子の大きさや特徴を理解させ、その分子を粒子モデルで表現することを指導すると、モデルを正しく認識できた。さらに、溶質の質量保存の学習で、粒子モデルを使って考察させることで、溶質の質量保存の理解は高まり、定着も優れていた。実践的な本研究の結果から、「大気圧」での粒子概念導入に加え、「水溶液」で「粒子モデルの学習」の導入および溶質の質量保存でのモデル活用により、構造的な単元構成を図ることができた。実践校での都合上、「密度」、「状態変化」での検証はできなかったため、今後の課題とする。
著者
茂木 淳子
出版者
上越教育大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

○研究目的:小学校外国語活動において、児童の学習意欲を高めるためのCan-Do評価を開発・実践し、その効果を明らかにする。○研究方法(1)外国語活動の実施Hi,friends!を活用した外国語活動(2)Can-Do評価の作成(3)アンケートの実施○研究成果本研究の結果、Can-Do評価を活用した外国語活動において、児童にとって魅力的で満足感を得ることのできる活動を実施することができた。指導と評価は、表裏一体である。そこで、Can-Do評価の作成に当たって、次の○項目に留意した。この評価は、4段階の自己評価からなる。第1段階は「まだ自信をもってできない」という状態であり、該当児童が0であることが望ましい。第2段階は「自信は十分ではないが、何らかの手助けがあればできる」という状態である。したがって、活動中に何らかの手助けが保障されていなければならない。第3段階は「多くの児童ができる」という状態であり、全体の8割がここまで到達することを目標とする。第4段階は「発展的な活動ができる」という状態であり、活動の中に自信のある学習者を飽きさせないような挑戦的な取り組みを設定する必要がある。つまり、活動の前に、支援を必要とする児童やもっと活躍の場を必要とする児童をともに満足させるような配慮をすることで、活動が充実し、児童の満足感も高まるという結果を得ることができた。外国語活動を担当する者は、通知表や指導要録に活動の所見を記入しなければならない。ややもすると学期末に評価のための評価をしがちである。しかし、このような評価方法を採択することで、活動が充実し、児童の自己評価もでき、児童の学びの履歴ともなる。有効な方法であるといえる.
著者
前田 秀之
出版者
福井大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

遺伝子組換えマウスの維持方法として卵巣移植法がとられることがある。しかし、マウスが突発的な事故により死亡し、レシピエントマウスを購入しなければならない場合には対処できない。緩慢凍結により保存する方法が取られることもあるが、プログラムフリーザーを必要とするので容易に行えるものではない。これらに対処する方法として、また卵巣の低温輸送の実用化を考え、今回はマウス卵巣の短期間の保存を検討することにした。蛍光励起ライトで可視化できるC57BL/6-Tg(CAG-EGFP、以下GFPマウス)5週齢から卵巣を採取した。レシピエントマウスには8週齢のC57BL/6を用い、1個の卵巣を2つに分けて1匹に移植し、回復後にC57BL/6雄マウスと交配し産仔を得た。確認は産仔が、GFP発光するものはドナーマウスであるGFPマウスの卵巣由来と判断した。低温保存の検討は2段階で行い、実験(1)は、生理食塩水、胚の培養に用いるKSOM液、胚の凍結保存剤であるDAP213液、ミネラルオイルを選択して行った。選択した液を1cc入れたチューブの中に、1匹のGFPマウスの卵巣を入れ4℃で12時間保存した。保存後は、室温の生理食塩水で洗浄した後に移植した。この結果により保存液を決定した。実験(2)は、保存液としたものに実験(1)と同様に卵巣を入れ、4QCで24時間、48時間、72時間保存後に移植し保存期間を検討した。なお、対照として保存時間0時間の卵巣を移植した。実験(1)で使用した4種類の保存液では、卵巣を生理食塩水に入れ4℃で12時間保存したものと、コントロールでのドナーマウス由来のGFP仔マウス出生率が34.2%と35.6%と差が少なかったことと出産したレシピエントマウスの数でも、それぞれ6匹と7匹と差が無いことより、生理食塩水を保存液として使用できることが確認できた。実験(2)より24時間保存での出生率は24.4%、48時間のものでは19.8%との結果が得られたこと、72時間保存したものでは出産が確認できていないかったことより、卵巣の4℃での保存は48時間以内と考える。