著者
吉田 俊介 野間 春生 柳田 康幸 保坂 憲一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.3819-3826, 2007-12-15

著者らはすでに2 自由度のリニア誘導モータ(LIM)を利用した力覚付きデジタルデスク環境を提案したが,その手法により同時に制御できる物体は1 つに限られた.本論文では複数人での共同作業をも可能とする,複数物体を同時制御可能な新しい方式のLIM による力覚付きデジタルデスク環境Proactive Desk II を提案する.提案手法では机の下に配置された多数のコイルを独立に制御し,異なる強度の磁束を生成する.それらの集合として構成される磁界はある時刻において従来手法のLIMと等価な状態となるよう制御し,それらを局所的に発生させることで複数物体を駆動させる.そしていくつかのアプリケーションを構築し,複数人が同時に利用でき,個別に異なる力覚を体験可能であることを確認した.We have designed a haptic display for ordinary digital desktop operations. It employs a general two degree-of-freedom linear induction motor (2-DoF LIM) and provides two-dimensional force on a desktop surface, but only for a single object. For cooperative tasks between multiple users, we propose the next-generation Proactive Desk II having a novel style of LIM which can apply individual forces to multiple objects simultaneously. The system employs a cluster of coils for synthesizing several traveling magnetic fields underneath the desktop. These magnetic fields simulate a local region of the field created by standard 1-DoF LIM, and these control multiple objects individually. Finally, we confirmed that this system can provide individual haptic experiences for each user using several applications.
著者
井田 明男 金田 重郎 熊谷 聡志 矢野 寛将
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.1399-1410, 2016-05-15

近年では,スコープを細分化して,小さなリリースを繰り返す開発スタイルが広がりをみせているため,見積りの頻度も高くなる傾向にある.ソフトウェアの機能規模の測定方法として国際規格のCOSMIC法がある.この方法は,認知された測定手法であるが,正確な測定のためには,すべての機能プロセスにおけるデータの移動を計測しなければならないため,利用者機能要求が機能プロセスを取り出せるほど詳細でない場合には適用が難しい.それに対して,業務アプリケーションの要求記述は,機能に関する記述の網羅性は概して高くない.なぜならば,要求記述は,何を管理したいかに主眼が置かれ,どのように管理するかについては,あえて捨象されるからである.そうであるなら,要求記述から直接的に機能プロセスを網羅的に抽出することはできないと考えるのが妥当であろう.そこで,本稿では,COSMIC法をベースに,業務で扱うエンティティの存在従属性に着目した機能規模の測定法を提案する.要求記述から先にエンティティの存在従属グラフを作成し,そこから機能プロセスを抽出して測定を実施する.そのため,利用者機能要件の取りこぼしが少なく,正確な機能規模の測定が行えると期待される.確認のため,宿泊予約サイトの要求記述について,提案手法による測定結果とCOSMIC法による測定結果を比較した結果,それらの間には高い一致性が得られたため,提案手法は有効であると判断する.
著者
丹羽 智史 土肥 拓生 本位田真一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.1382-1392, 2006-05-15

協調フィルタリングを用いた商品推薦システムを応用してWeb ページ推薦システムを構築しようとする試みは従来から行われてきたが,十分な量のデータソースを確保することが困難なことや推薦対象であるWeb ページの数が大きすぎることなどから,その用途は非常に限定されたものだった.本論文では近年急速に普及し始めたソーシャルブックマークとFolksonomy を利用して,インターネット上のWeb ページ全体を対象としたWeb ページ推薦システムの構築手法を提案する.
著者
田中 一晶 山下 直美 中西 英之 石黒 浩
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.1108-1115, 2016-04-15

ヒューマノイドロボットの遠隔操作と自律操作の本質的な違いは遠隔地にいる操作者の存在の有無と考えることができる.この存在の有無をユーザがどのように判断しているのかはいまだよく分かっていない.その判断のメカニズムを明らかにすることによって,自律ロボットとの対話を人との対話のように感じさせることが本研究の目的である.被験者が遠隔操作状態と自律状態のロボットとそれぞれ対話する実験を行った.その結果,自律状態のロボットとの対話における操作者の存在感は,遠隔操作状態であると“信じて”同じロボットと対話した事前の経験に基づいて判断されることが分かった.自律状態での対話の質が事前の経験での対話の質と乖離していると操作者の存在感は低下してしまうが,事前の対話において自律システムが操作者を装ってユーザと対話し,両状態を曖昧化することで,操作者の存在感を効果的に生み出すことができた.
著者
石井 恵 金田 重郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.1284-1295, 1997-07-15
被引用文献数
3

事務処理システムは,従来,手続き型言語,テーブルドリブン記述,トリガといった,状態遷移を表現する言語により記述されてきた.しかし,この種の状態遷移記述では,(1)事務処理に必要な手続きをすべて網羅的に書き切ることが難しい,(2)事務規則と整合性のとれた処理結果が生成されることをプログラム記述上で確認することが難しい,等の問題を有していた.上記問題を解決するため,本論文では,事務処理を,「事務処理で扱うデータを事務処理規則と整合する状態に維持する整合性管理処理」とモデル化する.そして,それを具現化する,制約プログラミングによる整合性管理システムを提案する.具体的には,事務規則を制約として記述し,制約充足エンジンによって,事務規則と整合するデータ状態を生成する.本手法を実用事務処理システムのタスクに試用した結果,事務規則を容易に制約記述でき,プログラム記述量を半減できた.また,手続き型記述の実用システムでは十分には対応できなかったレアケースに対しても対処可能となった.This paper presents a constraint satisfaction mechanism for office systems.Regulations for business can be regarded as constraints in terms of the data in business databases and application forms.Clerical work can be regarded as consistency maintenance to keep the data consistent with the constraints.We rewrote an office system using constraints.Experimental results show that all the regulations can be easily described in constraints,the description size is reduced by 50% of the original system and the constraints cover rare cases exhaustively.
著者
石井 亮 大塚 和弘 熊野 史朗 大和 淳司
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.1116-1127, 2016-04-15

複数人対話において,これまで着目されていなかった参加者の頭部運動と次話者との関連性を明らかにし,頭部運動の情報を用いて誰が次話者になるかを予測するモデルを提案する.まず,4者の対話のデータ収録を行い,発話情報,および頭部計測センサから取得される頭部位置,回転角からなる頭部運動情報を含む会話コーパスを構築した.コーパスデータを用いて,現話者の発話末の頭部運動と話者交替の関連性を分析した結果,話者継続時と交替時で,現話者の頭部運動が異なることが示された.また,非話者の発話末の頭部運動と次話者の関連性を分析した結果,話者継続時の非話者,話者交替時の非次話者と次話者の3者間で,頭部運動の特徴が異なることが示された.分析で差が見られた現話者,非話者の頭部運動情報を用いて,話者継続と話者交替のどちらが起こるか,さらに,話者交替時に非話者の中で誰が次話者になるかを2段階で予測する次話者予測モデルを構築した.その予測精度の評価の結果,現話者と非話者の頭部運動情報が話者継続/交替の予測に有用であることが示唆された.また,非話者の頭部運動情報が話者交替時の次話者の予測に有用であることが示唆された.
著者
岩村 誠 伊藤光恭 村岡 洋一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.1622-1632, 2010-09-15

本論文では,機械語命令列の類似度算出手法および自動マルウェア分類システムを提案する.機械語命令列の類似度算出に関する提案手法では,新たなマルウェアが出現した際に,過去に収集されたマルウェアとの近さを算出するとともに,過去のマルウェアと共通の命令列および実際に変更のあった箇所を推定可能にする.一方,昨今の多くのマルウェアはパッカによりそのプログラムコードが隠蔽されている.こうした課題に対しこれまで我々は,マルウェアのアンパッキング手法および逆アセンブル手法を開発してきた.本論文では,これらの手法に機械語命令列の類似度算出に関する提案手法を組み合わせ,マルウェア分類システムを構築した.実験では本システムを利用し,3グループのマルウェア検体を分類した.その結果,ハニーポットで収集した約3,000種類のマルウェアであっても,わずか数種類のマルウェアを解析することで,全体の75%程度のマルウェアの機能を把握できることが分かった.さらに,類似度の高いマルウェアに関しては,それらの差分を推定でき,変更箇所にのみ着目した解析が可能なことも分かった.また,本システムの分類結果とアンチウィルスソフトによる検出名の比較では,本システムが同一と判断したマルウェアに関して,アンチウィルスソフトでは異なる複数の検出名が確認される状況もあり,マルウェアに対する命名の難しさが明らかになった.
著者
石橋 由子 桝田 秀夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.976-988, 2016-03-15

電子メールはインターネット上において手軽で最も利用されているコミュニケーションツールとして我々の生活において必要不可欠なものとなっている.メールは仕事や日常生活での情報交換だけにとどまらず,緊急時の連絡手段としても利用されている.しかしひとたび大規模な災害や重度の障害が発生すると,一定時間メールの送受信ができなくなり,非常に大きな混乱を招く恐れがある.そこで自組織のメールサービスを利用できなくなった場合でも,利用者が可能な限りメールの利用が可能となるシステムを提案する.本提案システムは,通常一体化しているケースが多いメールサーバのメールを受信する部分とスプール部分を分離し,これらを物理的に離れた場所に設置する.そして,複数箇所に設置されているスプール部分の同期を行う.スプール部分の同期を行うためにネットニュースプロトコルを利用する.メールサーバが受信したメール1通を1つのネットニュースプロトコルの記事に変換して宛先メールアドレスに対応したニュースグループに投稿する.投稿された記事はネットニュースの記事として同期を行う他のサーバに配送される.利用者はアクセス可能なネットニュースサーバにアクセスしてメールを読む.これにより,メールシステム障害時でも利用者はメールを受信することが可能となる.
著者
福山 和生 谷口 義明 井口 信和
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.931-935, 2016-03-15

不正アクセスによる被害の増加,ネットワークセキュリティに関する知識,技能を持つ技術者の不足などを背景に,ネットワークセキュリティ教育の重要性および緊急性が高まっている.実践的なネットワークセキュリティ教育のためには演習が不可欠であるが,独立した演習環境を構築するための機材の準備コストなどが障壁となる.本研究では,仮想マシンを用いて1台のコンピュータ上に不正アクセス対策機器を導入した仮想ネットワークを構築することにより,安全かつ低コストにネットワークセキュリティに関する演習を実施できるシステムを実装した.評価実験の結果,本システムで実践的なネットワークセキュリティの学習環境を提供できることが分かった.
著者
宮田 章裕 塩原 寿子 藤村 考
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.1438-1452, 2011-04-15

本論文では,文章を読む方向とそれに直交する方向を考慮した2次元のブロックを索引・検索のキーとする2次元文字ブロック検索手法を提案し,書籍内の局所領域にデジタルコンテンツへのハイパーリンク設置を可能にするシステムKappanを紹介する.従来,書籍内にハイパーリンクを設置する際はマーカを用いる方法があったが,この手法はあらかじめ書籍内にマーカを記載する必要がある.一方,システム上に書籍内のテキストと位置を関連付けておけばマーカは不要である.すなわち,書籍内を撮影した画像をシステムに送信すれば,システムは画像からOCR(Optical Character Recognition)により抽出したテキストを検索語として位置を特定し,その位置に関連付けられたコンテンツを提示できる.このとき,大量の書籍の中から一意に位置を特定するためには,長く連続するテキストを検索語とする必要がある.ところが,一般ユーザが撮影した画像にはOCR誤認識が約35%発生するため,長いテキストには誤認識文字が含まれて正しく検索できないという問題があった.特に書籍内の局所領域からは抽出できる検索語数が少なく,この問題は深刻である.提案手法は少ない文字数で書籍内の各局所領域に固有なパターンを表現できるので,OCR誤認識が発生する書籍内の局所領域画像から一意に位置を特定できる.73,231文書から局所領域画像を含む文書を一意に特定する検証実験では,提案手法はノイズがない状態で99%,ノイズが33%の状態でも92%の精度を示し,比較手法を上回ることを実証した.We present a text search method which takes into account not only the reading direction but also the non-reading direction. We use this method to develop a prototype system called Kappan. It enables service providers and users to create hyperlinks in books without markers. Existing techniques generally require markers to be printed on the page if a hyperlink is to be created. We consider that utilizing the concept of the search index makes markers unnecessary, i.e., the system can detect positions using text extracted from images via OCR (Optical Character Recognition) and provide users with position associated digital contents. Traditional text indexing methods must extract long character sequences from the partial image in order to identify the area exactly given the sheer number of book pages. However, considering that the average OCR error rate is more than 35 percent if the partial image is captured by a camera-equipped cellular phone, it is highly probable that many characters would be misrecognized and area identification would thus fail. In contrast, our indexing method can extract area-specific clues using fewer characters that can identify the area exactly even when the partial image is small and the extracted text contains misrecognized characters. An experiment proves that our method can identify the exact area from 73,231 documents with the high accuracy rates of 99 percent and 92 percent for OCR error rates of 0 percent and 33 percent, respectively.
著者
渡辺 富夫 大久保 雅史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1225-1231, 1998-05-15
被引用文献数
21 26

コミュニケーションにおける引き込み現象のように関係が成立するノンバーバルなインタラクションは,異文化,異民族間のコミュニケーションにおいても通用する共通語ともいえ,人間生物学的にみて,より普遍的であり,本質的重要性を持っていると考えられる.本論文では,従来主観的行動観察による定性的研究の色彩が強いこの分野に,呼吸・心拍間隔変動を用いた生体情報計測手法を導入し,新たにコミュニケーションの定量評価手法を提案している.本手法を用いて,成人の対面・非対面コミュニケーションおよび原初的コミュニケーションとしての母子間インタラクションにおける生理的側面での引き込み現象を呼吸を中心に分析評価し,呼吸の引き込みが身体的コミュニケーション場の創出に重要な役割を果たしていることを示している.自己のリズムを変化させ,互いに引き込み化を図ることによって,関係が成立し,より深いコミュニケーションが可能になる.テレビ会議等で円滑なインタラクションを実現させるには,この呼吸の引き込み化を図ることが大切で,呼吸の引き込みの評価がシステムの設計・評価に応用できる.本研究の成果は,身体的コミュニケーションにおける引き込み原理の解明とそれに基づくヒューマンインタフェース開発の基盤になるものである.The Entrainment which forms the biological relation between talkers plays an important role in the smooth exchange of information.In this paper,the physiological entrainment of respiration between talkers is evaluated on the basis of burst-pause of speech,respiration and heart rate variability as indices from the viewpoint that the respiratory entrainment would be a physiological main factor to make communication smooth in face-to-face interaction.By using the proposed physiological measurements of communication,the experiment is performed in adult face-to-face versus non-face-to-face communication and mother-infant interaction as a primitive form of communication.The existence of respiratory entrainment in face-to-face interaction is demonstrated by the cross-correlation analysis of indices.This finding suggests the entrainment is biologically essential to human communication and it could be applied to human interface for the design and evaluation of face-to-face interaction support systems such as a teleconference system.
著者
榎原 博之 大塚 隆弘 山上悠喜
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.2049-2060, 2012-08-15

研究室内での文献管理において重要となるのは「メンバ間で文献情報の共有を行えること」そして「容易に文献を検索して,論文に引用できること」である.現在,文献管理ツールが多数開発されているが上記の条件を十分満たすものはない.そこで,本研究では研究室内での利用に特化した文献管理システム「bole」を開発する.提案システムは,研究室内で文献情報の共有を行いやすくするため,ウェブアプリケーションによる実装を行い,文献情報を登録する際,同時に文献に関する研究分野やコメント,評価などの情報を追加登録する.また,筆者らの研究室では,論文執筆の際,参考文献の記述にBibTEXを利用するので,便利にBibTEXを利用するために,文献を論文に引用するときに必要な「引用キー」を1クリックでコピーできる機能などの実装を行う.提案システムの導入により,研究室内での文献情報の共有を簡単にすることができ,さらに論文執筆の効率化を進めるという提案システムの有用性を検証する.The important things about managing literatures in laboratories are "Sharing literatures between members" and "Easy to search literatures and to cite them in papers". Currently, many literature management tools have developed, but not enough to satisfy the above conditions. In this paper, we develop the literature management system "bole" that specializes in the use of laboratories. The proposed system is developed as the web application, and when literature information is registered in the system, research area, comment, evaluation, and so on about literatures are registered as additional information in order to facilitate sharing of literature information in laboratories. BibTEX is used in our laboratory to write a paper, therefore we develop functions convenient to use BibTEX, for example citation key can be copied with one click. We show the utility of the proposed system to share literature information easily in the laboratory, and efficiently to write the papers.
著者
梶 克彦 河口 信夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.12-24, 2016-01-15

本稿では歩行センシングデータから高精度に3次元歩行軌跡を推定する手法を提案する.使用するセンサは加速度・角速度・気圧の3種類であり,詳細な建物構造情報を必要としない.装着型センサを用いた行動推定において,センサ信号の変化が少ない状態が継続している区間の検出は,センサ信号が短時間に大きく変化する区間を直接検出するよりも高い精度を期待できる.本稿ではこのような区間を安定センシング区間と定義し,そのコンセプトの適用例として,角速度センサを用いた安定歩行区間検出に基づく進行方向推定と,気圧センサを用いた安定フロア区間検出に基づくフロア間移動推定を行う.さらにそれら推定情報を統合して3次元歩行軌跡を求める.屋内歩行センシングコーパスHASC-IPSCを用いた評価実験の結果,進行方向推定,フロア間移動推定ともに,大きな変化量を直接推定する手法よりも高い精度を達成できた.最終的な3次元歩行軌跡推定の誤差蓄積速度は,10秒間の移動の間に1mの誤差が蓄積する程度であることが確認された.
著者
若宮 翔子 河合 由起子 熊本 忠彦 張 建偉 白石 優旗
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.366-378, 2016-01-15

特定の話題に対する感情は情報発信者によって異なるため,その話題の検索結果には様々な感情で書かれたWebページが混在する.また,話題に対する情報発信者の感情は1つとは限らないため,複数の感情を持って書かれたWebページが存在する.Webページに含まれている情報発信者の感情は読み手が受ける印象に影響を与えるため,特定の感情で書かれたWebページばかりが提示されると話題に対する多様な感情を把握できず,読み手はその話題について偏った印象を持ってしまう.本論文では,検索ワードに対する情報発信者の感情の多様性を考慮したWebページ検索・提示システムを提案する.本システムでは,まず,検索ワードで検索されたWebページにおける情報発信者の感情を取得するために,既存の感情辞書を用いて3軸(軸1:「楽しい ⇔ 悲しい」,軸2:「うれしい ⇔ 怒り」,軸3:「のどか ⇔ 緊迫」)に基づく感情値を算出する.次に,話題に対する情報発信者の感情を網羅するようなWebページを検索するために,特定の感情を有するWebページから抽出した補間語を用いて再検索する.最後に,検索結果として3次元の感情マップとして感情の分布を可視化する.提案手法の有用性を検証するために,既存手法と提案手法による検索結果の感情分布の相対的な広がりを比較評価する.また,抽出した検索ワードの話題性および感情値の適合性,ならびに再検索結果から取捨選択し統合した検索結果の適合性を評価する.
著者
渡辺 裕明 金田 康正
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.2843-2850, 1999-07-15

カオスを持つ数列から良い乱数性を持ち周期の長い数列を生成するための手法として テント写像に基づく擬似一様乱数生成法を提案する.テント写像は カオスを持つ系列を生成するロジスティック写像と同様のでたらめさを持つ数列を生成することが可能であり かつ写像の多重度を大きくすることで近隣の数列同士の相関を少なくすることができる.さらにテント写像はロジスティック写像よりも長周期の数列を生成することが可能であり ロジスティック写像で必須であった一様分布列への変換が不要になる利点がある.この生成法と既存の各種擬似乱数生成法について統計的検定を実施し 検定結果を比較することで 生成された擬似乱数列の乱数性を評価した.その結果 写像の多重度が13以上の場合は 既存の生成法と比較しても遜色のない乱数列を生成できることが分った.
著者
木村 有祐 乃村 能成
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.670-680, 2014-02-15

日々の仕事や生活の中で発生しているイベントは,本人が意識している以上に周期性が高い.オフィスにおける作業も発生の規則性を持っており,それに際して同様な内容のメールが周期的にやりとりされ,過去のメールは頻繁に再利用される.また,過去の仕事の想起や仕事の引継ぎの際にも,過去の仕事の情報を含んだメールを利用することがある.しかし,これらの作業では,利用するメールを探す手間がかかる.この手間は,過去のメールを再利用したという情報が送信者の記憶以外に存在しないために発生する.そこで,過去のメール利用の情報を再利用情報として保持し,先に示した手間を軽減するシステムを提案する.本稿では,メールの再利用における問題とその対処について述べる.次に,システムの設計について述べ,評価結果を報告する.
著者
千田 浩司 五十嵐 大 高橋 克巳
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.2137-2145, 2013-09-15

セキュアマルチパーティ計算(MPC: Secure Multi-Party Computation)はPrivacy Preserving Data Mining(PPDM)の主要技術の1つとして近年注目されているが,通常の計算と比べ膨大な処理をともなうことが実用の障壁となっている.MPCの処理を軽減させる手法の1つに,数値からビット列への変換を暗号化したまま行う「ビット分解プロトコル」がある.SchoenmakersとTuylsはEurocrypt 2006でPaillier暗号を用いたビット分解プロトコルを提案しているが,MPCの高速処理に適した暗号として期待される加法準同型ElGamal暗号を用いた方式は我々が知る限り実現できていない.本論文では,従来のビット分解プロトコルでは加法準同型ElGamal暗号への適用が困難であることを述べ,従来とはまったく異なるアプローチにより,semi-honestモデルにおける,加法準同型ElGamal暗号を用いたビット分解プロトコルをいくつか構成する.特に事前処理を許す2パーティ限定の提案方式は,従来と比べ大きく処理削減できることを示す.またビット分解プロトコルが特に有効となるいくつかの具体的なMPCの応用方式を提案する.
著者
梅田 三千雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.796-804, 1999-03-15

日本の苗字が備えている種々の性質を明らかにすることを目的として 苗字データベースを作成し その計量的分析を行った. ここでは より普遍的なデータの収集をねらいとして 約7.1万個から成る日本の苗字データベースを作成した. このデータベースをもとに 苗字に出現する文字の種類や頻度 文字位置とそこに出現する文字の種類など 文字と文字連接に関する統計データを求めた. これより 日本の苗字には文字位置によって 出現する文字の種類とその頻度に大きな偏りのあることが明らかになった. さらに 実際の使用頻度を考慮した分析として 市販の電話帳データベースを利用した検索により 苗字の使用頻度 苗字ならびに文字と文字連接のエントロピーなどを測定した. これより 苗字のエントロピーは英単語のそれにほぼ等しいことが明らかになった. また ここで得られた苗字の諸性質は 宛名や個人情報の文字認識において 苗字部分の文字切り出しでの知識として利用したり 認識対象文字の種類を決定 限定したりするのに利用することが可能であり 認識精度の向上につながることが期待される.
著者
植村 喜弘 梶原 祐輔 島川 博光
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.2358-2369, 2015-12-15

近年,おもてなしの提供が求められている.おもてなしの提供には,ユーザの状態やパーソナリティを把握する必要がある.本論文では,おもてなしの提供のために,Radio Frequency Identifier(RFID)技術で取得される足取りの特徴から,ユーザの状態やパーソナリティを推定する手法を提案する.15名の被験者における6種のユーザ状態での歩行データを取得した実験で,パーソナリティごとの足取りの特性を本手法で識別できることが分かった.パーソナリティが現れたクラスタごとに機械学習することで,クラスタリングしない場合と比較し,ユーザ状態を把握する精度が4.3%向上した.本論文では,識別結果および足取りの解析から,パーソナリティを考慮することによる精度向上に影響を与える成分について議論する.
著者
佐々木 崇裕 原田 要之助
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.2337-2345, 2015-12-15

近年,情報システムは組織にとって欠かせないものとなり,それへの依存も高まっている.その結果,情報システムの事故や情報漏えいが社会に大きな影響を与えるようになった.これらの事故・トラブルの中には,ヒューマンエラーや規則違反といった人の行動に起因しているものがある.人の行動に起因する事故を減らすために航空や医療の分野では,事故という結果に至らなかったヒヤリ・ハット情報を収集・分析・公表する取り組みが行われており,安全に貢献している.本研究では,そのような取り組みが情報セキュリティ分野に導入できないか,取り組みの必要性,事例収集の形態について考察を行った.また,アンケート調査を通じて,その取り組みの導入を実現する可能性があること,情報を収集する際は収集目的を明確に示すことが重要であることが分かった.最後に,情報セキュリティ分野におけるヒヤリ・ハット情報収集の具体的な方法を提案する.