著者
丸山 典彦 伊藤 宏 内山 秀和 戸根 慶子 角野 猛 松井 清治
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.656-661, 1983-08-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
18

風疹抗体陰性の大学生50名を対象にワクチンを接種した後, 経時的に採血して抗体価ならびに免疫グロブリンの測定と同時に副反応についても検討し, 次の成績を得た.1. 大学生168名中, 風疹HI抗体の陽性率は女子で59.0%, 男子で76.3%, 全体では64.3%であった.2. ワクチン接種後, 3週から抗体産生が認められ, 5週において全例 (100%) の陽転が認められた.3. 5週における平均抗体価はHI価で68.6倍, NT価で42.4倍であり, 両抗体価の間には高い相関 (r=0.95) が認められた.4. 遠心分画法による2・ME感受性試験で接種後3週から6週目の血清の一部にIgMが検出された.5. 接種後, 副反応を呈したものは50名中6名 (12%) に認められ, そのうちわけは関節痛が2名, 発疹が1名, 発熱が1名であった.
著者
坂下 聖加子 岩沢 篤郎 中村 良子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.373-377, 2002-05-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
7
被引用文献数
5 5

集中治療センターにおいて, 日常的手洗い法 (石鹸流水法), 衛生学的手洗い法 (擦式アルコール製剤を用いたラビング法) と強酸性電解水 (流水下15秒) を日常業務中に常用使用し, 着菌数は, 強酸性電解水, ラビング法, 石鹸流水法でそれぞれ54±63, 89±190, 128±194CFU/agar plate (n=81) であり, 強酸性電解水が最も低値を示した. また, ラビング法においてBacillus属の検出される割合が他法と比べ有為 (P<0.05) に高かった.全身清拭, の手洗いで, 手洗い前の菌数が100CFU以下の場合石鹸流水法の除菌率が悪かった.以上の結果より, 奨励される方法は,(1) 手が明らかに汚れている場合は, 石鹸や消毒薬を使用したスクラブ法で手付着菌数を確実に少なくする.(2) 菌数を減少させた後は, 強酸性電解水の常用(3) 高度の清浄度を必要とするケア前および手洗い設備のない場所ではラビング法を使用する.強酸性電解水を常用し, 場合によりラビング法, 石鹸流水法を使い分けることにより, 手荒れ等の障害の少ない手付着菌数の少ない状態を維持できると考えられた.
著者
中津川 修二
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.306-313, 1975-07-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
20

The present study was undertaken to investigate the growth behavior of C. perfringens (spore) in chicken soup and in boiled fish paste (kamaboko), using six heat-resistant strains isolated from patients or foods with food poisoning. The chicken soup used in this experimentation was composed of 10% minced fowl meat, cooked in water containing 3% sugar and 2% salt, and the boiled fish paste made up of 100 gm of minced fish meat with 6 gm of starch, 4 gm of salt, 3 gm of sugar and 2.4 ml of “mirin”(sweet flavoring sake) added to it. The results of these experiments are summarized as follows:1. The spore of C. perfringens was capable of growing in chicken soup at temperature range 25°C-45°C. Within the range 30°C-45°C the growth of the organism was fairly more rapid than 25°C At 45°C, fastest growth was obtaind, an inoculum of 102 spores per ml in soup reached a level as high as 105 viable cell per ml in about 7 hours. No growth occurred at 20°Cor 50°C2. Sugar contained in the chicken soup was noted to promote the growth of C. perfringens. After reaching the peak of growth, however, the organisms died out rapidly and formed no spores. With the growth of the organism, the soup rapidily became acidified (at pH 4.4 approx.). The higher the temperature of incubation, the faster did the organism die out and the soup show acidification.3. The growth of C. perfringens was obtained in chicken soup containing 0-5%(w/v) of NaCl within 24 hours at 30°C. The growth was not inhibited by NaCl concentrations of 2-3%, but inhibited by 5%. In a soup containing 6% of NaC1 no growth occurred within 96 hours at 30°C. The organism was able to grow in soup at pH 5.0 or at pH 9.0, but failed to grow at pH 4.5.4. The spore of C. perfringens was able to grow in boiled fish paste maintained at 30°C, and showing increased viable cell count of 23 from 2.8×107 per gram. In contrast, neither outgrowth nor death of C. perfringens spores occurred in boiled fish paste containing 2.5μEg of synthetic preservative “furylfuramide” per gram
著者
里見 信子 原中 勝征 国井 乙彦 真下 啓明
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.350-358, 1979

In OEP (common protective antigen of <I>Pseudomonas aeruginosa</I>) immunized mice, OEP-HA (hemagglutination) titer was decreased by intraperitoneal inoculation of <I>P. aeruginosa</I>, especially Fisher's serotype 2 and NC 5 strain. All of OEP immunized mice survived from the challenges by Fisher's seven serotypes strains. Otherwise all of non-immunized mice died within 48 hours by seven serotypes challenges.<BR><I>In vitro</I> system, the enhancing effects of the phagocytosis of mice spleen macrophages by anti-OEP-antibody were common to all of Fisher's seven serotype, and the decreasing tendancy of OEP-HA titer in these supernatants was observed.<BR>The OEP-HA titer and Formalized bacterial agglutination titer were measured in various &gamma;-globulin products before and after the absorption by OEP antigen. Only in Fisher's serotype 2 and NC 5 strains their titer was decreased.<BR>By injection of &gamma;-globulin products to mice, serum &gamma;-globulin concentration and OEP-HA titer were increased a little, but their therapeutic effectiveness to <I>P. aeruginosa</I> infection was reavealed in our previous reports.<BR>When &gamma;-globulin products were absorbed with OEP antigen, their therapeutic effects were depressed.<BR>In conclution, anti-OEP-antibody has therapeutic effect to the all of Fisher's serotypes of <I>P. aeruginosa</I> infection and the hig h level of antibody in bloo d is not always needed fo r the immunotherapy.
著者
Shiba Kumar RAI 久保 隆 中西 守 住 勝実 柴田 宏 松岡 瑛 Hari Govinda SHRESTHA
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.625-630, 1994-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
18
被引用文献数
4 5

ネパールにおいて土壌媒介性蠕虫の感染状況を8年間 (1985~1992) にわたり経年的に調査した. 調査はネパールトリブウァン教育病院の病理学教室寄生虫検査室により行われ, 毎年平均6,573件の糞便検体からの種々の腸内寄生虫を検出した. その結果, 土壌媒介性蠕虫全体の検出率は一様でなく, 18.0~36.6%の範囲で経年的に減少した. この傾向は性別に関係なく, 成人・小児両方に見られた. 検出された蠕虫の中では回虫 (roundworm) の検出率が最も高く, 続いて鉤虫, その他の順であった. 本調査期間を通じて回虫の検出率が一定であったのに対し, 他の寄生虫では検出率が低下するという注目すべき事実が認められた.
著者
遠藤 勝久 清田 浩 小野寺 昭一
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.522-528, 1992-04-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
16

本研究は尿を培地とした場合の抗菌剤の抗菌力測定が, 日本化学療法学会の定めたMueller-Hinton brothを用いた標準法とどのように異なるかを比較し, 標準法における問題点を検討したものである.さらに尿培地の物理化学的条件として, pH, マグネシウム濃度およびカルシウム濃度が尿中抗菌力測定に及ぼす影響についても検討した.尿培地は腎機能正常な健康成人男子より採取した尿を使用し, chelatingresinにより2価陽イオンを除去した.この尿をもとに, 尿のpH, マグネシウム濃度およびカルシウム濃度を変化させ抗菌力の変化を観察した.被験菌株は大腸菌を使用し, 抗菌剤はニューキノロン剤を採用した.試験管内抗菌力は日本化学療法学会の定めた標準法を用いさらに尿中での抗菌力測定も行った.その結果, Mueller-Hintonbrothを用いた試験管内抗菌力と異なる成績が得られ, 尿培地がアルカリ性に傾く程, また尿中マグネシウム濃度が低い程, 抗菌力は優れていた.尿培地中カルシウム濃度は影響を示さなかった.以上より, 尿路感染症における菌の感受性試験において, 尿中での抗菌力を正当に評価するためにはMueller-Hintonbrothでの抗菌力測定の代わりに, 尿または尿類似の培地で測定し抗菌化学療法を進めることが理想的であり, 培地のpHおよびマグネシウム濃度の影響を考慮し培地の一定化を図ることが重要であると考えられた.
著者
菅原 民枝 大日 康史 川野原 弘和 谷口 清州 岡部 信彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.8-15, 2011-01-20 (Released:2015-04-06)
参考文献数
14
被引用文献数
4 5

【目的】新型インフルエンザ(2009 インフルエンザA(H1N1))対策では,発生時の早期探知,日ごとの流行状況をモニターするリアルタイムサーベイランスが必要である.そこで本研究は調剤薬局の院外処方せんによる薬局サーベイランスを運用し評価する.抗インフルエンザウイルス剤を処方された人数より,対策に必要な推定患者数を算出しその有用性も検討する. 【方法】全国3,959 薬局から自動的に抗インフルエンザウイルス剤データを収集し,インフルエンザ推定患者数を算出した.サーベイランスの評価は,感染症発生動向調査及び感染症法上届出の新型インフルエンザの全数報告との比較とした.推定患者数の比較は,感染症発生動向調査と岐阜県の全数調査に基づいた推定患者数で行う. 【結果】2009 年4 月20 日から新型インフルエンザ対策として薬局サーベイランスを強化し,翌日7 時には協力薬局および自治体対策関係者に情報提供した.2009 年第28 週から2010 年第12 週までの推定患者数は,9,234,289 人であった.発生動向調査との相関係数は0.992 であった.薬局サーベイランスのインフルエンザ推定患者数,感染症発生動向調査と2 倍強の違いがみられ,岐阜県全数調査で調整した発生動向調査の推定患者数は近似していた. 【考察】薬局サーベイランスは,流行の立ち上がり,ピークの見極め,再度の流行への警戒と長期間にわたってのリアルタイムサーベイランスとして実用的であった.発生動向調査と高い相関関係を示しており,先行指標となった.日ごとのデータによる早期探知,報告基準をかえずに自動的にモニタリングすること,常時運用という態勢は有用であると示唆された.インフルエンザ推定患者数は,発生動向調査の推定患者数の過大推計が示唆され,今後の課題点と考えられた.次のパンデミックを含むインフルエンザ対策として利用可能な手段であり,またインフルエンザに限定せず,アシクロビル製剤による水痘や抗生剤の使用状況のモニタリングといった広い応用が期待される.
著者
奥田 敬一 柏木 征三郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.696-700, 1995

院内感染防止対策の一つとして, 現在市販されている抗菌繊維と抗菌壁剤のMethicillin resistant <I>Staphylococcus aureus</I>および緑膿菌に対する抗菌活性を調査した.<BR>抗菌活性は, 各試料上に35.0℃, 18時間培養後の菌の減少率で判定した.<BR>供試した緑膿菌50株の血清群はE群, G群, B群, I群, A群, MRSA50株のコアグラーゼ壁はVII型, II型, III型, IV型の順で, 全国の病院で多く検出された血清群, コアグラービ型に一致していた.<BR>4種の抗菌繊維のうち2種はMRSAに99%以上の減少率を示したが, 他の2種は少しも減少しなかった.また, 3種は緑膿菌を減少しなかったが, 1種のみ軽度の減少を示した.抗菌壁剤は両菌種に対して良好な減少率を示した.<BR>これらの結果から, 抗菌繊維を白衣, 手術着に用い, また, 抗菌壁剤の使用は病院環境の浄化に関与することが示唆された
著者
木村 昭夫 五十嵐 英夫 潮田 弘 奥住 捷子 小林 寛伊 大塚 敏文
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.223-230, 1993
被引用文献数
7 3

全国国立大学付属病院より分離収集された黄色ブドウ球菌430株を, コアグラーゼ型別に加えてエンテロトキシン (SE) 並びにToxic Shock Syndrome Toxin-1 (TSST-1) 産生性をマーカーとして疫学的に細分し, これらの疫学マーカーと10種抗菌剤に対する感受性の関連性について調査した. 全黄色ブドウ球菌はVCMに感受性であった。OFLXには, コァグラーゼII型-SEA+SEC+TSST-1産生株は高度耐性傾向を示したが, 他の株では約半数が感受性であった. FMOXに対して, コアグラーゼIV型-SEA産生株では感受性菌が78%に認められた。しかし, コアグラーゼII型-SEA+SEC+TSST-1産生株には, 感受性菌は存在しなかった. IPMに対して, コアグラーゼIV型-SEA産生株, コアグラービIII型-毒素非産生株およびコアグラーゼII型-毒素非産生株においては, 50%以上の感受性菌が認められた。しかし, コアグラービII型-SEC+TSST-1産生株およびコアグラーゼII型-SEA+SEC+TSST-1産生株では耐性化が進んでいた。MINOに対して, コアグラーゼIII型-毒素非産生株およびコアグラーゼII型-毒素非産生株は良好な感受性を示した。しかし, コアグラービII型-SEC+TSST-1産生株およびコアグラーゼIV型-SEA産生株では中間的な感受性を示し, コアグラーゼII型-SEA+SEC+TSST-1産生株では感受性が著しく低かった。STに対して, コアグラーゼIV型-SEA産生株は耐性化が進行していたが, 他の株は良好な感受性を示した。
著者
池松 秀之 鍋島 篤子 山路 浩三郎 角田 恭治 李 文 林 純 後藤 修郎 岡 徹也 白井 洸 山家 滋 柏木 征三郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.905-911, 1998-09-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

高齢者における不活化インフルエンザワクチンの連続接種の際の, ワクチン接種回数とワクチン効果との関連について, 血清HI抗体価より検討した.60歳以上の長期入院患者146名 (男性28名, 女性118名, 平均年齢82.4歳) に不活化インフルエンザワクチンを接種した.69名は前年度インフルエンザワクチンの接種を受けており, 77名は前年度未接種者であった.2年連続ワクチン接種者中, 35名が今回1回のみ, 34名が今回2回, ワクチン接種を受けた.接種前, 1回接種後, 2回接種後, 流行後のInfluenza A/H1N1, A/H3N2, 及びBに対する血清HI抗体価を測定した.各インフルエンザウイルスに対するワクチン接種前のHI抗体価は, 2年連続接種者が前年度未接種者より有意に高かった.ワクチン接種後のHI抗体価は, 2年連続接種者で今回2回接種を受けた群が最も高かったが, 3群間に統計学的な有意差は検出されなかった.ワクチン接種後に, HI抗体価の4倍以上の上昇が見られる率は, 2年連続接種者で低かったが, これはワクチン接種前のHI抗体価が高いためと考えられた.ワクチン接種後のHI抗体価128倍以上の割合は, 2年連続接種者で今回2回接種を受けた群が他の群より高かったが, 3群間に統計学的な有意差は認められなかった.2年連続接種者では, 2回目接種により, HI抗体価が128倍未満から128倍以上に上昇した者は認められなかった.以上の成績より, 高齢者では, 不活化インフルエンザワクチンに対する抗体反応は, 前年度接種の有無に係らず良好で, 連続接種の際には, 接種回数1回でも2回接種と同等の予防効果が期待できると考えられた.
著者
石原 尚志 柳瀬 義男 五十嵐 英夫
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.619-623, 1987
被引用文献数
1

生理中にタンポンを使用していた16歳女性が, 高熱, 咽頭痛を訴え, さらに典型的なToxic shocksyndromeの症状を呈した. 迅速な治療により患者は徐々に改善し, 第12病日までには急性期の症状は消失した. 体幹の枇糖様落屑と四肢末端部の膜様落屑が回復期に認められた.使用したタンポンと膣分泌物より黄色ブドウ球菌が分離された. この分離株はtoxic shock syndrome toxin-one産生性で, コアグラーゼVII型であった. 本症例は生理中のタンポンと膣分泌物から毒素産生性黄色ブドウ球菌が証明された本邦第1例と思われた.
著者
小川 基彦 萩原 敏且 岸本 寿男 志賀 定祠 吉田 芳哉 古屋 由美子 海保 郁夫 伊藤 忠彦 根本 治育 山本 徳栄 益川 邦彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.359-364, 2001-05-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
16
被引用文献数
5 6

1998年にツツガムシ病と診断された患者416人の臨床所見について解析を行った. 主要3徴候である刺し口, 発熱, 発疹は, それぞれ86.5%, 97.7%, 92.3%の患者に, またCRP, GOT, GPT, LDH上昇が, それぞれ957%, 84.8%, 777%, 90.7%に認められた. これらの所見はほとんどの患者に認められ, 診断に有用であることが示された. また汎血管内凝固症候群が21人に認められ, 命を脅かす疾病であることがうかがわれた. リンパ節腫脹は49.7%の患者に認められ, そのうち74.6%は局所にのみ腫脹が認められた.さらに, 腫脹した部位が刺し口の近傍に認められる傾向があった. また, 大部分の刺し口は痂皮状で, 腹部や下半身 (特に下肢) などに認められた. 一方, 刺し口, 発疹が, それぞれ13.5%, 77%の患者には認められず, 風邪などと誤診されやすいことも示唆された. また, 血清診断で陰性であった患者においては, 主要3徴候は約半数に, 刺し口は約70%の患者に認められた.したがって, 現在の血清診断法では診断できないツツガムシ病が存在する可能性が推察された.今回の解析によって全国レベルでの臨床医学的側面があきらかとなり, 今後の診断および治療に役立つものと考えられる. 一方で, 臨床所見だけからは診断が難しいケースが明らかとなり, 血清診断法の改良の必要性も示唆された.
著者
畦地 拓哉 平井 由児 上原 由紀 笹野 央 吉澤 寿宏 松本 博志 青嶋 瑞樹 内藤 俊夫
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.649-654, 2019-09-20 (Released:2020-04-03)
参考文献数
19

自然弁の感染性心内膜炎(IE)のempiric therapy としてEuropean Society of Cardiology(ESC)ガイドライン2015 ではampicillin(ABPC),cloxacillin(MCIPC),gentamicin(GM)の3 剤併用が推奨されている.本邦では黄色ブドウ球菌用ペニシリン製剤はABPC/MCIPC 合剤(ABPC/MCIPC)のみであり,これまでにIE のempiric therapy を目的としたABPC/MCIPC 投与例は報告されていない.本研究では, 2015 年1 月から2017 年8 月までに,当院でABPC/MCIPC が投与された症例のうち,改訂Duke 診断基準に基づき,自然弁によるIE と確定診断された症例を対象に,ABPC/MCIPC の感受性・安全性・アウトカムについて検討した.なお,18 歳未満の症例及びABPC/MCIPC 投与量が24g/日未満の症例は除外した.対象は8 名(男性5 名,女性3 名),年齢は34~76 歳(中央値68.5 歳),基礎疾患は自己弁弁膜症6 名,糖尿病3 名であった.対象患者の血液培養からmethicillin-susceptible Staphylococcus aureus(MSSA)2 例,viridans group streptococci(VGS)属3 例,その他3 例を検出し,8 例中7 例ではABPC 又はMCIPC に感性を示した.Definitive therapy に変更するまでの投与期間は2~6 日(中央値3.5 日)であり,この期間において有害事象による中断はなかった.MSSA 2 例は中枢神経病変を合併し,definitive therapy 目的にABPC/MCIPC が継続された.うち1 例は投与開始12 日目に先行する皮疹と急性腎不全が出現しvancomycin+ceftriaxone に変更となった.IE 患者のempiric therapy として数日間のABPC/MCIPC 24g/日投与は血液培養から検出された病原体全てに感受性を示し,有害事象は認められなかった.またMSSA はIE の代表的起因菌であり,本邦でも中枢移行性が良好な黄色ブドウ球菌用ペニシリン製剤の必要性が再認識されるべきであると考えられた.
著者
池松 秀之 鍋島 篤子 角田 恭治 山路 浩三郎 林 純 後藤 修郎 岡 徹也 白井 洸 山家 滋 柏木 征三郎
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.60-66, 1998-01-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
12
被引用文献数
4 4

高齢入院患者におけるインフルエンザ流行の影響とインフルエンザワクチンの予防効果について, 1995年インフルエンザ流行時について検討した.院内感染対策の一環として発熱患者の発生について継続調査を行っている対象病院において, 1994年と1995年の週間発熱患者発生数で, 1995年第3週と第8週の発熱件数が, 他の週に比し著しく上昇しており, インフルエンザ流行は発熱の原因として大きな因子であると考えられた.Aホンコン型, Aソ連型, B型のいずれか一つにでも罹患した患者は, 60歳以上のインフルエンザワクチン非接種者において, 48.7%と高率であった.インフルエンザウイルスに対する流行前のHI抗体価が, 32倍以下の入院患者には多数の罹患者が見られたが, 128倍以上の患者には, いずれの型のインフルエンザに関しても罹患者が見られなかった.発熱患者の発生頻度は, インフルエンザワクチン接種者86人では32.6%で, 非接種者123人における49.6%に比し表有意に低かった (p<0.05).9カ月間の調査で, インフルエンザワクチン接種者における死亡者は4例 (4.9%) で, 非接種者では12例 (9.8%) であった.以上の成績より, インフルエンザ流行は, 高齢者において重要な問題であり, インフルエンザワクチン接種は罹患予防に有効であると考えられた.インフルエンザワクチンには, 罹患予防効果と共に, 死亡予防効果も期待され, 高齢者には積極的に接種を行うべきであると思われた.
著者
木村 翔 米田 千裕 橋本 尚武 浜田 洋通 寺井 勝
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.272-274, 2011-05-20 (Released:2015-04-10)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

Encephalopathy with reversible lesion of the corpus callosum splenium has a favorable prognosis, but that in 2009 influenza A/H1N1 is unknown. We report a case of clinically mild encephalopathy with a reversible lesion of the corpus callosum splenium in which 2009 influenza A/H1N1 virus was confirmed by laboratory tests. A 15-year-old Japanese girl seen at the emergency unit for loss of consciousness 18 hours after fever onset had been diagnosed with influenza A, and administered zanamivir. Diffusion-weighted magnetic resonance imaging (MRI) indicated lesions of the corpus callosum splenium, and electroencephalography showed slow basic activity, suggesting influenza A related to encephalopathy. She required intensive care with ventilation for two days. Her consciousness had become normal by day 6 after onset, and MRI findings improved on day 7. She recovered without adverse sequelae.
著者
村井 貞子 稲積 温子 金子 義徳 奥田 六郎 田中 陸男 川崎 富作
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.227-239, 1982

溶連菌保菌者と臨床的あるいは細菌学的に溶連菌感染症と確認された症例について, Bactericidal testによるM抗体と凝集反応によるT抗体とを比較した.結果は以下のとおりであった.<BR>1) 1, 4, 6型について観察された範囲では保菌菌型とT抗体には強い関連性が見られた.<BR>2) 急性糸球体腎炎患者54例について観察されたT抗体とM抗体については, T12抗体陽性7例中6例がM12抗体強陽性であり, T12抗体陽性がM抗体の存在を示す良い指標となりうることを示してい九一方, T抗体陰性は必ずしもM抗体陰性を意味するものではなかった.<BR>3) 感染菌型に相当するT抗体は, 猩紅熱, 咽頭炎の溶連菌一次症では発病後3週頃より検出し得た.<BR>4) リウマチ熱や急性糸球体腎炎の溶連菌二次症の場合にはT抗体の陽性率は, 猩紅熱あるいは咽頭炎のような急性感染に比較して高く, 多様なT抗体パターンを示す症例の多いことが認められた.<BR>5) インドネシア・東ジャ鳴の住民のT抗体パターンは日本のパターンと著しく異なり, 日本と眼なる菌型のA群溶連菌の浸淫を示唆していた.
著者
西村 直行 高岡 直子 馬場 洋一 林田 瑞穗 伊藤 武
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.741-748, 2012-11-20 (Released:2014-10-06)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

混合糞便検体からの直接PCR で食中毒3 菌種(ベロ毒素産生菌,サルモネラ属菌,赤痢菌)の同時検出を試みた.蒸留水で約2.5%の濃度に調製した検便懸濁液を95℃5 分間熱処理した後の遠心上清5μLを45μL のPCR master mixture に添加してPCR を実施し,MCA(Melting Curve Analysis)で検出した.その結果,50 混合糞便検体に混入させた1 つの食中毒菌陽性糞便を個別培養法と同等の検出感度で検出することができた.本方法は大量の糞便検体から迅速,確実,さらに感度良く腸管系病原菌検出が行える方法であるので,食品取り扱い従事者からの検便検査など一度に大量の検体を処理しなければならない検査においては極めて有用な方法と考えられた.
著者
野田 伸司 渡辺 実 山田 不二造 藤本 進
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.355-366, 1981
被引用文献数
3 4

親水性ウイルス (エンテロウイルス) および親油脂性ウイルス (アデノおよび被エンベロープウイルス) の合計11種類のウイルスに対する, メタノール, エタノール, イソプロパノールおよびN-プロパノールの不活化作用を検討した.<BR>エンテロウイルスはメタノールによつて最も強い不活化作用を受け, 次いでエタノールであつた. イソプロパノールによつては, AHCウイルスが長時間の感作でわずかに不活化されるのを除き, 他のウイルスは全く不活化を受けなかつた.<BR>親油脂性ウイルスの中, 被エンベロープウイルスはN・プロパノールによつて最も強い不活化を受け, 次いでイソプロパノール, エタノール, メタノールの順であつた. これに対し, アデノウイルスはエンベロープゥイルスと同様にN-プロパノールによつて最も強い不活化を受けるが, その他のアルコール類に対する感受性は大きく異なり, 以下メタノール, エタノール, イソプロパノールの順に不活化効果が示された. アデノウィルスにおいては, 特にエタノールに対する抵抗性の強さおよび20℃ においてはイソプロパノールによりほとんど不活化を受けないことが注目された.<BR>エンテロウイルス中のAHCウイルスおよび親油脂性ウィルス中のアデノウイルスを除外すると, 全体的な傾向として, エンテロウイルスは炭素数の少いアルコール類, 親油脂性ウイルスはこれと反対に炭素数の大きいアルコール類により, 不活化を受け易い傾向が認められた.