著者
清道 亜都子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.361-371, 2010-09-30
被引用文献数
4

本研究の目的は,高校生に対する意見文作成指導において,意見文の「型」(文章の構成及び要素)を提示することの効果を検討することである。高校2年生59名(実験群29名,対照群30名)が,教科書教材を読んで意見文を書く際,実験群には,意見文の「型」や例文を示して,書く練習をさせた。その結果,事後テストでは,実験群は対照群より文字数が多く,意見文の要素を満たした文章を書き,内容の評価も高まった。さらに,介入1ヶ月後においても効果が確認できた。また,対照群にも時期をずらして同一の介入指導を行ったところ,同様の効果が現れた。これらの結果から,意見文作成指導の際,意見文の「型」を提示することにより,高校生の書く文章は量的及び質的に充実したものになることが示された。
著者
大浦 容子 後藤 克彦
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-10, 1994-03-30
被引用文献数
1

In order to investigate how cognitive skills develop in the course of expertise in Japanese fencing, regular (expert) and substitute (junior expert) players of a men's university varsity team were compared on performances on (I) a paper-pencil test of rules and concepts (Test a), (II) convergent problem solving tasks such as to predict a scorer's winning trick from a video just before it occurs (Test c-2), and (III) divergent problem solving tasks such as to judge players' skill from their postures (Test b-1), and to detect defects in them (Test b-2). Unexperienced college students also participated in the experiment in part. Both the experts and junior experts knew the rules and concepts of Japanese fencing well, and their performances were much better than the estimated baseline. Their performances in convergent problem solving were also equally well. In divergent problem solving, however, the experts were better than either the junior experts or the unexperienced. These results suggest that divergent problem solving skills need a longer time to develop.
著者
森 二三男
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.18-24, 1960-12-30
被引用文献数
1

この研究は,G.S.R.による情緒測定の応用的方法として,テレビドラマを心理的刺激条件と一したとき,被験者を集団的に測定して,その結果を考察したものであって,G.S.R.のgroup measurementのひとつの試みとして妥当な資料がえられるかどうかを検討したのである。みいだされた結果を要約すると次のようにたる。1テレビドラマ視聴時における個人被験著のG.S.Rを測定し,その記録を反応値によって整理した結果,このドラマ内容の刺激因子に対応する反応として,被験者の情緒表出をG.S.R.によってとらえることがでぎた。2個々の被験者の皮膚電気抵抗値を,直流電気抵抗とみて,これを並列に接続した回路構成によって,合成抵抗値を1人の被験者のそれと等しくし,集団的にG.S.R.を測定した場合, R値を指標として記録を分析するならば,妥当な資料として集団測定の記録を分析することができた。3テレビドラマを刺激因子として,上述の集団測定方式によって集団G.S.R.を測定し,その記録をR値によって集計整理した結果,刺激因子ヒ対応する被験グループの, 集団的情緒表出をとらえることができた。被験者個々の反応彼自体のパターン旦発現時点,反応時,潜時等にはそれぞれ個人差がおるが、R値による集計の結果,この指標が妥当かどうかを,実験後に,同時記録したテープを再生聴取させて再検討した結果ヨドラマの刺激因子と集団G.S.R.値には対応があると判断された。4Lたがって,テレビ,映画等の視聴時における感動を集団的に分析したり,宣伝、広告等の効果を集団的に判定する場合,集団G.S.R.測定の記録をRによって整理して,心理的な刺激因子を明らかにしようとする試みは,妥当な方法であると判断Lてよい。最後に,この実験研究に当たって,奥田教授,狩野教官の御指導御助言に導かれたことを感謝していると同時に, 教室の諸学兄の御協力を謝したいと考えます。
著者
遠藤 愛
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.224-235, 2010-06-30

本研究では,境界領域の知能と年齢に不相応な学力を有する中学生を対象に,算数文章題の課題解決を目指す学習支援方略を検討した。アセスメントの手続きとして,(a)WISC-IIIによる認知特性と,(b)つまずいている解決過程の分析を実施し,それらを踏まえ案出した2つの学習支援方略(具体物操作条件とキーワード提示条件)を適用した。その結果,対象生徒の課題への動機づけが具体物操作条件にて向上し,立式過程におけるつまずきがキーワード提示条件にて解消し,効果的に課題解決がなされた。しかし,計算過程でのケアレスミスが残る形となり,プロンプト提示を工夫する必要性が示唆された。以上から,算数文章題解決のための学習支援方略を組む上で踏まえるべきポイントとして,生徒が示す中核的なつまずきを解消する方略を選択すること,学習支援方略を適用したときのエラー内容をさらに分析して別の過程における課題解決状況を確認することの2点が示された。
著者
松田 文子 永瀬 美帆 小嶋 佳子 三宅 幹子 谷村 亮 森田 愛子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.109-119, 2000-06-30

本研究の主な目的は, 数と長さの関係概念としての「混みぐあい」概念の発達を調べることであった。実験には3種の混みぐあいの異なるチューリップの花壇, 3種の長さの異なるプランター, 3種の数の異なるチューリップの花束の絵が用いられた。参加者は5歳から10歳の子ども136名であった。主な結果は次のようであった。(a)5, 6歳児では, 混んでいる・すいているという意味の理解が, かなり難しかった。(b)数と長さの間の比例的関係は, 5歳児でも相当によく把握していた。しかし, この関係への固執が, 混みぐあい=数/長さという1つの3者関係の形成を, かえって妨げているのではないか, と思われた。(c)長さと混みぐあいの反比例的関係の把握が最も難しかったが, 8歳児は, 2つの比例的関係と1つの反比例的関係のすべてを, かなりよく把握しているようであった。(d)これら3つの2者関係を1つの3者関係に統合することは大変難しかった。8歳から10歳にかけて大きく進歩したが, 10歳でも約25%の子どもしか統合を完了していないようであった。このような結果は, 小学校5年算数「単位量あたり」が子どもにとって難しい理由を示唆した。
著者
石黒 二
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.98-106, 1971-06-30

この研究は中学生のOA.A,UAが,課題定位と自我定位の2種の動機づけ教示のもとで,言語材料の記憶にどのような差異をもたらすかを確かめるためになされたものである。なおこの場合実験者が被験者と知りあい関係にある教師であるか否かによって起こると考えられる動機づけ教示の効果の違いとも関連させて検討がなされた。はじめに立てた作業仮説は一部を除き,次のようにほぼ立証された。(1)動機づけの強さに関する被験者の自己評定および復習の有無に関する自己報告の結果を総合すると,教師の実験者による自我定位的動機づけ教示のもとで,自我包含的構えをとる被験者がもっとも多くなる。教師でない実験者による自我定位,教師の実験者による課題定位の順でこれに続き,教師でない実験者による課題定位のときにもっとも低い動機づけとなる。またOAはUAよりも学習後の復習の習慣においてまさる傾向がある。しかし実験事態における動機づけの強さでは,自己評定に関するかぎり,教師でない実験者による自我定位の場合を除き,OAとUAの間に有意な差がみられない。(2)いずれの動機づけ教示のもとにおいても,学習直後の再生成績はOAがもっともよく,A,UAの順でこれに続いている。この傾向は24時間後の把持検査の成績においても変わらない。(3)いずれの実験者のもとにおいても,学習と把持の成績は,課題定位のそれよりも自我定位のそれの方がまさる。しかしその差はOAよりもAとUAにおいて顕著である。(4)いずれの成就値群においても,課題定位と自我定位の間の再生成績の差は,教師の実験者のときよリも,教師でない実験者のときにより大きくなる。すべての教示条件におけるOA群,および教師でない実験者による自我定位の各群において,把持量の有意な減少が認められなかった。OA群は正答率が高くて成功感を伴ないやすいこと,教師でない実験者による自我定位では,教師の実験者による自我定位ほどに緊張が過度にならないことなどがその原因と推定された。また教師の実験者による自我定位のA,UA両群において把持量の減少があったことは,過度の緊張により,再生禁止の回復がおくれたためと解釈された。UAがOAよりも,実験者が教師か否かによって再生成績に受ける影響が大きいであろうという推測は,確証を得るに至らなかった。
著者
樽木 靖夫 石隈 利紀
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.101-111, 2006-03-30
被引用文献数
1

本研究は,中学生の学級集団づくりに活用される文化祭での学級劇において,彼らの小集団の体験の効果について検討した。主な結果は次の通りである。1)文化祭での学級劇における小集団の体験において,小集団の発展を高く認識した生徒は,そうでない生徒よりも自己活動の認知(自主性,協力,運営),他者との相互理解を高めた。2)文化祭での学級劇における小集団の体験において,担任教師の葛藤解決への援助介入は小集団の発展を促進し,生徒の自己活動の認知,他者との相互理解に影響した。3)文化祭での学級劇における小集団の体験において,同じ目標を目指しながら異なった活動をする「分業的協力」を高く認識した生徒は,そうでない生徒よりも学級集団への理解を高めた。
著者
中川 惠正 守屋 孝子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.81-91, 2002-03-31
被引用文献数
2

本研究は,小学校5年生を対象にして,2つの教授法,即ち,(1)モニタリング自己評価訓練法(問題解決の方略,スキルの利用の意義づけを教授の中に含め,その方略の実行過程でのモニタリング,評価やエラー修正等の自己統制の訓練をし,さらに自己の解決方法を他者に説明する訓練をした後,到達度と実行過程を自己評価する方法)と(2)到達度自己評価訓練法を比較し,国語の単元学習を促進する要因を検討した。その結果,MS群は各ポストテストのいずれにおいても,CRS群に比べて学習遂行が優れており,また内発的動機づけもCRS群に比べて高かった。
著者
村上 宣寛
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.183-191, 1980-09-30
被引用文献数
2

音象徴の研究には2つの流れがあり,1つはSapir (1929)に始まる,特定の母音と大きい-小さいの次元の関連性を追求する分析的なものであり,もう1つはTsuru & Fries (1933)に始まる,未知の外国語の意味を音のみから推定させる総合的なものであった。本研究の目的は音象徴仮説の起源をプラトンのテアイテトス(201E-202C)にもとめ,多変量解析を用いて日本語の擬音語・擬態語の音素成分を抽出し,それとSD法,連想語法による意味の成分との関連を明らかにするもので,上の2つの流れを統合するものであった。 刺激語はTABLE 1に示した65の擬音語・擬態語であり,それらの言葉から延べ300人の被験者によって,SD評定,名詞の連想語,動詞の連想語がもとめられた。成分の抽出には主因子法,ゼオマックス回転が用いられた。なお,言葉×言葉の類似度行列作成にあたって,分析Iでは言葉に含まれる音をもとにした一致度係数,分析IIでは9つのSD尺度よりもとめた市街模型のdの線型変換したもの,分析IIIでは6803語の名詞の反応語をもとにした一致度係数,分析IVでは6245語の動詞の反応語をもとにした一致度係数を用いた。分析Vの目的は以上の4分析で抽出した成分の関係を調べるもので,Johnson (1967)のMax法が用いられた。 分析Iの結果はTABLE 2に示した。成分I-1は/n/と/r/,I-2は/r/と/o/,I-3は/a/と/k/,I-4は促音,I-5は/o/,I-6は/a/,I-7は/i/,I-8は/p/,I-9は/u/,I-10は/b/,I-11は/k/,I-12は/t/に関連していた。分析IIの結果はTABLE 3に示した。成分II-1はマイナスの評価,II-2,II-4はダイナミズム,II-3は疲労,に関連していた。分析IIIの結果はTABLE 4に示した。成分III-1は音もしくは聴覚,III-2は歩行,III-3は水,III-4は表情,III-5は不安,III-6は液体,III-7は焦りに関連していた。分析IVの結果はTABLE 5に示した。成分IV-1は活動性,IV-2は不安,IV-3は表情,IV-4は音もしくは運動,IV-5はマイナスの評価もしくは疲労,IV-6は液体,IV-7は歩行,IV-8は落着きのなさに関連していた。分析Vの結果はTABLE 6とFIG. 1に示した。音素成分と意味成分の関係として,I-5 (/o/)とIV-8(落着きのなさ),I-7 (/i/)とIII-7(焦り),I-10 (/b/)とIII-6(液体)が最も頑健なものであった。さらに,I-8 (/p/)とII-2(活動性),I-9 (/u/)とIII-5(不安)及びIII-6(液体),I-12 (/t/)とIII-2(歩行)及びIV-8(落着きのなさ)も有意な相関があった。 日本語の擬音語・擬態語の限定のもとで,音象徴の仮説が確かめられた。/o/が落着きのなさを,/i/が焦りを,/b/が液体を象徴するという発見は新しいものでありその他にも多くの関係があった。また,SD法によってもたらされた成分は狭い意味の領域しかもたらさず,意味の多くの側面を調べるには不十分であり,擬音語と擬態語の区別は見出されなかった。
著者
松原 達哉
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.18-28, 1959-12-30

乗法九九学習を成功させるためには,児童の心身の発達および経験内容から考察して,何才何か月ごろから開始するのが,最も適当であるかを研究すること。さらに,算数学習のレディネスに影響を与える要因についての分析的研究をすることの2つを目的とした。実験方法は,アメリカの「算数の学年配当7人委員会」の方法を改善し,4つの実験群を設けた。この各実験群に,第1基礎テスト,第2基礎テスト,予備テスト,終末テスト,把持テスト,知能検査,配慮実験,ゲス・フー・チストその他の調査を実施した。被験者は,大,中都市,農村の8小学校2年,3年生1,046名を対象に22名の教師が,同一指導案によって指導した。本実験の基準に従って整理した結果では,乗法九九学習の指導開始は,8才1か月(2年2学期)から行なっても可能であることが実証された。現在,8才7か月(3年1学期)から開始しているが,さらに,6か月早めても,わが園児童の場合は,可能であると考られる。これは,アメリカのC.Washburneらの実験に比べ,2才1か月早い。また,算数学習のレディネスの要因としては,(1)算数学習に必要な知能,(2)四反応の速さ,(3)視聴覚および視聴覚器官の障害の有無,(4)健康,栄養,疲労の条件,(5)家庭的背景,(6)情緒の安定性,(7)根気の強さ,(8)自主性,(9)数の視聴覚記憶,(10)語の視聴覚記憶,(11)算数に対する興味,(12)算数的経験などが重要なものであることが実証された。
著者
金 徳龍
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.205-212, 1990-06-30

This is a psychological study of "linguistic interference" between Korean and Japanese found among students attending a korean school. This study examined the degrees of linguistic "independence" and "dependence" between the two languages by "color-naming test". The results were as follows : (1) Either of the two languages became a predominant language ; (2) The degree of linguistic interference between the two languages was not considered high ; (3) A relatively stronger influence was given on linguistic interference in bilingualism when the second language began to be learned rather than by the length of its study.
著者
落合 良行
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.332-336, 1983-12-30
被引用文献数
7
著者
小松 孝至
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.481-490, 2000-12-30
被引用文献数
1

本研究の目的は,幼児の幼稚園での経験に関する母子の日常的な会話の特徴を,母親が会話に見出す意義,母親から子どもへの働きかけ,および両者の関連から検討することである。質問紙を用いて,幼稚園児(3歳児クラス〜5歳児クラス)の母親581名から,会話に対する母親の意義付け(「情報収集」「教育・援助」「経験の共有」の3内容で合算),会話における母親から子どもへの働きかけ(質問する,なぐさめる他)などについて回答を得た。母親の会話への意義付けは全体的に高かったが,その中でも,3歳児の母親は5歳児の母親に比べ「情報収集」の意義付けを重視しているなどの差がみられた。また,特に長子と母親の会話において,質問やアドバイスといった母親からの働きかけが多く行われることも示唆された。さらに,会話への意義付けは,それと内容上関連を持つ働きかけとの間で正の相関を示した。これらの結果から,園と家庭の接点において,幼稚園での経験に関する会話が母親にとっての意味を付与され,実践されていることが示された。
著者
中岳 治麿
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.19-25, 1966-09

この報告では,学習プログラムを作成する場合,作成者の主観的な判断を可能なかぎり排除して,客観的な資料に基づいて構成していく方法を検討した。実際には,すでに学習を終わった集団について実施した学力検査(基礎調査)結果に,(2),(5)式を適用することによって,コースアウトラインに対応する学力検査問題の系列を抽出し,これに基づいて,学習プログラムを構成していくことになる。また,この方法によって構成されたプログラムは,比較的,学習著の学習の機構に適合していることが,実験の結果確かめられた。したがって,この方法は,数学科のように,尺度化が可能な領域では,適用できるのではないかと考えられる。
著者
大井 学 大井 佳子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.48-54, 1986-03-30

A three-year-old girl with delayed speech received an intervention as to her irrelevant use of words in giving and taking. Before the intervention, she would give and take without saying a word or irrelevant words, such as ""Choudai, hai""(Give me, look)in giving, and ""Dozo, arigatou""(Look, thank you)in taking. In the intervention she was requested to use dolls as giver and taker imitating modeled speech of adult. Through initial manual guidance she could use dolls. It helped her conceptualize giving and taking; she could then relate words to those acts relevantly. However she would express no intent by words, representing only the acts themselves. In the end she would say ""Arigatou"" both as giver and taker, representing her partner's taking and her own taking. Her irrelevant word use was the result of adopting representative function of language with no consideration of actor-utterance relation. Further investigation would be requested to clarify the reason why she could not relate them relevantly.
著者
村上 英治 荻野 惺 冨安 芳和 久留 一郎 秦 安雄 江見 佳俊 岩井 文子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.75-84, 124-125, 1967-06-30

(1) われわれは,われわれ自身の眼をとおして,名古屋市内の公立中学校に設置されている10の特殊学級の授業場面における精神薄弱児教育のあり方をつぶさに観察し,具体的に展開されているその教育状況のなかでの教師-生徒関係を中核としながら,その教育の直接のにない手である教師の指導のあり方の類型化をすすめようと試み,2つの類型を抽出することができた。それらは次のようにまとめることができる。 指導類型1:教師は生徒に対し強い愛情をもち,生徒に関心をもたせせるように,生徒の自発性をひきだすような配慮をし,生徒の気持と生徒の反応を的確につかんだうえで,生徒に理解されることばで働きかけ,理解がじゅうぶんでない生徒には,たとえ指導計画からはなれても,集中的に指導し,徹底的に理解させようとする教師の構えが強く,生徒も,教師を強く信頼し,教師の言動ひとつひとつを受けとめるのはもちろん,自発的に発言することも多く,わるくいえばさわがしいともいえるがあかるい,やらかい,開放的な雰囲気のなかで楽しそうに授業をうけている。 指導類型2:教師は生徒を拒否するでもなく,また,生徒に対して愛情をもっていないというわけでもないが,かといって身体的接触が多いというわけでもなく,ことさら生徒の自発性をひきだす努力をするでもなく,教師自身の言動に対する生徒の反応にあまり左右されずに,計画どおりの授業をすすめており,一方生徒も,教師の言動ひとつひとつを受けとめているという感じが薄く,教師の指示に対して積極的に反応しないばかりか,自発的に発言することも少なく,しずかで,よくいえば規則正しいけれども,わるくいえばかたい,強制の色の濃い指導的雰囲気のなかで,あまり楽しそうなようすもなく,どちらかといえば普通学級にも似た授業をうけている。 観察評定のために用いられた項目も若干異なるし,評定者そのものもちがうので,直接比較するのは許されないが,今回,われわれが10学級を対象にして抽出することのできた指導類型1は,村上ほか(1995)の研究で取り扱ったS学級のあり方ときわめて類似しているように思われる。指導類型2は,学級のふんい気など,Y学級のあり方に一見類似しているかにみられないでもないが,教師が生徒に否定的に働きかけてはいないという点において,Y学級と異った類型とみるのが妥当であろう。 われわれは今回この2つの指導類型を見出したからといって,精神薄弱児を教育する指導者の指導の型の類型として存在するのがこの2つの型のみであるというように主張するつもりはない。われわれが今回とりあつかったこれら10学級から,たまたまこの2つの指導類型が,われわれのとった手続きによって抽出されたと考えているのである。これらの2つの類型の抽出には,対象学級の選択も大きな条件となっていたことももちろんのことであるし,また,評定に用いられた項目の選択も大きな役割をはたしていただろうと考えられる。さきにもふれたように,今回もちいた評定項目のなかには,いくつか新しくつけ加えられたものもないわけではないが,その基底となったのは,主に前回,Y・S両学級の分析のために用いられたものであるからである。したがって,今後さらに多くの,これら10学級以外の諸学級を,具体的な教育状況のなかで観察していくことによって,評定項目そのものをも,より多くの学級指導のあり方の類型化により適切なものならしめるための検討が,残された課題となる。 (2) ところでまた,われわれの研究の手つづきをとおして,教師-生徒関係を中核とする具体的授業事態に関して見出された2つの指導類型は,こうした授業の直接の指導者である教師の人がらとは,かならずしも一義的に関係しないことがいちおう明らかになった。このことは,ある意味では,より望ましい指導類型へと教師を訓練することの可能性を,われわれに示唆しているものとみることもできるかもしれない。これも,精神薄弱児教育における指導者の養成の問題と関連し,今後のいっそうの検討を待つ残された問題のひとつであろう。 (3) さらにまた,第3には,研究の手続きとしてこうした観察評定法をとるかぎり,観察評定者間の評定の一致度,いわば信頼性の水準の高さがなによりの眼目となる。この点に関しては,本研究のなかでまだ問題となるところは多々残されている。 以上の反省にたって,今後,研究方法それ自体の再吟味を重ねつつ,現実に存在する多くの精神薄弱児学級の教師の具体的な教育状況における指導の型の類型化をすすめていきたいと考えている。そうした教師の指導の型のいかんが,本質的に精神薄弱児そのものの社会的適応のあり方につらなるものであるという観点が,われわれの研究の中核となっているからである。
著者
倉掛 正弘 山崎 勝之
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.384-394, 2006-09-30

うつ病予防の重要性が指摘され,欧米では早くから心理学を基盤とする児童期,青年期を対象としたうつ病予防介入が実施され,大きな成果を上げてきた。日本においては,うつ病の低年齢化が指摘されているにもかかわらず,現在,児童を対象としたうつ病予防介入は全く行われていない。このような現状をふまえ,本研究では,心理学的理論にもとづく教育現場で実施可能な小学校クラス集団を対象とするうつ病予防教育プログラムの構築,実践,その教育効果及び効果の持続性の検討を行うことを目的とした。プログラムは,うつ病の構成要因とされる認知・感情・行動の3つの要因に対し,総合的に介入を行い,抑うつ傾向を改善することで,うつ病予防を目指している。さらにこのプログラムを実際の小学校教育現場において実践し,その教育効果と効果の持続性について検討を行った。その結果,教育効果とその効果の持続性が部分的に確認され,本プログラムが,うつ病予防総合プログラムとして有効であることが示唆される結果が得られた。
著者
石川 信一 戸ヶ崎 泰子 佐藤 正二 佐藤 容子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.572-584, 2006-12-30
被引用文献数
1

本稿の目的は,児童青年に対する抑うつ予防プログラムのレビューを行うことであった。初めに,抑うつのリスクファクターには,個人的要因,社会的要因,認知的要因,家族の要因,外的な出来事要因があることが示された。このリスクファクターを軽減するための予防的介入要素は以下の4つに分類できることが分かった。(1)環境調整,(2)社会的スキルの獲得,(3)問題解決能力の向上,(4)認知への介入である。次に,予防研究をユニバーサルタイプとターゲットタイプ(indicatedとselectiveの予防プログラム)の2つに分類した。先行研究の多くは,ターゲットタイプのプログラムは抑うつの予防に効果があることを示している。一方,ユニバーサルタイプの結果は一貫していない。特に,長期的予防効果についての実証はあまりなされていない。最後に,抑うつ予防研究における実践と研究における示唆について議論がなされた。
著者
高野 明 宇留田 麗
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.113-125, 2002-03-31

近年,学生相談の領域では,心理的不適応の治療を目指したクリニックモデルに基づく活動だけではなく,教育的アプローチや厚生補導的アプローチを含む形で,活動全体を再構成する必要性が唱えられるようになっている。学生相談サービスの幅を効果的に広げるためには,多様な問題を抱える学生にとって,サービス機関へ援助を求めやすいような環境を作る必要がある。本論文では,学生の援助要請行動に注目し,社会心理学における知見をもとに,援助要請行動を促進すると思われる要因を導きだした。そして,日本と米国における学生サービスの現状を概観し,実践において援助要請を促進するために何をなすべきなのか検討した。その結果,学生サービス担当者による心理教育活動の充実,学生の自主グループの組織化と支援や,他職種とのコラボレーションによるシステム構築の必要性が指摘された。