著者
西島 貴史
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.3-9, 2009-03-20 (Released:2011-12-06)
参考文献数
12
被引用文献数
2

毛穴目立ちは多くの女性のもつ悩みの一つであるが,その目立つ原因は明らかになっていない。われわれは生体用レーザー顕微鏡を使用して頬の表皮構造を詳細に観察し,毛孔周囲が凹んでいる毛孔では特徴的な表皮の構造をもつことを明らかにした。この表皮構造は表皮が非常に深くまで落ち込んでおり,非常に長く伸長した真皮乳頭をもつことを特徴としていた。この表皮構造は表面の凹みと面積・形状が同じであることから,頬において毛穴が目立つ一因であると考えられた。そこで,表皮の収縮に着目して表皮構造を改善する剤の探索を行い,表皮細胞の収縮促進と増殖抑制の効果をもつ1-イソステアリルグリセロール-3-リン酸を見出した。ヒトでの使用試験の結果,1-イソステアリルグリセロール-3-リン酸は表皮構造に変化を起こさせ,目立つ毛穴に対する改善効果をもつことを確認した。今回,これら表皮に着目した毛穴目立ち改善へのアプローチについて報告する。
著者
久留戸 真奈美 河野 弘美 塩原 みゆき 池田 祐子 竹内 直人 林 洋雄
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.329-333, 2011-12-20 (Released:2013-12-20)
参考文献数
1
被引用文献数
1 1

化粧用コットンは,主に化粧水のパッティングやメイク落としなどに使われている。昨今は,さまざまな化粧用コットンがみられ,その使用方法もパッティングのみならず,パックにも広がり,スキンケアにおける重要なアイテムとなっている。本実験では,化粧用コットンによるパッティングのスキンケア効果を一般女性30名で調査した。「パッティング」により,肌の水分保持能を高める効果が認められ,被験者自身による有意なスキンケア効果実感が確認された。
著者
小柳 綾子 松井 康子 戸叶 隆雄 吉岡 正人
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.122-127, 2011-06-20 (Released:2013-06-20)
参考文献数
6

アミノ変性シリコーンはコンディショニング効果に優れたシリコーン誘導体の一つであり,ヘアケア製品に広く使用されている。しかし,連用するとアミノ変性シリコーンが毛髪表面に蓄積 (ビルドアップ) することで感触が損なわれることが問題であった。今回われわれは,「 (加水分解シルク/PG-プロピルメチルシランジオール) クロスポリマー」 (Hydrolyzed Silk PG-Propyl Methylsilanediol Crosspolymer;以下,HPS)をアミノ変性シリコーン含有コンディショナーに配合することでアミノ変性シリコーンのビルドアップが抑制されるかどうかを確認した。エネルギー分散型X線分析装置 (EDS)による毛髪表面のシリコーン量の測定と官能評価の結果から,HPSにはアミノ変性シリコーンのビルドアップを抑制し良好な感触を維持する効果があることがわかった。
著者
岡野 由利
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.91-97, 2016-06-20 (Released:2017-03-21)
参考文献数
28
被引用文献数
1

スキンケア化粧品の基本的な機能は皮膚の保湿である。皮膚の乾燥が肌荒れだけではなく,皮膚の老化の一因となっていることは,われわれは経験的に知っている。角層には水分を保つ機構が存在するが,その詳細が解明され始めたのは,20世紀の半ばになってからであった。市場の化粧品のコンセプトはこの皮膚科学の発展を商品に応用したものが多い。そのため,過去においては,天然保湿因子(NMF)と皮脂を模して,水分と保湿剤,油脂を含有する製剤がスキンケア商品として用いられてきた。皮膚科学の発展に伴い,セラミド,NMFを配合した製品,顆粒層に存在するタイトジャンクションに注目した素材を配合した製品,角層細胞の成熟に注目した製品が開発され,上市されてきた。さらに,過去には死んで剥がれ落ちると考えられていた角層が,スキンケア行為によって濡れてゆっくりと乾くことにより,バリア機能が向上し,皮膚の状態が健全に保たれることも報告された。本稿では,保湿にかかわる皮膚科学の進歩と関連したスキンケアコンセプトの変化について歴史的な変化も含めて述べる。
著者
屋敷 圭子 大戸 信明 川嶋 善仁 中原 達雄
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.334-339, 2017-12-20 (Released:2017-03-21)
参考文献数
10
被引用文献数
1

近年,紫外線や大気汚染などの環境因子,食生活の変化やストレス等によって敏感肌を訴える人は増加している。われわれは,すでに敏感肌向け化粧品に多く配合されているグリチルリチン酸ジカリウム(DPG)の有効性について検討した。DPGは,神経ペプチドであるサブスタンスPによる神経成長因子の遺伝子発現上昇を抑制したことにより,敏感肌の特徴的状態である知覚過敏反応を抑制できる可能性が示された。また,敏感肌を対象にした臨床試験では,0.2%DPG配合製剤は乳酸によって誘導されるかゆみに対する違和感に対して改善傾向が認められた。これらの結果から,DPGは,種々の敏感肌の人に対して改善作用を有する可能性が示唆された。
著者
鈴木 敏幸
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.103-117, 2010-06-20 (Released:2012-06-25)
参考文献数
43
被引用文献数
1 5

乳化技術の基礎について以下の5つの視点から解説を行った。(1)エマルションの型と種類の定義およびエマルション,ナノエマルション,マイクロエマルションの違い。(2)調製法の分類と一般的なエマルション調製法。(3)エマルション崩壊のパターンと乳化安定化理論。(4)エマルションと相図:エマルション,マイクロエマルションの状態および効率の良い乳化と可溶化の理解。(5)微細なエマルションの調製のための最近の乳化技術とその機構のまとめ。
著者
川崎 由明 坂本 一民 Maibach Howard I.
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.55-61, 1996
被引用文献数
1

5種類のアミノ酸 (L-リジン塩酸塩, グリシン, L-グルタミン酸モノナトリウム, L-プロリン, L-スレオニン) をアミノ酸のモデルとして選定し, ヒト皮膚に於けるそれらのpH 7.4水溶液からの<i>in vitro</i>経皮吸収挙動をラジオアイソトープを用いて種々検討した結果, ヒト角質層はアミノ酸経皮吸収に対して大きなバリアとなっていることが明らかになった。また, 正常皮膚に於けるアミノ酸経皮吸収流束とアミノ酸のlog P (オクタノール/水) の間に負の相関関係が確認されたことから"マイクロチャンネル"の存在が示唆される。更に, グリセリンやPCAナトリウム等を共存させた場合, L-プロリンの皮膚透過量は殆ど変化せずに, 表皮への吸着量は増大したことから, ヒト表皮はアミノ酸のリザーバーとしての役割を果たしていると考えられる。
著者
酒井 裕二
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.109-118, 1999-06-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
38
被引用文献数
2

われわれは洗顏により, 余分な皮脂や過酸化脂質, さらには肌上に吸着した空気中のほこり等を取り除くことで, 肌を清潔に保つことができる。洗顏料を開発するうえで考慮すべき要素として, 機能性, 皮膚安全性, 使用法の3点があげられる。これら3要素はおのおの密接に関係しており, どれか一つ欠けても洗顏料として満足する品質は得られない。またこの3要素に最も影響を与えるのが, 洗浄機能主剤の界面活性剤である。すなわち, この界面活性剤の特性を把握しつつ, 各要素をバランスよく高質化することこそ, 肌に理想的な洗顏料開発を可能にする。今回は, この3要素を中心にこれまで検討してきた研究を報告し, 理想的な洗顏料のあるべき姿について考察した。
著者
山本 眞理子
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.351-358, 2000-12-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
14
被引用文献数
2

本総説は, 顔の印象を中心として外見が自己および他者に与える影響について, 筆者の研究を中心としながら, これまでの研究を概観したものである。まず, 印象を変化させるための外見の操作の問題を取りあげ, 同じ外見でも印象を変化させにくい側面とさせやすい側面とがあること, また, その操作可能性の高さによって変化させられる印象の内容に違いがあることが指摘された。ついで, 外見の情報が他者に関する情報処理の, 特に初期の段階に大きな影響をおよぼしていること, また, その影響の背後には, 外見のステレオタイプの存在があることが指摘されている。さらに, 外見の特徴により自他の行動がどのように影響されるのかその特徴が述べられている。最後に, 外見を通して自己の印象を管理するプロセスと, 自己の印象の管理に敏感な人とそうでない人との間に存在する個人差が議論された。
著者
正木 仁 岡野 由利 藤井 政志 渥美 隆正 左近 健一 鈴木 一成 手塚 正
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.139-145, 1987-09-30 (Released:2010-08-06)
参考文献数
2

In considering the effect of cosmetics, the moisturizing effect on the skin is most important.This consists of two components, one being the occlusivity which suppress water evaporation, and the other is water holding capacity. A new method for measuring the water evaporation rate (WER) has been developed by us. The present study was carried out in order to clarify the following: 1) The relationship between WER through the skin and skin condition. 2) The factors which determine occlusivity. In conclusion, it was recognized that the morphology of the skin surface become fine with decreasing WER and it was clarified that occlusivity could be explained in terms of lnorganic organic balance (10B), visvosity and water holding capacity.
著者
荒川 尚美 大西 浩之 舛田 勇二
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.173-180, 2007-09-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
9
被引用文献数
12 8

ビデオマイクロスコープは簡便に皮膚表面の拡大画像を取得できる。この皮膚拡大画像からキメ・毛穴の特徴を評価できる解析法を開発した。皮膚拡大画像から画像処理により皮溝・皮丘・毛穴を抽出し, 評価項目「皮溝の太さ」「皮丘の細かさ」「毛穴の大きさ」を定量化した。具体的には皮溝の平均幅を算出することにより皮溝の太さを, 一定面積中の皮丘の数を算出することにより皮丘の細かさを, 毛穴の総面積を算出することにより毛穴の大きさを数値化した。本手法の数値結果を美容技術者による視感評価の評点と比較したところ高い相関が得られた。また本手法を用いてキメ・毛穴の形態と年代, 季節, 皮膚生理との関連性を調べた。年代との関係を調べたところ, 20歳前後でキメが粗くなった。毛穴に関しては各年代の平均値は10-40代において増加した。季節との関係を調べたところ冬季にキメが粗くなり皮溝が太くなった。皮膚生理との関係との関係を調べたところTEWLの値が小さい肌に比べて大きい肌ではキメが粗く, さらに皮脂量が少ない肌に比べて多い肌においてもキメが粗かった。本手法は肌状態の評価やそれに基づく化粧料の開発に有用であると考えられる。
著者
金田 泰雄 村松 宜江 高橋 きよみ
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.280-288, 1993-03-22 (Released:2010-08-06)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1

Many Japanese women are concerned about the darkness of their skin. However, the treatment for skin darkness have not, until now, been thoroughly tackled because of vagueness of skin darkness.Our study is aimed at clarifying skin darkness.Firstly, a questionnaire on the awareness of skin darkess was conducted on 975 Japanese women to determine the average consumers interpretation of “darkness”. Secondly, evaluations on “subjective” and “objective” darkness in female faces were simultaneously conducted on 167 women with the aim of grasping the relation between subjective and objective darkness in the same person. Finally, components of “objective darkness” were examined, and the following information was obtained.The awareness of skin darkness among Japanese women can be expressed by two factors: a “blackish” factor, and a “drooping” factor, associated with morphological elements.The evaluation of darkness requires the specification of facial sites because degrees of agreement between subjective “darkness consciousness” and objective “darkness impression” are different according to the sites.Components of darkness impression are color tone and morphology. A moderately deteriorated morphology in particular was assumed to have influence on the darkness impression similar to the color tone.
著者
小林 和法 倉沢 真澄 丹 美香 工藤 大樹 赤塚 秀貴 大場 愛
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.212-217, 2011-09-20 (Released:2013-09-20)
参考文献数
2
被引用文献数
1

肌の「ハリ」は理想の肌の要素のひとつとして挙げられることが多い。従来「ハリ」といえば肌に触れたときの感覚としてとらえられ,真皮にアプローチした改善策がとられてきた。しかしわれわれは,「ハリ」には視覚的要素も含まれていると考え,視覚的なハリという点に着目して検討を行った。健常日本人女性の顔面を対象に行った肌の官能評価スコアを用いてクラスター分析を行ったところ,「目で見て感じるハリ (視覚的ハリ) 」は「視覚的うるおい感」と非常に距離が近く,一方で「触覚的ハリ」とは別のクラスターに分類されることがわかった。また,視覚的ハリは角層水分量や経表皮水分蒸散量と関係することがわかった。この結果から,角層水分状態の改善が視覚的ハリの向上につながるのではないかと考え,化粧料の連用試験を行い,角層水分状態が改善されたときに視覚的ハリスコアがアップするかどうかをみたところ,角層水分量の有意な増加とともに視覚的ハリの有意な向上が確認され,一方で触覚的ハリには有意な変化が認められなかった。これは,視覚的ハリと触覚的ハリには,それぞれに最適な改善アプローチが別々に存在する可能性を示唆している。
著者
倉橋 隆
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.240-246, 1998-09-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
22

われわれの香り感覚は鼻腔内の嗅細胞繊毛膜において始まる。この情報変換の分子機構はGタンパク介在性の二次メッセンジャー系によって仲介され, 最終的には細胞膜の陽イオンチャネルを開口し, 一価陽イオンや二価陽イオンを細胞内に流入させることによって, 化学信号を電気的信号 (生体信号) に変換する。陽イオンチャネルを通るCaはさらに二つの重要な役割を果たすことになる。一つは, 細胞内からClチャネルを開口することで, イオン環境が変化した場合にもイオン電流を恒常的に保つ役割をもつ。また, cAMP感受性イオンチャネルに対してフィードバックをかけることによって, 細胞の順応を引き起こす。これとは別に, においマスキングはにおい物質そのものによってイオンチャネルが閉じてしまうことが原因らしい。
著者
本間 茂継
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.2-10, 2014-03-20 (Released:2016-03-22)
参考文献数
12
被引用文献数
4 2

天候・季節による強弱の差はあれ,屋外活動のなかで人は常に紫外線を浴びている。紫外線から身を守るために紫外線防御機能を有した化粧品が使用されるが,化粧品開発においてその機能を付与するために,無機酸化物粉末 (微粒子酸化チタン,微粒子酸化亜鉛など) である紫外線散乱剤と,有機化合物である紫外線吸収剤が用いられる。本稿では,一般的に用いられる紫外線散乱剤と紫外線吸収剤の特徴を紹介するとともに,高機能性を有した新規水分散型微粒子酸化チタンについて報告する。
著者
井下 美緒
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.169-176, 2014-09-20 (Released:2016-09-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

近年,紫外線から肌を守りたいという意識の高まりを背景に,海・山などのレジャー用に限らず,日常的に紫外線防御化粧品が使用されるようになり,求められる機能が多様化している。紫外線防御効果だけではなく,「塗布時の透明性」,「保湿性」,「やさしいつけ心地」など,肌に負担の少ない使用感が望まれている。本稿ではこのような紫外線防御効果とともに使用感や保湿性を重視した紫外線防御素材とその製剤化技術について紹介する。
著者
釘宮 理友 田辺 友希 日比 博久 熊谷 重則
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.41-47, 2010-03-20 (Released:2012-04-26)
参考文献数
5
被引用文献数
1

唇の色はヘモグロビンとメラニン量により影響されることが報告されており,唇は医学的に皮膚由来の構造と口腔粘膜由来の構造を併せ持つことが知られている。とくに,口腔粘膜由来の毛細血管は唇の表面近くに存在して唇を赤く見せている。そして毛細血管の状態は加齢とともに変化し,くすむことが報告されている。しかしながら,これまでに上唇と下唇の赤みの違いについて議論されたことがない。本研究では,上下唇の色について調べることで,年齢によらず下唇のほうが赤みは強いことがわかった。また,上唇と下唇の色の違いがどのような印象を与えるか,唇の色を変化させることにより調べた。その結果,上唇と下唇の色の差が印象に大きな影響を及ぼし,上唇と下唇の色をそろえると,自然で若く健康的な印象を与えられることがわかった。MgTubeを配合した口紅は,上下の唇の色を合わせることができ,また,薄付きの口紅においては干渉パール剤を併用することが効果的であることがわかった。これらの結果により,われわれは新しいメイクアップ法を開発することができた。
著者
米井 嘉一 八木 雅之 髙部 稚子 今 美知
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.83-90, 2019-06-20 (Released:2019-06-21)
参考文献数
25
被引用文献数
1

皮膚の老化の機序を考える上で光老化による酸化ストレスと糖化ストレスは大きな要因となっている。紫外線は活性酸素やフリーラジカルを介して皮膚に酸化ストレス障害を惹起し,色素細胞のメラニン産生刺激と角化細胞の遺伝子損傷はシミ形成に,線維芽細胞刺激はシワ形成に関わる。糖化ストレスは次に大きな皮膚老化の原因である。これは還元糖,脂質や酒由来のアルデヒドによる蛋白修飾が主反応で,カルボニル化蛋白ならびに糖化最終産物(advanced glycation end-products: AGEs)を生成,さらにはRAGE(receptor for AGEs)に結合して炎症性サイトカイン産生を促す。RAGE は免疫応答細胞のみならず皮膚線維芽細胞にも存在する。コラーゲン糖化は皮膚弾力性低下,エラスチンの糖化はたるみを惹起する。近年,AGEs が色素細胞を刺激してメラニン産生を助長することが明らかになった。すなわちシミ形成にも関与する可能性がある。糖化ストレス対策化粧品の開発はきわめて重要であり,今後の発展が期待される。
著者
岩井 一郎 桑原 智祐 平尾 哲二
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.16-21, 2008
被引用文献数
3

近年, カルボニル化と呼ばれるタンパク質の変性が角層で知られるようになったが, 肌への影響は不明だった。本研究では「角層の透明度」に焦点を当て, 角層タンパク質カルボニル化の影響とその対応法について検討した。まず粘着テープで採取した角層タンパク質のカルボニル基を蛍光標識し, 画像解析により数値化する方法を開発し, 外界の影響を受けやすい露光部 (顔面) 角層, 角層表層部で角層カルボニル化レベルが高いこと, <i>in vitro</i> UV照射により角層タンパク質がカルボニル化することを示した。さらに, 頬部角層カルボニル化レベルの高い女性では, 視感判定による透明感が低いことを示した。これらより, 外界の影響による角層のカルボニル化が透明感低下の一因と考えられた。実際に角層を<i>in vitro</i>でカルボニル化処理すると角層は不透明に白濁した。さらにアミノ酸L-リジンは角層カルボニル化を抑制し, ヒト皮膚においてもカルボニル化による透明感の低下を抑制した。これらより, 外界の悪影響による角層タンパク質のカルボニル化をL-リジンによって防ぐことで, 角層透明度を保ち, 肌の透明感を向上させることができると考えられた。
著者
船坂 陽子
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.2-6, 2008-03-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
37

太陽光への曝露により皮膚細胞に損傷が蓄積した結果, 光老化が生じる。光老化の症状のうち, 特にシミおよびシワに対して美容治療が求められる。ケミカルピーリング, イオン導入, レーザー光線等の光老化に対する治療については, すでに国内外から多く報告されている。しかし, どの程度の治療効果がもたらされるのかという点について, 特にその作用機序から考察した研究論文が発表され始めたのは, 1990年代後半からである。治療の作用機序の解明が進むと, 一方で光老化の病態解明につながることが期待できる。本稿では, 特にケミカルピーリングと光線治療により発生する熱の皮膚細胞に対する知見について概説する。