著者
阪本 仁 小阪 真二
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.917-921, 2007-01-15 (Released:2008-11-20)
参考文献数
8

症例は66歳女性.急性心筋梗塞に対して当院心臓外科にて冠動脈バイパス術を施行した.術後右血胸を認め,術後6日目に後側方第7肋間開胸にて血腫除去術を施行した.さらに右膿胸を認めたため31日目に開窓術(第6-9肋骨後方部分切除)を施行した.膿胸腔のガーゼ交換を連日継続中の94日目に大量の壊死肺(10×5cm)の自然脱落を認めた.その後229日目に有茎腹直筋弁充填術を形成外科医と共同で施行した.しかし,充填術後に肺瘻が遷延したため,計3回気管支塞栓術を行ったが一時的な改善しか認めなかった.275日目に開胸にて肺瘻閉鎖術を行った.腹直筋弁は形成外科的な手技が必要であるが,大網や広背筋が利用できない場合は膿胸腔充填術に対して有用である.また,膿胸開窓術後の大量の壊死肺脱落は今回検索し得た文献においては稀であると考えられた.
著者
山本 恭通 戸矢崎 利也 小阪 真二
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.46-51, 2017-01-15 (Released:2017-01-15)
参考文献数
5

症例は63歳女性.左上下肢ミオクローヌスと歩行障害で緊急入院となった.頭部MRI上大脳皮質と皮質下に10日間で拡大するびまん性のT2高信号域を認めた.胸部CTで胸腺腫を疑う腫瘤影を認め,抗アセチルコリン受容体抗体が高値を示した.ステロイドパルス療法後に漸減療法を行ったが,失語,筋力低下,痴呆症状など神経症状と脳機能低下は急速に進行した.寝たきりとなり下肢静脈血栓症を併発した.傍腫瘍性神経症候群と診断し入院31日後に拡大胸腺摘出術を行った.胸腺腫Type ABでWHO分類pT1N0M0 I期,正岡分類I期であった.術後神経症状や脳機能低下は劇的に改善し術後32日に独歩退院した.比較的急速に進行する傍腫瘍性神経症候群は胸腺腫などの腫瘍と神経組織に共通する抗原に対する自己免疫が原因といわれ,悪化する神経精神症状に躊躇することなく胸腺腫に対する早期の外科治療が必要である.
著者
武市 悠 河野 匡 文 敏景 吉屋 智晴 一瀬 淳二
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.35-38, 2009-01-15 (Released:2009-06-11)
参考文献数
10

症例は87歳,男性.85歳時に左下葉肺癌に対し,胸腔鏡下左下葉切除術とリンパ節郭清(ND1)を施行した.病理は大細胞癌であった(p-T2N0M0,stage I B).経過観察中に右上葉に結節影が出現し,胸腔鏡下右肺部分切除術を施行した.病理は高分化型腺癌であった.術後合併症認めず,術後9日目に退院となった.現在2回目の手術から3年1ヵ月経過し,元気に存命中である.高齢者肺癌であっても,肺葉切除で良好な予後が得られており,また異時性多発肺癌では完全切除ができれば,手術が推奨されている.そんな中,超高齢者異時性多発肺癌患者においては,症例毎の慎重な検討の元,低侵襲である胸腔鏡下手術,縮小手術は治療の選択肢の1つとなり得る.
著者
直海 晃 黒田 浩章 水野 鉄也 坂倉 範昭 坂尾 幸則
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.476-481, 2016-05-15 (Released:2016-05-15)
参考文献数
23
被引用文献数
1

50歳代日本人女性.約30年間米国アリゾナ州に在住していた.帰国時の健診で胸部異常陰影を指摘され当院紹介となった.胸部CTにて右S8に9 mm大の辺縁整な結節を確認した.血液検査では有意な所見なく,診断的治療目的に胸腔鏡下右下葉部分切除を施行した.病理組織所見では,乾酪肉芽腫の壊死部に大型球形で透明感のある病原体が散在しており,米国在住歴・部位・被包乾酪巣であることより術後に慢性肺コクシジオイデス症と診断した.コクシジオイデス症は真菌の中では非常に感染力が強く,症状がなければ培養ならびに血清・血液学的検査での検出が困難である.そのため小型結節に対しては,詳細な渡航歴と画像所見から慢性肺コクシジオイデス症を疑い,二次感染予防に努めることが重要であると考えられた.
著者
荒木 修 苅部 陽子 田村 元彦 小林 哲 千田 雅之 三好 新一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.223-228, 2016
被引用文献数
1

症例は55歳の男性.数年前から近医で両側巨大肺囊胞症と診断され在宅酸素療法が導入されていた.労作時呼吸困難がさらに悪化し手術目的に当院紹介となった.%肺活量38.7%,一秒量470 mlと高度の低肺機能を呈していたが,残存肺血管床は温存されていると考え,経皮的心肺補助装置使用下に2期的に囊胞切除術を行った結果,肺機能は著明に改善した.
著者
松本 和也 白石 伊都子 寺町 政美 中川 正嗣
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.770-775, 2007-09-15 (Released:2008-11-19)
参考文献数
14
被引用文献数
2 5

我々が経験した成人の急性膿胸に対する胸腔鏡下手術16例を検討した.男性13例,女性3例,年齢 25~82歳(平均61歳)で,発症から手術までの期間は10~50日(中央値26日),術後ドレナージ期間は9~62日(中央値12.5日),術後在院日数は14~106日(中央値22.5日)で,全例が軽快退院した.手術時期は10例が線維素膿性期,6例が器質化期であった.9例で2ポート,6例で3ポートにて手術可能であり,胸壁膿瘍を伴った1例で小開胸併施を要したが標準開胸への移行例はなかった.合併症は,3例にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による膿胸再燃,1例に肺瘻遷延を認めたが,再度の胸腔鏡下手術もしくは保存的治療で治癒した.急性膿胸に対する胸腔鏡下手術は有用な治療法であり,線維素膿性期での実施が望ましいが器質化期早期でも適応可能と思われた.起因菌がMRSAの場合は膿胸再燃を来す可能性が高く,術後胸腔洗浄などを考えるべきである.
著者
上林 孝豊 柳原 一広 宮原 亮 板東 徹 長谷川 誠紀 乾 健二 和田 洋巳
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.566-569, 2003-07-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
12
被引用文献数
2

目的・対象: 当院で手術を施行し, 病理組織学的に肺カルチノイドと診断された20症例 (定型15例, 非定型5例) の臨床的検討を行った.結果: 定型, 非定型の5年生存率は, それぞれ86.6%, 60%であった.定型の1期症例は術式に関わらず全例, 無再発で生存中である.非定型は全例, 葉切除および肺門縦隔リンパ節郭清が行われていた.1期3症例は, いずれも無再発で生存中であるが, T2N2のIIIA期症例, T4NOのIIIB期症例は, 集学的治療にも関わらずそれぞれ術後10ヵ月後, 61ヵ月後に遠隔転移にて癌死した.定型では観察期間1~250ヵ月間 (平均観察期間72.8ヵ月) において, 5年生存率は86.6%であった.非定型では観察期間10~251ヵ月間 (平均観察期間121, 4ヵ月) において5年生存率は60%であった.まとめ: T2の定型カルチノイドに対する縮小手術の可能が示唆された.またIII期以上の非定型カルチノイドに対しては有効な集学的治療の確立が望まれる.
著者
谷村 信宏 神田 裕史 川平 敏博 上谷 幸代
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.7, pp.710-714, 2003-11-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1 2

肺動静脈瘻 (以下PAVF) を伴ったRendu-Osler-Weber症候群の1家系, 5症例を経験した.症例1の多発性PAVFに対して瘻核出術及びコイル塞栓術の併用, 症例2は単発性の小動静脈瘻で部位的にコイル塞栓術困難であるため経過観察, 症例3はコイル塞栓術, 症例4は肺部分切除とコイル塞栓術の併用, 症例5は右S6区域切除術を行った.PAVFに対しては瘻が小さくても積極的に治療を考慮すべきであるが, 良性疾患であること及び再発を考慮し, 経カテーテル的塞栓療法を第一選択とし, 手術が必要な場合も瘻核出術などの肺機能を温存する縮小手術を行うべきである.
著者
橋本 崇史 宮脇 美千代 齊藤 華奈実 石川 一志 甲斐 宜貴 杉尾 賢二
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.741-747, 2014-09-15 (Released:2014-10-03)
参考文献数
13
被引用文献数
1

頭皮原発血管肉腫の肺転移は,続発性気胸を高率に引き起こすことが知られている.症例は83歳,男性.80歳時,頭皮原発血管肉腫の診断にて皮膚科で手術療法,放射線療法,化学療法をうけ,寛解したが,20ヵ月後に薄壁空洞型の肺転移を認めた.その数日後に左気胸をきたし,当科へ紹介となった.胸腔ドレーンを留置したが,エアリークの改善なく,胸腔鏡補助下左上葉切除術を施行した.免疫組織化学的にCD31陽性であり,頭皮原発血管肉腫の肺転移巣と診断された.短期間で気胸の再発を認め,エアリークが持続したため,2回目の手術を行った.残存する左下葉に多発する薄壁の小嚢胞性病変を認め,その数ヵ所よりエアリークを認めた.小嚢胞を一部楔状切除し,被覆術を行った.小嚢胞も病理学的に頭皮原発血管肉腫の肺転移と診断された.気胸は治癒したが,原病の進行による呼吸不全のため術後36日に死亡した.本疾患の肺転移による気胸は難治性であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
川田 順子 神崎 正人 吉川 拓磨 前田 英之 村杉 雅秀 大貫 恭正
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.620-625, 2014-07-15 (Released:2014-08-20)
参考文献数
11
被引用文献数
1

胸腺腫合併重症筋無力症に対し,ロボット支援下拡大胸腺―胸腺腫摘出術を施行した症例を経験したので報告する.症例は50歳女性.右眼瞼下垂と両上肢筋力低下を主訴に近医を受診し,精査の結果,重症筋無力症(MGFA class IIa)と診断された.精査加療目的に当科紹介受診.胸部computed tomographyで前縦隔に46×35 mmの腫瘤を認めた.手術は左胸腔よりアプローチし,ダヴィンチサージカルシステムを用いて行った.ポート作成後,胸腔内に二酸化炭素を送気した.左横隔神経の前方で縦隔胸膜を切開し,胸腺左葉下極より上極まで剥離した.その後,対側である右縦隔胸膜を切開し,右横隔神経に注意しながら胸腺右葉も下極から上極の順に剥離し,胸腺および胸腺腫を摘出した.病理診断はtype B2,正岡分類I期であった.二酸化炭素送気で,左胸腔アプローチでも良好な視野の下に安全に手術を施行することができた.
著者
高田 昌彦 宮本 良文
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.1012-1016, 2008-11-15
被引用文献数
1

胸骨骨折は外傷性骨折の中では比較的まれである.多くは保存的に治療できるが,転位が大きく強い疼痛がある場合,手術適応となる.一方,まれに保存的治療の経過中に偽関節を呈し,疼痛などの症状が遷延することがある,胸骨偽関節について,開心術のための胸骨切開後の報告例は散見するが,胸部外傷後の報告はほとんどない.今回我々は16歳男性の胸部外傷後の胸骨偽関節に対し,プレート固定と自家骨移植を用いた術式で,良好な結果を得た.胸骨を固定するためのプレートとしてロッキングプレートを選択した.自家骨移植を併用した胸骨のプレート固定術は,胸骨偽関節の治療方法として有用であった.
著者
徳永 俊照 武田 伸一 小間 勝 澤端 章好 前田 元
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.746-752, 2008-07-15
被引用文献数
4 2

外科的切除にて診断された肺過誤腫23例の臨床像を検討した.性別は男性12例,女性11例で,年齢は28〜71歳,平均53.5歳であった.20例は無症状であったが,3例は症状を有し,そのうち2例は胸痛,1例は咳嗽であった.病変は,22例が単発性で,1例のみ多発性であった.腫瘍径は0.5〜3.0cmで,平均1.5cmであった.画像上,石灰化を6例に認めたが,明らかなポップコーン様ではなかった.石灰化を有する症例は,腫瘍径が有意に大きかった.17例に気管支鏡が施行されたが,確定診断できず,全例か悪性疾患を否定できないため手術に至った.術式は,6例に検出術,16例に部分切除術,1例に葉切除術が施行され,そのうち17例に胸腔鏡下手術が施行された.肺過誤腫の術前診断は困難であるが,悪性疾患との鑑別が問題となる場合,外科的切除にて診断することを考慮すべきである.
著者
野並 芳樹 近藤 樹里 山本 彰 山城 敏行 笹栗 志朗
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.91-95, 2003-03-15
被引用文献数
9 5

症例は66歳,男性.37度前後の微熱と右胸部鈍痛を訴えて入院した.胸部画像検査で右胸腔に小児頭大の被覆化された腫瘤様陰影を認め,好酸球増多を伴う白血球増加(38,900/μl)とCRPの中等度高値を示したため,当初,膿胸を疑った.血清Granulocyte Colony Stimulating Factor (以下G-CSF)値が高値を示し,且つ,腫瘍の経皮的針生検では細胞壊死が広範に認められたが,一部に癌の疑いがあったため,G-CSF産生肺癌の診断のもと,下葉切除,上中葉部分切除,胸壁,および横隔膜部分切除を行った.切除肺,胸壁,腫瘍の総重量は約1600グラムで,腫瘍は抗G-CSFモノクローナル抗体による免疫組織化学染色で陽性を示す肺大細胞癌であった.術後2週間で血清G-CSF値は正常域となった.その後,paclitaxel + carboplatin併用の抗癌化学療法を行ったが,手術6ヵ月後に血清G-CSF値の上昇とともに,胸壁の切除断端より再発を来たし,手術8ヵ月後に癌性胸膜炎による呼吸不全で死亡した.手術を行ったG-CSF産生肺大細胞癌の本邦報告例は自験例を入れて15例あるが,術後数ヵ月以内に死亡している症例が多い.また本例は術前IL-6も高値を呈し,G-CSF以外のサイトカインとも関連を持った症例であると考えられた.
著者
吉川 拓磨 神崎 正人 小原 徹也 大貫 恭正
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.156-160, 2009-03-15 (Released:2009-12-14)
参考文献数
8

症例は65歳女性.近医で胸部異常陰影指摘され,当院呼吸器内科を受診した.胸部CT上両側に数mm大の多発結節影を認めた.身体所見,血液検査所見に異常なく,喀痰培養検査,ツ反検査等から結核,真菌症,サルコイドーシスは否定的であった.PET検査でも,集積はなかったが,増大傾向を認めたため,確定診断をつけるため胸腔鏡下肺部分切除術を施行した.病理検査では,結節性リンパ組織過形成(NHL)と診断された.NLHはMALTリンパ腫と鑑別すべき疾患の1つであり,今後報告例はさらに増加すると思われる.NLHの中でも多発結節を呈する症例はいまだ報告例が少なく,病態,予後,治療方針に関し不明な点が多いことから,今後の症例の蓄積が必要と思われる.
著者
谷口 雄司 田中 宜之 中村 広繁 鈴木 喜雅 石黒 清介 森 透
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.9, no.7, pp.875-878, 1995-11-15
被引用文献数
2 2

症例は60歳,男性,胸部異常陰影を主訴に入院し,胸部CT,喀痰細胞診にて右S^9の扁平上皮癌と診断された.入院時検査にて血清Ca12.8mg/dl, PTH-rP-C85.5pmol/lと高値を示した.手術は低肺機能のため肺底区区域切除を施行した.腫瘍は69×57×41mmで病理は中分化型扁平上皮癌であった.術後Ca,PTH-rP-Cはすみやかに正常値に復し,摘出した腫瘍組織よりPHT-rPのmRNAを確認したため,PTH-rP産生肺扁平上皮癌と診断された.術後1年,再発の徴侯なく生存中である.
著者
朝倉 奈都 沖津 宏 清家 純一 田渕 寛 津田 洋 佐尾山 信夫 吉田 冲
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.27-31, 2000-03-15
被引用文献数
2

症例は68歳の男性.糖尿病性腎症により1998年4月に近医入院し血液透析を開始した.入院解きより左胸水貯留を認め, 胸水検査を行うも原因同定には至らなかった.同年10月頃より発熱及び胸水の増加を認め, 膿胸の疑いにて胸腔ドレーンを挿入, 膿性の排液よりCryptococcus neoformansが得られた.血中Cryptococcus neoformans抗原, クリプトコッカス抗体は共に陰性で, 髄液検査, 頭部CTを含め, 他臓器には異常を認めず, クリプトコッカス膿胸と診断された.抗真菌剤の全身投与及び胸腔内洗浄による治療にも膿胸の改善はなく, 手術目的にて当科紹介となり, 1998年12月18日左肺剥皮術, 有茎筋弁充填術を施行した.術後特に合併症なく経過し, 術後約9カ月の現在, 再発の徴候は認めていない.