著者
廣間 文彦 安田 雄司
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.818-822, 2008-07-15 (Released:2009-02-02)
参考文献数
7
被引用文献数
1

症例は26歳男性で右自然気胸にて入院となった.胸腔鏡下に手術を施行したところ,右第4肋骨より発生した骨軟骨腫を認め,これに対面する右中葉肺胸膜面に圧迫が原因と思われる瘢痕とブラを認めた.これが気胸の原因と判断し,骨軟骨腫と右中葉のブラを切除した.肋骨に発生する骨軟骨腫は稀で,これが原因で気胸が発症した症例は自験例を含めて本邦で4例と極めて稀な症例であった.
著者
中島 由親 和久 宗明 今井 均
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.7, no.7, pp.833-838, 1993-11-15

症例は62歳男性.1988年4月肺結核発症.多剤耐性結核にて排菌止まらず,1990年8月21日に右肺上葉切除施行.その後気管支瘻となり同年10月9日に気管支瘻閉鎖,胸郭成形を行うも気管支瘻再発し右MRSA膿胸を併発,同年12月20日右腋窩前方に膿胸腔を開放した.連日の包交にて創面の浄化をはかり,創面MRSA感染は持続したものの,1991年4月2日創面掻爬,気管支瘻閉鎖を行い,同4月16日Scapular Flapにて開放創面の被覆閉鎖を施行した.手術手技は右肩甲部にてcircumflex scapular arteryの横走するcutaneous branchを中心に14× 8cmの皮膚弁を作成し,腋窩背側部の筋間にトンネルを開け有茎にて創面へ誘導,創線にflapを全周性に縫合し肺raw surfaceを含む浅い開放創全体を被覆した.術後MRSAによる小膿瘍が創縁に生じたが,数回の小処置にて現在創下端に僅かな皮膚瘻を残すのみで,開放創の閉鎖にほぼ成功した.
著者
古川 幸穂 寺本 晃冶 後藤 正司 元石 充 岩切 章太郎 藤本 利夫 岡崎 強 松倉 規 塙 健 山下 直己 松井 輝夫 桑原 正喜 松原 義人
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.524-528, 2003-05-15
参考文献数
7
被引用文献数
5 1

pleomorphic carcinomaの1例を経験した.症例は64歳.女性. 2000年9月頃から咳嗽が出現し,胸部レントゲン写真で,左下葉の著明な含気低下と左下葉に腫瘍陰影が認められ,2001年1月当科紹介人院となった.胸部CT写真では,左S^6に結節陰影が認められ,左主気管支がほぼ閉塞していた.気管支鏡検査では,左主気管支を閉塞する白色ポリープ状の腫瘤を認めた.鉗子生検を施行したが,正常気管支粘膜のみで確定診断は得られなかった.画像所見と内視鏡所見から肺癌を疑い,左肺全摘除術を施行した.切除標本の肉眼的所見は,腫瘍は左下葉から発生し,左下葉支から左主気管支,左上葉支までポリープ状に進展していたが,気管支粘膜には浸潤していなかった.病理組織学的所見では,腫瘍の大部分は腺癌であり,腫瘍の4分の1にspindle cell, giant cellを認め,pleomorphtc carcinomaと診断した.
著者
石川 紀彦 石川 智啓 川瀬 裕志 澤 重治
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.579-582, 2000-05-15
参考文献数
7
被引用文献数
1

症例は72歳, 男性.受診後2日間にわたる約400mlの喀血を認め, 1999年8月6日入院となった.胸部X線写真では異常は認められなかった.胸部CT検査では, 下行大動脈に接して塊状, あるいは網状の出血を疑わせる浸潤影を認めた.気管支鏡検査では, 左下葉枝からの出血と軽度の気管支拡張症を認めた.気管支拡張症による喀血を疑い, 8月10日に気管支動脈塞栓術を施行した.その後安定していたが2週間後に約200mlの再喀血を認めたため, 翌日手術を施行した.下行大動脈に嚢状瘤があり, これに左下葉が強固に癒着していた.喀血の原因は胸部大動脈瘤肺内穿破と診断した.癒着した肺を部分切除し, ついで瘤の中枢側及び末梢側にカニューションし一時的バイパスを作製した.瘤の上下で大動脈を遮断し瘤を島状に切除し, パッチ閉鎖した.縫合部の補強目的にゴアテックスシートでパッチ部を被覆した.術後経過は良好で9月24日に退院した.
著者
岡谷 泰治 宇高 徹総 高木 章司 永廣 格 三竿 貴彦 山中 正康 青江 基 岡部 和倫 伊達 洋至 安藤 陽夫 清水 信義
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.9, no.7, pp.870-874, 1995-11-15
参考文献数
10
被引用文献数
5

成熟型奇形腫は時に隣接臓器に穿孔を来すことが知られており,その発生頻度は36%に及ぶと報告されている.今回我々は,胸部単純X線写真で急速な腫瘤陰影の拡大を認め,術後に肺への穿孔が確認された縦隔成熟型奇形腫の一例を経験したので報告する.症例は12歳の女児で1993年5月20日頃より肺炎様症状を認め,6月12日に突然の前胸部痛,激しい咳嗽および発熱が出現し近医に入院した.6月17日に当科に入院するまでの5日間に胸部単純X線写真上で腫瘤陰影の明らかな拡大を認めた.精査の結果,縦隔奇形腫と診断して,6月21日に腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は前縦隔右側にあり,右肺上葉の一部と強固に癒着していたため右肺上葉の一部の合併切除を要した.病理組織検査で腫瘍と癒着していた肺内には膿瘍の形成を認め,肺穿孔を伴った成熟型奇形腫と診断された.
著者
永田 旭 平塚 昌文 吉田 康浩 柳澤 純 濱武 大輔 蒔本 好史 白石 武史 岩﨑 昭憲
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.136-140, 2013-03-15 (Released:2013-04-01)
参考文献数
9

食物誤嚥は気道異物の原因の中でも高い割合を占める.他の気道異物と比較して,①X線検査での確定診断が困難,②構造が脆弱で細片化しやすく,摘出が困難,といった点に特徴がある.気道内食物異物の診断・治療について我々の症例をまとめ考察した.2000年1月~2011年10月までに経験した気道異物9例のうち,食物異物6例.内訳は小児4例,成人2例で,原因となる食物は豆類が5例,肉片が1例であった.あらかじめ標準化された手順のもと,全例が全身麻酔下に異物摘出処置を受けた.3例が軟性気管支鏡下,3例が硬性気管支鏡下で施行され,摘出処置に起因する重篤な合併症の発生はみられなかった.気道インターベンションは複雑で多様性に富み,かつ危険を伴う外科処置であるが,他科の協力を含む手順の標準化(プロトコール化)により安全な施行が可能となると考えられた.
著者
萱野 公一 北村 泰博 竹尾 正彦 森末 真八 山本 満雄 水野 裕 目黒 文朗
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.9, no.7, pp.849-853, 1995-11-15
参考文献数
8
被引用文献数
6 2

症例は42歳の男性,主訴ほ血痰,1992年3月に喀血あり胸部異常陰影を指摘されていたが放置していた.1994年6月頃より血痰があり外科紹介となった.胸部X線写真で右中肺野に透過性の亢進した嚢胞様病変を認めた.先天性嚢胞性腺腫様奇形type 1の疑いで胸腔鏡下右中葉切除術を施行した.嚢胞は最大径8cmで中葉に限局し,周囲には軽度の癒着を認めた.葉間より脈管系をA^5から順次処理していき気管支はENDOGIA 30を用いて縫合切離した.術後経過は良好であった.病理組織診では肺実質内に大小の嚢胞を認め,嚢胞壁の大部分は多列線毛上皮で上皮下には平滑筋が存在したが,軟骨を欠いていた.悪性像を認めず,CCAM type 1と診断した.
著者
今給黎 尚幸 大渕 俊朗 濱中 和嘉子 吉田 康浩 宮原 聡 柳澤 純 濱武 大輔 白石 武史 岡林 寛 岩崎 昭憲
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.595-599, 2011-09-15 (Released:2011-10-26)
参考文献数
10

肺分画症は,肺組織に体循環系の奇形性異常動脈からの流入を有する先天性疾患であり,肺葉内分画症と肺葉外分画症とがある.我々は1994年4月から2010年3月までに当院およびその関連施設で手術を行った肺分画症15例を対象とし,術前診断および手術手技を中心にその臨床像を検討した.術前に全例で造影CTが施行されたが確定診断に至ったものは11例であり,残りの4例は術中所見で診断された.下葉に嚢胞や硬化像が認められる症例では肺分画症も念頭に入れ,異常動脈を検索することが必要である.胸腔鏡手術は4例に適応され,その内2例で開胸手術に移行した.条件が整えば胸腔鏡手術でも安全に施行できる症例があることが確認された.異常動脈の処理における自動縫合器の使用については,本検討では8例に施行され合併症は認めず利便性と安全性を鑑みると十分容認できると考えられた.
著者
田村 昌也 村田 智美 飯野 賢治 太田 安彦
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.631-634, 2003-09-15
被引用文献数
2 1

当科で経験した特発性血気胸治療例14例について検討した.平均年齢は31.2歳(21〜63歳)で,女性は1例のみであった.気胸初発例,III度の高度虚脱例が多くを占めた.出血源は10例が肺尖部の癒着断裂による出血であり,2例は肺嚢胞表面の血管からの出血であった.発症からそれぞれ5日,6日が経過していた症例にVATSを試みたが,血腫の排出と視野の確保に難渋したため,開胸術に移行した.また発症から15日経過していた症例に対してVATSを完遂したが,術後,気漏遷延により,再手術となった.気漏遷延例を除く平均術後ドレーン留置期間,平均術後入院期間,術後鎮痛剤の使用日数の上で,VATSは開胸術に優っていた.出血量,空気漏の持続,肺再膨張の程度などを総合的に判断し,迅速に手術適応を決定する必要がある.また発症早期であれば,胸腔鏡下手術は第一選択として施行されるべきであると考える.
著者
伊藤 祥隆 小田 誠 太田 安彦 呉 哲彦 常塚 宣男 渡邉 剛
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.119-121, 2001-03-15
被引用文献数
2 2

症例は16歳, 男性.既往歴として4歳児に漏斗胸に対して胸骨翻転術を施行され, 14歳時にMarfan症候群と診断された.1994年に右自然気胸に対し胸腔鏡下肺部分切除術を施行した.1996年2月に右気胸を再発し保存的に加療したが, 同年4月に右気胸を再々発し, 小開胸下に肺部分切除術を施行した.1997年2月15日に左背部痛と呼吸困難が出現し, 当科を受診した.胸部レントゲン写真にて左自然気胸と診断した.胸腔ドレーンを留置して保存的に加療するも改善しないため, 2月20日胸腔鏡下手術を施行した.肺尖部にブラが多発しており, これを切除した.Marfan症候群は気胸の合併率が高く, 本例のように体格の成長に伴って気胸を繰り返し再発することもあり, 注意深い経過観察が必要と思われた.
著者
及川 武史 野本 靖史 木下 孔明 平田 剛史
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.654-660, 2008-05-15
被引用文献数
3

緊張性気胸により完全気道閉塞となった気管支腫瘍を経験したので報告する.症例は30歳男性.以前より喘息を指摘されていたが咳嗽が悪化したため近医受診.胸部レントゲン写真上に異常陰影を指摘されたため,当センター呼吸器内科に紹介され入院となった.入院後の気管支鏡にてポリープ状巨大気管支腫瘍が左上区支末梢より発生し気管へ突出していることを確認し,生検を行いfibroepithelial polypと診断した.初回治療では気管に突出している部分の腫瘍のみを気管支鏡にてスネアリングおよびレーサー焼灼した.その後,追加治療を計画していたが,突然の呼吸停止を認めた.気管内挿管施行後の気管支鏡では腫瘍が気管を閉塞しており,胸部X線写真では左緊張性気胸となっていた.呼吸器外科に転科後,左上葉切除術を施行し気管支腫瘍を摘出した.現在まで約2年の経過観察を行っているが無再発生存中である.
著者
及川 武史 野本 靖史 木下 孔明
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.914-919, 2008-09-15
被引用文献数
7 8

小型肺腫瘤に対する術前CTガイド下マーキングは一般的に行われている.合併症として空気塞栓を発症し,脳塞栓や心筋虚血などを合併し死に至る可能性もある.我々はCTガイド下マーキング時に空気塞栓症を発症し,その後左半身麻痺が残存した1例を経験したので,考察を加え報告する、症例は59歳男性.胸部CTにて充実性陰影を伴うスリガラス陰影(mixed GGO)を指摘され,当センター紹介となった.3ヵ月間の経過観察で変化がなかったため,手術による精査加療のため入院となった.胸部CTでは術中触知不能と考えられる小型mixed GGOであるため,術前CTガイド下マーキングを施行した.手術当日,マーキング終了直後の咳嗽とともに意識レベルの低下,血圧低下および呼吸状態の悪化を認めた.頭部CTにて右脳血管内空気塞栓と心電図のST上昇が確認され,直ちに救命処置を行った.しかし,左半身麻痺は残存し,発症後4ヵ月の現在リハビリ中である.
著者
馬場 哲郎 浦本 秀隆 山田 壮亮 桑田 泰治 永田 好香 重松 義紀 下川 秀彦 小野 憲司 竹之山 光広 花桐 武志
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.002-006, 2011-01-15 (Released:2011-04-27)
参考文献数
12

肺カルチノイド切除10例について臨床病理学的因子と治療成績に関して検討を行った.定型的カルチノイド(TC)が7例で非定型的カルチノイド(AC)が3例.平均年齢は49.5歳で,男性6例,女性4例(全例TC)であった.術前にカルチノイドの診断がついたのは4例であり,他組織型の肺癌と診断されたのが4例.術式は肺摘除が2例,二葉切除が1例,肺葉切除4例,区域切除1例,部分切除1例,気管支形成術1例であった.TCでは術後(平均観察期間63ヵ月)の再発例はなく,ACは全例が再発.カルチノイド全体での5年生存率は62.5%で,TCは100%,ACでは5年生存例はなかった.TCについては機能温存手術の適応の検討が,ACについては周術期の補助療法など集学的治療の検討が必要であると考える.
著者
前田 亮 磯和 理貴 菊地 柳太郎
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.871-876, 2007-11-15
被引用文献数
9 1

当院における急性膿胸に対する胸腔鏡下手術を検討した.2002年4月から2006年6月までに当院で急性膿胸に対して胸腔鏡下手術を施行した症例は12例であり,男性10例,女性2例,年齢は46歳から86歳までで平均66歳であった.術後ドレナージ期間は3〜17日(平均6.7日)で,術後在院日数は11〜33日(平均20.5日)であった.術後膿胸の再燃は認められず,手術死亡および在院死亡は認められなかった.急性膿胸手術に胸腔鏡を用いることは有効であると思われた.
著者
里田 直樹 藤永 卓司 福瀬 達郎 磯和 理貴 乾 健二
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.596-601, 2002-05-15
参考文献数
16
被引用文献数
5 2

肺内穿孔をきたし緊急手術を行った縦隔奇形腫の1例を経験した.症例は18歳,男性.2001年4月の検診にて右肺門部に腫瘤陰影を認め同月の胸部CTで前縦隔腫瘍と診断し手術予定で外来経過観察をしていたが,2001年5月17日より胸痛,血痰,高熱が出現し,同年5月20日右中下肺野に浸潤影を認めたため当科緊急入院した.エコーガイド下縦隔腫瘍穿刺吸引による腫瘍内溶液の性状はアミラーゼ0IU/l,リパーゼ4U/l,トリプシン19ng/lと低値であり,腫瘍内溶液は黄色ブドウ球菌に感染していた.全身状態の悪化が著しいと考えたため,2001年5月22日縦隔腫瘍摘出術及び右肺中葉切除術を行った.摘出標本の病理組織学的検査で縦隔奇形腫と診断された.術前に上昇していたSCC抗原,CA19-9,可溶性IL-2レセプターは術後正常化しており嚢胞内産生が考えられた.
著者
後藤 正司 岡本 卓 中野 淳 中島 尊 桝屋 大輝 劉 大革 亀山 耕太郎 石川 真也 山本 恭通 黄 政龍 横見瀬 裕保
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.132-135, 2004-03-15
被引用文献数
4 3

左側は66歳,女性.64歳時に右乳癌にて右胸筋温存乳房切除術を受けた.病理病期はstage II で,術後DMpC療法(5'-DFUR : 800mg,MPA : 800mg,CPA : 100mg)を施行中であった.2003年1月16日,胸部CTで左S^8にspicula, notchを伴う小結節陰影の出現を認めた.結節陰影の増大を認め,またFDG-PETで,左S^8の結節陰影に一致して集積を認め,精査目的で,2003年3月24日当科へ入院した.CT下肺生検では確定診断に至らず,2003年4月23日,胸腔鏡補助下肺生検を施行し肺クリプトコッカス症と診断された.腫瘤陰影を呈する肺クリプトコッカス症のCT所見は肺癌と類似し,PETでも陽性を示すことがあるため画像上の鑑別は困難である.
著者
高砂 敬一郎 矢満田 健 牧内 明子 近藤 竜一 沼波 宏樹 花岡 孝臣 町田 恵美 宮澤 正久 吉田 和夫 青木 孝學 羽生田 正行 天野 純
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.627-631, 1999-07-15
被引用文献数
4 3

症例は75歳, 女性.1992年3月21日, 左下葉の肺硬化性血管腫に対して核出術を施行した.術後, 外来で経過観察されていたが, 手術より約4年後の1996年5月, 胸部X線写真上, 左上下肺野に腫瘤陰影が多数認められ, 擦過細胞診で肺硬化性血管腫と診断された.本症例はその臨床経過より再発と考えられた.従来より肺硬化性血管腫の手術術式は核出術が一般的であったが, 核出術施行後の局所再発症例の報告や本症例を考えると, 可能であれば部分切除術以上の術式の選択が必要と思われた.また, まれではあるが再発を念頭においた術後の経過観察が必要と思われた.
著者
足立 孝 櫻庭 幹 村杉 雅秀 宮野 裕 桑田 裕美 池田 豊秀 大貫 恭正
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.7, pp.779-783, 2002-11-15
被引用文献数
5 4

縦隔発生のparagangliomaは比較的稀な疾患である.われわれは縦隔原発で,術前に集学的治療を行ったparagangliomaの1例を経験したので報告する.症例は56歳,女性.胸部違和感とともに咳嗽出現し,他医で検査を受けたところ縦隔腫瘍を指摘され当科紹介となる.胸部CTで中縦隔から前縦隔にかけて7×6cmの血管に富む腫瘍を認め,腫瘍生検でparagangliomaの診断を得た.腫瘍の解剖学的位置関係から放射線治療を行い腫瘍縮小効果を得たところで,腫瘍血管に対しプラチナコイルで血管塞栓術を追加した.手術では腫瘍の血管壁よりの剥離は困難で臨床的にはmalignant potentialであると判断し,結果として完全摘出に至らなかった.組織学所見で明らかな悪性所見はなく最終的にもparagangliomaと診断された.paragangliomaに対しては腫瘍摘出術以外に確立された治療法はなく,本症例では遺残腫瘍の今後の動向を観察する必要がある.