著者
市原 智史 長阪 智 田崎 拓朗 横手 芙美 桑田 裕美 喜納 五月
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.608-613, 2014-07-15 (Released:2014-08-20)
参考文献数
17

症例は74歳女性.16年前に右拇指悪性黒色腫の切除術を受けていた.当科紹介1年前頭痛,ふらつきが出現.前医で右前頭葉と右肺中葉の腫瘤影を指摘された.症状改善と診断目的に当院脳神経外科で開頭腫瘍摘出術を施行.黒色腫脳転移と診断された.症状改善後気管支鏡検査でも同診断となり,当科受診した.肺転移切除で閉塞性肺炎が改善し転移巣全摘除と判断.外科的治療を選択した.胸腔鏡補助下右肺中下葉切除術およびND2a-2を施行.経過良好であったが,術後2ヵ月目急激な脳と気管気管支内腔の局所再発を来し,術後4ヵ月目に死亡した.脳と肺の転移に対する外科的治療は予後を改善し得なかったが,組織学的診断と症状改善の点で有効であった.同疾患既往がある場合,経過期間に関わらず転移再発を考慮すべきである.また転移再発に対する外科的治療の有効性と適応について,さらなる検討が必要である.
著者
佐藤 雅美 斎藤 泰紀 遠藤 千顕 薄田 勝男 高橋 里美 菅間 敬治 佐川 元保 永元 則義 藤村 重文
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.7, no.6, pp.638-642, 1993
被引用文献数
15 5

悪性中皮腫11例を対象に進展再発様式を検討したその結果, 血行性転移のみの例は無くリノハ行性転移のみの形態をとった例か4例, 血行性およひリノハ行性転移か4例見られたまた術創, 穿刺部位の播種か各1例, 腫瘍か臓側胸膜に浸潤したために発症したと考えられる気胸か4例見られた組織学的に肺門肺内リノハ節を検索しえた3例すへてに転移かみられた肉眼的に完全に切除されたと考えられた症例ては1例を除くと初再発部位は縦隔リノパ節, 術創, 術側胸水と局所再発の形態をとり全例6ヵ月以内に再発していたこれらの事より悪性中皮腫に対しては肺門, 縦隔をも加えた系統的なリノハ節郭清や術中の胸腔内洗浄, 術衣, 手術器械の交換なとを考慮すへきと考えられたまた高齢者の気胸症例ては本疾患を念頭におくへきと考えられた
著者
門倉 光隆 野中 誠 山本 滋 片岡 大輔 伊谷野 克佳 柴田 雅彦 谷尾 昇 川田 忠典 高場 利博
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.14, no.7, pp.785-790, 2000-11-15
被引用文献数
2

術後呼吸困難感の表現や程度は患者によって様々であり, 疼痛の有無など不確定要素が含まれるため定量的評価は困難とされている.そこで「度合いスケール」のうちvisual analog scale(VAS)を用いて開胸術前後における呼吸困難感の評価を行った.胸腔鏡下手術を除く肺部分切除23例, 肺葉切除27例の計50例を対象とし, 術前および術後120病日の間で定期的にVAS測定とHugh-Jones呼吸困難度分類(H-J)評価, 呼吸機能検査, 血液ガス分析を施行した.VASとH-J分類は良好な相関関係を示したが, VASと呼吸機能検査結果との間では, 術前FEV_<1.0>%, PFとの間, 術後は最大吸気量との間以外に相関関係は得られなかった.なお, 術後H-Jは速やかに術前の分布状態まで回復したのに対してVASでの回復は遅延し, さらにH-JI度に属する患者の中に僅かながらも呼吸努力感や不快感の存在が確認された.VAS測定は僅かな呼吸困難感の変化を連続的数値で定量評価する方法として妥当と考えられた.
著者
前田 愛 葉山 牧夫 中田 昌男 種本 和雄
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.824-828, 2006-09-15
被引用文献数
2

症例は70歳代女性.2002年8月近医にて胸部X線上左中肺野に石灰化陰影を指摘されたが自覚症状が無く経過観察されていた.2004年10月末,血痰が出現し近医を受診.画像上石灰化像の増大と新たな腫瘤影を認め精査加療目的で紹介人院となった.胸部CTでは拡張した左B^3気管支内腔に数珠状に連なる腫瘤影が存在し,内部には粗大な石灰化像を認めた.気管支鏡検査では左B^3気管支内に充満する黄金色の菌塊と,その末梢に表面粗な気管支結石がみられ,菌塊の培養にてアスペルギルスフミガタスが検出された.気管支結石を伴う気管支・肺アスペルギルス症の診断にて胸腔鏡補助下に左上区域切除術を施行した.気管支結石の成分分析では98%以上が炭酸カルシウムであり,分泌物貯留により生じた気管支結石によって気管支の閉塞をきたし,末梢気管支にアスペルギルスが感染したものと考えられた.
著者
永廣 格
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.726-730, 2009-07-15 (Released:2009-12-14)
参考文献数
16

症例は59歳女性.咳嗽・喀痰・呼吸困難で近医を受診後胸部異常影で当科紹介となった.臥位では咳漱を生じるため半座位で眠っていた.来院時の血液検査ではWBC 14600/μl,CRP 12.9mg/dlと炎症所見を認めた.胸部X線では左横隔膜の挙上と拡張した大腸ガス像が左下肺野に認められた.胸部CTでは巨大結腸と左横隔膜の頭側への著明な圧排が認められた.主訴は呼吸器症状であり腹部臓器の観察の必要はないと考え胸腔側から手術を行った.左第7肋間開胸で弛緩した横隔膜を部分切除後マーレックスメッシュで補強した.術後呼吸器症状は改善し臥位でも睡眠できるようになった.横隔膜弛緩症を修復し巨大結腸を腹腔側へ圧排することに伴う腹部症状の悪化を懸念していたが,もともと存在した便秘以外は認めなかった.
著者
森山 重治 宇高 徹総 宮出 喜生 清水 信義
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.80-86, 1994-01-15

症例は55歳,女性.咳嗽,労作時呼吸困難を主訴に近医で胸部異常陰影を指摘された.画像診断上前縦隔に腫瘍を認め,穿刺針生検で線維性胸膜中皮腫の診断を得た.24ヵ月前の検診時の胸部X線で右上縦隔に約3cm大の腫瘤を認めた.1992年4月22日胸骨正中切開で開胸.右縦隔胸膜と心嚢に強固に癒着しており,これを剥離して腫瘤を摘出した.腫瘤は重量545g,大きさ12.8×10.0×7.3cmで心嚢に癒着した部位に被膜欠損を認め,右腕頭静脈付近に一致する部位に茎が存在した.病理学的に腫瘍細胞に悪性所見は見られなかった.術後前縦隔に急速に再発し,同年7月15日再手術を施行した.腫瘤は心嚢内腔に浸潤しており,心嚢を合併切除した.再発腫瘤は重量160g,大きさ9.0×7.0×5.0cmであった.患者は再手術後約3ヵ月で心嚢内に腫瘤を形成し,心タンポナーデのため死亡した.縦隔内に有茎性に発育し,急速に増大発育した稀な症例であった.
著者
吉村 誉史 張 吉天 大畑 恵資 伊東 真哉 松原 義人 寺田 泰二
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.532-537, 2014-05-15 (Released:2014-06-13)
参考文献数
11

肺ヒストプラズマ症は国内ではまれな真菌感染症であるが,輸入真菌症としてその報告が近年散見されるようになっている.今回我々は,中米滞在後の帰国時健診で発見された肺ヒストプラズマ症の1手術例を経験したので報告する.症例は55歳,女性.海外ボランティアとして2年間ホンジュラスに滞在し,帰国時健診で胸部異常陰影を指摘され,当科を受診した.胸部CTでは左肺下葉胸膜に接して26 mm大の腫瘤を認めた.気管支鏡検査では診断に至らず,胸腔鏡下左肺下葉部分切除術を施行した.病理組織所見は,同心円性層状構造がみられる類円形腫瘤で凝固壊死組織からなっていた.Grocott染色では腫瘤中心部に卵円形真菌を認め,肺ヒストプラズマ症と診断した.
著者
光井 卓 清水 奈保子 田中 雄悟 大路 剛 亀井 克彦 眞庭 謙昌
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.57-61, 2020-01-15 (Released:2020-01-15)
参考文献数
15

症例は46歳女性.中米を拠点として中南米で勤務している.健診で胸部異常陰影を指摘され,CT検査で右肺下葉に辺縁明瞭な2 cmの小結節が認められた.現地でCTガイド下生検術を施行されるも悪性所見は認めず,抗酸菌,真菌の感染所見も認めなかった.精査目的で帰国後,前医で気管支鏡検査を施行されるも壊死のみで診断がつかず,肺生検目的で当科に紹介となった.胸腔鏡下右下葉部分切除術を施行し,術中迅速検査にて悪性所見は認めず,炎症性肉芽腫の診断であった.検体は黄白色調,凝固壊死を伴った類上皮肉芽腫であり,病理診断では抗酸菌染色は陰性,Grocott染色で類円形,楕円形の酵母様真菌が認められた.術後血清H. capsulatum陽性を確認し,肺ヒストプラズマ症と診断した.免疫正常者であり,無症状であることからIDSAガイドラインに則り,経過観察となった.術後20ヵ月現在,感染の再燃なく経過している.
著者
林 諭史 川田 将也
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.666-669, 2023-11-15 (Released:2023-11-15)
参考文献数
3

肺動脈本幹中枢側から分岐する枝の処理は,ロボット支援下左上葉切除術で最も注意を要する手技である.第8肋間を中心とした一般的なポート配置では,肺動脈枝の剥離時に背側から挿入されたretraction armが他instrumentと干渉するため,助手の視野展開を要する場面が存在する.da Vinci XiⓇで導入されたポートホッピングを用い,retractionとscopeを移動させることで,術者が左上葉を自由に展開しつつ,安全な手術を行うことができた.ポートホッピングは容易であり,左上葉切除術において有用と考える.
著者
小林 萌 熊谷 陽介 平山 安見子 尾田 博美 長 博之 黄 政龍
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.635-639, 2023-11-15 (Released:2023-11-15)
参考文献数
15

縦隔に発生する血管腫は比較的稀であり,全縦隔腫瘍の0.5%以下とされ,術前診断は困難である.症例は61歳女性.健診で心電図異常を指摘され当院循環器内科を受診した.冠動脈CTで前縦隔に腫瘤影を指摘され,当科を受診した.CTで造影効果があるため胸腺腫を疑い,診断および治療目的に手術を行った.左胸腔よりアプローチし,暗赤色で弾性軟の腫瘤を認め,胸腺左葉の一部と共に摘出した.病理組織検査で海綿状血管腫と診断した.縦隔腫瘍の診断においては,血管腫の存在も念頭に置く必要がある.
著者
沖 智成 山下 貴司 望月 孝裕
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.640-645, 2023-11-15 (Released:2023-11-15)
参考文献数
14

症例は44歳の男性で健診の胸部X線写真で異常を指摘され当科に紹介となった.胸部CT,MRIで大動脈遠位弓部背側に胸管に接する囊胞を認め,胸管囊胞の疑いで手術を施行した.頭側の胸管は左鎖骨下動脈,食道,椎体の間で確保して結紮切離した.尾側の胸管は肋間動静脈を切離して下行大動脈を腹側へ授動することにより視野が得られ,下行大動脈,食道,椎体の間で確保して結紮切離した.大動脈,食道,椎体に囲まれた組織を一塊に切除することにより,胸管を含む胸管囊胞を摘出した.術中および術後に乳びの流出は認めなかった.胸管囊胞を疑って手術をする場合,胸管を適切に処理する必要があるが,左胸腔から胸管にアプローチする機会は少なく,手技は定型化されていない.今回,下行大動脈の授動と縦隔臓器を剥離面とした縦隔組織の一括摘除により,縦隔左側に生じた胸管囊胞を囊胞および胸管を損傷することなく安全に切除可能であったため報告する.
著者
野中 裕斗 武田 亜矢 横枕 直哉 狩集 弘太 上田 和弘 佐藤 雅美
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.661-665, 2023-11-15 (Released:2023-11-15)
参考文献数
12

術中に#3aリンパ節腫大を認め,摘出したところ混合型大細胞神経内分泌癌のスキップ転移であったにも関わらず,長期生存を得た症例を経験したので報告する.症例は45歳, 男性.右S1の原発性肺癌に対し,胸腔鏡下右上葉切除術ならびに肺門縦隔リンパ節郭清を施行した.術中,上大静脈前方に炭粉沈着を伴う腫大した#3aリンパ節を認め,追加で摘出した.病理診断は混合型大細胞神経内分泌癌で,#3aリンパ節のみに転移を認め,pT2a(pl1)N2M0,pStageIIIAと判定した.術後補助化学療法を施行し,術後5年7ヵ月の現在,無再発生存中である.一般的なリンパ節郭清範囲外へスキップ転移する症例もあり,胸腔内の観察と適切な切除が重要である.
著者
藤川 遼 小澤 広輝 小林 淳
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.629-634, 2023-11-15 (Released:2023-11-15)
参考文献数
23

完全内臓逆位に合併した肺癌に対してfissureless lobectomyを施行した1例を報告する.症例は完全内臓逆位を指摘されている67歳女性.血液透析のシャント瘤増大を主訴に受診し,CTで偶発的に左上葉結節影を指摘された.気管支鏡検査を含む全身評価でcT1aN0M0,cStageIA1,腺癌と診断し,手術を行った.小開胸によるhybrid VATSアプローチで手術を開始,左肺は3葉に分かれていたが,分葉不良でありfissureless lobectomyを行うこととした.鏡面像であったが術前の3D-CTで解剖を把握していたため,通常の右上葉切除術と同様の手順で左上葉のfissureless lobectomyを完遂した.完全内臓逆位患者においても,術前に3D-CT等で綿密な計画を立てることでfissureless lobectomyは安全に施行可能であった.
著者
高橋 剛士 福瀬 達郎 倉橋 康典 木場 崇之 高橋 鮎子 福田 正順 妻鹿 成治 板東 徹 田中 文啓 平田 敏樹 越久 仁敬 長谷川 誠紀 寺田 泰二 池 修 和田 洋巳 人見 滋樹
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.685-689, 1999-07-15 (Released:2009-11-11)
参考文献数
11

上肢に症状を呈したBuer墓er病に対して胸腔鏡下交感神経切除術が奏功した一例を経験したので報告する.症例は46歳, 男性.一日約40本, 25年の喫煙歴があった.約半年前から両上肢の指末梢側を中心として痺れ, 冷感が出現し始めた.Buerger病との診断にて星状神経節ブロック術を受けたが症状の改善は一時的で, 疼痛も増悪してきたため両側胸部交感神経節切除術を施行した。術直後より癖痛, 痺れ, 冷感の著しい改善を認め, 術後6週間を経た時点では痺れ, 冷感は全く認められず, 術前潰瘍化していた指の完全治癒を認めた.サーモグラフィーにても上肢末梢皮膚温の著明な上昇を認めた.レーザードップラー血流計を用いて指末梢側の組織間血流を計測したところ, 症状の改善とよく一致して血流の増加を認めた.このことからBuerger病における術前術後の組織間循環の評価に際してレーザードップラー血流計が有用であると考えられた.
著者
守屋 真紀雄 太田 安彦 川島 篤弘
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.742-747, 2010-05-15 (Released:2010-08-09)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

症例は39歳,女性.右前頸部腫瘤の穿刺吸引細胞診にて扁平上皮癌と診断され,精査加療目的に紹介された.画像所見より,原発不明癌の頸部リンパ節転移,または縦隔癌を疑い,腫瘍摘出術を施行した.病理学的に,大部分が未角化な腫瘍で,一部角化を伴い,ハッサル小体様の構造も認め胸腺癌が疑われた.免疫組織化学染色では,胸腺癌のマーカーであるCD5が陽性であり,その他の免疫組織化学染色結果と合わせてCarcinoma showing thymus-like differentiation(以下CASTLE)と診断した.CASTLEは甲状腺内あるいは頸部軟部組織の異所性胸腺や胎生期胸腺遺残組織から発生する非常に稀な腫瘍である.頸部・上縦隔腫瘍の鑑別診断としてCASTLEを念頭に置く必要がある.
著者
米地 敦 樋口 光徳 塩 豊 鈴木 弘行 藤生 浩一 管野 隆三 後藤 満一
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.193-198, 2002-03-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
12
被引用文献数
6 6

症例は56歳女性.持続腹膜透析 (continuous ambulatory peritoneal dialysis: 以下CAPDと略す) 施行中に透析液の消失と胸水貯留があり精査のために当院に入院した.胸腔腹腔シンチで横隔膜交通症と診断された.胸腔鏡下に手術施行し横隔膜に責任病変を認め外科的な治療にてCAPDの再開に成功した.横隔膜交通症は保存的に加療されることが多く, その半数でCAPDを断念し血液透析に移行している.外科的に治療された症例を検索したところ12例の報告があり, 10例でCAPDの再開に成功していた.胸腔鏡下手術は侵襲が少なく優れた術式であり, 責任病変の有無を調べるという診断的意味も含めて有効な手段だと考えられる.
著者
林 祥子 児嶋 秀晃 水野 潔道 保浦 慶之 清水 麗子 茅田 洋之 井坂 光宏 庭川 要 大出 泰久
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.394-399, 2019-05-15 (Released:2019-05-15)
参考文献数
27

腎細胞癌(以下,腎癌とする)は血行性転移を来たしやすく転移部位として肺が最も多い.2002年9月~2015年3月に,腎癌根治術後に当科で切除した腎癌肺転移症例23例の治療成績と予後因子を検討した.5年無再発生存率は38.4%,5年生存率は91.3%であった.予後因子の解析では,区域切除または楔状切除症例は肺葉切除症例に比べて有意に予後良好であった(5年生存率100.0%/60.0%,P=0.01).腫瘍の主座では,末梢症例が中枢症例に比べ(5年生存率100.0%/77.8%,P=0.10),またDisease-free intervalでは24ヵ月以上の症例で予後良好な傾向を認めた(5年生存率100.0%/81.3%,P=0.11).腎癌肺転移は内科治療では根治が期待できないため,少数であるが無再発長期生存が期待できること,非担癌期間が得られることより,外科的切除の意義は高いと思われる.
著者
阪本 仁 小阪 真二 土屋 恭子
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.928-931, 2009-11-15 (Released:2010-01-28)
参考文献数
10

1999年3月から2008年9月までに新生児気胸と診断された50症例を検討した.男児が33例,女児が17例であった.病側は左側が14例,右側が23例,両側13例であった.超未熟児が2例,極小未熟児が3例,低出生体重児が10例,巨大児が1例で,他の34例は正常体重であった.早期産が15例,正期産は35例で過期産はなかった.発症日齢は日齢0が31例で最も多かった.肺基礎疾患は胎便吸引症候群が17例,呼吸窮迫症候群が13例,新生児一過性多呼吸が12例,肺低形成が4例であった.気胸発症前に呼吸器管理を受けた症例が24例であった.治療は胸腔ドレナージが13例(2例が両側),胸腔穿刺が2例,高濃度酸素療法が4例であった.気胸の転帰は46例が軽快で,4例が死亡であった.胸腔ドレナージを施行した13例のうち早期産が10例,気胸発症前に呼吸器管理を受けた症例が12例で,それぞれ正期産,発症前に呼吸管理を受けなかった症例と比べて有意に頻度が高かった.死亡例4例のうち早期産が3例,気胸発症前に呼吸器管理を受けた症例が4例で,死亡例全例に肺基礎疾患を認めた.早期産および気胸発症前に呼吸器管理を受けた症例において積極的な胸腔ドレナージの適応と考えられた.
著者
栁澤 純 宮原 聡 濱武 大輔 今給黎 尚幸 大渕 俊朗 樋口 隆男 吉永 康照 白石 武史 岩崎 昭憲
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.780-783, 2010-07-15 (Released:2011-02-09)
参考文献数
14

腎癌は血行性転移を来たしやすく,その転移先では肺が多いとされる.腎癌肺転移巣に対し外科的切除を行った症例の治療成績および予後予測因子を検討した.1995年3月~2008年12月までの間に外科的治療を行った転移性肺腫瘍のうち,腎癌からの肺転移症例は14例あった.術式は肺部分切除術が13例に,区域切除術が1例に行われた.肺転移巣切除後のmedian survival time(MST)は40.1ヵ月で5年生存率はそれぞれ35%であった.また,これらのうちdisease free interval(DFI)を2つの群に分け検討したところ,DFIが24ヵ月未満の症例ではMST 40ヵ月,5年生存率17%であった.一方DFIが24ヵ月以上の症例ではMST 69.9ヵ月,5年生存率67%と有意差は認めないが良好な成績であった.腎癌肺転移症例に対して,特にDFIが24ヵ月以上の症例では積極的な外科的治療により,長期予後が期待できると考えられた.