著者
竹内 茂 長田 博昭 小島 宏司 島田 厚 栗栖 純穂 横手 薫美夫 山手 昇
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.440-444, 1996-05-15 (Released:2009-11-11)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

自然気胸症例における術後再発防止の為, 当科では1978年以降, 開胸手術に際し, 壁側胸膜部分切除を併用してきた。1992年以降は自然気胸症例に対し胸腔鏡下手術を第一選択としているが, 胸腔鏡下でも従来の開胸手術と同様に壁側胸膜部分切除が肝要と考え, 全例にこれを併用している.胸腔鏡導入後38例40側の自然気胸症例に対して同手術をした.壁側胸膜部分切除の所要時間は平均で10分, 出血量は術中全体でも20ml以下であり, 術後合併症として特別なものはなかった.また, 再発は40側中1側2.5%に見られたのみであった.したがって, 自然気胸症例に対する胸腔鏡下壁側胸膜部分切除術は容易かつ有用な方法であると思われた.
著者
花岡 淳 井上 修平 大内 政嗣 五十嵐 知之 手塚 則明 北村 将司
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.606-612, 2009-05-15 (Released:2009-12-14)
参考文献数
8

症例1は85歳男性.20歳時に胸囲結核に対して手術療法を施行された既往があった.症例2は49歳男性.8ヵ月前まで肺結核に対して抗結核化学療法を施行されていた.両症例とも膿瘍内に腐骨を伴っており,抗結核化学療法開始1ヵ月後でも増大傾向を示した.そのため,注入したインジゴカルミン液をガイドに膿瘍郭清術および肋骨切除術を施行した.術後も抗結核化学療法を継続して行い,現在も再発を認めていない.胸囲結核症例に遭遇する機会は減少したが,胸壁腫瘤の鑑別診断にあげられることに留意しておく必要がある.治療には充分な抗結核薬の投与と適切な時期に徹底した膿瘍郭清を行うことが重要である.
著者
河本 宏昭 土田 真史 手登根 勇人 具志堅 益一 西島 功 松本 裕文
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.177-182, 2019

<p>症例は35歳男性.突然発症の右前胸部痛を主訴に来院した.放射線検査では胸腺囊胞内の出血と考えられたが,縦隔内の出血はわずかで胸腔内穿破はなくバイタルサインは安定しており,胸痛はすぐに消失したため緊急手術は行わず経過観察とした.しかし数ヵ月で囊胞は増大傾向を認め,また腫瘍合併を否定できないため発症後6ヵ月後に胸骨正中切開にて胸腺全摘術を行った.腫瘤周囲は癒着が高度で右縦隔胸膜は合併切除を要した.病理学的検索では腫瘍性病変は認めず,出血を伴った胸腺囊胞であった.成人における胸腺囊胞は経過観察の対象となることが多いが,本症のように出血やそれに伴う炎症を合併する場合や,腫瘍の合併が鑑別に挙がる症例では積極的な手術が必要と思われる.</p>
著者
倉橋 康典 平井 隆 岡本 卓 山中 晃
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.123-128, 2007-03-15 (Released:2008-11-10)
参考文献数
22

高分解能CT(HRCT)ですりガラス陰影(ground-glass opacity; 以下GGO)を呈する異型腺腫様過形成(atypical adenomatous hyperplasia; 以下AAH)や細気管支肺胞上皮癌(bronchioloalveolar carcinoma; 以下BAC)は肺腺癌の周囲に多発することが知られている.今回我々は多発性のGGOを示した3例を経験したので報告する.多発GGOはその数,性状,部位など症例ごとにばらつきがあるため,統一した治療方針の確立は困難であり,症例に応じた手術・経過観察の方法を個々に検討していく必要がある.術後残存するGGOに対してはHRCTによる注意深い観察が必要で,大きさ・性状・濃度に変化を認めた場合には,再手術や放射線療法,化学療法を含めた治療を考慮する必要がある.
著者
滝沢 恒世 寺島 雅範 小池 輝明
出版者
The Japanese Association for Chest Surgery
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.7, no.7, pp.764-769, 1993-11-15 (Released:2010-02-22)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

器械縫合の332例と手縫い縫合の500例において気管支に対する器械縫合と手縫い縫合の安全性を比較検討した.気管支瘻発生率は器械縫合332例中8例2.4%, 手縫い縫合500例中6例1.2%であった.一葉切除では器械縫合267例中4例1.5%, Sweet法手縫い縫合253例中1例0.4%, 0verholt法手縫い縫合172例中0例0%の気管支瘻発生率で, 手縫い縫合に比して器械縫合の気管支瘻発生率が高い傾向にあった.一葉切除の器械縫合気管支瘻例では脚高3.5mmのステープルで気管支が強く絞められすぎて損傷している所見が認められた.一葉切除でも気管支壁が厚ければ脚高4.8rnmのステープルを使用した方がよいと考えられた.特に炎症性肥厚のある気管支は器械縫合で損傷がおきやすいので注意を要する.二葉切除では器械縫合40例中3例7.5%, Sweet法手縫い縫合29例中2例6.9%, Overholt法手縫い縫合24例中1例6.4%の気管支瘻発生率であった.肺摘除では器械縫合25例中1例4.1%, Sweet法手縫い縫合12例中2例16.7%, Overholt法手縫い縫合20例中0例0%の気管支瘻発生率であった.Sweet法手縫い縫合は一葉切除, 二葉切除, 肺摘除の順に気管支瘻発生率が高くなった.Sweet法手縫い縫合の気管支瘻例の所見からSweet法縫合は膜様部側に弱点があることが示唆された.肺摘除ではSweet法手縫い縫合より器械縫合の気管支瘻発生率が低かった.今回の対象例では一葉切除, 二葉切除, 肺摘除ともOverholt法手縫い縫合が最も気管支瘻発生率が低かった.
著者
西井 竜彦 村松 高 四万村 三恵 古市 基彦 大森 一光 塩野 元美
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.972-975, 2010-09-15 (Released:2011-02-22)
参考文献数
8

大血管手術以外の周術期に発症した非常に稀な脊髄梗塞の1例を経験したので報告する.症例は70歳男性,左肺癌に対して硬膜外併用全身麻酔下に,左上葉切除およびリンパ節郭清を施行した.術後3時間後より,右下肢,右手関節以下の麻痺が認められた.硬膜外カテーテルの影響が考えられたため,直ちに硬膜外注入を中止した.翌日になりさらに麻痺が進行し,頭部・脊椎MRIが施行されたが,診断がつかなかった.術後第3病日に施行された頚胸髄MRIでC1からTh2までの広範囲の脊髄梗塞が認められた.ステロイド,高浸透圧性利尿剤の投与で麻痺の改善傾向を認めたため,27病日リハビリ病院転院となった.
著者
奥谷 大介 高橋 健司 西井 豪
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.742-746, 2016-09-15 (Released:2016-09-15)
参考文献数
16

尿膜管癌は膀胱癌の中でもその頻度は低く,尿膜管癌の孤立性肺転移は極めて稀である.55歳,男性.51歳時,尿膜管癌p-Stage Iに対して膀胱部分切除術を施行した.尿膜管癌術後2年目の胸部CTにて左肺S1+2に約7 mmの空洞を伴う結節を認めた.以降,結節は空洞の消失と出現を繰り返しながらサイズは増大し,術後4年目には空洞を伴う13 mmの結節であった.診断治療目的に胸腔鏡下左肺部分切除術を施行し,病理学的検討より同病変は尿膜管癌の肺転移と診断された.本症例のような空洞性結節影を呈した尿膜管癌肺転移の症例は報告されていない.空洞を伴う肺腫瘍では悪性の可能性も考慮することが重要である.
著者
大渕 俊朗 濱田 利徳 岩﨑 昭憲
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.127-130, 2013-03-15 (Released:2013-04-01)
参考文献数
11

自然気胸の発生と天候の関係について検討した.2011年4月から2012年5月までに,当院に受診した初発自然気胸患者37名(男性34名,女性3名,平均年齢34.5歳)の自然気胸発生日時を調査した.気象庁が公表している気象データを基に,気胸発生日とその他の日における,日照時間,気温について統計学的に検討した.気胸発生日では日照時間が有意に短く(3.68対5.29時間,p=0.0090),また平均気温(0.84対-0.015℃,p=0.025)と最低気温(1.20対-0.03℃,p=0.038)が2日前と比較して有意に上昇していた.日照時間の短さは「天気が曇りか雨」だったことを反映しており,自然気胸が有意に‘良くない天気’の日に発生したと考えられる.しかし日照時間短縮などで代表される気象現象が我々の健康にどのような影響を与えているのかは不明であり,今後も研究が必要である.
著者
宮原 栄治 川﨑 由香里 木村 厚雄 奥道 恒夫 大成 亮次
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.698-704, 2017-09-15 (Released:2017-09-15)
参考文献数
19

胸腔鏡下ブラ切除術の術後再発率は開胸術と比較し高率で若年者において顕著である.再発予防のため切除断端・肺炎部を吸収性シート(酸化セルロース・ORCまたはポリグリコール酸・PGA)で被覆しその有効性を検討した.1986年から2015年まで施行した30歳未満の自然気胸初回手術397症例を,T群:腋窩開胸下肺縫縮術,V群:胸腔鏡下自動縫合器によるブラ切除術,O群・P群:胸腔鏡下ブラ切除およびORC(O群)・PGA(P群)によるブラ切除断端・肺尖部被覆,の4群に分けて術後再発率を検討した.T群(3.5%)に比較しV群(12.4%)は有意に高率であった.P群は1.2%でV群に比較し有意に低値であった.10歳台の再発率は15.4%であり20歳台に比較し有意に高値であった.10歳台ではP群34例に再発は認められなかった.若年者自然気胸の胸腔鏡下ブラ切除術においてPGAシート被覆は再発予防に有効であった.
著者
福本 紘一 福井 高幸 伊藤 志門 波戸岡 俊三 光冨 徹哉
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.054-057, 2011-01-15 (Released:2011-04-27)
参考文献数
12

患者は57歳男性.12年前に肝細胞癌にて肝右葉切除を施行した.肝切除後3年で両側肺転移(右S8に1ヵ所,左S9に1ヵ所)のため,右肺下葉切除を施行した.さらに1年の経過観察で左肺以外に新病変の出現がなく,左肺下葉部分切除を施行した.その後再発なく経過していたが,肝切除後12年目に右肺上葉に単発の肺転移をきたし,右肺上葉部分切除を施行した.肝細胞癌の肝内再発や他の遠隔転移がなく肺転移のみをきたし,肺切除を施行して長期生存している症例は非常に稀である.
著者
佐々木 高信 稲福 斉 照屋 孝夫 國吉 幸男
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.911-915, 2017

<p>抗凝固療法中にもかかわらず,左下葉切除後に肺静脈断端から左房内に無症候性に広範な血栓を形成した症例を報告する.患者は67歳,女性.弁膜症術後にてwarfarin内服あり.子宮頸癌と肺癌の重複癌にて当院へ紹介された.進行度を考慮し,肺癌手術を先行した.胸腔鏡補助下左下葉切除(ND2a-2)を施行(pT1bN2M0),術後特に合併症を認めず退院となった.子宮頸癌治療開始前の胸腹部造影CTにて左下肺静脈断端から左房内に広範な血栓を認めた(塞栓症状は伴わず).直ちにheparinの持続静注を開始し,以降徐々に血栓の溶解をみた.左上葉切除後の上肺静脈断端の血栓形成については広く知られるところであるが,下葉切除後の広範な血栓形成は国内・国外問わず報告は少ない.非常に稀と考え,報告する.</p>
著者
親松 裕典 鈴木 晴子 大畑 賀央 成田 久仁夫
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.586-592, 2017-07-15 (Released:2017-07-15)
参考文献数
16

目的)開胸術後鎮痛において,アセトアミノフェン定時点滴注入(点注)併用フェンタニル持続静脈内注射(静注)が硬膜外麻酔を代替する可能性を探求した.方法)アセトアミノフェン定時点注併用フェンタニル持続静注群(AF群)と硬膜外麻酔群(Epi群)の2群に分類し,後方視的に比較検討した.結果)患者数はAF群が19例,Epi群が25例であった.術後鎮痛効果は第1病日の咳嗽時のみでAF群が劣っていたが,それ以外では両群間に有意差を認めなかった.離床の遅れに差はなかったが,Epi群でリハビリ時の血圧低下が,AF群で悪心嘔吐が多く,それぞれの要因でリハビリに若干の支障を生じた症例があった.結論)アセトアミノフェン定時点注併用フェンタニル持続静注は,悪心嘔吐や咳嗽時の疼痛に対策する余地があるが,比較的良好な鎮痛効果があり,硬膜外麻酔の合併症を回避できる等の利点もあるため,開胸術後鎮痛法の一選択肢となり得る.
著者
千葉 直久 富岡 泰章 戸矢崎 利也 上田 雄一郎 後藤 正司 中川 達雄
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.834-839, 2016-11-15 (Released:2016-11-15)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

肺切除術の際に過分葉を認めることが時にあるが,不全分葉であることが多い.今回,上舌区域間に明瞭な過分葉を認めた症例に対して区域切除を行った2例を経験したので報告する.症例1は57歳男性.左S1+2の肺癌に対して,胸腔鏡下上区域切除術を施行した.上舌区域間に明瞭な過分葉を認め,肺動脈は上葉支の腹側を走行し,B1+2+3が独立して分岐する転位気管支を認めた.症例2は80歳女性.左舌区の肺癌に対して,胸腔鏡下左舌区域切除を施行した.左上舌区域間に明瞭な過分葉を認め,共通肺静脈幹を認める以外,分岐異常は認めなかった.術後経過は共に良好で,現在まで無再発生存中である.過分葉を認める肺癌手術症例について,文献的考察を交え報告する.
著者
平良 彰浩 下川 秀彦 浦本 秀隆 迎 寛 山口 幸二 田中 文啓
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.159-163, 2014-03-15 (Released:2014-04-28)
参考文献数
8

胸壁発生のカンジダ膿瘍は我々が検索しうる限り報告例はない.今回悪性腫瘍との鑑別診断に苦慮したカンジダ膿瘍の1例を経験したので報告する.症例は80代男性.2011年9月に肝細胞癌に対し,肝後区域切除施行.術後肝膿瘍(candida albicans)を発症し,経皮経肝膿瘍ドレナージ,ボリコナゾール投与にて,軽快し退院となった.2012年6月に右前胸部痛と腫脹,弾性硬の腫瘤を自覚.精査にて肝細胞癌の胸壁への転移が疑われた.胸壁腫瘍に対して,胸壁合併切除(第5-7肋骨)及び胸壁再建を施行した.術後病理診断にて膿瘍形成,炎症細胞の浸潤を認め,細菌培養にてCandida albicans陽性となりカンジダ膿瘍と診断された.術後はミカファンギン150 mg/dayを4週間投与,ボリコナゾールの内服を2週間行った.術後6ヵ月において再発は認めていない.胸壁に発生したカンジダ膿瘍に対し外科的切除を施行した症例を経験したので報告する.
著者
椎名 伸充 藤原 大樹 溝渕 輝明 岩井 直路
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.31-34, 2008-01-15 (Released:2008-12-03)
参考文献数
8

79歳男性.鋭利なナイフによる左背部刺創で当院へ救急搬送された.来院時意識やや混濁し,ショック状態となったが,大量輸液により循環動態は改善した.胸部X線写真で左血胸と診断し,胸腔ドレナージ術を施行,直後に約2000mlの血性胸水の流出を認めた.胸部造影CTで左胸水貯留および肺から造影剤の漏出像が見られたため,左肺損傷による血胸が考えられた.CT撮影直後,再度血圧低下しショック状態となり,緊急手術となった.大量輸血したが手術室搬送直後に心停止状態に陥った.胸腔ドレーンの閉塞による緊張性血胸を疑い,仰臥位のまま緊急開胸,血腫除去を施行した.血腫除去後,すみやかに心拍再開し,血圧は改善した.バイタルサイン安定後,止血のために左下葉切除術を施行した.術後は後遺症なく独歩退院した.当院での胸部外傷手術例に基づく考察を加え報告する.
著者
井上 匡美 新谷 康 中桐 伴行 舟木 壮一郎 須﨑 剛行 澤端 章好 南 正人 奥村 明之進
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.799-804, 2013-11-15 (Released:2013-12-02)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

胸腺腫術後再発に対する標準治療はない.我々は再発後治療成績を明らかにすることを目的に遡及分析を行った.対象は当施設で手術を施行した胸腺腫190例中再発を認めた25例(13.2%).病理学的WHO分類は,type AB 2例,B1 2例,B2 9例,B3 12例,正岡病期は,I期3例,II期2例,III期9例,IVA期8例,IVB期3例.無病期間中央値は26.2ヵ月.初期再発部位は胸膜播種17例,縦隔局所6例,肺転移2例.再発後治療は,外科切除14例(播種切除20回,局所切除2回,肺転移切除1回,リンパ節郭清1回),化学療法10例,および放射線治療4例であった.全体の再発後3年・5年生存率はそれぞれ86%・79%で,切除例・非切除例の3年生存率はそれぞれ100%・68%であった(p=0.06).胸腺腫術後再発形式では胸膜播種が最も多く,再切除可能な症例では生存期間の延長が期待できる.