著者
坂本 広登 張 淑美 林 幸治 下平 和久 松澤 正浩 坂口 みほ 赤松 泰次
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.1661-1666, 2013 (Released:2013-08-28)
参考文献数
11

症例は21歳,男性.再燃,寛解を繰り返す潰瘍性大腸炎(全結腸炎型)の加療中に,治療に抵抗する発熱,粘血便,排便回数の増加を認めた.血液検査にてCMVpp65抗原が陽性を示し,サイトメガロウイルス(CMV)感染を伴った潰瘍性大腸炎の再燃と考えられた.ガンシクロビル(デノシン®)を投与したが改善せず,下部消化管内視鏡検査にて横行結腸に多発する下掘れ潰瘍を認め,CMVpp65抗原の著明な増悪を認めた.大腸全摘術を視野に入れながらガンシクロビルに変えてホスカルネットナトリウム(ホスカビル®)を投与したところ,CMVpp65抗原の陰性化と症状の著明な改善を認めた.
著者
篠﨑 聡 小林 泰俊 林 芳和 坂本 博次 レフォー アラン 瓦井 山本 博徳
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.1272-1281, 2019 (Released:2019-06-20)
参考文献数
30

【背景と目的】大腸ポリープに対する内視鏡的切除において,熱凝固を加えないでスネアで切除するコールドスネアポリペクトミー(CSP)と熱凝固を加えながらスネアで切除するホットスネアポリペクトミー(HSP)の比較研究がなされてきた.CSPとHSPの有効性と安全性をシステマティックレビューとメタ解析を用いて評価した.【方法】大腸ポリペクトミーに関してCSPとHSPを比較したランダム化比較研究(RCT)のみを解析の対象とした.評価項目は,完全切除率,ポリープ回収率,遅発性出血率,穿孔率および所要時間である.Mantel-Haenszel random effect modelを用いてpooled risk ratio(RR)と95%信頼区間(CI)を算出した.【結果】8つのRCT(症例数1,665名,切除ポリープ3,195個)に対しメタ解析を行った.完全切除率において,CSPとHSPは同程度であった(RR 1.02,95%CI 0.98-1.07,p=0.31).ポリープ回収率もCSPとHSPは同程度であった(RR 1.00,95%CI 1.00-1.01,p=0.60).遅発性出血率は,統計学的有意差を認めなかったもののHSPのほうがCSPより多い傾向にあった(症例単位:RR 7.53,95%CI 0.94-60.24,p=0.06,ポリープ単位:RR 7.35,95%CI 0.91-59.33,p=0.06).すべてのRCTで穿孔は報告されなかった.大腸内視鏡時間はHSPでCSPより有意に長かった(平均差 7.13分,95%CI 5.32-8.94,p<0.001).ポリペクトミー時間もHSPでCSPより有意に長かった(平均差 30.92秒,95%CI 9.15-52.68,p=0.005).【結論】今回のメタ解析ではHSPと比較してCSPで所要時間が有意に短かった.また,遅発性出血率もHSPと比べてCSPで低い傾向にあった.したがって,小さな大腸ポリープに対するポリペクトミーにおいてCSPを標準的治療として推奨する.
著者
平野 敦之 伊藤 恵介 川井 祐輔 山本 俊勇 濱野 真吾 長谷川 千尋 水野 芳樹 柴田 康行 小川 久美子 中村 誠 城 卓志
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.1533-1540, 2010 (Released:2011-11-07)
参考文献数
33
被引用文献数
1

症例は57歳男性.上部消化管内視鏡検査にて頸部食道に異所性胃粘膜に連続する0-I+IIc病変を認めた.同部からの生検により腺癌と診断し,頸部胸部食道切除+遊離空腸移植術を施行した.切除標本の病理組織的検索にて異所性胃粘膜より発生した食道腺癌,深達度sm3と診断し,さらにMUC5AC,MUC6,MUC2,Cdx2の免疫染色により腸上皮化生を伴った異所性胃粘膜より発生した胃腸混合型の腺癌と診断した.
著者
中西 徹 坂田 泰昭
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.1567-1573_1, 1986-07-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
37

今回われわれは初診時に著明な高ガストリン血症と汎血球減少症を呈しgastrinomaや悪性貧血も疑われたが,最終的には自己免疫性(A型)胃炎に合併した微小胃カルチノイドであった稀な症例を経験したので報告した. 症例は35歳の女性で汎血球減少の精査のため当科を紹介された.入院後再生不良性貧血,悪性貧血は否定され,鉄欠乏性貧血が考慮され全消化管を精査した結果,胃内視鏡下生検で径5mmの微小胃カルチノイドを発見した.また1,900ρg/mlという著明な高ガストリン血症を認めたが,胃液は無酸でgastrinomaは否定され,抗胃壁細胞抗体が陽性であった事からガストリン高値の原因は自己免疫性胃炎による無酸と考えられた.A型胃炎,胃カルチノイド共に稀であるため,A型胃炎に合併した胃カルチノイド例は自験例を含め本邦で5例にすぎないが,文献的及び本例の組織的検討で両者の関連が示唆されており,この点につき考察を加えた.
著者
原田 一道 横田 欽一 相馬 光宏 北川 隆 北守 茂 柴田 好 梶 厳 水島 和雄 岡村 毅与志 並木 正義
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.961-967_1, 1981-07-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
32

胃結核は稀な疾患であるが,われわれは最近の5年間に3例の胃結核を経験した. 第1例は46歳の男性で胃体上部後壁に不整形で,潰瘍底が凹凸不整の大きな潰瘍をみた.内視鏡直視下胃生検による組織像でラングハンス巨細胞と類上皮結節の所見を得,結核による潰瘍性病変と診断した. この病変にストレプトマイシン(SM100mg/ml)3~5mlの局注療法を行い,約3ヵ月後に潰瘍の疲痕をみた.第2例は67歳の男性で,胃前庭部にIIa+IIcの早期胃癌を,また胃体上部前壁に粘膜下腫瘍をみとめた.この腫瘍が術後の組織学的検討で結核性病変と診断し得た.第3例は66歳の女性で噴門直下に不整形の潰瘍性病変を伴う腫瘤があり,内視鏡直視下生検による組織学的所見から結核性病変と診断し,抗結核剤(PAS,KM,INAH)の投与と共にSMの局注療法を試みた.その結果約4ヵ月後に腫瘤はほぼ消失し,潰瘍性病変は瘢痕化した.胃結核が内科的治療で治癒した例は極めて稀で,抗結核剤の局注療法を試みたものは過去にないので報告する.
著者
田口 純 石橋 陽子 菅井 望 関 英幸 三浦 淳彦 藤田 淳 鈴木 潤一 鈴木 昭 深澤 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.1866-1873, 2010 (Released:2011-03-03)
参考文献数
17

症例は75歳女性.嚥下困難,食欲不振と唾液が常に流れてくる症状で近医を受診.上部消化管内視鏡検査で,逆流性食道炎と慢性胃炎の診断でプロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方されていた.しかし,症状の改善を認めず当科を受診.難治性かつ上部消化管内視鏡検査にて食道粘膜に非連続性に地図状のびらんが散在し,易粘膜剥離も認めたため食道天疱瘡を疑った.抗デスモグレイン(Dsg)3抗体価が23 Indexと陽性であり,蛍光抗体直接法にて食道の表皮細胞間にIgG,IgA,C3の沈着を認めた.皮膚,口腔粘膜病変はないものの,食道天疱瘡と診断しプレドニゾロン(PSL)30mg/日を開始したところ,2日後より自覚症状が著明に改善し,食事も摂取できるようになった.その後はPSLを漸減し,現在はPSL 5.5mg/日投与中で再発を認めていない.本症例は,皮膚,口腔粘膜病変がなく内視鏡検査で食道天疱瘡の診断となった1例であり,また併存した胃病変もPSLにて改善したことから,食道天疱瘡と何らかの関係がある可能性も示唆される.
著者
堀 高志 藤岡 利生 村上 和成 首藤 龍介 末綱 純一 寺尾 英夫 松永 研一 糸賀 敬 村上 信一 柴田 興彦 内田 雄三
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.27, no.12, pp.2775-2781_1, 1985-12-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
27

胃憩室は消化管憩室の中では比較的稀なものであり,胃憩室の発生頻度は一般に0.01%から0.20%との報告が多い.胃憩室の多くは,噴門部小彎後壁寄りに発生し,体部大彎に発生するものは極めて稀である.また,大きさについては,広田らによれぼ2.1cmから3.0cmのものが最も多く,5.1cmを超えるものは6.9%にすぎない.更にその壁構造については,一般に真性憩室が多いとされている. 症例は48歳女性,胸やけ,心窩部痛,体重減少を主訴として入院した.上部消化管X線検査にて胃体部大彎側に巨大な憩室を認め,内視鏡検査にても同様の所見であった.保存的療法にても自覚症状改善しないために手術が施行された.憩室は11.5cm×8.0cmの大きさで,組織学的には仮性憩室であった.
著者
楠本 聖典 濱田 暁彦 勝島 慎二 水本 吉則 上古 直人
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.3607-3616, 2014

【目的】上部消化管内視鏡検査(EGD)におけるプロポフォール鎮静からの覚醒度を経時的に評価し,安全な離院までの必要観察時間を明らかにする.【方法】対象はEGD時に予め定めた投与法によってプロポフォール鎮静を行った104例.平均血圧,動脈血酸素飽和度,握力,視力,Mini Mental State Examination(MMSE),反射神経テストを評価項目とし,検査前と検査終了10分後,60分後を各々比較した.【結果】10分後で有意な低下を認めたのは平均血圧,握力,MMSEであった.60分後では平均血圧は有意な低下を認めたが,10分後に比べると回復傾向であった.握力とMMSEは回復した.【結論】プロポフォール鎮静下のEGDは安全に施行でき,検査終了60分後には平均血圧以外の項目で検査前の状態に回復した.血圧は帰宅基準上問題ない範囲であり,60分後には安全に離院可能と考えられた.
著者
杉森 清孝 白木 正裕 室谷 益代 松本 和基 津本 清次 大柴 三郎
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.1820-1823_1, 1989-07-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
24

症例は45歳女性.ビタミンC錠(アスコルビン酸)を就寝前に飲水せずに服用した.翌朝,嚥下時に咽頭部異和感が出現し来院した.内視鏡検査で食道入口部直下より25cmまでの間に全周性びまん性に白苔の付着を認めた.生検では扁平上皮は変性し,細胞間浮腫を思わせる細胞間隙が目立ち,変性の高度な部位では微小膿瘍も散見された.粘膜保護剤服用にて,第3病日に自覚症状は消失し,第10病日の内視鏡検査では病変は消失していた. 本例で服用されたビタミンC錠は海外の市販薬で,大きさ19.3×8.1×7.6mm,pH2.42,アスコルビン酸含量995.6mgであった.これを本邦の市販薬(ハイシーS(R)錠)と比較すると,大きさは約2倍でアスコルビン酸含量は約20倍にも達し,食道炎惹起の大きな原因と考えられた. ビタミンC錠による薬剤性食道炎は,極めて稀な疾患であり,若干の文献的考察を加え報告する.
著者
上山 浩也 松本 健史 永原 章仁 八尾 隆史 渡辺 純夫
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.1169-1177, 2016 (Released:2016-06-20)
参考文献数
28

筆者らが提唱した胃癌の組織亜型・胃底腺型胃癌,Gastric adenocarcinoma of fundic gland type(chief cell predominant type),GA-FG-CCPは非常に稀な腫瘍であるが,近年,日本全国の施設で発見され,海外からも報告されるようになった.しかし,胃底腺型胃癌の診断や治療の経験が無い場合,一般的には内視鏡診断,病理診断は比較的困難と考えられ,最終的には消化管専門病理医に病理学的に確定診断されるのが現状である.したがって,内視鏡医においては胃底腺型胃癌の臨床病理学的特徴を理解することに加え,通常内視鏡で胃底腺型胃癌を疑う所見を見落とさないことが重要であり,胃底腺型胃癌を疑う病変を生検した場合には的確な情報を病理医へ伝える必要がある.本稿では,胃底腺型胃癌の臨床病理学的特徴と現状での内視鏡的特徴を説明した後,胃底腺型胃癌のNBI併用拡大内視鏡を含む内視鏡診断のポイントについて言及する.
著者
白浜 龍興 大庭 健一 岸本 幸次 山田 省一 佐藤 亮五 中野 真 加藤 雅士 古川 一雄 長谷川 和子 村越 明子 箱崎 幸也 真方 良彦 中川 克也
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.881-890_1, 1988

著者らは昭和53年より厳しい環境の下で行われる,いわゆるレンジャー訓練の前後に上部消化管内視鏡検査を施行し,上部消化管に急性病変が認められることを経験している.9年間のレンジャー訓練生421名中,胃潰瘍36例(8.5%),十二指腸潰瘍25例(5.9%),胃十二指腸潰瘍5例(1.2%)を認めた,これらのうち急性胃潰瘍41例(5例は十二指腸潰瘍と併存)について検討した.単発30例(73.2%),多発11例(26.8%)で62病変であった.62病変のうち胃角小彎に29病変(46.8%)が認められた.内視鏡的経過観察をみると治癒に8週以上を要した治癒遷延例は6例(14.5%)で胃角小彎の潰瘍が4例,胃角部と胃体部の多発性潰瘍1例,胃角部から胃体部の帯状潰瘍が1例であった.この6例中4例が再発(同部位再発,再発誘因は演習)し,うち2例が慢性潰瘍化したと考えられた.
著者
堅田 親利 田辺 聡 正來 隆 中山 明仁 岡本 牧人 小泉 和三郎
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.2038-2048, 2011 (Released:2011-09-15)
参考文献数
17
被引用文献数
2

近年の内視鏡技術の進歩により,表在性の病変の視認性が向上する画像強調法が日常診療に導入された.これに伴い,上部消化管内視鏡検査の際に通過する頭頸部領域から,消化器内視鏡医が数多くの頭頸部表在癌を発見するようになった.本稿では,頭頸部表在癌の拾い上げ診断に関する知識を整理し,中下咽頭のルーチン観察法について解説する.
著者
樋高 秀憲 坂田 資尚 上松 一永 下田 良 藤本 一眞 岩切 龍一
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.1203-1209, 2015 (Released:2015-04-28)
参考文献数
14

症例は28歳女性.周期性腹痛,発熱で受診.内視鏡検査で虫垂入口部付近の区域性腸炎を認め,区域性大腸炎型潰瘍性大腸炎として加療したが効果なく,遺伝子検査の結果家族性地中海熱(FMF)と診断し,コルヒチン内服加療で症状は改善した.FMFは炎症性腸疾患類似の区域性腸炎を合併することもある.周期的腹痛,発熱のある原因不明の腸炎では炎症性腸疾患以外にFMFを疑い遺伝子検査を行うことが重要である.
著者
佐藤 博文 針金 三弥 龍村 俊樹 山本 恵一 小島 道久 山本 和夫 柴崎 洋一 松本 貞敏 鈴木 亮一
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.1330-1334_1, 1984 (Released:2011-05-09)
参考文献数
10

尋常性疣贅の多発を伴ったS状結腸癌の2例を報告した.症例は59歳の女性と78歳の男性で,ともに消化器症状はなかったが,2年以上前から尋常性疣贅が顔面,手背に多発し治癒傾向にないため,消化管の精査を行った. 上部消化管には異常所見を認めなかったが,注腸造影と大腸内視鏡検査によりS状結腸癌の合併をみとめ,根治術をおこなうことが出来た. 近年,本邦での結腸癌の罹患率は増加傾向にあり,結腸癌による死亡率を低下させるには一般住民を対象とした大腸集検と共に高危険群の精査による早期癌の発見が必要である. 尋常性疣贅はhuman papilloma virus(HPV)による皮膚感染症で,その発病は細胞性免疫能の低下と関連しているといわれている.今回の2症例の経験から,高齢者で尋常性疣贅が多発し,しかも難治傾向にある場合には,内臓悪性腫瘍の高危険群に屈すると考え,精査追跡をすすめるべきである.
著者
梅原 康湖 辻 直子 冨田 崇文 谷池 聡子 川崎 正憲 奥村 直己 高場 雄久 松本 望 河野 匡 丸山 泰典 尾崎 信人 工藤 正俊
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.207-215, 2015 (Released:2015-03-31)
参考文献数
28
被引用文献数
1

【目的】外来大腸内視鏡検査におけるプロポフォールを用いた意識下鎮静法の安全性・有用性と患者満足度について検討する.【方法】外来大腸内視鏡検査を受けた80歳未満,ASA2以下の患者661人を,鎮静剤希望者と非希望者にわけた.鎮静剤希望者はプロポフォール単独群とミタゾラム+ペンタゾシン群に無作為に振り分けた.プロポフォール単独群241例ミタゾラム+ペンタゾシン群236例非鎮静群184例について呼吸循環器系への影響,回復時間,患者満足度,帰宅後の問題点について検討した.【結果】プロポフォール単独群で血圧の低下,ミタゾラム+ペンタゾシン群で心拍数,酸素飽和度の低下を有意に認めたが,一過性で重大な合併症はなかった.プロポフォール単独群の回復時間は短く,高い患者満足度が得られ,帰宅後の問題点も少なかった.【結論】外来大腸内視鏡検査の意識下鎮静法ではプロポフォールが第一選択と考えられた.
著者
花田 敬士 飯星 知博 山雄 健太郎 平野 巨通
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.3773-3782, 2012 (Released:2013-01-18)
参考文献数
45
被引用文献数
3

膵癌早期発見における内視鏡的診断戦略について概説した.従来の診断体系は,腹部US等でスクリーニングされた膵管拡張,膵嚢胞性病変などの間接所見から造影CTなどを用いて“腫瘍性2cm以下の病変”を発見するアルゴリズムであった.一方,近年の報告から早期診断の目標であった腫瘍径2cmの症例はStage III以上の進行膵癌が多く,より長期の予後が期待できるStage Iまでで診断するには腫瘍径1cm以下での拾い上げが求められている.これを実現するには,上述の間接所見を契機に,MRCP,EUSなどを用いて膵管の限局的な異常所見を確認した後,腫瘍の直接描出が可能な症例にはEUS下穿刺吸引細胞組織診(EUS-FNA)を,腫瘍性病変が描出できない症例にはERCPおよび複数回の膵液細胞診を行って診断するアルゴリズムが有用である可能性がある.また,早期診断には危険因子の理解が重要であり,膵癌診療ガイドラインに記載された項目に該当する患者に対する地域病診連携を生かした効率的なスクリーニング体制の整備が求められる.
著者
上田 渉 大川 清孝 宮野 正人 藤井 英樹 大庭 宏子 山口 誓子 青木 哲哉 倉井 修 小野寺 正征
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.2161-2168, 2016

<p>潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)患者に合併するサイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)感染症の大部分は,ステロイドや免疫抑制薬の治療歴がある.今回ステロイド投与歴がないにも関わらずCMV再活性化を生じ,治療経過でCMV感染症を発症したため抗ウイルス治療を要したUC患者2例を経験した.1例目は66歳で,再燃時大腸内視鏡検査では発赤,浮腫,びらんのみだが,既にCMVの再活性化を呈していた.ステロイド治療で一旦軽快したが,その後CMV感染症を合併し抗ウイルス治療を要した.2例目は75歳で,再燃時大腸内視鏡検査で浮腫,びらん,小潰瘍のみであったが既にCMV再活性化を生じていた.ステロイドとタクロリムスで一旦軽快したが,CMV感染症を合併し抗ウイルス療法を要した.ステロイド投与歴にとらわれず,高齢者UC患者の再燃時には典型的な内視鏡画像を欠いてもCMVの再活性化を疑いステロイド以外の治療を考慮すべきである.</p>