- 著者
-
小池 智幸
- 出版者
- 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
- 雑誌
- 日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.11, pp.2661, 2017 (Released:2017-11-20)
- 参考文献数
- 2
【背景】ガイドラインでは,早期胃癌ESD非治癒切除患者に対してリンパ節転移の危険性から追加外科切除が推奨されているが,全例に追加外科切除を行うことは過剰医療となる可能性がある.そこで,本研究では,早期胃癌ESD後の治療方針決定のためのスコアリングシステムを確立することを目的とした.【方法】本研究は,2期にわけて行った.Development stageでは,ESD非治癒切除後追加外科切除を行った1,101例を対象とし,ロジスティック回帰分析を用いてリスクスコアリングシステム(eCura system)を作成した.Validation stageでは,eCura systemをESD非治癒切除後経過観察となった905例に当てはめ,癌特異的生存率(CSS)よりeCura systemの検証を行った.【結果】Development stageでは,5つのリンパ節転移リスク因子をβ回帰係数による重みづけから,3点:リンパ管侵襲,1点:腫瘍径>30mm,SM2,静脈侵襲,垂直断端陽性とした.続いて,患者を低リスク(0-1点,リンパ節転移率2.5%),中リスク(2-4点,同6.7%),高リスク(5-7点,同22.7%)の3群に分類した.Validation stageでは,CSSが3群間で有意差を認め(log-rank test:P<0.001),それぞれ5年CSS:99.6%,96.0%,90.1%であった.多変量Coxハザード回帰分析では,低から高リスクになるにつれて胃癌死のリスクが上昇する傾向を認めた(P trend<0.001).また,eCura systemの胃癌死に対するC statisticsは0.78であった.【結論】eCura systemは早期胃癌ESD非治癒切除患者の胃癌死を予測可能であった.eCura systemにて低リスクの場合には,ESD後経過観察もオプションとなりうる.