- 著者
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小熊 潤也
小澤 壯治
- 出版者
- 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
- 雑誌
- 日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.6, pp.1280, 2018 (Released:2018-06-20)
- 参考文献数
- 3
【目的】食道アカラシアに対する治療法として,経口内視鏡的筋層切開術(peroral endoscopic myotomy;POEM)と腹腔鏡下筋層切開術(laparoscopic Heller myotomy;LHM)の治療成績を比較することを目的とした検討である.【背景】約20年にわたり食道アカラシアに対する治療法の第一選択はLHMであったが,2010年にPOEMが初めて報告され,それ以降は広く行われるようになった.しかしPOEMの長期成績はいまだ不明で,両者のランダム化比較試験も行われていない.【方法】食道アカラシアに対する治療法としてのLHMおよびPOEMに関する論文をMedlineより検索した.主な評価項目は,嚥下障害の改善と術後の胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease;GERD)である.【結果】LHMに関する53論文(5,834例)とPOEMに関する21論文(1,958例)を対象とした.経過観察期間の中央値は有意にLHMの報告で長かった(41.4カ月 vs. 16.2カ月,p<0.0001).治療後12カ月での通過障害の改善割合はPOEMで93.5%,LHMで91.0%(p=0.001),治療後24カ月ではPOEMで92.7%,LHMで90.0%(p=0.001)であった.POEMを施行した症例は術後のGERD症状(OR=1.69, 95%CI:1.33-2.14,p<0.0001),びらん性食道炎(OR=9.31,95%CI:4.71-18.85,p<0.0001),pHモニタリング上の胃食道逆流(OR=4.30,95%CI:2.96-6.27,p<0.0001)の頻度が有意に高かった.平均在院日数はLHM群よりPOEM群で1.03日長かった(p=0.04).【結論】今回の検討により,嚥下障害の改善という短期成績の結果はPOEMの方が良好であるが,一方で術後逆流の頻度が非常に高いことが示唆された.