著者
島倉 瞳 坂田 勝亮
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.3, 2020-01-01 (Released:2020-03-24)
参考文献数
31
被引用文献数
2

顔における肌色は健康や魅力のシグナルになるなど,社会的なコミュニケーションを取るうえで重要な意味をもつことが知られている.東アジア諸国で理想とされる美白感の高い肌は明るさと白さにより表現されることが多いが,両者は異なる概念であるため美白の心理物理的要因が十分に解明されているとはいえない. そこで実験1では日本人女性の平均顔画像を用い,明るさに起因するメトリック明度と白さに影響を及ぼす白色点からの距離を独立に操作することにより,美白感の知覚が顔の明るさと白さのどちらの知覚に規定されるのかを検討した.その結果,美白感は明るさとは異なり,白さに起因する感覚であることが示唆された.実験2では美白感の予測性を明らかにするため,白色点からの距離とこれまで検討されてきた種々の要因を,恒常法による主観的等価点の測定により比較した.回帰分析の結果,美白感の知覚に影響を及ぼす要因は肌のメトリック明度や色相,彩度ではなく,白さを規定する白色点からの距離であることが明らかになった.
著者
三栖 貴行 小田原 健雄 渡部 智樹 一色 正男
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3+, pp.205, 2018-05-01 (Released:2018-07-17)
参考文献数
6
被引用文献数
1

我々は生活空間における照明光色を有彩色にすることで,生体へ良い影響を与え,照明機器の利用価値を向上させることを目的とし,生体への影響を心理面および生理面の二つの調査を行っている.心理的影響の評価として,離散的な結果にならず,主観的な評価において信頼性と妥当性が認められているVisual Analogue Scale(VAS)法を採用した.VASの評価項目は,体感温度と疲労についての評価を行なった.生理的影響は,特にサーモグラフィカメラを利用した体表面温度(顔面表面温度)の測定を行った.また,唾液アミラーゼの含有量と心電データからLF/HFを測定し,それぞれをストレス指標として評価した.実験環境は,温度,湿度を一定に管理し,一般的な一人暮らしの部屋に模した実験室にフルカラーシーリングライトを設置した.このような条件下において,被験者が着座する机上面照度を同一にした赤,緑,青の光色を被験者に暴露した.被験者は既往研究と同様に赤で体感温度が上昇し,青で減少する傾向が見られた.
著者
土岐 珠未 田淵 拓也 辻 恵子 山口 智彦
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3+, pp.225, 2020-05-01 (Released:2021-09-06)
参考文献数
6

「透明感」は女性が憧れる肌質の重要な要素の一つであるが,その測定方法や評価基準は統一されておらず,限られた評価者の主観による評価に頼らざるを得ないという状況がある.そこで本研究では,幅広い評価者の感覚を数値化することで客観的に評価できる手法の開発に着手した. はじめに,同一の条件で作成した肌画像に対し,一般評価者の女性80名により,透明感の目視評価スコアを7段階で付与した.次に,それらの肌画像を解析してL* a* b*値及び輝度等の色情報を取得し,目視評価スコアと色情報の相関関係を解析した.最後に,重回帰分析により,透明感の目視評価スコアを最も精度高く再現できる色情報の組み合わせを検討した. その結果,目視評価スコアは,肌画像の輝度と極めて高い相関性を示すことが分かった.さらに,b*値のSDを加味することで,「透明感」をより精度高く予測できる式を導き出した.b*値のSDは,色ムラと解釈できることから,人が感じる「透明感のある肌」とは,輝度が高く,色ムラが小さい肌であることと結論付けることが出来た.今後はこの予測式を用いることで,「肌の透明感」を数値的に評価することが出来るようになった.
著者
山下 彩花 森田 愛子
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3+, pp.110, 2020-07-01 (Released:2021-09-06)
参考文献数
1

ノートや時間割などにおいて,教科はしばしば色で弁別されるが,教科の色イメージが共有されているのか,どの教科がどのような色イメージを有しているのかは未解明である.本研究では,教科の色イメージを調査し,その一致度や世代による違いを検討した.また,教科から当該の色をイメージする理由についても検討した.10代から80代の参加者313名を対象に,国語,数学,理科,社会,英語の5教科について色イメージ調査を行った.各教科について,基本色彩語13語からイメージする色を選択させ,選択理由を記述させた.その結果,一致度が最も高かったのは数学で,約半数が青を選択した.理科は緑,社会は茶が最も多く選ばれた.国語と英語はばらつきが大きく,複数の色が同程度選択された.教科の色イメージは必ずしも一致しないことがわかった.年代別にみると,数学以外では,年代によって色イメージの違いが比較的大きいことが明らかになった.色の選択理由としては,具体的な物以外が原因と考えられる「教科そのものに対する印象」「なんとなく」「理由なし」の合計が85%であり,色イメージが形成された後には具体的な理由が想起されない場合も多いことが示唆された.
著者
中曽根 春菜 北口 紗織
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3+, pp.165, 2020-05-01 (Released:2021-09-06)
参考文献数
2

食べ物の食感に関するオノマトペ(擬態語・擬音語)による色彩連想を検討した.特に菓子の食感に関する9の刺激語(かりかり,ざくざく,ぱりぱり,ふわふわ,もちもち,ぷにぷに,ぷるぷる,とろとろ,しゅわしゅわ)について,色彩印象,単語の印象,連想語を調査した.色彩印象については,被験者にディスプレイ上で各刺激語から連想される1色を調色させた.単語の印象については5段階,15項目のSD法を用いて印象評価を行った.最後に刺激語から連想される語を2語までの自由記述により調査した.得られた色データは分光放射輝度計で測色し,a*b*色度図,L*C*色調図を作成した.その結果,色彩印象は1語(しゅわしゅわ)のみ9割の被験者が類似色相色を連想し,他8語については刺激語ごとに特徴が表れ,全体として3グループに分類された.グループごとの特徴は単語の印象との関連が示唆され,色彩印象と単語の印象の相関を考察したところ,5つの印象項目は色彩印象との相関が確認された.また,いくつかの連想語は刺激語の色彩印象との関連の可能性が示された.
著者
小野,真紀子
出版者
日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌
巻号頁・発行日
vol.27(SUPPLEMENT), 2003-05-01
著者
柴野,晶子
出版者
日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, 1991-05-01
著者
吉村 耕治 山田 有子
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3+, pp.204, 2020-05-01 (Released:2021-09-06)
参考文献数
2

新しい色名は,いつの時代でも創られている.21世紀の日本車の新色名に,「グロリアスグレーメタリックモリブデン鸞鳳(らんぽう)」や「デミュアーブルーマイカメタリックモリブデン瑞雲(ずいうん)」がある.これらは最高級車センチュリーの色名で,その塗装には日本の伝統工芸の漆塗りを参考に,層を重ね,研ぎと磨きを加えることで奥深い艶や輝きが追求されている.そして,敢えてカタカナと漢字を併用することによって,高級感が表出されている.その他にも,「シリーンブルーマイカ摩周(ましゅう)」や「ブラッキッシュレッドマイカ飛鳥」などもある.四季や時の移り変わりによる景色の変化が,車のボディカラーにも表現されており,トヨタのジャパンカラーセレクションパッケージ(12色)には,「紅,仄(ホノカ),茜色,天空(ソラ),群青,紺碧(アオ),白夜(ビャクヤ),翡翠(ヒスイ),常磐色(トキワイロ),胡桃(クルミ),黒曜,白光」が用いられている.21世紀になってから,「白夜,白光,夜霞」なども車のボディカラーとして採用され,「エモーショナルレッド」や「アティチュードブラックマイカ」のような感情を表出する色名が増加している.
著者
大住 雅之 中野 知子 高橋 徹 渡辺 文雄
出版者
日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.100-101, 2008-05-01
参考文献数
3
著者
斎藤 俊徳
出版者
日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.15-16, 1991
著者
松田 博子 名取 和幸 破田野 智美
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3+, pp.161, 2020-05-01 (Released:2021-09-06)
参考文献数
5

松田・名取・破田野(2019)では,色そのものが持っている色イメージ(感情的意味)を通して,色の好みとパーソナリティとの関係性を分析した.色イメージ(新編カラーレンジマニュアル100の印象評価)とパーソナリティ特性の相関を求め,有意な差がみられ,特定のパーソナリティの人がその色を好む理由として自分のイメージに似ているから好むことが示唆された.今回はさらに進めて,75色カラーチャートから選択した自分自身の「好きな色」の印象評価と自己イメージとの関係を調査した.男女大学生を対象として「好きな色」を3色選択し,その色のイメージ評定をし,後日好きな色と同じ16の形容詞対による5件法で自己イメージを評定させ相関を求めた.併せて YGパーソナリティ性格テストを試行しパーソナリティとの関係も検討した.自己イメージと好きな色のイメージの同一尺度間での相関(0.24≦|r|, p < .05)は,女性の場合「軽い」「澄んだ」「派手な」「きれいな」「かたい」「情熱的な」「女性的な」の7項目(全16項目の43.8%)に見られ自己イメージに似たイメージの色を好むことが明らかになった.
著者
山添 崇 舟木 智洋 喜安 勇貴 溝上 陽子
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6+, pp.17, 2018-11-01 (Released:2019-01-29)
参考文献数
3

質感は物体から受ける印象を決定する主な要因であり,物体の好ましさや価値判断の指標の一つである.照明の指向性および拡散性が質感の印象に影響することは報告されている.しかし,どのような照明条件下で最も質感の印象が忠実に再現されるかについては,分かっていない.そこで,本研究では実物体観察時における質感の印象と照明条件の関係について検討した.実験では,初めに自然光源下において,被験者が視覚と触覚を用いて,実験刺激である食品サンプルの印象を形成した.その後,3種類の照度と3段階の拡散度の組み合わせ合計9条件の照明下において,実験刺激を観察し,最も印象に忠実な照明条件を選択した.同時に7件法の主観評価を行い,印象の変化についても評価を行った.実験の結果,拡散性の高い条件が最も記憶した印象に忠実な照明として選択された.また,7件法の主観評価では,拡散性による明確な印象の違いは得られなかった.ただし,刺激の種類により重さの評価等に違いがでたことから,拡散性の影響は物体形状や材質により異なると考えられる.以上より,印象を忠実に再現するために最適な照明の拡散性条件の決定が可能であることが示唆された.
著者
牧野 暁世
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, 2018

<p> 日本色彩学会第47回全国大会[名古屋]'16のビジュアルデザインを制作した.1.過去の実績と現状把握 2.制作物の目標設定 3.ロゴマーク制作 4.ポスター制作 5.デザイン展開 6. 制作の評価 の過程に基づき,「独自性」,「視認性」,「展開性」の3つの目標を定め,制作した.</p><p> メインビジュアルとなるロゴマークにおいて,色彩は本大会に関連する事物と対応付けた7色を用いた.全体の造形は,7つの三角形で構成される七角形を用い,中央に図地反転で光の漢字が読めるように配置した.ロゴマークデザインに基づいたポスター,会場案内,うちわも作成された.本制作は,デザインの専門家から一定の評価が得られたことから,本大会に相応しいビジュアルデザインの一例を示せたのではないかと考えられる.全国大会が今後も色彩学の進歩普及を図り,色彩を通じて社会や人々の暮らしへの貢献を先導するとともに,ビジュアルデザインが一層発展することを願う.</p>
著者
菱川 優介 桂 重仁 須長 正治
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3+, pp.141-144, 2017-05-01 (Released:2017-10-07)

色覚異常を持つ人の日常生活におけるトラブルとして,焼肉の焼け具合がわからないという報告がされている.このことから,色覚異常を持つ人は,一人で焼肉を行うことが難しいと言える.本研究では,2色覚の一人焼肉を補助すべく,焼肉が焼けたかどうかを知らせるアプリを作成した.実験では,肉の表面を測色すると同時に,3色覚と2色覚に焼肉の見た目の焼け具合を評価してもらった.焼肉の色変化の過程は,錐体刺激値LM平面にて特徴が現れていた.この変化過程は,2色覚に対してL軸またはM軸への射影となる.その結果,生肉の色が,肉が焼けていく過程の色変化のなかに埋もれてしまい,2色覚は色変化からでは焼け具合がわかりにくいことが示された.また評価結果をもとに,LM平面上にアプリによる焼け具合判断の閾値を設定した.作成したアプリと3色覚の判断がどれくらい一致するかを調べた.焼けた肉と焼けていない肉を,アプリが正しく判断する確率はそれぞれ63%と94%であった.また,焼けた肉,焼けていない肉に対して誤った判断をする確率はそれぞれ37%,6%であった.以上のことから,おおよそ正しく肉の焼け具合を判断するアプリを作成した.
著者
鈴木 恒男
出版者
日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.53-61, 1997-05-01
参考文献数
18
被引用文献数
7

20代女性の顔色を代表する30人の女性を3種類のメーキャップファンデーションで化粧を行う。その女性達は鏡を見ながら20項目で自分の顔を評価し, さらに11人の他者から同じ項目で評価を受ける。この30人の顔をカラーモニタに提示し, 自分と他人がその顔を同じ20項目で評価する。自己評価, 他者評価, 実際の顔と画像の顔のイメージ構造の差異を因子分析と重回帰分析で解析した。認知的なイメージ空間は2次元から構成されている。自己評価の最初の次元は静的な内面性を表し, 次の次元は動的な外面性を表している。他者評価の最初の次元は外面性で, 次の次元は内面性である。認知的なイメージ空間は実際の顔と画像としての顔では異なる。