著者
尾立 純子 藤田 忠雄 神戸 保 大柴 恵一
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.267-273, 1980-09-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

圧力鍋と常圧鍋を用いで炊く, 煮る, 蒸す調理をそれぞれ質玄米, 大豆, さつまいもで行い, 調理後のビタミン類の残存量とアミノ酸の煮汁中への溶出量を比較した。1. 玄米を炊いた場合のB1残存量は, 圧力鍋で56~64%常圧鍋で72%となり, 圧力鍋での損失量が約10%大きかった。2. 大豆を煮た場合のB1残存量は, 圧力鍋で65~70% (豆中57~60%, 煮汁中8~9%), 常圧鍋で51% (豆中50%, 煮汁中1%) となり, 圧力鍋での損失量が約15~20%少なかった。3. さつまいもを蒸した場合のB1とCの残存量は, でんぷんα化度約90%で比較すると, 圧力鍋でB1 73%, C54%, 常圧鍋で, B1, Cともに85%となり, 圧力鍋での損失量がB1で約10%, Cで約30%大きかった。4. 大豆調理時の煮汁中への窒素とアミノ酸の溶出量は圧力鍋で常圧鍋の約1.5倍大きかった。また溶出されやすいアミノ酸はトリプトファン, アルギニン, アラニン, グルタミン酸, セリンの順で, アミノ酸の溶出パターンは, 両鍋で差異はなかった。
著者
二宮 照子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.139-143, 1975-05-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
5

熊本市内で販売されている氷菓類および清涼飲料水104種類について着色料の分析および果汁を含む清涼飲料水については Vitamin C含有量, 糖度, 有機酸の定量をあわせて実施した。氷菓類の色調は, Videt, Orange, Red, Yellow, Green, Brown その他無着色に分けられ, 各色素の使用頻度の高いものから示すと, Tartrazine, Sunset Yellow, Amaranth, Brilliant Blue などが各色調の殆どに混合使用されており, 1試料当りの色素数は1種類で着色されたものから6種類使用のものもあって, 各メーカーの自由な選択が行なわれている。しかし単染色と混合染色との間に外観上の差は殆どなかったことからも, 着色に要する色素数は可能な限り少なくあるべきではないかと考えられる。清涼飲料水の着色料は, 市販されている着色試料の種類が少ないためにその傾向をみ出すことはできなかったが, 1試料当りの色素数は氷菓類で検出された数の範囲内にあった。Vitamin C含有量は柑橘類のみを対象とすると, 天然果汁には100ml当り平均36.4mg含まれ, 果汁飲料および果汁入り清涼飲料 (果汁含有率10%以上50%未満のもの) には, 天然果汁に対するパーセントで示すと, 44.8%, 33.2%, 15.7%, 9.9%と減少していた。また, Vitamin C 36.4mgを得るためのこれらの換算価格も示したが, 天然果汁は着色料も含まず, しかも最も安いとい5結果を得た。平均糖度は, 氷菓類15.4%, 清涼飲料水は12.3%で, 総酸量は天然果汁の0.93%から無果汁飲料の0.11%と差が大きく果汁含有率によって変動していた。また調査の結果では, 不許可の着色料は検出されなかった。
著者
小島 美世 小川 佳子 中川 圭子 草野 亮子 関 芳美 波田野 智穂 磯部 澄枝 栃倉 恵理 石田 絵美 山﨑 理 堀井 淳一 井上 陽子 鈴木 一恵 田邊 直仁 村山 伸子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.232-242, 2020-10-01 (Released:2020-11-09)
参考文献数
15

【目的】新潟県では,1965年代から脳血管疾患対策として様々な減塩運動を展開してきた。しかし,脳血管疾患年齢調整死亡率は全国平均より高く,食塩摂取量も全国平均を上回る結果だった。そこで2009年度から新たな減塩運動「にいがた減塩ルネサンス運動」に10年間取り組んだ。その取組をとおし栄養・食生活分野におけるPDCAサイクルに基づく成果の見える栄養施策の展開を試みた。【方法】実態把握から優先順位の高い健康課題の抽出と,その背景となる栄養・食生活の要因を分析し,その要因が改善されるよう施策を整理し目標達成を目指した。また,各々の施策の事業効果が目標達成にどう影響を及ぼしているかが見える化できるよう評価枠組を整理した。評価枠組は各施策の事業効果が質的,量的にどう影響を及ぼすかが明確になるよう結果評価,影響評価,経過評価に分け,目標達成に影響を及ぼす施策とその成果が分かるよう施策を展開した。【結果】経過評価に位置付けた,市町村や関係機関での取組が増加した。影響評価に位置づけた,県民の高食塩摂取量に関連する食行動が有意に改善した。結果評価に位置づけた食塩摂取量や収縮期血圧値や脳血管疾患死亡数及び虚血性心疾患死亡数が減少した。【結論】PDCAサイクルに基づく展開と,目標達成につながる評価枠組を整理し枠組順に客観的に評価したことで,施策が目標達成にどのように影響を及ぼしたのかその関連性を見える化することができた。
著者
神田 聖子 仲田 瑛子 小田島 祐美子 中野 都 佐藤 清香 江木 伸子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.78-87, 2020-04-01 (Released:2020-05-27)
参考文献数
36

【目的】日本食品標準成分表2015年版において,調理前(原材料)と調理後食品を用いた献立の栄養価の差を明らかにし,栄養価計算を行う際の留意事項を検討する。【方法】学内の給食管理実習における30日分の昼食献立を対象に,調理を考慮しない「作成時」と考慮した「提供時」について対応のあるt検定またはWilcoxon符号順位検定を用いて1食あたりの栄養価を比較した。食品群別による比較も行なった。【結果】エネルギーの平均値±標準偏差は作成時で 719±70 kcal,提供時で 699±65 kcalであり,提供時で有意に低かった(p<0.001)。提供時で有意に低値となった栄養素は脂質,飽和脂肪酸,カリウム,カルシウム,鉄,ビタミンA,ビタミンB1,ビタミンB2,ビタミンCであり,食物繊維のみ提供時で有意に高かった。食品群別にみると,肉類と野菜類で提供時の栄養価の減少が目立った。【結論】作成時と提供時の栄養価には統計的な差があり,栄養価計算は調理後食品で行うことが望ましいとわかった。両者の差は肉類及び野菜類で調理後食品を用いることにより解消できると考える。やむを得ず原材料で栄養価計算を行う際は,カリウム,鉄,水溶性ビタミンの給与栄養目標量を食事摂取基準の110~140%に設定すること,または,肉類の使用量を予定原材料の115%,野菜類を132%にすることで提供時の値に近似することが示唆された。
著者
水谷 令子 岡野 節子 西村 亜希子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.129-135, 1997-06-01 (Released:2010-11-26)
参考文献数
5

調理操作が麺中の水溶性相の食塩含量に与える影響と, 種々の麺料理からの食塩摂取量について実験を行った。結果は次のようである。1) 麺中の食塩量は, ゆで時間が長いものほど短いものより減少した。ひやむぎ, きしめんにおいてはゆで時間による有意差が認められたが, うどんにおいては有意差は認められなかった。2) ゆで上げ後の水洗いは, 食塩濃度を低下させるのに有効であった。洗う回数が増加するに従って, 食塩濃度は低くなったが, 手延べひやむぎを除いて, 1回目の洗いで顕著に低下した。ゆでた麺を5回洗うと, 食塩量は洗う前の, 手延べひやむぎでは20.9%, ひやむぎでは5.6%, うどんでは22.2%, きしめんでは23.5%, 生うどんでは41.0%に減少した。3) ひやむぎ, うどん, きしめんをそれぞれ, つけ麺, かけ麺, 温かけ麺の3つの方法で供した時の正味食塩摂取量は, ひやむぎでは1.81~2.67g, うどんでは1.31~2.28g, きしめんでは1.42~2.52gで, それぞれ調理材料に含まれる食塩の32~47%, 22~39%, 24~42%であった。細い麺 (ひやむぎ) は他の麺より食塩摂取量が多かった。いずれの麺も, つけ麺で食べるほうがかけ麺, 温かけ麺で食べるより正味食塩摂取量は有意に少なかった。温かけ麺はかけ麺より正味食塩摂取量は多かった。4) なべ焼きうどん, みそ煮込みうどん, 伊勢うどんの正味食塩摂取量は, それぞれ2.67g, 2.41g, 1.96gであった。伊勢うどんの食塩摂取量は他のうどんに比べて少なかった。以上の結果は, 栄養指導や栄養調査において, 正確な食塩摂取量を知る上で役立つと考えられる。
著者
蟻川 トモ子 花田 実
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.241-250, 1975-09-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
8

昭和49年夏季4日間, 冬季3日間の2回, 両国の1相撲部屋において力士の食生活の実態を調査した。対象力士は階層により3名ずつの3グループ計9名として, 期間中喫食した食事, 間食, 飲料のすべてについて食品の摂取量, 摂取栄養量を調べた。1. 1日の平均エネルギー摂取量は十両以上の関取で4,500Cal, 幕下4,360Cal, 養成の初期にあたる序二段グループでは約4,000Calであった。2. 穀類とくに米と魚, 肉, その他の野菜の摂取量が大きく, 緑黄色野菜と果実類の摂取が少なかった。3. 摂取栄養量として不足がみられたのはカルシウムとビタミンA, ビタミンB2でとくにビタミンAの不足が大きい。序二段グループではさらにこれらの不足が大きい。
著者
香川 靖雄 西村 薫子 佐東 準子 所沢 和代 村上 郁子 岩田 弘 太田 抜徳 工藤 快訓 武藤 信治 手塚 統夫
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.283-294, 1980-11-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
36
被引用文献数
9 6

朝食の欠食は日周リズムを変え, これによって肥満, 高コレステロール血を増加させ, 各種の知的機能テストの成績を低下させると報告されている。そこで寮内学生 (19~21歳) につき分析を行い下記の成績を得た。1978 (人数=102) 1979 (人数=106)朝食 欠食者(85名) 摂取者(17名) P 欠食者(64名) 摂取者(42名) P〔摂取量/日〕エネルギー (kcal) 1,916 2,180 <0.1 2,105 2,459 <0.01たん白質 (g) 63.1 66.4 <n.s. 67.0 80.8 <0.01炭水化物 (g) 283.6 345.1 <0.01 295.4 352.2 <0.001カルシウム (mg) 296.4 408.8 <0.02 409.4 499.0 <0.02〔24時間尿中成分〕尿素 (g) 7.05 6.58 <0.5 7.49 8.43 <0.5カルシウム (mg) - - - 410.8 497.3 <0.05〔血清〕コレステロール (mg/dl) 190.8 186.4 n.s. 188.5 191.4 n.s.〔学業〕全学科成績 71.51 75.74 <0.01 72.97 75.29 <0.02平均得点順位 58.1 35.9 <0.01 59.4 44.1 <0.02年間欠席時限数 87.3 53.7 <0.05 89.2 63.4 <0.05コレステロール値は米国青年の値よりわずかに高い。身長 (169.9対170.7cm), 体重 (61.6対63.0kg), HDL-コレステロール (52.5対53.5mg/dl), トリグリセリド (116.8対123.7mg/dl), カウプ指数 (2.147対2.181), 出身地南北差等には上記両群の差はなかった。朝食の欠食は上記の表の栄養素摂取量を低下させたが, 食事の欧風化にも拘らず, 肥満やコレステロールを増加させなかった。また欠食者に学業成績, 出席率の不良なものが多く見出された。
著者
山本 祥子 高田 和子 別所 京子 谷本 道哉 宮地 元彦 田中 茂穂 戸谷 誠之 田畑 泉
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.195-200, 2008-08-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1 3

We measured the basal metabolic rate (BMR), fat-free mass (FFM) and physical activity level (PAL) of well-trained bodybuilders as typical athletes with muscular development by resistance training in order to examine the standard BMR and PAL ranges for athletes. The subjects were 14 bodybuilders (mean±SD age: 36.8±9.1y.; height: 171.6±6.2cm; weight: 77.1±7.6kg; FFM: 67.6±6.8kg) who each trained for an average of 7.5h per week. BMR was measured by using a Douglas bag, the oxygen and carbon dioxide concentrations were analyzed by mass spectrometry, and FFM was measured by dual X-ray energy absorptiometry. PAL was measured by the doubly labeled water method for 7 subjects selected from the 14 bodybuilders. BMR/FFM was 25.4±2.1kcal/kg of FFM/day. Total energy expenditure (TEE) was 3, 432±634kcal, and PAL calculated as TEE divided by BMR was 2.00±0.21. The FFM value needs to be considered when evaluating a standard BMR range, and both training and daily physical activity levels should be considered when evaluating a standard PAL range.
著者
海老 久美子 中尾 芙美子 上村 香久子 八木 典子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.13-20, 2006-02-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
20
被引用文献数
2

高校1年生野球部員285名を対象として, 栄養・食事指導が体格の向上にどのように関与するかについて調査, 検討を行った。調査対象は, ほぼ同じレベルの実力を有し, 練習時間も同程度である, 15~16歳の1年生野球部員とした。部員は学校単位で, 栄養・食事指導をしない対照群と, 指導を行う指導群に分けた。結果, 指導前では対照群, 指導群の間に差は認められなかったが, 指導後の測定・調査において, 指導群は対照群に比べ, 体脂肪率で有意の低値, 除脂肪量で有意に高値を示した。また, 食事分析調査では, エネルギー量と多くの栄養素の摂取状況において, 指導群は対照群に比べ, 有意に高値を示した。さらに, 指導群には, 指導内容を反映した食事パターンの変化が確認された。このことから栄養・食事指導は対象者に理解され, 実行されたことが示唆された。また, 指導群の除脂肪量の増加量と1日の合計エネルギー摂取増加量, 及び, 午前中エネルギー摂取増加量, 穀類摂取増加量の間にはそれぞれ正の相関が認められ, それぞれの食事量を増やした選手に除脂肪量の増加が多いことが確認された。
著者
荒木 茂樹 伊藤 一敏 青江 誠一郎 池上 幸江
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.235-251, 2009 (Released:2011-03-30)
参考文献数
94
被引用文献数
3 5

Although barley has traditionally been one of the most important food grains, the intake in Japan has been decreasing during the last forty years. Barley provides many essential nutrients (carbohydrates, dietary fiber, vitamins and minerals) and functional components (dietary fiber and polyphenol). Studies on the health benefits of barley have been rapidly increasing in terms of the cholesterol-lowering effect, serum glucose and insulin normalization, decreased body fat accumulation, and blood pressure reduction. It has been scientifically proven that the soluble dietary fiber in barley, β-glucan, might reduce the risk of cardiovascular disease (CVD). It is inferred that two principal mechanisms may contribute to the cholesterol-lowering effects of barley and β-glucan: 1) reduction of cholesterol and bile acid absorption from the small intestine, 2) inhibition of cholesterol synthesis in the liver. Barley and β-glucan have therefore been approved as a potential health benefit against the risk of CVD in the United States and Sweden. Recent clinical studies have suggested that the consumption of barley and its products might reduce many risk factors associated with the metabolic syndrome, namely diabetes, hypertension and dislipidemia. This review presents information that will hopefully increase the awareness of professionals and consumers for the health benefits of barley.
著者
田中 清 桒原 晶子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.219-228, 2022-08-01 (Released:2022-09-17)
参考文献数
42

骨粗鬆症性骨折は,多額の医療費・介護費用を要する疾患である。近年,骨折予防のエビデンスを持った治療薬が多数開発されており,高リスク者に対する使用はおおむね正当化される。しかし医療費は有限の資源であり,それを適正に配分するという観点からは,低~中リスク者に対する高額な薬剤使用には問題がある。 ビタミンD欠乏により,くる病・骨軟化症が起こるが,より軽症の不足であっても,骨折リスクとなる。一方でビタミンD不足者の割合は極めて高い状況にある。ビタミンD不足が骨折リスクであるとの観察研究,ビタミンDにより骨折が抑制されるとの海外からの介入研究は多数報告され,ビタミンD介入による骨折発生数減少は,介入費用を大きく上回る骨折関連費用の削減となることが示されている。またビタミンDには,筋力維持による転倒防止,感染症や一部のがんのリスク減少などの効果も報告されており,ビタミンDの栄養的介入による疾患予防効果の社会的インパクトは,さらに大きい可能性がある。 栄養的介入の疾患に対する絶対的効果は薬物療法より小さくとも,広い対象に適応できるため費用対効果では上回ることもある。しかし,従来わが国においては,栄養的介入の社会的意義はほとんど研究されていない。そこで,本稿ではビタミンDによる骨折予防の社会的意義について述べ,種々の栄養的介入につき,このような視点からの検討が必要であることを示唆した。
著者
西川 禎一
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.129-144, 2004-06-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
103

Elucidation of the function and mechanism of the innate immune system has shown that natural killer (NK) cells play an important role, particularly for protection against viral infection and cancer; they also seem to participate in maintaining the health of senescent people and their longevity. The fundamental aspects of innate immunity and NK cells is explained first in this review. Bibliographic information on effective nutrient composition, food ingredients, and life style for activating NK cells is then presented and explained.
著者
齊藤 愼一 海老根 直之 島田 美恵子 吉武 裕 田中 宏暁
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.317-332, 1999-12-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
54
被引用文献数
2 2

エネルギー所要量は栄養所要量の基礎とされている。幼児期から高齢期まで生涯にわたり健康で活力のある生活を送るには, どれだけ食べればよいかを考えることに加えて適切な運動を生活に取り入れることが重要である。一方, 激しいトレーニングを行うスポーツ選手では, 不適切なエネルギー摂取は競技成績の低下につながりやすい。このような点から, 我が国に限らず世界各国で1日のエネルギー消費量の適正な測定法に関心が集まっている。二重標識水 (Doubly Labeled Water; DLW) 法は, エネルギー消費量測定法の比較的新しい方法であり, 実験室内でも実験室外でも幅広く使用できる。日常生活状態のエネルギー消費量を測定できるゴールドスタンダードであり, 得られた値はより実際に近い状況でのエネルギー消費量の基準となると考えられている。しかし, 使用する安定同位体の酸素-18 (18O) の価格及び分析機器が高額なので, 多数の被験者を用いる実験や疫学的調査あるいは教育プログラムへの応用には制限がある。ここでは, この原理と実際の測定について解説し, 加えて健康づくりの運動やスポーツへの応用についても述べた。
著者
高木 絢加 武田 一彦 御堂 直樹 駒居 南保 山口 光枝 永井 成美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.49-58, 2013 (Released:2013-05-23)
参考文献数
32
被引用文献数
4 3

【目的】温かい飲食物摂取後の,「体の温かさ」や体温の変化を検討した報告は少ない。本研究の目的は,温度の異なるスープをサンプルとして,飲食物の温度が摂食者の主観的温度感覚と深部・末梢体温に及ぼす影響を調べることである。【方法】前夜から絶食した若年女性20名に,異なる日の朝9時に,65°Cスープ摂取,対照として 37°Cスープ摂取,スープ摂取なし(ブランク)の3試行をランダムな順序で実施した。26°Cの実験室で検査衣を着用した安静状態の被検者の,サンプル摂取10分前から摂取65分後までの主観的温度感覚,深部体温(鼓膜温),末梢体温(手先温,足先温),心拍数を測定した。スープ摂取後には嗜好調査を実施した(大変おいしい[10点]~大変まずい[0点])。【結果】嗜好得点は,65°Cスープでは37°Cスープより有意に高かった。摂取後の鼓膜温,足先温,心拍数の変化量は,65°Cスープ, 37°Cスープ,ブランクの順に高値で経時変化した(Sample effect, Sample×Timeとも有意)。各測定時点の多重比較からは,65°Cスープでは,主観的温度感覚は摂取直後で 37°Cスープやブランクと比べて有意に高値であること,鼓膜温は摂取20分後まで,足先温は摂取15分後まで 37°Cスープと比べて有意に高値であることが示された。【結論】37°Cスープとの比較から,65°Cスープ摂取後の鼓膜温や足先温の上昇はスープの温度の影響を受けていると考えられた。3試行の結果から,飲食物に含まれるエネルギー基質や美味しさなどの要因に加え,飲食物の温度自体も主観的温度感覚や体温に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
川上 貴代 平松 智子 田淵 真愉美 我如古 菜月 山本 沙也加 秋山 花衣 岸本(重信) 妙子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.32-39, 2022-02-01 (Released:2022-03-12)
参考文献数
14

【目的】本研究は病院給食におけるハラール対応の現状を調査し,イスラーム教など宗教や食の信念をもつ患者の受け入れ体制の整備や対応の基礎資料とすることを目的とした。【方法】中国地方A県内の病院161施設に所属する管理栄養士を対象に,2019年12月,病院での個別対応食に関するアンケートを郵送し自己記入式アンケート調査で実施した。122施設(回収率75.8%)から回答を得てすべて解析に用いた。解析はχ2 検定,またはFisherの直接法で行った。【結果】宗教への個別対応の実施率は30.3%で病床数が多い病院ほど実施している傾向があった。ハラール対応経験のある割合は,調査対象全体の14.8%であり,既存献立の禁忌食品を除去・代替えして提供する病院が多かった。無効回答を除く120例のうちでハラールについて知っている,または聞いたことがあると回答した者は87.5%であり,ハラールを知っていると答えた者は全く知らないと答えた者と比較して,留意すべき食品として「豚肉」「アルコール飲料」「アルコール類」を選択する者が有意に高く,「醤油」については選択する者が高い傾向であった。【結論】今回,対象とした病院管理栄養士のハラールの認知度は高い一方で,給食における対応経験のある病院は少なかった。ハラール対応の具体的方法に関して,施設間での情報共有や学習の機会を持つことが重要と考えられた。
著者
永原 真奈見 太田 雅規 梅木 陽子 南里 明子 早渕 仁美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.131-142, 2020-08-01 (Released:2020-09-26)
参考文献数
37

【目的】小学校に入学した1年生が6年生になるまでの6年間における,朝食の食事バランスと生活習慣や不定愁訴を調べ,生活習慣及び不定愁訴と朝食の食事バランスとの関連性を明らかにした。【方法】2011年入学の1年生(n=91)を対象に,起床や就寝,朝食,共食,食事の手伝い,不定愁訴に関する自記式質問紙調査を6年間継続して実施した。学年時別実態及び経年変化を明らかにすると共に,朝食の食事バランスと関連のある生活習慣・不定愁訴について検討した。【結果】朝食の欠食率は1~4年時は3~5%,5・6年時は11~14%に増えており,共食の割合は進級に伴って減少していた。朝食で主食・主菜・副菜がそろった食事をしている児童の割合は1年時が45.1%と最も高く,4~6年時には主食のみの食べ方が増加した。起床時刻や自律起床習慣は,高学年時に顕著な改善はみられず,就寝時刻は進級に伴って遅くなっていた。不定愁訴に関しては,6年時の児童の約90%がだるさや疲れ,イライラやむかつきを感じ,約63%が学校が嫌になることがあると回答した。また,朝食の食事バランスは,起床・就寝時刻,共食,手伝い,疲れ,学校が嫌の項目と関連がみられた。【結論】低学年時に望ましい生活習慣を確立できるよう積極的に介入すること,高学年時にはバランスの良い朝食摂取や睡眠の意義を再教育し,不定愁訴にも配慮することの重要性が示唆された。
著者
田原 遠
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.45-56, 2018-06-01 (Released:2018-07-11)
参考文献数
22
被引用文献数
1

【目的】あいりん地域でよく利用されている料理を参考にして作成した「目安量表」を用いて半定量食物摂取頻度調査法(Semi-Quantitative Food Frequency Questionnaire:FFQと略す)で調査を行った。その妥当性について検討することを本研究の目的とした。【方法】あいりん地域に生活の拠点を置く者を対象としてFFQを実施し,255名(全男性)の参加者を得た。このうち21名については食事記録についても協力が得られたため,この21名を本研究の対象者とした。食事記録より得られた値を基準とし,目安量表を用いたFFQより得られたエネルギー及び栄養素摂取量,食品群別摂取量について相関係数を用いて妥当性を検討した。【結果】エネルギー及び栄養素摂取量における相関係数の中央値は粗値で0.57,エネルギー調整,de-attenuation後では0.56であった。相関係数0.4以上が得られたのは粗値でも,エネルギー調整,de-attenuation後でも33項目中28項目であった。食品群別摂取量における相関係数の中央値は粗値,エネルギー調整後共に0.50であり,相関係数0.4以上が得られたのは粗値,エネルギー調整後共に17項目中12項目であった。【結論】様々な制約はあるものの,この目安量表を用いたFFQは今回の対象者においてある程度有効なツールになり得ることが示された。
著者
横家 将納
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.263-269, 2010 (Released:2010-10-26)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

メッシュ気候値および人口メッシュデータを利用して都道府県別に求めた日最高気温,日平均気温の平年値と幼児,児童,生徒の身長および体重の都道府県別平均値との関係を調べた結果,負の相関が認められた。すなわち,気温の低い地域ほど,身長は高く,体重は重くなるという地域相関が見られた。これら気温と体格との地域相関の原因については,地域による栄養素摂取量の過不足やバランスの違い,ベルクマン・アレンの法則による遺伝的適応などについても考えられたが,気温などの環境要因による食物摂取量への影響などが体格の地域差をもたらしている可能性が考えられた。またこのことは,現代の日本における栄養素摂取量やそのバランスが地域によらず均一化したため,結果的に気温などの環境要因が食物摂取量などに与える影響が体格の地域差として表面化している可能性があると考えられた。(オンラインのみ掲載)