著者
鈴木 哲司
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2012

土地利用の改変は、放射環境や蒸発散量を変化させ、地域の水収支や熱収支そして生態系に対して影響を与える可能性がある。近年、半乾燥地域であるナミビア北中部地域では、従来は未利用であった季節性湿地帯(以下,オシャナ)の水資源を有効活用し稲作を導入しようとする動きがある。オシャナはその下流部に多くの野生動物の生息域となっているエトーシャ国立公園を有する。そのため、稲作導入によりオシャナの水収支に対しどのような影響が及ぼされるのかを明らかにすることは、地域の生態系保護の観点からも重要である。そこで、本研究は、ナミビア北中部地域に出現するオシャナでの稲作導入に伴う水収支への影響について、とくに蒸発散量の変化とその要因を明らかにすることを目的とし実施した。2008年9月よりナミビア北中部地域に位置するナミビア大学オゴンゴキャンパスにて、オシャナ内にイネ圃場(Rice field, RF)と自然植生圃場(Natural vegetation field, NVF)を、アップランドにアップランド圃場(Upland field, UF)を設営し、ボーエン比・熱収支法によって蒸発散量(<i>ET</i>)を測定した。<i>ET</i>は、すべての圃場において降雨(<i>P</i>)の開始と共に増加した。しかし、UFでは雨季終盤にかけて<i>P</i>の減少に伴い<i>ET</i>も減少する傾向が見られたが、NVFとRFについてはオシャナに水面が存在している期間は<i>P</i>の存在に依存せず比較的高い<i>ET</i>を維持していたことがわかった。NVFとRFの<i>ET</i>は2010年の乾季に顕著な差を示した。その乾季の間、RFの<i>ET</i>は約0.6 mm day<sup>-1</sup>を推移したが、NVFのそれは約0.9 mm day<sup>-1</sup>を推移した。RFではイネの収穫に伴いイネの地上部が刈り取られたことで地表面が現れアルベドが増加し、<i>Rn</i>が減少し、<i>ET</i>が減少したのではないかと考えられる。この結果は、イネを導入する際の栽培管理方法によって栽培期間の雨季だけでなく、乾季においても<i>ET</i>が影響を受ける可能性があることを示唆しており、より詳細に解析を進めていく必要があろう。今後は当地の<i>ET</i>を規定する要因について分析を進め、それらの因子に対する稲作導入の影響についてさらに検討していく。
著者
真木 雅之 前坂 剛 岩波 越 三隅 良平 清水 慎吾 加藤 敦 鈴木 真一 木枝 香織 Lee Dong-In Kim Dong-Soon 山田 正 平野 廣和 加藤 拓磨 小林 文明 守屋 岳 鈴木 靖 益田 有俊 高堀 章
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.11, 2008

次世代の豪雨強風監視システムとして,防災科学技術研究所が複数の研究機関,大学と連携して進めているXバンドレーダネットワーク(X-NET)の概要について述べた.2007昨年度に準備を終了し,2008年と2009年の試験観測を通じて以下の項目に焦点を当てた研究をおこなう.•首都圏上空の雨と風の3次元分布(時間分解能6分,空間分解能は数100m~500m)の瞬時集約と配信.•上記の情報に基づく豪雨域,強風域の検出と監視.•外そう法による降水ナウキャスト,およびデータ同化した雲解像数値モデルによる降水短時間予測.•局地気象擾乱の構造,発生過程,発生機構の理解.•都市型災害の発生予測手法の高度化.•気象学,防災研究,気象教育,建築,都市,交通,電力,通信,情報,レジャー産業などの様々な分野における基礎的な気象データベース作成.
著者
尾中 俊之
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2012

近年,局地的集中豪雨の多発や水資源の偏在化による旱魃など,地球温暖化に起因すると思われる異常気象災害が地球規模で年々深刻になりつつある.それらの対策としてクラウド・シーディングを用いた気象制御手法の研究が世界各地で行われている.ただし,降雨を促進させる人工降雨の研究はこれまで数多く実施されているが,豪雨抑制を目的とした研究はあまり行われていない.そこで本研究では,シーディングによる豪雨抑制効果を明らかにするため,複数の豪雨事例についてメソ気象数値モデルMM5を用いて実験的なシミュレーションを行った.また,シーディングを行うことによる積雲対流の変化のメカニズムについて詳しく解析し,主にシーディング高度と効果との関係に着目して,どのようなプロセスを経て豪雨抑制効果が得られるか検討した.複数の事例を比較・検討した結果,事例による傾向の違いはあるものの,対流性の雲が発達した事例においては比較的高高度のシーディングに対して高い抑制効果が表れたものが多く見られた.また,高度毎にシーディングを行うことで発生しやすい降水粒子に違いがあることが分かり,降水粒子の落下速度に依存して降水域の集中度が増減していることが分かった.<br>
著者
山本 太郎
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2015

日本近海で発生する多くの台風は,北海道に接近するまでに勢力が衰えたり進路がそれたりするため北海道では本州ほど台風被害は多くないが,近年H15年日高豪雨やH18年豪雨など台風による大雨被害が発生し,さらに道東方面の河川で台風が主要因の洪水が増加している状況もある.これらを踏まえこれまで北海道に接近または到達した台風の特徴として経路と降雨分布の傾向を調べた. 1961年以降2014年までの54年間に発生した台風について,北海道に接近した台風を抽出し接近するまでのルートと中心気圧の変化の傾向を整理した.北海道の接近した台風のうちほぼ6割の台風が日本海ルートで接近し,残りが本州縦断ルート,太平洋ルートから接近している.北海道に接近した台風のうち中心が北緯30度を気圧980hPa以下で越えた台風の北緯40度を越えたときの中心気圧を整理すると,1961年以降54年間の平均でみれば,北緯40度を越えた時の中心気圧は日本海ルートでは986hPaに対して太平洋ルートでは981hPaと低く,太平洋ルートで北海道に接近する台風は接近する台風の割合は少ないが中心気圧が低いままで接近することが多いことが示された. 北海道に接近した台風について北海道の通過コースを区分し,そのうち1991年以降に北海道に接近した台風から北緯40度を中心気圧980hPa以下で越えた台風を抽出し,アメダス降雨量を整理した.日本海寄りのコースを通過した台風では,函館や苫小牧,稚内など道南・道央・道北で降雨量が多いが,雨量としては80mm程度でそれほど多くなく50mmにも達しない程度の場合も多い.これに対して主に太平洋寄りのコースを通過した台風では帯広や釧路,北見など道東で総雨量100mmを超えることも複数回発生しており,近年北海道を通過した台風では道東が主に影響を受けていることがわかった.
著者
田原 俊彦 大石 哲
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2014

近年,局地的集中豪雨,台風等による気象災害が問題となっており,その一例として河川増水による浸水被害が挙げられる.河川増水による浸水被害を抑制するためには,河川上流に位置するダムによる洪水調節の最適化が重要である.そこで本研究では,2013年台風第18号(MAN-YI)による一連の降雨時における桂川上流の日吉ダムの放流操作に動的計画法(DP),確率動的計画法(SDP)を用い,気象庁の週間アンサンブル数値予報GPVを導入することにより,事前放流を考慮したダムの放流操作の最適化の検討を行った.その結果, SDP,DPによるダムの放流操作は,週間アンサンブル予報の予報精度がある程度高ければ,実際の操作よりも洪水調節効果が高くなるが,予報精度が低ければ実際の操作よりも洪水調節効果が低くなる可能性があることがわかった.また,週間アンサンブル予報を用いて事前放流を行い,降雨が始まればダムの流入量,下流の流量を見ながら適宜ダムの放流操作を修正する提案手法においても十分に洪水調節効果を高めることができると示された.
著者
能登谷 拓 小林 健一郎 奥 勇一郎 木村 圭佑
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2014

2013年9月,台風第18号が日本に上陸し,近畿地方においては,淀川水系の桂川や宇治川などが氾濫し,京都府,滋賀県を中心に大規模な浸水被害が生じた.日本は地形的に洪水災害が発生しやすくなっており,突発的な豪雨に備えた防災体制が必要であると考えられる.本研究は,淀川流域における将来的な大雨の影響評価を行うことを目的とし,最新のメソ気象モデルであるWRFを用いて,平成25年台風第18号による大雨の再現実験と温暖化差分を加算した海面水温を境界値とする海面水温温暖化実験を行う.本来温暖化の影響を厳密にシミュレーションするためには,気温,水蒸気量,気圧などのあらゆる諸物理量の気候変動の影響を考慮した擬似温暖化実験の手法が用いられるべきという報告がある.しかし,今回は海面水温の上昇だけを考えた海面水温温暖化実験を行うことにより,海面水温の変動がもたらす影響を定量的に評価することとした.本研究で行った実験では,海面水温を上昇させると時間降水量,積算降水量ともに大きく増加した.このことから,将来的な台風第18号を超える大雨の発生を想定し,河川計画の策定なども含めた防災体制を整える必要があると考える.
著者
伊藤 尚也 津村 悠斗 諸泉 利嗣 三浦 健志
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2015

近年,気候変動に伴う温暖化や都市部でのヒートアイランド現象を起因とした気温上昇により,熱帯夜や熱中症の増加が大きな問題となっている.気温上昇を緩和する簡易的な手法として,従来から地表面への散水が従来から行われてきた.本研究では,アスファルト面にスプリンクラーを用いて散水を行い,夏季から秋季にかけての気温緩和効果およびWBGTに与える影響を実験的に検討した.その結果,黒球温度,気温,WBGTおよび水蒸気圧に散水効果が見られた.また,同じ条件下では秋季よりも夏季の方が散水効果の大きいことが分かった.
著者
辻村 真貴 安部 豊 田中 正 嶋田 純 樋口 覚 上米良 秀行
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.31-31, 2005

乾燥・半乾燥地域における内陸河川は,流下にともない水面からの蒸発と地下水への涵養により,徐々に流量を減じていくことが一般に言われている.従来こうした河川と地下水の交流関係は,流下に伴う河川流量の変化という見かけの傾向から指摘されることが多く,実証的な検討はなされてこなかった.本研究では,モンゴル東部ヘルレン川の上流部から中流部に至る本流とその流域を対象に,安定同位体トレーサーを用いた水・同位体収支解析に基づき,河川水と地下水との交流関係を検討した.その結果,上流,中流いずれの区間でも河川_-_地下水交流量は正値を示し,河川に対する地下水の流出が生じていることが示唆された.上流区間において1.0 m3/s(1.7 x 10-2 m3/s/km),中流区間において2.6 m3/s(1.1 x 10-2 m3/s/km)の地下水流入量は,水面蒸発量を上回り,また河川流量の10 %から20 %に相当し,無視し得ない量である.
著者
北側 有輝 城戸 由能 中北 英一
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2013

近年,集中豪雨等の極端な気象現象に伴う水災害が多発し,地球規模気候変動による水災害の巨大化や頻発化が懸念されているが,地下水環境への影響評価についての検討事例は国内外を通しても少ないのが現状である.本研究では,今後の適正な地下水利用と持続可能な水資源の確保を目的として,揚水量や涵養量を含む流動特性と水質特性を評価できるモデルと全球気候モデル(GCM)の出力降水を用いて,気候変動が地下水環境へ及ぼす影響評価手法について検討している. 古来より地下水を利用してきた京都盆地を対象地域とし,連続式とDarcy則を基にした飽和平面二次元地下水流動モデルと移流分散式を基礎とした水質モデルを活用し,気象庁気象研究所で開発された超高解像度全球大気モデル(AGCM20)の後期ラン(MRI-AGCM3.2s)における現在気候および近未来気候実験の降水データを用いて地下水位および水質をシミュレーションした.全球気候モデルの空間的再現精度を考慮し,対象領域周辺メッシュの降水量データを入力することにより得た複数の出力結果から,疑似的なアンサンブル予測を行うことにより,地下水環境への影響を不確実性を考慮した確率的情報として表現した. 影響評価手法として,空間的・時間的の2つの観点から統計確率的に表現する手法を検討した.空間的評価手法では全評価対象領域内における期間平均値が一定値以上の水位低下や水質悪化が現れる面積割合,また時間的評価手法では評価対象領域内において一定値以上の水位低下が発生する時間が全解析時間に占める割合をそれぞれ算出して,気候変動による地下水環境への影響を定量評価した.また,アンサンブルメンバーのうち降雪地域を含み降雨特性が大きく異なるメッシュを除いてアンサンブル出力の分散を小さくすることを試みた.空間的評価の結果,超過空間面積率10%となる水位低下は-0.60mであり,年間平均で1.0m以上の水位低下を及ぼす空間は評価空間全体の約3%程度となった.また,時間的評価ではアンサンブル平均を用いた時間的評価により近未来気候の20%超過時間確率は現在気候に比べて-1.7 mの水位低下が拡大する結果となった.しかし,時間的評価手法における分布関数近似が十分でなく,改善の余地がある.
著者
大竹 奈津子 戎 信宏 高瀬 恵次
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2013

樹冠貯留量を推定するために、ヒノキ林における樹冠遮断蒸発の水収支データの解析を行った。樹冠に十分に水分が保留された場合、降雨時における樹冠遮断蒸発の水収支式より貯留変化量がゼロとなり、[林外雨量-樹冠遮断蒸発量]に対する林内雨量の割合を樹冠遮断飽和度とし、それが1であると仮定する。この樹冠遮断飽和度が1になるときの樹冠遮断貯留量Scを算出したところ、平均降雨強度との相関関係が認められ、Scは常に一定ではなく降雨強度の影響を受けて変化することが分かった。
著者
植木 仰 吉川 沙耶花 鼎 信次郎
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2015

国際河川流域は,各流域国の間で農業,工業,生活,環境用水をめぐる争い(越境水紛争)の舞台となってきた.多くは流域国同士の話し合いにより解決する努力がなされてきたが,武力行使による軍事衝突が20世紀の間にアフリカと中東にて7件報告されている.人口増加や気候変動により世界規模での将来の水逼迫が深刻化した場合,稀少となった水資源を確保するために,国家間で政治的対立や武力衝突が頻発するリスクは否定できないため,水逼迫と水紛争の関係性を定量的に分析することは大変重要な課題であると言える.そこで,本研究では全球水資源モデルから推定された水逼迫指標を用いた過去の水逼迫状態や考えられる過去の水紛争要因から国際河川流域における越境水紛争生起確率モデルを構築した.構築されたモデルは概ね良好な予測性能を有すると言える結果となった.しかし,モデル構築に関して仮説の設定や説明変数の選出にはまだまだ検討の必要な課題があり,今後も情報収集を進めて,モデルの改良に取り組む予定である.
著者
木村 雄貴 平林 由希子 木下 陽平
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2015

全球平均気温は2000年代に昇温傾向が止まり、いわゆる温暖化ハイエイタスの時期になっているといわれているが,陸上気温の高温極値は上昇し続けている.一方, 地球温暖化が進行すると世界の多くの地域で河川洪水の頻度が上昇することがいくつかの研究で指摘されており, 陸上の気温と洪水頻度には強い正の相関があることも指摘されているため, 温暖化ハイエイタスといわれる2000年以降についても世界の洪水の頻度が増加している可能性がある.そこで本研究では,流量観測データや全球河川氾濫モデルによる河川流量再解析データを用いて, 温暖化ハイエイタス期の洪水頻度について解析を行った. その結果,既往の研究で指摘されている通り,陸上の、年最大日平均気温に関しては上昇していることがわかった.また,GRDCの流量観測データと河川流量再解析データによる洪水頻度指標の双方において,20世紀から21世紀に洪水頻度指標が上昇しており, 2000年以降もその上昇傾向が続いていることが判明した.全球平均気温は2000年代に昇温傾向が止まり、いわゆる温暖化ハイエイタスの時期になっているといわれているが,陸上気温の高温極値は上昇し続けている.一方, 地球温暖化が進行すると世界の多くの地域で河川洪水の頻度が上昇することがいくつかの研究で指摘されており, 陸上の気温と洪水頻度には強い正の相関があることも指摘されているため, 温暖化ハイエイタスといわれる2000年以降についても世界の洪水の頻度が増加している可能性がある.そこで本研究では,流量観測データや全球河川氾濫モデルによる河川流量再解析データを用いて, 温暖化ハイエイタス期の洪水頻度について解析を行った. その結果,既往の研究で指摘されている通り,陸上の、年最大日平均気温に関しては上昇していることがわかった.また,GRDCの流量観測データと河川流量再解析データによる洪水頻度指標の双方において,20世紀から21世紀に洪水頻度指標が上昇しており, 2000年以降もその上昇傾向が続いていることが判明した.
著者
砂口 真澄 土屋 十圀
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.82-82, 2006

近年の都市域における氾濫は,河川からの外水氾濫による地表面氾濫や,都市域に網羅された下水道管路からの噴き出しからの内水氾濫が多発している.東京都の神田川流域では,2005年9月の台風第14号による豪雨で内水氾濫,護岸の決壊による水害が発生した.河川計画の上では治水水準が達成されつつも,内水氾濫に対しては下水道の排水・貯留能力を高めることが課題となっている.一方,ソフト面の対応策として,ハザードマップが作成されているが,町・丁目まで精度の高い浸水区域を想定する必要が高まっている.よって本論では事例研究として神田川流域の小排水区(190ha)を対象に詳細な河川・下水道の浸水メカニズムを数値モデル(NILIM)によって明らかにすることを目的とした. 2004年10月の台風第22号の降雨イベントをNILIMに適応させた結果,対象区の上流側で内水氾濫現象が確認された.このときの最大水深は101cm,浸水面積は0.16haとなった.
著者
森山 聡之 中山 比佐雄 平野 宗夫
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2013

平成24年7月に九州北部を襲った豪雨は、福岡県と大分県それに熊本県に大きな被害をもたらした。本研究は、国土交通省が試験運用を行ってるXRAINによる観測データを用いて、この豪雨の解析を試みた。その結果、XRAINはレーダ辺縁部では豪雨による減衰が顕著に観測された。しかし、レーダの中央部付近ではほとんど影響が見られないため、大分県側にもXバンドMPレーダを配置し、減衰を防ぐ事が望ましいと考えられる。
著者
立川 康人 フヌクンブラ ピービー 宝 馨
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.112-112, 2007

KsEdge2Dモデルは京都大学で開発された分布型流出モデルの一つであり,国内の多数の流域で研究され,適用されてきた。この分布型流出モデルは国土地理院が提供する国土数値情報を利用することを前提として開発されているため,そのままでは国外の流域に適用することは難しい。そこで本研究では,KsEdge2Dモデルを地球上のあらゆる陸域に適用することを可能とするために,グローバルに適用可能な地形情報を加工して,KsEdge2Dモデルのための地形情報と河道情報を作成する前処理プログラムDEM-V0-Makerを開発した。タイ国のMae Chaemを対象として,前処理プログラムDEM-V0-Makerが適切に動作することを確認した。これにより,あらゆる国際流域においてKsEdge2Dモデルを適用することが可能となった。この流域でKsEdge2Dモデルを適用し,観測流量を適切に再現することを確認した。
著者
脇水 健次 吉越 恆 宇野 正登 渡邉 雅子 西山 浩司 真木 太一
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.31-31, 2007

九州大学では,1999年から冬季に液体炭酸を用いた人工降雨実験(福田,1999)を行っている.「撒布対象雲」は,これら積雲の中の「ある程度発達した積雲(降りそうで降らない雲;シ-ダビリテイの高い雲)」である.しかし,冬型の気圧配置時でも,「撒布対象雲」が必ず発生するとは限らず,実験が成功しない場合もあった.そこで,本稿では,冬季の人工降雨実験の成功率をあげるため1) 福岡での冬季の降水発生の気象原因,2) 筋状の雲が発生するための気象条件,3)気象衛星画像から「撒布対象雲」の出現頻度を解析した.今回の解析から,次のような事柄が判明した.1) 冬型の日は対象雲の発生が多く,人工降雨に適した気象条件日であると考えられる.2) 冬型の気圧配置で前述のような3つの条件を満足して2日目以降に,筋状の雲が出現する回数が最も多かった.3)気圧配置が冬型の日の発生日数に対して,対象雲の出現日数が平均9.5日(出現頻度30.9%)である.
著者
田中 岳 八幡 洋成 山田 朋人
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2012
被引用文献数
1

二十四節季では,1月5日,6日頃を小寒,1月20日,21日頃を,大寒とよぶ.ただ,大寒の方が暖かくなることもある.近年,この大寒の頃の厳冬期に,気温上昇と降雨が観測されている.例えば,2002年1月21日,北海道の松前町,伊達市では,最高気温がそれぞれ8.2℃,5.0℃,日降水量12mm/day,114.5mm/dayが記録された.その際,札幌市では最高気温4.5℃,日降水量が53.5mm/dayとなり,市内を流れる望月寒川が氾濫し,16軒が浸水した.さらに,雪崩も発生し,国道二路線の一部,道央道の三路線,四区間の通行止めや,航空機の欠航も生じた.このような積雪寒冷地における厳冬期の気温上昇と降雨は,融雪を加速させて河川の氾濫や土砂崩壊をまねきかねない.また,冬期間の全体で気温上昇が続くと,積雪量が減少し水資源管理にも影響を与える.このように,冬期の気象変化は,治水,利水の観点からも注視しなければならない現象である. 本研究では,札幌を例として,積雪寒冷地における気温と降雨について,特に,一年で最も寒い厳冬期に着目し,その特性を気象データに基づき検討する.使用するデータは,気象庁札幌管区気象台で観測された1889年から2011年の123年間の気温,天気,降雨である.厳冬期に着目しているため,1月1日から2月28日の期間と,大寒の頃1月21日の前後2日を含む1月19日から1月23日の5日間のように解析期間を決め,平均気温,最高気温,最低気温および降雨の特性を考察した.その結果,人間活動の影響を強く受ける最低気温の最低値は,札幌市の人口変遷と概ね対応した形で,1940年以降に急激に上昇することを確認した.太陽の活動周期を除去した各気温の11年移動平均値には,上昇傾向と周期的な変動が確認された.そこで,各気温の11年移動平均値を直線近似した後,それぞれの偏差を求めた.その結果,直線近似された最高,平均,最低気温の最低値の長期的な変動傾向は,それぞれ2.2℃/100y,4.5℃/100y,9.7℃/100yと推定された.また,各気温には,およそ20年から25年の周期的な変動が確認された.これらの傾向は,解析期間を変えても確認され,降雨の発生頻度にも同様な傾向が認められた.
著者
中川 直子 河村 明 天口 英雄
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.143-143, 2010
被引用文献数
1

高速道路におけるサービスエリアは,「駐車場」「トイレ」「電話」「園地(休憩スペース)」を基本施設として,またこれらに付帯する形で「飲食施設」「物販施設」等が整備されており,大多数の国民が使用することから,快適・清潔・安全であり,かつ環境に負荷を与えないことが要求されている.NEXCO東日本の約300ヶ所のサービスエリアでは,各サービスエリア平均して50-80のトイレ設備を有しており,近年多様な水回り改善が進められているが,水消費量,電力消費量およびこれらに伴うコストが膨大である.そこで本研究では,トイレ使用の多い高速道路サービスエリアに着目し,今回は既存のトイレ施設を男子用無水小便器及び洗浄水循環型尿分離トイレに交換することによる環境負荷削減効果および費用便益に関する考察を行った.