著者
山本 多佳実 井澤 信三
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.269-282, 2021-02-28 (Released:2021-08-31)
参考文献数
21

本研究は、自閉スペクトラム症のある青年3名に対して「悪質商法の勧誘を断る行動」の指導を行い、①悪質商法の勧誘を断る行動の獲得、②直接指導をしていない悪質商法への般化、③悪質商法と悪質商法ではないものの適切な弁別、の3つを検討することを目的とした。指導は①ルールの提示、②シミュレーション訓練、③トレーナーからのフィードバックの順に行った。ルールの提示には、悪質商法の勧誘の断り方が収められたビデオとルールシートを用いた。シミュレーション訓練は、外出条件と在宅条件の訓練を行った。各条件には悪質商法課題と非悪質商法課題を用意し、訓練を行った。訓練後にトレーナーからフィードバックが行われた。結果は3名全員が指導した行動を獲得し、悪質商法と非悪質商法課題の弁別ができた。3名中2名は対人般化、1名は条件般化にも成功し、1名に関しては実際場面での般化のエピソードも確認された。
著者
松岡 勝彦 小林 重雄
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.1-12, 2000-01-30 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
1 1

本研究では、自閉症児者が不得意であるといわれてきた、「他者意図」の理解に関して、行動分析学の立場から、「他者意図」と表現されるものに対応するための適切な刺激設定はどういうものであるかを明確にし(Sidman,1971参照)、どのような環境設定を行えば、これを理解可能になるかを検討することを目的とした。ここでは、他者に対する援助行動という社会的行動の形成の中で、他者の言語行動を「字義通り」に解釈する条件と、環境設定との組み合わせで「言外の意味」を理解する条件とを設定した。訓練では、これらを弁別するためにビデオ弁別訓練が行われた。その結果、対象児は上記の2条件に応じた行動が可能となった。このことから、「心の理論」の欠如(「他者意図」の理解困難)といった抽象的に表現される対象を詳細かつ機能的に分析し、「他者意図」に対応する弁別訓練を行うことにより、他者の「心的状態」の理解を可能とする方略が導き出されるのではないかと考えられた。
著者
霍間 郁実 四日市 章
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.421-430, 2013
被引用文献数
1

本研究では、手話から日本語への同時通訳(読み取り通訳)の量的な側面を明らかにするために、訳出率と変換作業について分析を行った。分析対象とした手話話者の発話の文節数は307文節であり、各通訳者5名が発話した文節数は207~283文節であった。訳出率は41.7%~71.8%であり、通訳資格をもつ者の中でも差が大きいことが示された。通訳者は重要語を選択的に訳出しており、訳出率の高い通訳者は少ない発話数で効率よく訳出を行っていることが推察された。訳出における変換作業は「同等」「言い換え」「付加」「省略」「誤り」に分類され、「言い換え」や「省略」では、通訳者が共通して選択する文節があることが示された。
著者
武藤 崇
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1-15, 2001-06-30 (Released:2017-07-28)

本研究は自閉性障害児2名に対する異同概念の成立について検討することを目的とした。まず、異同概念に関する課題分析が刺激等価性パラダイムを応用して実施された。それに基づいて異同概念に関する課題が4つ選定された。さらに、4つの課題構造が分析され、訓練課題が選定された。その訓練課題では、「同じ」という概念に基づく標的反応が正の強化で維持され、「違う」という概念に基づく標的反応が負の強化で維持されるように随伴性が配置された。その結果、1名は1つの刺激セットに対する訓練のみで、異同概念に基づく反応が他の3つの課題や他の新奇な刺激セットに転移した。もう1名においても3つの刺激セットを訓練された後、新奇セットへの転移が得られた。以上の知見は「関係の概念」に対する分析・援助パラダイムへの拡大という観点から考察された。
著者
藤野 博
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.63-72, 2013 (Released:2015-02-18)
参考文献数
41
被引用文献数
3

学齢期の高機能自閉症スペクトラム障害児への社会性の支援に関する研究動向を展望し、今後の課題を検討した。初期の研究でのおもな介入法は、会話や他者との関わり方など、コミュニケーションスキルを標的とするSSTに基づいていた。表情理解などの非言語的コミュニケーションや心の理論などの社会的認知の視点がそれに加わり、近年では抑うつや不安などの情動面の問題への認知行動論的なアプローチも導入されている。ほとんどの研究で効果が報告されているが、介入の標的や方法、研究デザインやアウトカム測度などが多様で、特定の介入法の効果に関して一般化できるだけの確実なエビデンスはない。介入プログラムのマニュアル化とコミュニティでの実践に基づくRCTによる効果検証は今後の課題であろう。その一方で、個人の生活史や社会的状況に密接に結びついた個別的な問題に対する形式的なスキル獲得を目指したアプローチの有効性と限界についても議論する必要がある。
著者
竹花 正剛 竹花 裕子
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.103-111, 1994-03-31
被引用文献数
1

1970年代に入って、無発語の自閉症児や重度の精神遅滞児に対して非音声系の補助手段としてサインやシンボルや文字を用いた指導法が多く報告されるようになった。非音声系の補助伝達手段を、音声言語の補助とするか、または代替として機能させるかは、障害のレベルやタイプおよび音声言語のレベルによって異なる。本研究は、視覚-運動系が優位で優れた視覚的記憶を示す中度の遅れを持つ自閉症児にサインと言語の同時提示法(マカトン法)を導入して、命名学習へのサイン言語の有効性を検討した。結果は、サイン反応の習得が言語反応に先行し、最終的にはサインと言語の複合反応を形成した。般化事態では、言語反応の般化は見られたが、サイン反応の般化はほとんど認められず、修正法の導入で言語とサインの両反応の般化が見られた。また、言語条件とサインと言語の同時提示条件と比べた場合、後者の方が学習成立が速い傾向が認められた。
著者
河内 清彦
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.19-32, 1979-10-15
被引用文献数
2

視覚障害者(児)に対する態度構造を自己の意見と社会的望ましさの視点から解明するため特教学生、盲学校教師(関係群)一般学生、普通校教師(無関係群)に質問紙調査を実施した。これらの回答を因子分析した結果、両視点に共通の因子が9個求められた。これらを一般化された拒否、統合教育、特殊能力、依存的な自己中心性、相互作用についての当惑、期待される盲人像、知的能力、家庭生活、失明の影響と名づけた。さらに自己の意見からは「社会保障」の因子が抽出された。またこの次元(因子)の一部を測定する暫定尺度が構成された。最後に因子得点に基づいて各群を比較した結果、最初の3つの次元において関係群と無関係群に、また「相互作用についての当惑」で一般学生と盲学校教師に態度の相違がみられた。これらは視覚障害者(児)を同じ人間としてみるか否かにその原因があると推測されるが、知識だけでは視覚障害者(児)問題の解決にはならず社会との交流の重要性が指摘された。
著者
香野 毅
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.43-53, 2010-05-31

発達障害児の姿勢や身体の動きにおいて、その発達的偏りや弱さ、苦手さが観察されることが少なくない。ここではまず、広汎性発達障害、ADHD、LD、発達性協調運動障害について、それぞれの障害における姿勢や身体の動きに関する研究を取り上げた。彼らが姿勢の安定性やバランス、協調運動、粗大運動、微細運動などといった面に困難さを有していることが見いだされ、さらにそれぞれの障害のもっている特徴も報告されつつある。次に姿勢や身体の動きと認知、行動、感情の関係についてこれまでの研究を概観した。最後に、発達障害児の姿勢や身体の動きに対してアプローチしている3つの指導法を紹介した。姿勢や身体の動きが彼らを理解する際のひとつの側面であること、かつ種々の困難さへの治療教育的なアプローチの窓口として活用することを提案した。
著者
窪田 隆徳 藤野 博
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.71-81, 2002-05-31
被引用文献数
3

音声言語表出面に著しい障害をもつ言語発達障害の1事例に対し、voice output communication aids(以下、VOCAと略す)を使用した喫茶店での注文場面の指導と、家庭へのVOCAの貸し出しを行い、コミュニケーション行動および音声言語表出行動における変化を観察した。その結果、対象児のコミュニケーションスキルが拡大するとともに、非音声型のコミュニケーションモード(指さし・サイン・シンボル)から音声型のコミュニケーションモードへと変換がなされ、音声言語表出が可能となった。それまで、学校や施設などで先行・並行して行われていたコミュニケーション指導に加えて、VOCAを使用した伝達場面設定型の指導によって、コミュニケーション行動の拡大と音声言語表出が獲得されたことから、本研究での対象児のような事例に対しては、VOCAを使用した実用的なコミュニケーション指導が有効であることが示唆された。
著者
藤原 直子 大野 裕史 日上 耕司 佐田久 真貴
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.383-392, 2012 (Released:2013-09-18)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究は、発達障害児の親に対するペアレント・トレーニングにスタッフとして参加した大学院生のうち、親面接を担当した5名を対象に、参加後の変容について検討した。親面接担当スタッフは、事前にペアレント・トレーニングに関する学習や演習を行い、実際のペアレント・トレーニングでは親への講義やグループワークにおける面接を担当した。ペアレント・トレーニング参加後、子育て支援に対する効力感に関して、託児担当スタッフには変化がみられなかったが、親面接担当スタッフは5名中3名で有意に向上し、「育児不安に対する支援」と「支援環境の整備」は5名全員に向上が認められた。また、面接の進め方に対する親からの評価が高くなり、スタッフの面接技術や話し方が変化したと推察された。これらの結果から、ペアレント・トレーニングにスタッフとして参加し、親への講義や面接を行うことが、発達障害児の親および子育てに対する支援者を養成する一助となる可能性が示唆された。
著者
大久保 賢一 福永 顕 井上 雅彦
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.35-48, 2007
被引用文献数
1

通常学級に在籍する他害的な問題行動を示す発達障害児に対して、大学相談機関と小学校が連携し、学校場面における行動支援を実施した。対象児に対する個別的支援として、(1)適切な授業参加を促すための先行子操作と結果操作、(2)課題従事行動を増加させるための結果操作、(3)問題行動に対する結果操作を段階的に実施した。また、校内支援体制を整備するために、(1)発達障害の特性や問題行動の対応に関する校内研修の実施、(2)支援メンバー間における情報の共有化と行動の継続的評価、(3)全校職員に対する情報の伝達といったアプローチを行った。その結果、対象児の適切な授業参加や課題従事行動が増加し、問題行動は減少した。また、大学スタッフと保護者の個別的支援を実施する役割を学校職員へ移行することが可能となった。対象児に対する個別的支援と校内支援体制の構築に関して、その成果と課題について考察を行った。
著者
山本 淳一
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.11-22, 1997
被引用文献数
1 3

2名の自閉症児について、機能的な報告言語行動が成立するための条件を検討した。対象児は、静止画、動画、実際の動作が提示される場所まで歩いてゆき、その刺激を見てから聞き手のところで、「〜が〜を〜している」という文章を用いて報告する報告言語行動連鎖が形成された。実験Iでは、そのような行動連鎖が確立し、他者動作の訓練のみによって、自己動作が用いられた場合においても適切な主語と助詞を含む文が成立し、それらが共通の刺激クラスとしてまとまることが示された。実験IIでは、報告言語行動に伝達の機能をもたせるため、行動連鎖の中に、聞き手の名前を「呼びかける」言語反応を組み込んだ。その結果、未知の聞き手に対しても自発的呼びかけが成立した。すなわち、聞き手の注意を向けてから言語報告を行う行動が確立した。実験IIIでは、実際の教室場面において、獲得された行動連鎖の般化が評定された。その結果、聞き手を特定する手がかり刺激を与える手続きを付加することで、適切な呼びかけ反応ならびに適切な報告言語行動が生起した。これらの結果は、叙述的機能をもつ報告言語行動の機能化と般化のためのプログラム構成という点から考察された。
著者
有川 宏幸
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.265-275, 2009-11-30

応用行動分析学に基づく自閉症児への介入法は、有効性が認められてはいたものの、米国心理学会臨床心理学部会が示した「十分に確立された介入法」としての基準を満たしていなかった。しかし、それに準じる介入法として注目されていたのがUCLA早期自閉症プロジェクト(UCLA YAP)であった。Lovaas(1987)は、UCLA YAPを4歳未満の自閉症児に週40時間、2〜3年にわたり行ったところ、47%が標準範囲のIQに達したことを報告した。この結果は前例のないものであったことから、多くの研究者に精査され、自閉症からの「回復」という表現の問題や、無作為割付けの有無といった実験手続き上の問題などについて批判を浴びることとなった。そのため追試・再現研究は、可視的に、科学的な厳密さをもって実施されており、こうした批判への反証データも示されるようになっている。しかしながら、この成果については依然として不明な点も多く、「証拠」(evidence)に基づく継続的議論が必要であろう。
著者
吉岡 伸 松野 明子
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.45-51, 1993-11-30

1989年より4回にわたって、精神遅滞児におけるひらがな文字(71字)の読み能力と身近な名詞の音韻抽出及びいくつかの知覚課題の能力を測定した。対象児は精神薄弱養護学校に在籍する児童・生徒であり、1989年においては51名、1990年においては39名、1991年においては32名、1992年においては26名である。読み能力の成績はU字型の分布、すなわち「殆ど読めない」集団と「よく読める」集団に分かれた。読み能力に対してそのほかの三つの諸能力はそれぞれ有意な相関を示し、ひらがな読みの習得に一定の影響を持つことを示唆した。初年度(1989年)と最終年度(1992年)との各テストを比較すると、読み、音節分解、音韻抽出の各能力は3年間にわずかであるが伸びを示したが、知覚関連の成績はあまり変化しなかった。精神遅滞児における読みとその他の能力の関連のしかたについて考察した。