著者
齊藤 匠 土居 健次朗 河原 常郎 大森 茂樹 倉林 準 門馬 博 八並 光信
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1133, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】神経モビライゼーション(以下NM)とは末梢神経系の感受性,伸張性,運動性を改善する手技であり,その目的には疼痛やしびれの改善,二次的障害の予防がある。NMによって神経伝導速度低下との関係性が示されている。しかし,理学療法分野で臨床的指標となる,筋力や可動性について十分な検証がなされていない。本研究は橈骨神経NMの手関節背屈筋力と手関節掌屈角度に対しての効果を検証することを目的とした。【方法】対象は,健常成人18人(男性15人女性3人:25.8±3.9歳)とした。測定装置は,徒手筋力測定器IsoforceGT-310(OG技研),ストップウォッチ(CASIO HS-70W)とした。NMの対象は利き手側の橈骨神経とした。手法はMaitlandConceptのgrade4の位置から,ULTT2bを選択した。神経の伸張は頸部の側屈を行って確認し,10秒間の伸張位を保持した。NM施行前後に筋の伸長度,筋出力を測定した。筋の伸長度は日本整形外科学会および日本リハビリテーション医学会が制定した関節可動域測定法を参考に,手関節掌屈の角度を測定した。筋出力は手関節背屈筋群の等尺性収縮にて計測した。測定肢位は,椅子座位となり,机の上に前腕を置き,肘関節屈曲90°,肩関節内外旋および,前腕中間位とし,手関節中間位,手指屈曲位とした。解析は可動域と筋力それぞれのNM前群とNM後群の差を検証した。さらに,手関節掌屈の可動域の値の変化をもとに,母集団をA,Bの2群に分け検証した。A群は手関節掌屈可動域の変化量が平均値以上のものとし,平均値以下のものをB群とした。統計処理は対応のある一元配置分散分析とし,有意水準は5%未満とした。【論理的配慮,説明と同意】所属施設における倫理委員会の許可を得た。対象には,ヘルシンキ宣言をもとに,保護・権利の優先,参加・中止の自由,研究内容,身体への影響などを口頭および文書にて説明し同意が得られた者のみを対象に計測を行った。【結果】手関節掌屈の可動域の平均は,NM前は70.9±8.1度,NM後は76.3±7.6度と増加し有意差を認めた(p<0.05)。筋出力の平均は,NM前は1.5±0.3N/kg,NM後は1.7±0.4N/kgと増加したが,有意差は認めなかった。NM前後の手関節掌屈の可動域変化量は,5.4±2.5度であり,筋出力変化量は0.2±0.3N/kgであった。NM後の可動域と筋出力の変化は弱い相関が認められた(r=0.5)。手関節掌屈可動域の変化量は平均5.4度であり,A群7名,B群11名であった。NM前後の筋出力変化量はA群:21.6±19.5Nkg,B群:6.5±23.3N/kgであり,AB間に有意差を認めた(p<0.05)。【考察】NMを行う事で,神経線維の緊張が緩み,神経の伝導速度は低下することが言われている。その際に,神経のみならず周辺組織の緊張が緩むことで全体として可動域の向上がみられたと考えられた。筋出力はNM前後で統計学的有意差は得られなかったが,ほぼ全対象でNM後の増加を確認した。また,A群はB群と比較し筋出力の変化量が大きくなった。A群はNM後の反応が大きかったことから,運動の阻害要素に神経線維が貢献する割合が大きかったと考えた。可動域がNMに対して反応を示す場合は,適度なNMにより筋出力を促す可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究よりNMは可動域・筋力に対し有効な結果をもたらすことが示唆された。しかしながら,適切な伸長の強度,持続時間,頻度など検討すべき項目は残存している。近年,超音波診断装置の普及が目覚ましい。これらの計測装置をNMと併用することで,より客観的かつ効果的な治療の提供につながるものと考えられる。
著者
島谷 康司 島 圭介 菴原 亮太 長谷川 正哉 金井 秀作 田中 聡 小野 武也 沖 貞明 大塚 彰 Psiche Giannoni Pietoro Morasso Paolo Moretti
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1228, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】我々は,初期歩行直後の乳幼児にヘリウムガス入り風船(浮力:約2g)の紐を把持させると歩行時の身体動揺が減少し,そのために歩行距離が延長することを報告した。この現象は,Jekaらが報告した「指尖でカーテンに軽く触れることによって姿勢制御に有効に働くこと(Light Touch Contact)」に類似していると考えた。本研究では,初期歩行期の乳幼児に対してヘリウムガス入り風船の紐を把持(以下,風船把持)させることにより姿勢制御を最適化する支援方法を提案するために,まず風船把持の静止立位姿勢制御について検証することを目的とした。【方法】対象は,健常成人60名(男性:30名 女性:30名)であった。重心動揺計測には,アニマ社製重心動揺計(GP-6000)を使用した。また,全対象者のうち無作為に抽出した30名に対して頭部,風船を把持した右手部,仮想身体重心を想定した腹部の位置関係を検証するために,KINECT for Windowsを用いて3次元画像解析を行った。計測条件は,何も把持しない条件(以下,把持なし条件),風船を右手で把持する条件(以下,風船条件)の2条件を設定し,被験者ごとにランダム化して60秒間の計測を行い,データを比較した。計測肢位は閉眼タンデム立位とし,把持なし条件の右上肢はあたかも風船を把持しているかのような肢位とした。計測は被験者が十分に安定したと感じた際に「はい」と合図をさせて開始した。統計処理には,総軌跡長,実効値面積(以下,RMS),外周面積,左右軌跡長,前後軌跡長について,把持なし条件と風船条件の2群間で対応のあるt検定を行った。また,頭部・右手部・腹部の3次元座標から変動係数を算出し,2群間比較には対応のあるt検定を,群内比較にはKruskal Wallis検定および多重比較にはSteel-Dwass検定を行った。なお,有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に則り,対象者には本研究の趣旨を十分に説明し,書面にて同意を得た後に実験を行った。【結果】重心動揺については,把持なし条件と比較して風船条件は,総軌跡長(p<0.01),左右軌跡長(p<0.01),前後軌跡長(p<0.01),RMS(p<0.05)で有意に低値を示した。外周面積に有意差は見られなかった。各身体部位の変動のばらつきについては,把持なし条件・風船条件ともに頭部と右手部は腹部よりも有意にばらつきが大きく,頭部と右手部に有意差は見られなかった。また,把持なし条件と風船条件の群間比較をした結果,すべての身体部位間に有意差は見られなかった。【考察】本研究の結果,風船把持によって前後・左右の重心動揺速度が減少し,動揺のばらつきを抑えて身体重心を一定範囲内に収めていることが示唆された。しかし,風船の有無によって身体部位の位置関係に有意差が見られなかったことから,風船把持による静止立位姿勢制御の機序までは明らかにすることができなかった。しかし,山本らは,ヒトは各身体部位を前後・左右に微妙に動かしながら立位姿勢を制御すると述べており,本研究では風船把持によってフィードバック制御を賦活し,各身体部位を微動させることによって,より重心動揺を減少させる立位姿勢制御が行われているものと推察した。風船把持の立位姿勢制御が固定点に指尖で軽く触れるLight Touch Contactとは異なるため,今後は風船特有の揺らぎが静止立位姿勢制御に与える影響について詳しく解析し,初期歩行期の乳幼児に対する歩行支援の可能性について検証していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】現在,初期歩行発達遅延の乳幼児に対する確立した歩行支援方法はない。風船は口頭指示が難しい乳幼児にとって歩行練習を行う動機づけに有用な歩行支援用具となりうる可能性があり,健常成人においては,風船把持による静止立位姿勢制御が重心動揺を減少させることが示唆された。
著者
白尾 泰宏
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0433, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】歩行中の進行方向に対する足部の角度(以下,足角)は重要なアライメント要素であり7°~13°外旋が正常であるとされている。その要因としては,股関節の回旋,脛骨大腿関節での回旋,大腿骨や脛骨の捻転など骨性,関節性,神経筋性の要因が考えられているが,骨性因子の報告は少ない。今回の研究は,その要因である骨性因子と歩行時足角の関係を調査することである。【方法】下肢疾患の無い健常成人22名44下肢(男性11名,女性11名,平均年齢31.4歳)を対象とした。足角(toe out angle)は,zebris社製FDM-TLRシステムを用いて,トレッドミル上を自由歩行で任意の速度を決定後,試技を1分間行い,その後の30秒間を解析ソフトWin FDM-Tで2回計測し,平均値を算出した。股関節捻転角(femoral neck torsion以下FNT)はブルースラントダイヤル式角度計(感度0.1146°精度±1.0°以内)足底に固定しcraig testに準じて測定した。脛骨捻転角(tibial torsion 以下TT)は腹臥位膝90°屈曲位で,脛骨内果と腓骨外果の中央を結ぶ線と,大腿骨顆部中央を結ぶ線のなす角度をゴニオメーターを用いて測定した。それぞれ2回測定し平均値を算出し,得られたデータは級内相関係数を求め,次にTOAとFNT,TTをスピアマン順位相関係数の検定を行なった。各角度の群間比較ではWelch’s t-testを行い,全ての有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】対象者には事前に研究の趣旨を十分に説明し,同意を得た上で実施した。【結果】級内相関係数は,足角(右0.97 左0.99),大腿骨前捻角(右0.97 左0.98),脛骨前捻角(右0.72 左0.77)であった。相関係数の検定では,足角とFNTには有意な相関がみられた(rs=-0.4719 P=0.0017)が,脛骨捻転角では低い相関はあるものの有意差はみられなかった(rs=0.02896 P=0.8387)。各平均値は足角(男性9.43±5.1°女性6.36±3.51°P=0.0258),FNT(男性15.27±6.13°女性23.88±8.34°P=0.00036)で有意差がみられたが,TTでは(男性15.02±3.35°女性13.2±3.38°P=0.0967)有意差はみられなかった。【考察】歩行時足角とFNTは負の相関であることから,FNTの増大は足角減少に作用することが示唆された。SahrmannらはこのFNTの増大は,中殿筋後部線維の延長・弱化による股関節内旋の優位性を報告しており,歩行時の股関節内旋が起こりやすい状態が推察される。また,宮辻らは,自由歩行における足角の男女比において女性の足角が有意に減少したと報告しており,今回の研究も同様の結果となった。また,女性高齢者では同若年者と比較し足角が増大したと報告している。つまり,加齢にともなうバランス能力・筋機能低下から,その代償作用として足角を変化させ安定性を獲得していると思われる。しかし,FNTが増大した条件下での足角増大は膝関節にknee in toe outの回旋ストレスを誘発させることが推察される。また,同様に女性non contactスポーツに発生頻度の高い膝前十字靱帯損傷の発生メカニズムの要因にも,このFNT増大の条件下での足角増大による回旋ストレスが関与しているのではないかと思われる。したがって,この3つの形態評価は膝障害へのマルアライメントの解釈に重要と思われる。しかし,今回の研究では歩行時の膝関節回旋角度の評価を行なっていないため,脛骨・大腿骨の回旋角度と,足角,FNT,TTをパラメーターとした調査が今後の課題である。【理学療法学研究としての意義】臨床において,歩行分析を行なう上で膝回旋ストレスを考える際,動的な股関節・足部の影響が考慮されるが,あらかじめ解剖学的構造的特性を評価することで,その解釈の情報の一部になると思われる。また,さまざまな膝疾患の発生メカニズム解明の一助として意義がある。
著者
柳元 俊輔 宮原 慎吾 岩下 大志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1311, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】当センターは,臨床心理士を中心としたSocial Skill Training(以下SST)を自閉症スペクトラム児(以下,ASD児)を対象に行っている。ASDは社会性の問題を主とする障害群であるがその中で姿勢保持が困難,運動が苦手などの姿勢・運動面に対する訴えが多く,その訴えに対応する形でSSTに理学療法士が介入する契機となった。臨床の現場では,ASD児に「不器用さ」や「ぎこちなさ」を併せ持つ事はよく知られている。これらは,協調運動の稚拙さの一般的な表現であり,バランスや姿勢制御,ボール遊びや縄跳びが苦手といった学校生活を含めた様々な生活場面に影響を与える。運動が苦手である事は,本人の自尊心低下や集団からの孤立など,二次的な心理社会的問題の生起に繋がることもあるとされる。「ASD児は,ボディーイメージが未熟,バランスが悪い」と説明される事が多い。これらの事からもASD児については,協調運動の基礎として必要不可欠である姿勢保持や姿勢制御が困難な事が予測される。しかし,ASD児のバランス能力を捉える際に重要とされる支持基底面と身体重心線,重心移動について言及した研究は少ない。そこで今回は,前述した重要点に視点を置いた評価であるBasic Balance Test(以下BBT)を参考にし,ASD児のバランス能力評価として用い,その過程で得られた所見,評価する上で留意すべき点や課題について考察を加え以下に報告する。【方法】対象は,平成25年度4月より現在まで当院SSTに参加している男児4名(平均年齢10歳)。診断名はASDで知的発達に大きな遅れは認められない。BBTを対象者4名に対し2回ずつ同検査者が実施した。検査はSST参加時(月に一度),平成25年9~11月に実施。検査前に検者がデモンストレーションを行い,対象者が模倣出来た後に行った。BBTは全25項目から構成され,領域別として姿勢保持,立ち上がり・着座,端座位での重心移動,開脚立位での重心移動,閉脚位からのステップ動作の5領域で構成される。各項目は0~2の点数配分であり0:不可,1:不安定,2:安定で判定を実施。なお,姿勢保持項目における継足位,片脚立ち位時には,評価の細分化を図る為に上肢の代償を除き,両上肢を胸の前に位置させる事を条件として加えた。その結果に対し,全体総計,領域別総計,各項目に統計学的分析として1元配置の分散分析と多重比較検定を行い危険率は5%とした。なお項目別において2回の最高点数(4点)に対し,各対象者の項目別合計点の比較を行った。【倫理的配慮,説明と同意】測定実施に際し,本研究の趣旨を保護者に対し口頭および文章にて説明を行い同意を得た。なお,所属施設における倫理委員会の許可を得た。【結果】姿勢保持領域総計,閉眼・片脚立位項目で1元配置の分散分析で有意差を認め,多重比較検定では有意差を認めなかった。その他領域別総計,全体総計,項目別では有意差を認めなかった。項目別では4名に共通して最高点数に対し,各対象者の項目別合計点と比較した結果から閉眼・片脚立位保持,踵立位保持が困難な傾向が見られた。【考察】姿勢保持領域総計においては1元配置の分散分析でのみ有意差を認め,最高点数に対し,各対象者の項目別合計点と比較した結果から閉眼・片脚立位保持,踵立位保持が困難な傾向が見られた。松田らは,軽度発達障害児と健常児の立位平衡機能の比較について重心動揺計を用い,静止立位時(開脚)の開眼・閉眼について軽度発達障害児群では重心動揺が大きく,立位姿勢保持が不安定であったとの報告もある。Bernhardtらのバランスに影響する要因を参考にすると,力学的要因として開脚に比べ片脚立位では支持基底面が狭小する事,感覚・認知・注意の要因としては開眼に比べ閉眼でより難易度は高いと判断される。なお,平衡能力の発達は5歳から7歳にかけて体性感覚での制御が優位に働くという報告からも,対象者は体性感覚でなく視覚情報に偏った姿勢保持を行っている可能性が示唆された。有意差こそ認められなかったが,4名全員に共通して踵立位保持が困難な傾向があった。踵立位が困難である事については,対象者に対しX線等の精査を行っていないが見かけ上の扁平足を有しており,その足関節機能(alignment,hypermobility)が姿勢制御に影響を与え不安定さを招く一要因である事が推察された。【理学療法学研究としての意義】小児領域の障害を運動機能と認知機能に明確に分けて考える事は容易ではない。その両者の関連性を分析し,障害がどのように形成されるかを把握する事が重要である。我々理学療法士の役割としては運動の基礎となる姿勢保持・制御能力と身体構造・機能面,感覚・認知面との関連性を導き出す事が重要である。
著者
三津橋 佳奈 工藤 慎太郎 前沢 智美 川村 和之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0614, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】石井によると,重力環境において状況に応じてダイナミックに,また調節的に運動させるためには,体幹の動的安定性は非常に重要である,と述べている。動作時の体幹の安定性の低下は,身体重心の過剰な動揺による動作効率を低下させるため問題となる。また,安定性の低下を代償するために,骨盤や腰椎の運動性を低下させ,腰痛を引き起こしている症例に遭遇することもある。Neumannによると,歩行中,身体は二つの機能的単位である“パッセンジャー(上半身と骨盤)”と“ロコモーター(骨盤と下半身)”に分けられるとし,“パッセンジャー”の唯一の機能は自らの姿勢を保つこと,と述べている。つまり,歩行中の体幹筋には自らの姿勢を保つ為のDynamicな調節が求められる。このような筋収縮を動作中に発揮するためのトレーニングには,運動学習理論が必要になる。Schmidtは,運動学習において,運動を転移させるには,2つの運動課題の類似性が重要としている。つまり,歩行中の体幹筋の収縮をトレーニングするには,その体幹筋の収縮に類似したトレーニングが必要になる。臨床において腹筋群のトレーニングとして,sit-upやブリッジ,コアエクササイズなどが用いられている。しかしそれらのトレーニングが歩行時の腹筋群の動態を再現しているかは疑問が残る。この疑問を解決するには,まず歩行中の体幹筋の動態を明らかにしなくてはならない。そこで本研究の目的は歩行中の体幹筋の動態を示すこととした。【方法】対象は健常成人男性9名の左側とした。超音波画像診断装置には,日立メディコ社製MyLab25を用いて,Bモード,12MHzのリニアプローブを使用した。臍レベルで腹直筋の外側端,外腹斜筋(EO),内腹斜筋(IO),腹横筋(TrA)の筋腹が超音波画像として同時に得られる部位を,体幹の長軸に対して短軸走査となるように自作した固定装置を用いて,プローブを固定した。超音波画像診断装置とデジタルビデオカメラを同期し,トレッドミル上での歩行(4.7km/h)を左側から観察した。歩行は,ランチョ・ロス・アミーゴ方式を用いて細分化した。得られた歩行周期中の超音波の画像から,初期接地(IC)と立脚終期(TSt)の3筋の内側端の座標と,各筋の筋厚の最大値をImage-Jを用いて測定した。ICを基準としたときのTStでの内側端の内・外側方向への移動距離と筋厚の変化量(筋厚変化量)をそれぞれ計測した。統計学的手法として,各筋のICとTStの移動距離・筋厚変化量の違いについては,Wilcoxsonの順位和検定を,移動距離,筋厚の変化量の三筋間の比較にはFriedman検定(P<0.05)を用いて検討した。また,各筋の筋厚変化量とIC時,TSt時の筋厚の関係をspearmanの順位相関係数を用いて検討した。なお,統計解析にはSPSS ver.18を用いて,有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】対象者には本研究の目的と趣旨を口頭にて十分に説明し,紙面上にて同意を得た。【結果】Friedman検定の結果,移動距離は,EO-0.38(-0.53-0.20)mm,IO0.48(-1.33-0.56)mm,TrA0.38(-0.79-0.85)mmで有意差はなかった。また,筋厚変化量も,EO0.07(0.04-0.17)mm,IO0.40(0.21-0.58)mm,TrA0.35(0.29-0.39)mmで有意差はなかった。TrAの変化量はIC時の筋厚と相関係数-0.9の負の相関関係を認めた。【考察】本研究結果から,側腹筋群の移動距離,筋厚ともに動態が乏しいことが分かった。しかし,EO・IOに比べて,TrAの変化量が大きい傾向にあった。この原因を調べるため,相関係数を検討したところ,TrAのIC時の筋厚と筋厚変化量に負の相関がみられた。つまり,ICで筋厚の薄いものほど,TStでは筋厚が増大するといえる。そのため,ICでの筋厚が他の2筋に比べて薄いため,若干の筋厚の増大でも相関がみられたと考えられる。また,先行研究における歩行中の体幹筋の筋電図学的変化と,今回の筋の動態は関連が乏しい。すなわち,体幹筋の筋厚を計測することで,筋活動の指標としている研究の妥当性を再考する必要性が考えられる。【理学療法学研究としての意義】歩行時,体幹は“パッセンジャー”として姿勢を保つために働いている。臨床では,腰部安定化エクササイズなど様々な体幹トレーニングが行われているが,その課題特異性を考慮した歩行時の腹筋群のトレーニングの再考が必要となる。歩行時の側腹筋群の動態は乏しい。先行研究においてわれわれは片脚ブリッジ運動時の下肢支持側と下肢挙上側の腹筋群の動態を報告している。その結果,支持側で見られた動態は今回歩行において見られた動態と類似していた。一方,下肢挙上側の筋厚は変化量が大きかった。以上のことから,歩行中の体幹筋の動態に近い運動は下肢支持側での片脚ブリッジ動作であり,今後介入効果を検討していきたい。
著者
伊藤 明良 青山 朋樹 長井 桃子 太治野 純一 山口 将希 飯島 弘貴 張 項凱 秋山 治彦 黒木 裕士
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0577, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】外傷などを起因とする関節軟骨欠損は,疼痛や運動機能の低下を引き起こすことで生活の質を下げる要因となるが,現在欠損された関節軟骨を完全に再生することは困難である。これまで関節軟骨の再生を実現するために,再生医療分野において学際的に研究がなされてきた。しかしながら,細胞移植治療術前・後に関わる研究,特にリハビリテーション介入の有効性・安全性に関する研究はほとんどなされていないのが現状である。すでに関節軟骨欠損に対する再生治療は,平成25年4月1日から本邦で初の自家培養軟骨製品が保険適用となり臨床で実践されている。そのため,早急に関節軟骨再生治療におけるリハビリテーションを確立させることが求められ,その基礎となるエビデンスが必要である。そこで本研究では,関節軟骨再生治療における温熱療法の基礎となるエビデンスを得るため,軟骨細胞による関節軟骨基質(extracellular matrix:以下,ECM)生成のための至適な温度環境を明らかにすることを目的として実験を行った。【方法】大腿骨頭置換術時に摘出されたヒト大腿骨頭関節軟骨(62歳,女性)より初代培養軟骨細胞を単離し,ペレット培養法を用いた三次元培養下において軟骨ECMの生成能を評価した。培養温度条件は,通常関節内温度付近の32℃,深部体温付近の37℃,哺乳動物細胞生存の上限付近とされる41℃の3条件とした。軟骨ECM生成能を評価するため,生成されたペレットの湿重量を培養後3,7,14日目に測定し,軟骨基質関連遺伝子(II型コラーゲン,I型コラーゲン,アグリカン,COMP(cartilage oligomeric matrix protein))の発現を培養後3,7日目にリアルタイムPCRを用いて解析した。また,コラーゲンおよび硫酸化グリコサミノグリカン(sulfated glycosaminoglycan:以下,GAG)産生を培養後7,14日目に組織学的に,そして培養後14日目に1, 9-dimethylmethylen blue法にて生化学的に解析した。さらに,走査型電子顕微鏡(以下,SEM)を用いて生成されたECMの超微細構造を培養後14日目に観察した。最後に,生成されたECMの機能特性を評価するため,培養後3,7,14日目に圧縮試験を行い,その最大応力を測定した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。対象者にはヘルシンキ宣言に基づき,本研究の主旨を書面及び口頭で説明し,同意を書面で得た。【結果】生成されたペレットの湿重量は,培養後3・7・14日目のいずれの時点においても,温度が低いほど有意に増加した。軟骨基質関連遺伝子のmRNA発現を解析した結果,41℃では解析した全ての遺伝子発現が有意に抑制された。II型コラーゲンの発現は,32℃と37℃の間に有意な差は認められず,I型コラーゲンの発現は,培養後7日目において32℃が37℃と比較して有意に亢進された。アグリカンの発現は,培養後3日目においては32℃が37℃と比較して有意に亢進されていたが,培養後7日目においてはその有意差は認められなくなった。COMPの発現は,37℃が32℃と比較して発現が有意に亢進された。組織学的評価においても,コラーゲンおよびGAGの産生が41℃では顕著に低下した。32℃と37℃の間に顕著な違いは観察されなかった。生化学的解析においても,GAG産生量は41℃で有意に少なかった。SEM観察により,32℃と37℃では生成されたペレットの周縁部に層状の密なコラーゲン線維の形成が観察されたが,41℃においては観察されなかった。最後に生成されたペレットに対して圧縮試験を行った結果,培養後3日目においては37℃で最も最大応力が高かったが,培養後7・14日目においては32℃が最も高かった。【考察】ヒト軟骨細胞において,ペレット培養時のECM生成能は41℃において著しく低下した。これは41℃ではコラーゲンの高次構造の形成が阻害されるという報告(Peltonen et al. 1980)を支持している。間欠的な40℃程度の温熱刺激はコラーゲン産生を促進する可能性があるが(Tonomura et al. 2008),本研究のような長時間の曝露においては逆に抑制される危険性が示唆された。これは,炎症などによる関節内温度上昇の長期化が関節軟骨再生を阻害することを意味している。興味深いことに,本研究は32℃という比較的低温環境においても,37℃と同等のECM生成能を有することを示唆した。以上のことから,関節軟骨基質再生のための至適温度は通常関節内温度である32℃から深部体温である37℃付近ににあることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究は,関節軟骨再生治療における温熱療法の基礎となるエビデンスを示した。さらに,再生治療における術後リハビリテーション(再生リハビリテーション)の重要性を喚起する研究としても大変意義があり,さらなる研究を求めるものである。
著者
森 拓也 澳 昂佑 川原 勲 木本 真史
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1336, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】パーキンソン病患者の歩行に関して,すくみ足の出現は転倒リスクとなり,特に歩行開始時に問題となりやすい。歩行の開始の筋活動としては下腿三頭筋の筋放電の低下による下腿前傾より歩行は開始される。しかしパーキンソン病患者はヒラメ筋のH反射が亢進し,筋放電が増加するとの報告があり,これらがすくみ足や転倒につながると考えられる。Duvalらによるとパーキンソン病症例に対して,ストレッチによる伸張刺激が同名筋の筋放電量を減少させるとの報告があり,また足関節傾斜板を利用した下腿三頭筋の伸張の介入にて立位回転速度が改善したとの報告も見受けられる。よって,これらの知見の示す事は,パーキンソン病患者における下腿三頭筋の伸張運動効果が歩行能力改善において有効な反応を引き出す治療手段であると考えられる。しかし,パーキンソン病における足関節の傾斜刺激による重心動揺の変化や歩行の筋活動を示した報告は数少なく明らかになっていない点が多い。よって,本研究の目的は,足関節傾斜板を用いた足関節傾斜刺激が立位時重心動揺,歩行時筋活動に与える影響を明確にする事である。【方法】対象はパーキンソン病を7年羅病した症例である(性別:男性 年齢:85歳)。パーキンソン病期分類はHoehn-Yahrの病期分類StageIIIであった。(実験1)介入課題については,通常の理学療法に加え足関節矯正起立版10°の上に立ち,なるべく膝関節は完全伸展位にて身体を前方に倒す事を課題とした。介入時間としては1分間の介入を3回実施し足関節傾斜刺激が重心動揺に与える影響を介入前後で検証した。立位時重心動揺変化は重心動揺計(アニマ社製フォースプレートMG-100)にて測定した。測定としては介入前後共に1分間の測定を計3回行い,足部重心の位置を前後中心と左右中心の距離より算出し,3回の平均距離を算出した。また同時に表面筋電図(Noraxon社製myosystem 1400 以下EMGとする)にて立位における左右前脛骨筋,腓腹筋外側の計4筋の筋活動も測定した。筋電電極(Ambu社製ブルーセンサー)は標的筋に対して筋線維の長軸方向へ平行となるようにし,電極間距離を20mmとし貼付した。貼付方法はHermie.Jらの方法に従って貼付した。介入前後の立位における各筋における平均振幅を算出し,足関節の戦略の変化を測定した。(実験2)実験1同様の介入課題を行い,介入前後でEMGでの歩行解析を行った。計測における標的筋,電極貼付方法に関しても実験1同様である。歩行周期の解析については立脚期の指標としてフットセンサースイッチを使用し,またEMGとビデオカメラと同期させ目視による確認も行った。歩行解析として5歩行周期における立脚期の前脛骨筋,腓腹筋外側の平均振幅を算出し,介入前後での比較を行った。歩行動作能力の指標として,10メートル歩行テストの計測も行い,歩行速度と歩数の介入前後の変化を比較した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づいて,対象者の個人情報の保護に留意し,阪奈中央病院倫理審査委員会の承認を得て実施し,対象者に説明と同意を得た。【結果】(実験1)立位時重心動揺結果は【介入前】左右中心0±0.3cm,前後中心-1.9±1.2cm【介入後】左右中心0±0.04cm,前後中心0.7±0.3cmであった。立位時平均振幅結果は【介入前】左前脛骨筋8.0±3.7μV/左腓腹筋外側8.6±4.4μV/右前脛骨筋18.9±10μV/右腓腹筋外側24.4±15.2μV【介入後】左前脛骨筋24.9±11.4μV/左腓腹筋外側11.4±3.8μV/右前脛骨筋32.4±10.9μV/右腓腹筋外側26.7±7.2μVであった。(実験2)5歩行周期の各筋の立脚期平均振幅結果は【介入前】左前脛骨筋47μV/左腓腹筋外側48.9μV/右前脛骨筋86.2μV/右腓腹筋外側59.4μV【介入後】左前脛骨筋63.6μV/左腓腹筋外側42.6μV/右前脛骨筋118.4μV/右腓腹筋外側53.6μVであった。10M歩行テストの結果は【介入前】19.7±1.6秒(30.6±1.6歩)【介入後】16.6±1.5秒(26±0.6歩)であり,介入直後にてすくみ足の減少がみられた。【考察】今回の足底板傾斜板による下腿三頭筋の伸張運動にて,立位時重心動揺が前方に移動し,歩行能力が改善する傾向が見られた。これは足関節が傾斜する事で下腿三頭筋においてのストレッチング効果が生じ,H反射の減少等の影響によって,下腿三頭筋の筋放電量が減少した結果と考えられる。効果は即時的な変化であるが,歩行練習開始時の有用な一助となる可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】パーキンソン病患者に対して,足関節傾斜板という簡便で短時間な介入方法は,歩行練習に効率よく介入できる可能性や自宅内での自主練習等に利用できる可能性が示唆された。
著者
中村 雅俊 池添 冬芽 梅垣 雄心 西下 智 小林 拓也 田中 浩基 藤田 康介 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0402, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】スタティックストレッチング(SS)は筋の柔軟性の改善を目的として広く用いられている。SSが筋の柔軟性に与える影響については,関節可動域(ROM)を指標として検討されることが多い。しかし,ROMは対象者の痛みに対する慣れなどの影響があるため,近年では関節を他動的に動かした時に生じる受動トルクあるいは受動的トルクと関節角度との関係(角度―トルク曲線)から求めた筋腱複合体(MTU)全体のスティフネスを柔軟性の指標として用いることが推奨されている。我々は腓腹筋MTUを対象にSSが受動トルクに及ぼす影響を経時的に検討し,腓腹筋の柔軟性を増加させるには最低2分間以上のSS時間が必要であることを報告した(Man Ther, 2013)。しかし,筋の柔軟性を増加させるために必要なSS時間については対象筋によって異なる可能性が考えられる。そこで本研究は臨床においてSSを行う機会が多いハムストリングスを対象筋とし,5分間のSSがハムストリングスMTUに及ぼす影響を経時的に検討し,ハムストリングスの柔軟性を増加させるために必要なSS時間について明らかにすることを目的とした。【方法】対象は下肢に神経学的及び整形外科的疾患を有さない健常若年男性15名(平均年齢23.4±2.2歳,股関節90°屈曲位での膝最大伸展角度-33.4±6.1,最大膝伸展時の受動的トルク40.6±11.4Nm)の利き脚(ボールを蹴る)側のハムストリングスとした。スティフネスの評価は等速性筋力測定装置(Biodex社製Biodex system 4.0)を用い,背臥位にて骨盤を軽度前傾位に固定した状態で,股・膝関節90°屈曲位から痛みが生じる直前まで角速度5°/秒で他動的に膝関節を伸展させた際に得られる膝屈曲方向に生じる受動トルクの計測を行った。この受動トルクと膝関節角度との角度―トルク曲線を求め,先行研究に従って最終10%の角度範囲の傾きをスティフネス(Nm/°)と定義した。SSは等速性筋力測定装置を用い,スティフネスの測定と同様に股関節90°屈曲位で膝関節を伸展していき,痛みが生じる直前の膝関節角度で1分×5回(計5分間)のSSを行った。SS開始前(SS前)とSS開始後1分毎にスティフネスの評価を行った。なお,SS開始後のスティフネスの評価,すなわち最終10%の角度範囲での角度―トルク曲線の傾きの算出については,SS前と同様の角度範囲を用いた。統計学的処理は,SS前とSS後1分毎のスティフネスについて,一元配置分散分析とScheffe法における多重比較検定を用いて比較した。有意水準は5%未満とした。なお,結果は全て平均±標準誤差で示した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は所属施設の倫理委員会の承認を得て(承認番号E-1877),文書および口頭にて研究の目的・主旨を説明し,同意が得られた者を対象とした。【結果】ハムストリングスのスティフネスはSS前:1.23±0.24Nm/°,SS後1分:1.14±0.17Nm/°,SS後2分:1.08±0.16Nm/°,SS後3分:0.90±0.18Nm/°,SS後4分:0.83±0.16Nm/°,SS後5分:0.74±0.11Nm/°であった。一元配置分散分析の結果,スティフネスに有意な変化が認められ,多重比較の結果,SS前と比較してSS後3,4,5分目で有意に低値を示した。さらに1分目と比較して4,5分目,2分目と比較して5分目で有意に低値を示した。【考察】本研究の結果,スティフネスはSS前と比較してSS後3,4,5分目で有意に低値を示したことから,SS開始後3分目以降でハムストリングの柔軟性向上効果が得られることが示された。我々は腓腹筋の柔軟性を増加させるためには最低2分間のSSが必要であることを報告しており,ハムストリングスの柔軟性を増加させるために必要なSS時間と乖離がある。その要因としては,筋の断面積の違いと耐えうる最大の受動的トルク,つまりSS強度に違いがあることが関連していると考えられる。筋の断面積ではハムストリングスの方が腓腹筋よりも大きく,SS強度に関しては腓腹筋の方がハムストリングスよりも強かった(腓腹筋:49.4±12.4Nm,ハムストリングス:40.6±11.4Nm)。これらの結果より,ハムストリングスは腓腹筋よりも断面積が大きく,弱い強度でのSSしか行えなかったため,柔軟性を増加させるためには腓腹筋よりも長い時間である3分間のSS時間が必要になった可能性が考えられる。【理学療法学研究としての意義】理学療法分野においてSS介入を行うことが多いハムストリングスの柔軟性を増加させるために必要なSS時間を検討した結果,最低3分のSS時間が必要であることが示唆された。
著者
高木 綾一 畠 淳吾 鈴木 俊明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0752, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】一般的に人事考課の成績は,処遇に反映し,動機付け,人材育成を図ることを目的に活用される。しかし,セラピストの人事考課に関する報告は少なく,組織マネジメントへの活用には至っていない。そこで当院の平成22年から平成25年までの人事考課成績を分析し,人事考課成績に影響する要因を検討したので報告する。【方法】対象は,平成22年から平成25年までの間に人事考課を受けたセラピスト504人(平均経験年数2.8±1.9年,男性322名,女性182名)であった。考課者は被考課者の上司2名が行った。人事考課は1.職能2.成績3.情意のそれぞれ構成する下記に記載する項目に対して5段階評価(1点から5点)にて加点し,全項目の合計点により総合評価を定めるものである。1.職能は法人が定めたセラピストの業務や臨床に必要な能力の基準を定めたものである。2.成績は,目標達成,改善行動,計画的行動の項目より構成される。3.情意面は努力,挨拶,言葉遣い,身だしなみ,コスト意識,期限厳守,感情コントロール,コミュニケーション,部署方針順守,責任感,研修会参加,自己啓発,人間関係,他者支援の項目より構成される。初めに全項目合計点の上位より20%(上位群:101名),60%(中位群:303名),20%(下位群:101名)の3群に分類した。次に各群間における1.職能2.成績3.情意の項目を分散分析,多重比較を用いて比較した。また,対象者全員の職能を従属変数,業績,情意の17項目を独立変数とし,ピアソンの相関係数(r)を算出した。なお,統計処理ソフトにはエクセル統計2012を用いた。【説明と同意】対象者に本研究の目的及び方法を説明し,同意を得た。【結果】3群間において職能(上位:4.0±0.1中位:3.0±0.2下位:2.1±0.5),成績(上位:3.4±0.4中位:2.9±0.4下位2.5±0.5),情意(上位:3.4±0.5中位3.0±0.4下位2.7±0.5)となり,すべての項目において3群間に有意に差が認められた(p<0.01)。また,成績,情意の17項目と職能の間におけるピアソンの相関係数(r)は以下の結果となった。目標達成(r=0.48),改善行動(r=0.51),計画的行動(r=0.49)努力(r=0.54),挨拶(r=0.28),言葉遣い(r=0.28),身だしなみ(r=0.14),コスト意識(r=0.41),期限厳守(r=0.36),感情コントロール(r=0.39),コミュニケーション(r=0.61),部署方針順守(r=0.46),責任感(r=0.5),研修会参加(r=0.07),自己啓発(r0.19),人間関係(r=0.47),他人支援(r=0.44)となった。すなわち,職能との間に中程度以上の相関がみられたのは成績の3項目すべて,情意面の努力,コスト意識,コミュニケーション,部署方針順守,責任感,人間関係,他者支援であった(r=0.41~0.61)。なかでも,情意面のコミュニケーションはもっとも強い相関(r=0.61)が見られた。【考察】職能,成績,情意において職能の能力開発が最重要と言われている。しかし,実際の現場では職能だけなく,成績や情意の高低が人事考課成績に大きく影響を与えている印象がある。また,現場では職能だけでなく,目標達成や同僚や組織に対する態度などの指導も行っている。そこで本研究では成績上位,中位,下位群の職能,成績,情意の比較と対象者の各項目の相関関係を算出し,効果的な介入を検討した。結果より,上位,中位,下位において職能,成績,情意のすべてにおいて有意差が認められた。つまり上位成績を得るためには職能,成績,情意面の全ての能力開発が重要であると考えられた。また,職能と成績の項目である目標達成,改善行動,計画的行動には中等度の相関があった。成績の項目は仕事の結果水準を評するものであることから,仕事の結果を求める目的志向への介入が重要と考えられた。職能と情意の項目である努力,コスト意識,コミュニケーション,部署方針順守,責任感,人間関係,他者支援には中等度以上の相関があった。コスト意識や部署方針順守は経営的関与であり,努力,コミュニケーション,責任感,人間関係,他者支援は責任性と協調性を示すものである。つまり,職能の能力開発において情意面からの相乗効果を出すためには経営的関与並びに責任性と協調性への介入が重要と考えられた。【理学療法学研究としての意義】セラピストの人材育成は組織マネジメントにおける重要な経営課題の一つである。本研究は人材育成において職能だけでなく成績,情意の介入の必要性を示唆するものである。
著者
田中 悠也 川上 祐貴 久野 成夫 鷲澤 秀俊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1252, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】Patellofemoral Pain Syndrome(膝蓋大腿疼痛症候群,以下PFPS)とは膝蓋骨後方または周辺に痛みを生じる疾患であり,整形外科的な膝の主訴で最も多い疾患の1つである。保存療法が第一選択とされており,変形性膝関節症への発展の可能性が示唆されている点から理学療法介入が重要な症候群である。PFPSの原因は内側広筋の筋機能障害や膝蓋骨の位置・トラッキング異常,股関節筋力の低下などが報告されており,これらに対する治療介入の報告は多いものの,治療の成否に影響する因子の報告は少ない。そこで本研究では,初期評価時の項目と1-2カ月後の理学療法治療の成否の関連を検討し,治療の成否に影響を与える初回評価時の因子を探索することを目的とした。【方法】対象は整形外科クリニックの外来に通うPFPS患者のうち,1-2カ月の理学療法を行った20名(平均年齢39.4±15.6歳,男性6名,女性14名)とした。PFPSの診断はCowan(2002)を参考に,1)歩行・階段・スクワット・走行・座位保持・膝立ちのうち少なくとも1つ以上で痛み,2)膝蓋大腿関節面の圧痛またはCompression Test,Clarke’s sign,伸展抵抗運動のうち1つで痛みが存在することを基準とし,除外基準は変形性関節症や関節内病変,腱疾患とした。初期評価時に性別・年齢・身長・体重・罹患期間の問診を行い,Visual Analogue Scaleを用いた1週間の最大の痛み(以下VAS-W)及び1週間の平均の痛み(以下VAS-U),質問紙票であるAnterior Knee Pain Scale(以下AKPS)の測定を行った。また,膝関節30°程度屈曲位のSkylineView(Laurin)におけるレントゲン画像からLateral Patellar Tilt,Lateral Patellofemoral Angle,Congruence Angleを算出した。治療の成否は介入後のVAS-W・VAS-U・AKPSの改善度より判断し,1)VAS-Wが2.0cm以上の改善,2)VAS-Uが2.0cm以上の改善,3)AKPSが15点以上の改善,のうち2つ以上を達成したものを良好群,その他を不良群とした。統計解析はJ STATを使用し,良好群と不良群における問診項目,初期のVAS-W・VAS-U・AKPS,VAS-W・VAS-U・AKPSの変化,レントゲン画像の比較を対応のないt検定で行った(有意水準5%)。【倫理的配慮,説明と同意】すべての被験者には研究に対する説明および同意を得た上で実施した(当院倫理審査委員会:承認番号240907F)。【結果】治療良好群は11名,治療不良群は9名であった。改善度は,治療良好群ではVAS-Uは4.0±1.1cm,VAS-Wは5.7±1.9cm,AKPSは23.6±10.4点に対して,治療不良群は0.7±1.5cm,2.1±2.6cm,6.7±6.4点であった。治療良好群では初期評価時のVAS-Wが7.9±1.4cmに対して不良群は6.5±1.2cmと有意に小さく,Lateral Patellofemoral Angleでは良好群は11.4±2.2°に対して不良群は15.2±4.6°と有意に大きかった。【考察】PFPS患者に対する1-2カ月の理学療法介入として,初期評価時のVAS-W(1週間の最大の痛み)が大きいこと,およびLateral Patellofemoral Angle(膝蓋骨の外側傾斜)が小さいこと,が治療成功への影響因子と示唆された。しかし,本研究では同一の治療内容および治療回数ではないため,今後の調査が必要である。また,PFPSは多因子性の原因と考えられていることから,今後は本研究で測定していない股関節筋力や下肢における異常動作などの他の因子の影響を行う必要が考えられた。【理学療法学研究としての意義】PFPSは保存療法が第一選択であり,多因子性の原因であるため,その治療には理学療法士の臨床判断に依存する割合が大きい。本研究によりPFPSの多因子の中でも重要な因子が明らかとなり,加えて予後予測の判断が可能となるため,本研究はPFPS患者に対し理学療法を行う上での一助となると考える。また,本邦においてPFPS研究は少なく,研究面においても,本研究は日本のPFPS研究を発展させていく上での一助となると考えられる。
著者
井所 拓哉 臼田 滋
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1476, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】体幹はヒトの機能的動作における姿勢制御に大きな役割を果たしている。脳卒中後の運動機能障害は四肢と同様に体幹においても生じており,近年の脳卒中患者を対象としたランダム化比較試験において体幹機能障害への課題特異的介入により,その改善効果は立位バランス能力や移動能力へも転移することが報告されている(Saeys et al., 2012)。脳卒中後の体幹機能障害は歩行速度やTimed Up and Go(TUG)といった移動能力の時間因子と関連することが報告されているが(Verheyden et al., 2006),歩行の質との関係については不明である。本研究の目的は脳卒中片麻痺患者における体幹機能障害と3軸加速度計を用いた歩行指標との関連性について検討することである。【方法】対象は脳卒中片麻痺患者12名(年齢62.4±6.1歳,男性8名,女性4名,脳梗塞8名,脳出血4名,発症後10.5±3.6日)とした。評価項目として,体幹機能はTrunk Impairment Scale(TIS)で評価し,その他に下肢筋力は徒手筋力計(μ-tas F-1,アニマ)を使用して麻痺側,非麻痺側の膝関節屈曲,伸展,足関節背屈,底屈の等尺性筋力を測定し,立位バランス能力はShort Form Berg Balance Scale(SF-BBS),移動能力はTUGと10m歩行テストをそれぞれ測定した。さらに腰部に3軸加速度計(WAA-006,ATR-promotions,sampling rate 200Hz)を装着し,10m歩行テスト中の体幹加速度を計測した。体幹加速度から得られる定量的な歩行指標として,10m歩行中の中央5歩行周期分の加速度信号データを用いて前後成分の特徴的な波形から歩行周期を同定し,歩行変動性の指標として歩行周期時間の変動係数と1平均歩行周期時間シフトした波形との自己相関係数を3軸方向で算出した。さらに歩行の円滑性の指標として周波数解析により得られるharmonic ratio(HR)を3軸方向で算出した。統計学的解析として,TIS合計点および下位項目の静的座位バランス項目,動的座位バランス項目,協調運動項目,麻痺側,非麻痺側の下肢筋力合計値,SF-BBS,TUG,歩行速度と体幹加速度から得られた歩行指標間でのPearsonの相関係数またはSpearmanの順位相関係数を求めた。統計学的解析の有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は研究実施施設における臨床研究倫理委員会の承認を得て実施した。対象者に対しては書面および口頭にて研究内容を説明し,署名にて同意を得た。【結果】各指標の測定結果は平均±標準偏差,TISおよびSF-BBSは中央値(第一四分位数,第三四分位数)で表した。TIS合計点16(14,20)点,下肢筋力は麻痺側3.03±1.28Nm/kg,非麻痺側3.83±1.23Nm/kg,SF-BBS 20(17,25)点,TUG 15.8±8.3秒,歩行速度0.71±0.27m/sであった。体幹加速度から得られた歩行指標は,歩行周期時間変動3.6±1.8%,自己相関係数は前後成分0.66±0.17,側方成分0.47±0.20,鉛直成分0.54±0.24,HRは前後成分2.20±1.25,側方成分2.02±0.75,鉛直成分2.63±1.72であった。体幹加速度から得られた歩行指標との関連性において,TIS協調運動項目は歩行周期時間変動および3軸全ての自己相関係数とHRとの間に有意な相関を認めた(|r|=0.584-0.822,P<0.05)。TUGは歩行周期時間変動,鉛直成分の自己相関係数,前後成分のHRとの間に有意な相関を認めた(|r|=0.626-0.733,P<0.05)。歩行速度は歩行周期時間変動,3軸全ての自己相関係数,前後成分と鉛直成分のHRとの間に有意な相関を認めた(|r|=0.609-0.915,P<0.05)。麻痺側,非麻痺側下肢筋力,SF-BBSは体幹加速度から得られる歩行指標との間に有意な相関を認めなかった。【考察】本研究の結果より,脳卒中後の体幹機能障害や移動能力の時間因子が歩行の変動性や円滑性と有意な相関関係を示したのに対して,立位バランス能力や従来,歩行の時間因子と関連性が報告されている下肢筋力は,歩行の変動性や円滑性と有意な関連を示さなかった。これは脳卒中後の体幹機能の改善が歩行安定性の獲得に寄与し,さらには移動の時間的パフォーマンス向上へとつながり得る可能性を示唆している。本研究の限界として,研究デザインは横断的研究であり,対象は発症後早期に歩行可能な比較的,軽症の不全片麻痺者に限られていた。今後は重症例も含めた縦断的な調査により因果関係を検証する必要がある。【理学療法学研究としての意義】本研究から脳卒中患者における歩行の変動性や円滑性に体幹機能障害が影響していることが示された。これは脳卒中後の歩行機能障害への介入の糸口を検討する上で,臨床的に有用な情報を示したと考えられる。
著者
藤田 暢一 服部 憲明 森 正志 工藤 俊介 宮井 一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0102, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】歩行障害を有する患者を対象にしたリハビリテーション治療において,どのタイミングで問題が生じているかなど,歩行能力を詳細に評価することは重要である。しかし,従来の計測装置は高価で,空間的制約が大きいため臨床での利用には制約がある。そこで,今回我々は,安価で簡単に客観的な歩行周期を計測できる①スプリット型フットスイッチ(Split foot switch:SFS)を作製し,②加速度センサー(Accelerometer:AM),③圧センサー(Pressure sensor:PS)との歩行周期計測の比較検討を行った。【方法】対象は健常成人男性9名,年齢は27.1±2.7歳であった。測定課題は,被験者の主観的快適速度での歩行とした。測定機器と取り付け位置は,①SFS:マットセンサー(竹中エンジニアリングM-68)を用いて,踵部と爪先部の2つのセンサーを作製し,本人持ちの右側靴底の踵と爪先部に両面テープにて貼り付けた。②AM:小型無線多機能センサー(ATR-Promotions社製TSND121)を背面第3腰椎部にホワイトテープと軟性バンドで固定し,体幹の三軸方向(上下・左右・前後)の加速度を計測した。③PS:Flexiforce(ニッタ社製A201-100)を右足の踵と母趾球部にホワイトテープで固定した。これらの機器を同時に,サンプリング周波数100Hzで計測を行い,歩行が定常状態となった区間の立脚期のデータを10周期分採用した。各機器の踵接地・爪先離地の決定基準は,①SFS:踵接地は踵センサーのON,爪先離地は爪先センサーのOFF,②AM:踵接地は加速度前後成分上方ピーク,爪先離地は加速度上下成分下方ピーク,③PS:踵接地は踵センサーの上昇開始点,爪先離地は爪先センサーの上昇ピークとした。この基準より一歩行周期の時間,一歩行周期に対する立脚期の割合を計算した。解析は,被験者毎に,機器間の計測値の差に関しては,計測値に正規性・等分散性が認められた場合,一元配置分散分析で比較し,Tukey法にて多重比較を実施,認められなかった場合はfriedman検定後,Bonferroni補正されたWilcoxon検定を実施した。また,機器間の計測値の相関に関しては,Spearman順位相関係数を用いて計算した。更に,これらと同様の解析を各被験者の計測値の平均値を元にグループレベルでも行った。解析にはR version 2.8.1を使用し,有意水準を5%に設定した。【倫理的配慮,説明と同意】当院の倫理委員会により承認を得て,被験者には十分な説明の後,同意を得た後に実施した。【結果】9名全体の一歩行周期(秒)に関しては,平均時間±標準偏差(変動係数)はSFSが1.08±0.27(2.53),AMが1.08±0.27(2.54),PSが1.08±0.25(2.29)であった。立脚期の割合(%)はSFSが58.8±0.91(0.015),AMが68.4±1.8(0.026),PSが49.2±2.8(0.059)であった。計測値の差の検定では,一歩行周期の時間は,全ての被験者およびグループレベルで,機器間の有意差は認められなかったが,立脚期の割合ではSFS<AMと有意差を認めた者が9名中7名,SFS>PSと有意差を認めた者が8名であり,グループレベルでもPS<SFS<AMと有意差を認めた。相関の検定では,一歩行周期でSFS-AM間の有意な相関関係を示した者が7名,SFS-PS間では9名であり,グループレベルでもSFS-AM間でr=0.996,SFS-PS間でr=0.997,AM-PS間でr=0.997と強い相関を認めたが,立脚期の割合ではSFS-AM間の有意な相関関係を示した者が1名のみ,SFS-PS間では0名であり,グループレベルでも有意な相関関係は認められなかった。【考察】一歩行周期では機器間で計測値に差が無く,相関も高かった事から,いずれの機器も高い精度で歩行周期を計測できていると考えられた。一方,立脚期の割合では,多くの被験者で機器間に共通した差が認められ,また機器間で有意な相関を示しているものは少なかった。差が認められたことに関しては,AMの加速度波形から踵接地・爪先離地を決定する方法の特性とPSの接地面積の少なさなどが影響していると考えられた。相関が認められなかったことに関しては,立脚期の割合の変動係数が,SFSに比べAMやPSで大きいことが影響していると考えられた。一見より変動係数の小さいSFSが歩行計測には有効と考えられる。しかし,歩行時の体幹や下肢の運動は毎回僅かに異なっており,SFSで直接計測できる床接地時間という時間因子を維持するため,毎回運動学的な微調整が行われる機序をAMやPSの計測値の変動は反映していると考えられた。【理学療法学研究としての意義】本研究の結果から,SFSによる歩行計測は変動が小さく,臨床での計測に適当と思われたが,AM・PSの変動の原因も考慮する必要があると考えられた。これらを組み合わせることで,歩行の多様な情報を収集することが可能になると考えられた。
著者
太田 修平 土屋 綱紀 木島 丈博 渡邉 英一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1003, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】成長期の野球肘の中で,上腕骨小頭障害(離断性骨軟骨炎;OCD)は永続的な障害となりうるため,早期発見の重要性が高く,近年,野球肘検診は全国で広まりつつある。当院にて行った野球肘検診に関し,その活動の報告とともに,上腕骨小頭障害と遠投距離との関連に関して検証を行ったので,ここに報告する。【方法】平成22年から25年に行われた野球肘検診に参加した小学1年生から6年生(平均年齢11歳3ヶ月±5歳)の少年野球団,及びリトルリーグに所属する男子544名,女子17名,計561名を対象とした。これらに対しアンケートによる問診,超音波検査,レントゲン撮影,理学検査を行い,その結果から上腕骨小頭障害群(以下O群)と,健常群(以下N群)528名に分類し,比較検討を行った。上腕骨小頭障害の判定は,両側の肘関節に対し超音波エコー(日立アロカメディカル社製ProSoundα7)と,3方向のレントゲン撮影を施行し,医師の診断により行った。遠投距離については,事前に各チームに依頼し,C級軟式ボールを使用し,助走制限のない条件下で距離の計測を行い,回答があったものを集計した。【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に沿って,事前に配布した検診内容の案内書に研究目的を明記し,各家庭に配布した上で同意に基づいて参加申し込みをいただき,倫理的配慮を行った。また当院倫理委員会の承認を得た。【結果】O群33名,N群528名であり,O群は全体の5.88%であった。遠投距離は,O群は20名,回答率60.6%,N群は309名,回答率58.5%の回答を得た。結果は,全体ではO群45.71±8.67m,N群43.35±10.25mであった。小学6年生ではO群56.52±9.80m,N群50.74±9.04m。小学5年生ではO群45.84±3.54m,N群44.13±7.41m。小学4年生ではO群41.62±6.80m,N群36.85±6.93m。小学3年生ではO群33.70±3.82m,N群30.61±6.79mであった。【考察】遠投距離は各学年ともO群で高く,O群の方が高い投球能力を示した。またアンケート結果から,野球経験年数もO群3年1ヶ月,N群2年11ヶ月と,O群でやや長い傾向にあった。さらに,投手経験においてもO群100%,N群では73.14%であった。今回の検討から,上腕骨小頭障害群は,早い段階から野球を始め,高い投球能力を有するものに生じる傾向があった。つまり,低学年から野球を開始し,繰り返しの動作により動作を習得してきたことや,投手や捕手といった投球する機会の多いポジションにつくことは,肩,肘関節に負荷がかかりやすいことが考えられた。【理学療法学研究としての意義】今回,主に上腕骨小頭障害と遠投距離との関連に関して検討を行ったが,上腕骨小頭障害と関連の大きい理学所見なども明らかにできれば,さらなる障害予防につながると考えられ,今後の検討課題としたい。
著者
田井 啓太 山中 正紀 石垣 智恒 廣川 基
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1132, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】肩甲骨周囲筋である前鋸筋は,様々な肩関節疾患に関与すると報告されている。先行研究において,前鋸筋の筋活動を強調するために考案された運動は,壁や治療台に手をつくような荷重下での運動で(standard push up plus,wall push up plus)あった。しかしながら,上肢非荷重下での前鋸筋の筋活動を強調した運動に関する報告は少ない。日常生活において,上肢は非荷重下で運動を行なう頻度が高いと考えられるため,上肢非荷重下で前鋸筋の筋活動を促す運動方法が求められる。それゆえ,本研究の目的は,上肢への荷重を伴う,もしくは伴わない様々な動作課題における前鋸筋の筋活動を検討することとした。【方法】被験者は健常男子学生15名(平均年齢21.9±0.83)とし,除外基準は肩関節に疼痛がある者,肩関節に整形外科的および神経学的な症状や既往がある者とした。動作課題は,standard push-up plus(SPP:腕立て伏せの姿勢において,肩甲帯のProtractonを意識させた姿勢),wall push-up plus(WPP:壁に寄りかかるよう手をつき,肩甲帯のProtractionを意識させた姿勢),立位での肩関節屈曲(Flex),肩甲骨面上挙上(Scaption:前額面より30°前方と定義),セラバンドに抗して水平外転方向への筋収縮を伴うScaption(Sera Scap)および屈曲(Sera Flex),バランスボールを両上肢間ではさむように水平内転方向の筋収縮を伴った屈曲(Ball Flex),セラバンドに抗して水平内転方向への筋収縮を伴う肩関節屈曲(Sera Flex)とし,挙上角度は135°で,それぞれ1kgのダンベルを保持して行った。前鋸筋の筋活動は表面筋電計MyoSystem 1200(Noraxon, USA.inc)を用いて計測した。表面電極貼付位置は先行研究に準じ,肩関節90°屈曲位において,腋窩の下部かつ肩甲骨下角と同じ高さで,前鋸筋の走行に沿って貼付した。各動作課題の試行順は無作為化し,各動作肢位は5秒間保持され,各試行を3回反復した。筋電データの解析は,整流化,フィルター処理(band-pass filter;10-500Hz),RMS(ウインドウ100ms)による平滑化を行った。得られた5秒間の筋電データのうち中間3秒間を解析に用い,各筋電データはMVCで正規化し(% MVC)解析した。各動作課題における前鋸筋筋活動の違いを検討するため,統計解析には反復測定一元配置分散分析を用い,Post-hoc testにSidak法を用いた。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本学倫理委員会の承認を得て行い,被験者には事前に研究の要旨を口頭及び書面にて十分に説明し,同意を得た。【結果】SPP(%MVC±SD:54.78±39.69)はWPP(31.50±24.97)よりも前鋸筋の筋活動が有意に高かった。Ball Flex(52.02±19.94)は,WPP,Flex(31.80±10.55),Scaption(32.12±12.19),Tube Flex(23.86±9.33)よりも前鋸筋の筋活動が有意に高かった。【考察】先行研究において,上肢荷重下で行われるSPPやWPPが前鋸筋筋活動を強調した運動として推奨されてきた。本研究において,上肢荷重下であるSPPでの前鋸筋筋活動と,上肢非荷重下であるFlex,Scaption,Ball Flex,Sera Scap,Sera Flexの前鋸筋筋活動との間に有意差を認めなかった。これは上肢非荷重下での運動でも上肢荷重下の運動と同程度の筋活動を導き出すことが可能であることを示す。上肢荷重下での運動は,日常動作において行なわれることは少ないと思われる。本研究結果より,セラバンドによる肩関節水平外転方向の力や,ボールを持つことによる肩関節水平内転方向の力を加えることによって,上肢非荷重位であったとしても,前鋸筋の筋活動を強調することが可能であることが示唆された。特に,Ball FlexはWPP,Flex,Scaption,Sera Flexより有意に高い前鋸筋筋活動を示し,前鋸筋の筋活動を高める介入方法として推奨されるかもしれない。【理学療法学研究としての意義】抗重力位にて上肢運動を行なう時期のリハビリテーションにおいて,通常の上肢拳上よりも,水平内転方向や水平外転方向の力を加えることによって,前鋸筋筋活動を強調した運動が可能となるかもしれない。肩関節は日常生活において,非荷重下で使用されることが多い。臨床で非荷重下での前鋸筋の筋力強化を目的とした介入を行なう場合,上肢挙上時に水平内転方向へ力を加えることによって,より大きい前鋸筋の筋活動を促すことが期待できると考えられる。
著者
池澤 秀起 高木 綾一 鈴木 俊明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0690, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】肩関節疾患患者の上肢挙上運動は,肩甲骨の挙上など代償運動を認めることが多い。この原因の一つとして,僧帽筋下部線維の筋力低下が挙げられるが,疼痛や代償運動により患側上肢を用いた運動で僧帽筋下部線維の筋活動を促すことに難渋する。そこで,上肢の運動を伴わずに僧帽筋下部線維の筋活動を促す方法として,腹臥位での患側上肢と反対側の下肢空間保持が有効ではないかと考えた。その結果,第47回日本理学療法学術大会において,腹臥位での下肢空間保持と腹臥位での肩関節外転145度位保持は同程度の僧帽筋下部線維の筋活動を認めたと報告した。また,第53回近畿理学療法学術大会において,両側の肩関節外転角度を変化させた際の腹臥位での下肢空間保持における僧帽筋下部線維の筋活動は,0度,30度,60度に対して90度,120度で有意に増大したと報告した。一方,先行研究では両側の肩関節外転角度を変化させたため,どちらの肩関節外転が僧帽筋下部線維の筋活動に影響を与えたか明確でない。そこで,一側の肩関節外転角度を一定肢位に保持し,反対側の肩関節外転角度を変化させた際の僧帽筋下部線維の筋活動を明確にする必要があると考えた。これにより,僧帽筋下部線維の筋活動を選択的に促す因子を特定し,トレーニングの一助にしたいと考えた。【方法】対象は上下肢,体幹に現在疾患を有さない健常男性16名(年齢25.6±2.1歳,身長168.5±2.5cm,体重60.4±6.7kg)とした。測定課題は,利き腕と反対側の下肢空間保持とした。測定肢位は,腹臥位でベッドと顎の間に両手を重ねた肢位で,下肢は両股関節中間位,膝関節伸展位とした。また,空間保持側の上肢は肩関節外転0度で固定し,反対側の上肢は肩関節外転角度を0度,30度,60度,90度,120度と変化させた。肩関節外転角度の測定はゴニオメーター(OG技研社製)を用いた。測定筋は,空間保持側と反対の僧帽筋上部,中部,下部線維,広背筋とした。筋電図測定にはテレメトリー筋電計MQ-8(キッセイコムテック社製)を使用した。測定筋の筋活動は,1秒間当たりの筋電図積分値を安静腹臥位の筋電図積分値で除した筋電図積分値相対値で表した。また,5つの角度における全ての筋電図積分値相対値をそれぞれ比較した。比較には反復測定分散分析及び多重比較検定を用い,危険率は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】対象者に本研究の目的及び方法を説明し,同意を得た。【結果】僧帽筋下部線維の筋電図積分値相対値は,肩関節外転角度が0度,30度,60度に対して90度,120度で有意に増大した。広背筋の筋電図積分値相対値は,肩関節外転角度が30度,60度,90度,120度に対して0度で有意に増大した。僧帽筋上部線維,僧帽筋中部線維の筋電図積分値相対値は,全ての肢位において有意な差を認めなかった。【考察】先行研究と今回の結果から,腹臥位での下肢空間保持における僧帽筋下部線維の筋活動は,空間保持側と反対の肩関節外転角度の影響が大きいことが判明した。つまり,腹臥位での下肢空間保持は,空間保持側と反対の肩関節外転角度を考慮することで僧帽筋下部線維の筋活動を選択的に促すことが出来る可能性が高いと考える。まず,腹臥位での下肢空間保持は,下肢を空間保持するために股関節伸展筋の筋活動が増大する。それに伴い骨盤を固定するために空間保持側の腰背筋の筋活動が増大し,さらに,二次的に脊柱を固定するために空間保持側と反対の腰背筋や僧帽筋下部線維の筋活動が増大することが考えられる。このことを踏まえ,僧帽筋下部線維の筋活動が肩関節外転0度,30度,60度に対して90度,120度で有意に増大した要因として,肩関節外転角度の変化により脊柱を固定するための筋活動が広背筋から僧帽筋下部線維に変化したのではないかと考える。広背筋の筋活動は肩関節外転30度,60度,90度,120度に対して0度で有意に増大したことから,肩関節外転0度では脊柱の固定に広背筋が作用したことが推察される。一方,肩関節外転角度の増大により広背筋は伸長位となり,力が発揮しにくい肢位となることが推察される。また,広背筋は上腕骨,僧帽筋下部線維は肩甲骨に停止することに加え,肩甲上腕リズムから肩関節外転角度の増大に対して,広背筋は僧帽筋下部線維と比較し伸長される割合が大きいことが推察される。その結果,肩関節外転角度の増大に伴い脊柱を固定するために僧帽筋下部線維の筋活動が増大したのではないかと考える。【理学療法学研究としての意義】腹臥位での下肢空間保持において,僧帽筋下部線維の筋活動は先行研究と同様の結果であったことから,空間保持側と反対の肩関節外転角度が僧帽筋下部線維の筋活動を選択的に促す要因となる可能性が高いことが示唆された。
著者
南角 学 柿木 良介 西川 徹 松田 秀一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0526, 2014 (Released:2014-05-09)

【目的】臨床場面において,臼蓋形成不全によって股関節痛を伴う股関節疾患に対して,大腿骨と臼蓋の安定化を図りながら,動作の改善を目指すことは多い。臼蓋形成不全による骨形態の変化は,大腿骨と臼蓋の構造的な安定性の破綻をきたすとともに股関節の安定性に関わるその他の因子の機能にも影響を及ぼす。特に,股関節周囲筋の筋出力や筋張力によって大腿骨頭に加わる力の大きさや方向が変化することで股関節の安定性に関与することから,これらのメカニズムを考慮しながら理学療法を展開していくことは重要である。しかし,臼蓋形成不全と股関節の安定化機構に関わる股関節周囲筋の関連性を検討した報告はなく,不明な点が多い。そこで,本研究の目的は,変形性股関節症患者における臼蓋形成不全と股関節周期筋の筋萎縮の関連性を明らかとすることとした。【方法】対象は片側の変形性股関節症患者44名(男性6名,女性38名)とした。測定項目は股関節周囲筋の筋断面積,脚長差,Central-edge angle(以下,CE角)とし,測定には当院整形外科医の処方により撮影されたCT画像と股関節正面のX画像を用いた。股関節周囲筋の筋断面積の測定は,Raschらの方法に従い,仙腸関節最下端での水平断におけるCT画像を採用し,画像解析ソフト(TeraRecon社製)を用いて各筋群の筋断面積の測定を行った。対象は梨状筋,腸腰筋,中殿筋,大殿筋とし,得られた筋断面積から患健比(患側筋断面積/健側筋断面積×100%)を算出した。また,股関節正面のX画像から,小転子先端から涙痕先端までの距離を計測し脚長差を算出するとともに臼蓋形成不全の評価としてCE角も算出した。その他の運動機能の評価として,IsoForceGT330(OG技研社製)にて膝関節伸展筋力を計測し,トルク体重比を算出した。さらに,臼蓋形成不全の診断基準値に準じてCE角が20°未満(臼蓋形成不全症例:以下,A群)と20°以上(以下,B群)の2群に分け,各測定項目の比較を行った。統計処理は,両群間の比較には対応のないt検定とMann-WhitneyのU検定を用いた。さらに,臼蓋形成不全の有無を目的変数,両群間で有意差を認めた項目を説明変数としたロジスティック重回帰分析を行い,統計学的有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は京都大学医学部の倫理委員会の承認を受け,対象者には本研究の主旨ならびに目的を説明し研究への参加に対する同意を得て実施した。【結果】A群は24名(年齢:61.1±8.6歳,BMI:22.0±3.6kg/m2),B群は20名(年齢:65.9±10.7歳,BMI:23.0±3.0kg/m2)であり,年齢とBMIについては両群間で有意差を認めなかった。A群の梨状筋は60.8±14.5%,腸腰筋は62.2±10.5%,中殿筋は65.0±12.7%,B群の梨状筋は83.1±13.6%,腸腰筋は83.2±12.7%,中殿筋は84.6±8.3%であり,これらの筋についてはB群と比較してA群で有意に低い値を示した。一方,大殿筋(A群:76.3±11.0%,B群:83.1±8.4%)と膝関節伸展筋力(A群:1.31±0.56Nm/kg,B群:1.28±0.62Nm/kg)に関しては,両群間で有意差を認めなかった。また,A群の脚長差(23.9±9.9mm)は,B群(8.3±5.5mm)と比較して有意に大きい値を示した。さらに,ロジスティック重回帰分析の結果より,変形性股関節症患者の臼蓋形成不全と関連する因子として,脚長差と腸腰筋の筋萎縮が有意な項目として選択された。【考察】腸腰筋や梨状筋などの股関節の深部にある筋群は,それぞれの筋機能のバランスを保つことによって臼蓋と大腿骨頭の適合性すなわち股関節の安定化に寄与すること報告されている。また,中殿筋の後部線維は筋線維方向が頚体角と同等であることから股関節を求心位に保持する機能があることも報告されている。本研究の結果より,臼蓋形成不全症例では脚長差が大きく,大殿筋や膝関節伸展筋よりも股関節の安定性に関わる腸腰筋,梨状筋,中殿筋により顕著な筋萎縮を認めた。さらに,重回帰分析の結果より,臼蓋形成不全の影響を最も受けやすい筋は腸腰筋であることが明らかとなった。腸腰筋は大腿骨頭を前方から押さえることで臼蓋と大腿骨頭の安定性を向上させる作用があることから,臼蓋形成不全が大きい症例では股関節の前方への安定化がより欠如している可能性があり,これらのことを考慮した介入が必要であると考えられた。【理学療法研究としての意義】本研究の結果より,変形性股関節症患者の臼蓋形成不全は股関節の安定性に関与する筋群の萎縮と関連することが明らかとなり,理学療法において効果的なアプローチ方法を立案していくための一助となると考えられる。
著者
加藤 太郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0899, 2014 (Released:2014-05-09)

【目的】安定した姿勢保持や円滑な動作遂行のためには各関節の安定が必要であり,この安定には単関節筋が寄与している。姿勢保持や動作遂行時の問題点に,体幹安定性の低下が着目されることが多い。体幹・骨盤帯の安定化に重要な体幹深層筋は,骨盤底筋群,腹横筋,多裂筋,横隔膜で構成される。臨床において体幹深層筋の機能に左右差があると,姿勢評価において骨盤水平面アライメントの左右差を認めることが多いとされる。骨盤水平面アライメントは内方腸骨(以下,インフレア),外方腸骨(以下,アウトフレア)で表現されることがある。超音波画像診断装置を用いた腹横筋厚測定によるインフレアとアウトフレアの比較では,インフレア側の腹横筋厚は厚く,アウトフレア側の腹横筋厚は薄いと報告されている。そして,体幹の安定性に左右差を認める症例に対して,アウトフレア側腹横筋の収縮を促通する目的で,腹式呼吸やストレッチポール等を用いる報告がされている。姿勢評価で,骨盤のインフレア,アウトフレアを確認することは体幹深層筋の機能評価として臨床的意義がある。骨盤水平面アライメントは臼蓋の位置を変位させるため,股関節回旋角度に影響を与えると考えられる。しかし,骨盤水平面アライメントと股関節回旋角度の関係についての報告は少ない。そこで,本研究は骨盤水平面アライメントと股関節回旋角度の関係を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は,健常成人男性11名(年齢22.1±0.3歳,身長172.0±5.8cm,体重65.3±6.3kg)であった。インフレアとアウトフレアの測定肢位は静止立位とし,先行研究に基づき上前腸骨棘(以下,ASIS)が他方と比べて前内下方位をインフレア,後外上方位をアウトフレアとし触診を用い測定した。股関節回旋角度は東大式角度計を用い,日本整形外科学会,日本リハビリテーション医学会の「関節可動域表示ならびに測定法」に従い,座位で股関節と膝関節を90°屈曲位とし,内旋可動域(以下,内旋角度)と外旋可動域(以下,外旋角度)を測定した。測定者は,正確性を期すために熟練者とし,他動的股関節回旋運動実施者と角度測定者の2名とした。インフレア側とアウトフレア側における内旋角度,外旋角度に対し,Wilcoxonの符号付き順位検定を用いて分析検討した。統計処理はSPSS ver.21.0J for Windowsを使用し,有意水準は危険率5%とした。【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に沿って実施した。全対象者に事前に本研究内容を書面および口頭で十分な説明を行い署名にて同意を得た。尚,本研究は文京学院大学保健医療技術学部倫理委員会の承認の下で実施した。【結果】骨盤水平面アライメントはインフレア側が右9名,左2名であり,右インフレアが有意に多かった(p<0.05)。インフレア側とアウトフレア側の比較ではインフレア側内旋角度23.64±4.52°,アウトフレア側内旋角度20.45±5.68°であり,内旋角度はアウトフレア側と比べてインフレア側が有意に大きかった(p<0.05)。また,内旋角度と外旋角度の比較ではアウトフレア側内旋角度20.45±5.68°,アウトフレア側外旋角度28.18±5.6°であり,アウトフレア側は内旋角度に比べて外旋角度が有意に大きかった(p<0.05)。【考察】インフレア,アウトフレアは現時点では明確に定義されてはいないが,先行研究より仙骨面に対する寛骨の回旋や傾きの相違であると考えられる。触診によるASISの高さの相違から評価する方法が報告されており,本研究にも同法を用いた。骨盤アライメントにおいて仙腸関節の可動性は重要ではあるが,寛骨の動きは股関節の影響を大きく受ける。足底を接地していない状態では,インフレアは寛骨の前方回旋と前傾を伴うため,臼蓋は前外方へ向き大腿骨は内旋方向へ変位し,アウトフレアは寛骨の後方回旋と後傾を伴うため,臼蓋は後内方へ向き大腿骨は外旋方向へ変位すると考えられる。本研究結果も,臼蓋の向きが反映された結果であると考える。本研究により,体幹深層筋の機能に関連のある骨盤水平面アライメントは,股関節回旋角度とも関連のあることが明らかとなった。これは,体幹深層筋の機能を評価,治療介入するうえで,股関節回旋角度も含めて考察する必要があると考えられる。しかし,足底が接地している状態でインフレア側の足部が内向きになっていることは臨床上ほとんど認められない。これより,本研究の足底接地時と非接地時の分析検討は今後の課題である。【理学療法学研究としての意義】本研究により,体幹深層筋の機能に対して股関節回旋角度からの評価,治療介入も加えられる可能性を示唆でき,その股関節回旋方向の指標,選択に応用できると考える。
著者
福田 章人 澳 昂佑 奥村 伊世 川原 勲 田中 貴広
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0026, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】国内において内側型変形性膝関節症(膝OA)患者は2400万人いると推測されている。膝OA患者は高齢化社会となり年々,増加している。膝OA患者では,疼痛から日常生活での活動量が減少することにより下肢筋力が低下し,更に膝OAが進行するという悪循環を招いてしまう。膝OA患者は歩行立脚期における膝内反モーメントの増加によって,膝関節内側コンパーメントの圧縮応力が増加し,痛みが誘発されることが明らかとなっている。さらに膝内反モーメントの増加によってlateral thrustが出現する(Schipplenin OD.1991)。これに対して外側広筋は1歩行周期において筋活動を増加することによって膝内反モーメントの増加やlateral thrustによる側方不安定性に寄与し,初期の膝OAにおいては膝内反モーメントを制動することが知られている(Cheryl L.2009)。しかしながら,この外側広筋の筋活動が立脚期,遊脚期それぞれの周期別の活動については明らかにされていない。この筋活動の特徴を明らかにすることによって,膝関節に対する歩行周期別トレーニング方法の開発に寄与すると考えられる。そこで本研究の目的は膝OA患者における歩行中の外側広筋の筋活動の特徴を表面筋電図(EMG)を用いて明らかにすることとした。【方法】対象は健常成人7名(25歳±4.5)と片側・両側膝OA患者4名(85歳±3.5)とした。膝OAの重症度の分類はKellgran-Lawrence分類(K/L分類)にIIが4側,IIIが1側,IVが2側であった。歩行中の筋活動を計測するための電極を外側広筋,大腿二頭筋に設置し,足底にフットスイッチを装着させた。歩行計測前,MMTの肢位にて3秒間のMVC(Maximum Voluntary Contraction)を測定した。歩行における筋活動の測定は音の合図に反応して,快適な歩行速度とした。解析は得られた波形を整流化し,5歩行周期を時間正規化した。各筋の立脚期,遊脚期,MVCの平均EMG振幅を算出した。各歩行周期の平均EMG振幅は%MVCに正規化した。統計処理はOA患者のEMG振幅とK/L分類の関係をSpearmann順位相関係数を用いて検証した。健常成人とOA患者のEMG振幅を歩行周期別にMann-Whitney U-testを用いて比較した。有意水準は0.05とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に基づき対象者の保護には十分留意し,阪奈中央病院倫理委員会の承認を得て実施された。被験者には実験の目的,方法,及び予想される不利益を説明し同意を得た。【結果】OA患者のK/L分類と1歩行周期における外側広筋のEMG振幅は有意な正の相関関係を示した。1歩行周期における外側広筋,大腿二頭筋のEMG振幅は健常成人と比較して有意に増加した。また,立脚期,遊脚期それぞれの外側広筋,大腿二頭筋のEMG振幅は健常成人と比較して有意に増加した(立脚期健常成人:21.79±3.63%,膝OA:72.09±19.06%,遊脚期健常成人:15.8±4.3%,膝OA:39.3±18.8%)。【考察】健常成人と比較して,外側広筋の筋活動が増加したことは先行研究と一致した。OA患者のK/L分類と1歩行周期における外側広筋の筋活動が相関したことは,側方不安定が増加するにつれて外側広筋の筋活動が増加したことを示す。さらに遊脚期,立脚期の周期別に外側広筋の筋活動が増加したことは立脚期における側方安定性に寄与する外側広筋の筋活動を遊脚期から,準備している予測的姿勢制御に関連している反応である可能性が示唆された。また,遊脚期において外側広筋,大腿二頭筋の筋活動が増加することにより正常な膝関節の関節運動を行えないことが示唆された。【理学療法学研究としての意義】変形性膝関節症患者の歩行時筋活動を解明することで歩行能力改善を目的とした歩行周期別トレーニングとして,遊脚期における筋活動に着目する必要性を示唆した。
著者
長谷川 治 金井 一暁 弓永 久哲
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1269, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】頭蓋脊椎角(以下CV角)は,C7棘突起を通る水平線とC7棘突起から耳珠を通る線が成す角度とされ,CV角の減少は頭部の前方への移動を指す。本研究の目的はCV角の違いで呼吸筋や換気能力の影響を検討することである。頸部制御不良は,廃用のほか神経筋疾患などで幅広くみられる容態である。臨床では座位不良や臥位姿勢不良などの影響で頸部周囲筋から腰背部筋の緊張を高めた症例を多く経験する。特に頸部筋の緊張が高まることで誤嚥やこれによる重篤な肺疾患をきたす症例も少なくない。これは頸部体幹部の不良姿勢による影響であることを多くの報告から散見する。しかし,このような不良姿勢者の呼吸筋力への影響や換気能力についての報告,特に頸部角度について検討した報告は少なく頸部姿勢介入への方法について検討する必要があるため今回の検討に至った。【方法】CV角を他動的に設定するため自作の固定器具を被験者の背部から当て頭部および上腕部で固定を行った。固定は正中位をCV角90°としてそこからCV角60°,45°,30°位とした。検査肢位は体幹の運動を排除するため全例背臥位とした。なお被験者の両上肢を固定し,頭部は固定器から浮かさないように口頭で説明し,動いたものは測定値から除外した。次いで,各肢位における呼吸筋力および最大換気能力をスパイロメーター(ミナト医科学社製AS507)によって,最大換気量(以下MVV),最大吸気圧(以下PImax)と最大呼気圧(以下PEmax)の測定を被験者ごとに各2回行った最大値を採用し,得られた値をDuboisの式を用いた体表面積(BSA)の値で除した。各肢位における測定の順序はランダムとし,測定の間隔も十分に休息を取って行った。各被験者の測定値の平均を算出し,それぞれの角度間のMVV,PImax,PEmaxの変化を比較検討した。統計には対応のある一元配置分散分析を用い,各角度間の比較にはBonferroniの多重比較法を用いた。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,研究の概要,倫理的配慮,公表の方法などについて本校倫理委員会で審査を受けその承認のもとに実施した。被験者は本実験の趣旨を十分に説明し書面によって同意を得られた健常な男性12名(平均年齢±標準偏差;20.3±1.7,平均身長±標準偏差;172.4±4.0,平均体重±標準偏差;63.7±8.0)とした。【結果】MVV/BSAがCV角90°(61.4±13.6L/min)に対して,60°(65.5±14.8L/min)で有意に増加し,逆に45°(64.1±14.2L/min)と30°(61.5±11.6L/min)では60°に比べて減少した。PImaxではCV角90°(77.3±17.7cmH2O)に対して有意差はなかったが60°(82.0±23.7cmH2O)と45°(83.9±26.6cmH2O)で増加した。しかし30°(79.5±29.0cmH2O)では減少した。PEmaxではCV角90°(70.5±14.6cmH2O)に対して有意差はなかったが60°(70.0±15.0cmH2O),45°(67.6±15.6cmH2O),30°(66.6±11.8cmH2O)とCV角の減少に従って減弱した。【考察】換気機能は頸椎の屈曲角度の増大に伴い減弱する傾向にあるが,CV角が60°となる,つまり背臥位姿勢からわずかに頸部を屈曲した姿勢では,屈曲しなかった姿勢に比べて有意に換気し易くなる結果となった。このことから背臥位姿勢では,枕などを使用したわずかな頭部挙上位が換気しやすい姿勢であることが示唆される。また,CV角60°では吸気補助筋である胸鎖乳突筋や斜角筋の走行を上位胸郭の引き上げ方向に一致させ筋活動を起こしやすくし最大吸気筋力の増大につながったと考える。しかしCV角45°以下になると,その走行が上位胸郭の運動方向より逸脱するため筋活動が起こし難くなると考える。またCV角45°以下は上位胸郭の前上方への運動制限,上気道抵抗の増大などを引き起こすため,過剰な頸部屈曲姿勢を保持し続けることは廃用的に換気不全に陥る可能性が示唆される。このことから,背臥位での過剰な頸椎屈曲姿勢は,換気機能や呼吸筋力を低下させる可能性があるため,背臥位姿勢でのポジショニングを考える際には,枕などを使用して軽度屈曲姿勢をとらせることを検討する必要性があることを示唆した。【理学療法学研究としての意義】臨床における座位不良やポジショニング不良による頸部周囲筋から腰背部筋の緊張が高まった症例に対し,呼吸筋力や換気能力の低下を予防するために,姿勢介入の重要性を考える一助になると考える。
著者
對馬 浩志 櫻庭 満 舘山 智格 高橋 美保 福司 悠佳 中井 敬太 北澤 勇気 平山 理恵
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1320, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】足関節底背屈運動には血流速度を増加させ,静脈還流の促進や静脈うっ滞除去効果の向上があると報告されている。しかし,その報告は運動中における血流速度の変化についての検討が多く,運動後の血流速度の変化についての報告は少ない。今回の研究は足関節底背屈運動の運動回数に着目し,運動回数の違いがどのように運動後の静脈血流速度に影響を及ぼすかを検討した。【方法】対象は健常男性,平均年齢37.6±11.6歳,平均身長176.2±6.4cm,平均体重66.0±6.8kgであり,過去に血流速度に影響を与える可能性のある既往がない10名とした。測定部位は右大腿静脈とし,静脈血流速度の測定には超音波診断装置(日立アロカ社製Prosound α7)を用いた。測定時の姿勢は安静背臥位,膝関節伸展位とし,足関節を自動運動で底背屈させた。又,運動強度は対象者の最大努力,運動速度は各自の判断とし,運動回数は10回,30回,50回の3通りに設定した。測定の状態は足関節底背屈運動前(安静背臥位にて5分間の臥床後)を測定し,それぞれの運動回数において,運動直後,15秒後,30秒後,1分後,2分後の経過時間毎の血流速度を測定した。また,測定間には5分間の休息を設け,パルスドプラにて波形が安定した状態を視覚的に確認してから次の測定を行った。統計解析は,運動前血流速度と運動後経過した時間毎の血流速度において対応のあるt検定を用いて検討した。なお,有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき,対象には本研究の趣旨および目的,研究への参加の任意性とプライバシーの保護について十分な説明を行い,同意を得た後に測定した。【結果】運動直後における大腿静脈血流速度は,10回,30回,50回の順に,24.69±7.1cm/sec,25.85±7.5cm/sec,31.27±11.3cm/secとなり,運動前の17.87±5.9cm/secと比較すると,運動回数が多いほど血流速度は増加していた。又,運動回数10回では運動後15秒まで,運動回数30回では運動後30秒まで,運動回数50回では運動後1分までは運動前の血流速度よりも有意に高値を示し(p<0.05),運動回数が多いほど,増加した血流速度が維持される傾向となった。しかし,10回,30回,50回で増加した血流速度は運動後2分程度で,どの回数も運動前と有意差(p<0.05)が認められなかった。【考察】運動回数の違いに着目した今回の研究結果では,運動回数が多いほど運動直後の血流速度が増加しており,増加した血流速度は,その後,徐々に減少する傾向が確認された。これは下腿三頭筋の筋ポンプ作用の効果が影響していると推測された。筋ポンプ作用の効果において筋収縮が強いほど,又,貯留血液が多いほど,多くの血液が押し出されるという特徴があることから,運動回数の増加により筋収縮が強くなった為に,より多くの血液が押し出され血流速度が増加したと推測される。増加した血流速度が徐々に減少していった要因は,運動中とは異なり,運動後の筋では血管拡張が起きていた可能性があることや交感神経活動の低下に伴って末梢血管抵抗の減少が持続していた為と推測される。研究結果から運動回数の違いは,筋ポンプ作用の効果の違いになると推測できる。足関節底背屈運動により運動後の血流速度の増加や,増加した血流速度の維持を期待出来るが,その効果は予想よりも短い時間で収束することが1つの発見であった。臨床では制限なく運動を継続する事は不可能であり,様々な条件により足関節底背屈運動が出来ない場合も想定される。VTE予防を目的として足関節底背屈運動を実施する場合,運動回数の違いにより,筋ポンプ作用の効果に違いが生じることを踏まえて,大きく血流速度を増加させる回数で運動頻度を少なく設定する,或いは血流速度の増加が小さく少ない回数で運動頻度を多く設定するなど,足関節底背屈運動による血流速度の変化を予測しながら運動回数を設定する必要性があると考えられる。【理学療法学研究としての意義】臨床において静脈還流の停滞や静脈のうっ滞を改善する目的で足関節底背屈運動を行う場合は運動回数が1つの指標になり得る可能性があると示唆された。