著者
熊谷 広治 明瀬 大輔 平井 隆次 植木 實 林 嘉彦
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.178-183, 2003 (Released:2003-06-24)
参考文献数
14

2001年に厚生労働省の研究班が行った全国9モデル県での調査によると,性感染症のうちもっとも無症候化しつつ拡散しているのは性器クラミジア感染症であり,男性より女性の罹患率が高い.われわれは,2001年6月から2002年5月までの1年間に公立甲賀病院産婦人科において,甲賀郡・蒲生郡に在住する480例の後腟円蓋部から子宮頸管分泌物を採取し,polymerase chain reaction(PCR)法によりクラミジア・トラコマチスのDNAを検出した.クラミジア抗原陽性率は, 15~19歳群で17.8%と最高値を示し,おおむね年齢が若い群ほど高値を示した.居住地域別の陽性率は,各町のそれぞれで0.0~13.9%の値を示した.陽性者の主訴は,帯下感,下腹部痛,不正性器出血,挙児希望,無症状がそれぞれ, 23.3%,43.3%,6.7%,3.3%,23.3%を占めていた.滋賀県に在住する10~30歳代の女性に対して,症状の有無にかかわらず,積極的にクラミジア検査を行うべきである. 〔産婦の進歩55(2):178-183, 2003(平成15年5月)〕
著者
萬代 博行 坪内 秀嘉 深田 信之
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.227-230, 1978-05-01 (Released:2011-10-11)
参考文献数
10

胎児体重の推定方法は従来よりいろいろ研究され, 最近では超音波断層法を用いた報告がみられるが, いまだ正確であり簡易な方法はみられない. われわれは予定日±2週間の範囲で昭和49年1月より昭和52年9月までの間に当院で分娩した1213例について通常の妊婦検診で行なわれる子宮底長, 腹囲を変数として電算器を用い, 重回帰式を求める簡易児体重推定表を作製した. その結果, 児体重をY, 子宮底長を×1, 腹囲をx2としてY=-1370.8+71.488×1+24.258×2の重回帰式を得た. 重相関係数は0.58であった. また適中率は生下時体重と推定体重の誤差を±100gとすると26%, ±200gでは50%, ±300gでは69%, ±400gでは80%, ±500gでは90%であった.
著者
後藤 栄 横井 崇子 高倉 賢二 廣瀬 雅哉 木村 俊雄 竹林 浩一 秋山 稔 中西 桂子 布留川 浩之 野田 洋一
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-5, 2000-01-01 (Released:2010-09-27)
参考文献数
10

正常排卵周期を有する不妊症患者に対する排卵誘発の有効性について検討した.1998年1月から12月の12ヵ月間に不妊治療あるいは指導を受けた185婦人のうち,排卵障害を伴わない131症例を対象とした.中枢性無月経,多嚢胞卵巣症候群,早発卵巣不全,高プロラクチン血症および稀発月経や頻発月経など月経異常を有するものは排卵障害を有する症例として本解析から除外した.両側卵管閉鎖,無精子症などの絶対不妊も除外症例とした.各不妊原因に対する治療を行うとともに,初診後3ヵ月間の待機期間を経ても妊娠に至らない症例に対して,1司意を得たうえでクロミフェン,シクロフェニル,hMG(FSH)+hCGを単独または併用した排卵誘発を行い,各種排卵誘発法の周期あたりの妊娠率を,自然排卵周期(自然周期)における妊娠率と後方視的に比較検討した.排卵障害を有さない131症例において,1998年1月から12月の間に妊娠が確認されたのは33周期であった.このうち排卵誘発により妊娠に至ったのは23周期であった.自然周期における妊娠は10周期で,このうち初診後3ヵ月以内に妊娠に至った周期は7周期であった.初診後3ヵ月間の待機期間を過ぎた症例では,IVF-ET周期を除く排卵誘発周期では周期あたりの'妊娠率は4.3%(16/374)であり,自然周期での妊娠率の1.1%(3/284)と比較して有意に高率であった.排卵誘発法別の妊娠率はhMGを含む周期,シクロフェニルを含む周期ではそれぞれ6.7%(4/60),4.4%(5/114)であり,自然周期より有意に高率であった,しかしクロミフェンを含む周期の妊娠率は3.3%(7/209)であり,自然周期と有意差を認めなかった.自然排卵周期を有する不妊症患者に対し,シクロフェニルまたはゴナドトロピンによる排卵誘発法は有効な方法と考えられたが,クロミフェンの有効性は認めなかった.〔産婦の進歩52(1);1~5,2000(平成12年1月)〕
著者
松岡 賢光
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.229-231, 1982

多胎妊娠における奇形胎児で1児が生存不可能な奇形, 他の胎児が正常と判明した場合できるだけ妊娠を継続させて分娩に至らせることが必要である. 今回, 羊水過多症(分娩時8100ml)を伴った双胎1児無脳症を妊娠21週に超音波断層法にて発見し, 尿中エストリオール, 血中human placental lactogen (HPL)等を経時的に測定しながら35週に陣痛誘発を行ない経腟分娩させた. 尿中エストリオールは21週にて10~20μg/mlと比較的高値を示した. またHPLは25週目で10.8μg/mlと高値を示していた. しかし母体血中α-フェトプロティンは29週目で正常範囲内であった. この症例の妊婦管理および若干の考察を加えて報告する.
著者
田中 一範 北脇 城 保田 仁介 加藤 淑子 本庄 英雄 岡田 弘二
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.493-498, 1990 (Released:2011-07-05)
参考文献数
25
被引用文献数
1

Congenital defect of the vagina is estimated to occur once in every 4, 000-5, 000 female births, and about 5% of those women have a funcitioning uterus. We present a case of congenital defect of the vagina with functioning uterus. The patient was a 15-year-old girl, who had had cyclic lower abdominal cramping since 12 years of age. Her height was 155 cm and her weight 55 Kg. Her vital sings were normal, and her secondary sexual characteristics were adequate. The basal body temperature was biphasic. On pelvic examination, the external genitalia were normal. The vagina terminated blindly 1 cm inside the introitus. Rectal examination revealed that the uterus was normal in size and shape. Chromosome study showed a 46XX karyotype. Intravenous pyelography revealed no urinary tract anomalies. We selected simple surgical reconstruction of the vagina with uterine conservation. The uterine body was incised vertically to reveal a bicornate uterine cavity which ended blindly above the hypoplastic and non-canalized cervix. The blind termination of the vagina was incised and elongated, and.the potential vaginal cavity was canalized and dilated. Stenosis of the neovagina was prevented by the insertion of a Hegar's cervical dilator (no. 18) for ten minutes every night and sanitary tampons during the daytime. Cyclic and painless menstruations now occur without any stenosis or consequent infection.Other reports of congenital defect of the vagina with functioning uterus are summarized and discussed.
著者
川西 陽子 早田 憲司 八木 一暢 奥野 幸一郎 田中 博子 正木 秀武 奥野 健太郎 坪内 弘明
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.217-223, 2016

<p>予後不良と認識されている妊娠22週未満での前期破水(以下;pPROM)の予後について,当院の症例を後方視的に検討した.2006年から2013年の間に,当院で妊娠22週未満にpPROMと診断された41症例(うち双胎4症例)を対象とした.41例の破水時週数は妊娠13週~21週であった.18例が48時間以内に流産進行またはIUFDとなり,10例が選択的分娩誘発を選択したため,13例について待機的管理を行った.妊娠22週未満に分娩に至った6例はIUFDが3例,自然流産が2例,母体感染による人工流産が1例であった.妊娠22週以降に分娩に至った7例のうち,死産となった2例(双胎1例)はいずれもIUFDであった.5例(双胎2例)が妊娠26週1日から33週6日で分娩に至り,7人の生児を得た.待機的管理を行った13例のうち,3例が母体感染を認め,1症例に遺残胎盤を認めた.胎盤病理所見では,Blanc III度の絨毛膜羊膜炎を生産例で1/5,死産例で6/8で認めた.児の合併症としては,先天性サイトメガロウイルス感染と子宮内胎児発育制限を認めた1例で重度の身体的・精神的発達障害を認め,dry lungと慢性肺障害のため在宅酸素療法を要した.他の6例中,肺低形成・敗血症・脳室内出血など重篤な合併症は認めず,1例がdry lungと診断されたが退院までに改善を認めた.股関節の開排制限を2例で認め,うち1例は生後早期に自然軽快し,1例は理学療法を要した.双胎の非破水児1例に精神発達障害を認めた他,5例は生後の精神発達に異常を認めなかった.妊娠22週未満のpPROM症例であっても必ずしも予後不良ではないことを念頭に,待機的管理も含めて治療方針を提示することが望ましい.〔産婦の進歩68(3):217-223,2016(平成28年8月)〕</p>
著者
原田 直哉 中島 容子 中村 徹 橋本 平嗣 林 道治 堀江 清繁 赤崎 正佳 小林 浩 井上 芳樹 高井 一郎 潮田 悦男 大井 豪一 小畑 孝四郎 喜多 恒和 下里 直行
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-10, 2013

妊婦健康診査(以下,健診)をほとんど受診することなく分娩に至る妊婦健診未受診妊婦(以下,未受診妊婦)に関する既報では多くが施設単位であるため,奈良県全体での実態を把握するためのアンケート調査を実施した.未受診妊婦の定義は,(1)全妊娠経過を通じての産婦人科受診回数が3回以下,または(2)最終受診日から3カ月以上の受診がない妊婦,のいずれかに該当する場合とした.県内のすべての分娩施設に対し,平成22年1月からの1年間の分娩数と,未受診妊婦があれば個別に母児の状況を調査した.年間11,168例の総分娩数中の11例(0.10%)の未受診妊婦を認めた.初産婦は4例(36.4%)で,5回あるいは7回と多産の経産婦もいた.未入籍は9例(81.8%),妊娠のパートナーと音信不通になっている者が5例(45.6%)いた.重篤な合併症を認めた母体が3例(27.3%),集中治療室に収容された新生児が3例(27.3%)であった.産褥健診を受診しなかった1例(9.1%)は,新生児の1カ月健診も受診しなかった.未受診を防ぐことは,母児の健康を確保するだけでなく,周産期母子医療センターへの患者集中を防ぎ,周産期の医療資源の有効利用にもつながるため,社会全体でその解消に取り組む必要がある.また未受診であった妊婦に対しては,虐待のハイリスクグループと考え,その後を通常の妊婦と異なる個別の対応を行うことにより,虐待を防止することができるかもしれない.〔産婦の進歩65(1):1-10,2013(平成25年2月)〕
著者
橋本 佳奈 山村 省吾 冨田 裕之 泉 有希子 川村 洋介 野々垣 比路史
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.95-99, 2013

新生児における頭蓋骨陥没骨折の発生はまれであるが,その大部分は妊娠・分娩中の外傷に起因し,外傷既往のない先天性頭蓋骨陥没骨折の発生は4000~10,000分娩と極めてまれである.今回われわれは,受傷機転の明らかでない妊娠および分娩経過を経て出生した児に,右前頭骨陥没骨折を認めた1症例を経験した.26歳,1経産,身長149cmと低身長であるが狭骨盤や扁平仙骨は認めない.妊娠中の外傷既往はなく,妊娠39週5日に自然陣痛発来し,11時間31分の分娩時間を経て自然経腟分娩に至った.吸引・鉗子分娩やクリステレル圧出は行っていない.新生児は2640gの女児,Apgar scoreは1分値9点/5分値10点であった.出生時,右前頭部に3×4.5cm大の陥没を認め,頭部単純X線,CTを施行した.右冠状縫合に沿って右前頭骨の陥没を認めたが,頭蓋内病変は伴わず,明らかな神経学的症状も認めなかった.入院中,頭蓋内圧上昇や神経学的症状は出現せず.退院後も数週間の経過観察を行ったが,陥没骨折の改善傾向を認めなかったため,日齢28に頭蓋形成術を施行し,術後経過は良好である.非外傷性の新生児頭蓋骨陥没骨折の要因は,母体因子として子宮筋腫,子宮奇形,狭骨盤,および正常骨盤における第5腰椎,岬角,坐骨棘など,胎児因子として患児自身や多胎における他児の身体による圧迫などが挙げられる.しかし,出生前に頭蓋骨陥没骨折を予測,診断することは困難で,出生時に初めて診断されることがほとんどである.頭蓋内病変や神経学的合併症の多い外傷性陥没骨折と異なり,非外傷性の場合は出生時に合併症を伴わないことが多く,また自然治癒例もあり,その長期的予後は良好である.よって出生時に合併症を認めない非外傷性陥没骨折においては,まず経過観察を選択し,その間に外科的介入の必要性や時期,手法を検討することが可能であると考える.〔産婦の進歩65(1):95-99,2013(平成25年2月)〕
著者
卜部 宏
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.49-55, 1972

当院不妊外来で6年間に128例の妊娠が得られこれを中心に検討を行なった. 妊娠希望者の取扱を特に人間関係および患者の社会環境を重視して治療を行なった. 初診から妊娠までの月数は, 6ヵ月以内が約半数で1年以内が全体の80%であった. 妊娠率は不妊症群が23.3%, 挙子希望者群が18.4%であった. 妊娠前6ヵ月間の治療の動向を見るに, 妊娠周期に全妊娠例の1/3が休薬中であった。6ヵ月間の治療における投薬は平均1周期に1.5種類の薬剤が投与され妊娠周期には平均2種類の投薬がなされている. 遠隔成績として妊娠例の再妊娠についての集計は, 不妊症群で次の妊娠が無治療で得られた頻度は32.4%であった. さらに再妊娠希望者で妊娠してない人が71例中19名で(26.7%)これらの人が続発性不妊群に再編成されることになる. 全体を通じて不妊患者の取扱は, 人間関係をより重要視して治療を行なうことが重要であると信じるに至った.
著者
行村 純 池田 良 宮崎 和典 大塚 憲衛 植木 実
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.163-168, 1980

先天性副腎過形成による副腎性器症候群は女性においては男性化徴候と卵巣機能不全による不妊症とを特徴とする疾患である.<br>最近われわれは原発性無月経, 外性器異常などを主訴とする症例に内分泌学的検索をはじめとする諸検索を行ないC-21-OH・lase障害による先天性副腎過形成と診断した.<br>形成的に陰核部分切除術を施行後, glucocorticoid療法をprednisolonc 20 mg perdayにて開始した. 治療開始後3週間で整調排卵性周期が確立し, 2ヵ月後には妊娠に成功した. しかし初回妊娠は17週で自然流産に終った.<br>3年後再び妊娠し順調な経過ののち経膣的に正常女児を得た. 本疾患における妊娠分娩例, 特に経膣分娩例は稀なため報告する.
著者
野溝 万吏 馬場 長 鈴木 彩子 山西 恵 山口 綾香 角井 和代 松村 謙臣 吉岡 弓子 近藤 英治 佐藤 幸保 濱西 潤三 小阪 謙三 万代 昌紀 小西 郁生
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.40-45, 2013

子宮びまん性平滑筋腫症は,無数の小さな筋腫結節が粘膜直下の子宮筋層にびまん性に増生する病態を呈し,特殊な発育様式をとる子宮筋腫に分類される.小筋腫は往々にして100個を超えて筋層内および粘膜下に発育し,高度の過多月経や月経痛を生ずるため,手術や薬物治療が必要となる.20~30歳代の女性に好発することが知られており,妊孕性を保った管理法が求められるが,従来の核出術では多数の筋腫を核出することは容易でなく,術後すぐに再発することが多い.今回,われわれは高度貧血をきたす子宮びまん性平滑筋腫症を認め,また妊孕性温存を希望する姉妹の例を経験した.いずれも術前に長期間の偽閉経療法を行った後に,子宮を半割し小筋腫核を可能な限り核出することで,術後長期にわたって過多月経や月経痛を伴うことなく経過観察が可能であり,1例では術後に生児を得た.実母も若年から多発子宮筋腫を発症し,同症であった可能性が高く,同症が家族性に発症することが示唆される.今後の症例集積により病態解明および若年患者の管理法がさらに確立することが期待される.〔産婦の進歩65(1):40-45,2013(平成25年2月)〕
著者
山中 章義 鞠 錦 笠原 恭子 山本 嘉昭 吉田 彌太郎
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.112-120, 2011 (Released:2011-06-27)
参考文献数
50

骨髄異形成症候群 myelodysplastic syndorme (MDS)は,造血幹細胞の異常クローン増殖により汎血球減少と無効造血をきたし,進行性・治療抵抗性のため予後不良な疾患である.MDSは妊娠中に増悪することもあり,子宮内胎児発育遅延や胎児機能不全等の合併症の発生リスクが高くなるとされている.今回われわれはMDS合併妊娠で,分娩周辺期の血小板輸血により母児を安全に管理し得た.本邦での過去の症例51例と合わせて報告する.症例は29歳,初産婦.2年前よりMDSに対し血液内科にて経過観察中であった.白血球や赤血球の著明な減少は認めなかったが,血小板減少を認めていた.近医にて妊娠判明し,妊娠12週で当科紹介受診となった.徐々に血小板が減少したため,妊娠29週より入院管理とした.妊娠中出血傾向を認めなかったため,血小板輸血は行わなかった.妊娠37週1日に選択的帝王切開術施行したが,術直前および術直後に血小板輸血を行い,術中および術後に出血傾向はなかった.母児ともに経過観察中であるが,MDSの増悪や新生児への影響は現在のところ認められていない.これまでのMDS合併妊娠の報告では,治療抵抗性の貧血を認め,妊娠中に初めてMDSと診断された症例が53%(28/52)であった.合併症として妊娠高血圧症候群や胎児機能不全が多い傾向にあった.妊娠時や分娩時に出血傾向はそれほど認められなかったが,ほとんどの症例で血小板輸血を行った.十分な血液製剤が確保できるのであれば,産科的禁忌がない限り経腟分娩は可能と考えるが,高次医療施設での妊娠・分娩管理が必要と考える.妊娠中に治療抵抗性の貧血や血球減少を認めた場合は,血液内科医と連携し速やかに骨髄穿刺にて診断を行い,MDSと診断されれば慎重な妊娠・管理が必要である.〔産婦の進歩63(2):112-120,2011(平成23年5月)〕