著者
須藤 信行
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.12, no.Suppl.20, pp.37-41, 2013 (Released:2014-12-21)
参考文献数
41

腸内フローラは様々な生理機能の発現に深く関与しているが,中枢神経機能や精神機能にどのような影響を及ぼしているかに関しては十分に検討されていない。近年,腸内フローラは宿主のストレス反応や行動特性に影響することが明らかにされつつある。著者らの人工菌叢マウスを用いた検討では,無菌(germfree:GF)マウスは通常のspecific pathogen free (SPF)環境下で飼育されたマウスと比較し,拘束ストレス負荷によるACTHおよびコルチコステロンの上昇反応が有意に亢進していた。また GFマウスは,通常の腸内フローラを有するEX-GFマウスと比較し,多動で不安レベルが高かった。以上の結果は,腸内フローラは成長後のストレス反応性のみならず行動面にも影響しうることを示している。(皮膚の科学,増20: 37-41, 2013)
著者
上埜 剣吾 荒金 兆典 浅井 睦代 川田 暁 手塚 正
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.466-470, 2004

患者は38歳,女性。急性扁桃腺炎の診断により近医でクリンダマイシンの点滴と塩酸ミノサイクリンの内服を受けたところ,多型滲出性紅斑様の皮疹が出現したため当院紹介となった。発熱と軽度の肝機能異常を伴っていた。クリンダマイシン,ミノサイクリンの使用を中止し,ホスホマイシン内服に変更したうえで,プレドニゾロン30mg/日の内服を開始したところ皮疹は改善し,発熱,肝機能も正常化した。経過中HHV-6のIgM抗体価,IgG抗体価は軽度から中程度の亢進を認めた。貼付試験を行ったところクリンダマイシン(10%,1%,0.1%)の各濃度全てに陽性反応を示し,HHV-6に誘発されたクリンダマイシンによる薬剤過敏症であると診断した。
著者
山本 篤志 後藤 典子 神吉 晴久 堀川 達弥 錦織 千佳子
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.546-550, 2009

71歳,女性。左顔面の有棘細胞癌に対して全摘術を施行した。術後,抗生剤としてセフタジジム(モダシン®)およびクリンダマイシン(ダラシン®)を投与したところ,投与後4日目に背部に無症候性の紅斑が出現した。8日目には全身に拡大し,間擦部には小膿疱が集簇してみられた。同時に38℃台の熱発と著明な乏尿を認め,血液検査では白血球とCRP,BUN,クレアチニン値の上昇を認めた。抗生剤をメロペネム(メロペン®)に変更後3日で熱発と乏尿は改善し,約10日で皮疹は検査所見とともに改善した。DLSTはモダシン®とダラシン®とも陽性であり,パッチテストはダラシン®で陽性であったことから,モダシン®およびダラシン®による急性汎発性発疹性膿疱症(acute generalized exanthenmatous pusutulosis:AGEP)および急性腎障害と診断した。
著者
上埜 剣吾 荒金 兆典 浅井 睦代 川田 暁 手塚 正
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.466-470, 2004

患者は38歳,女性。急性扁桃腺炎の診断により近医でクリンダマイシンの点滴と塩酸ミノサイクリンの内服を受けたところ,多型滲出性紅斑様の皮疹が出現したため当院紹介となった。発熱と軽度の肝機能異常を伴っていた。クリンダマイシン,ミノサイクリンの使用を中止し,ホスホマイシン内服に変更したうえで,プレドニゾロン30mg/日の内服を開始したところ皮疹は改善し,発熱,肝機能も正常化した。経過中HHV-6のIgM抗体価,IgG抗体価は軽度から中程度の亢進を認めた。貼付試験を行ったところクリンダマイシン(10%,1%,0.1%)の各濃度全てに陽性反応を示し,HHV-6に誘発されたクリンダマイシンによる薬剤過敏症であると診断した。
著者
中丸 聖 谷村 裕嗣 宮本 真里 四十万谷 貴子 長野 奈央子 寺井 沙也加 槇村 馨 久米 典子 清原 隆宏
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.139-143, 2019 (Released:2019-10-31)
参考文献数
6
被引用文献数
1

2014年 1 月から2018年 6 月までの 4 年半に関西医科大学総合医療センターにおいて経験した10例の早期梅毒患者についてまとめるとともに,梅毒の最近の動向について考察した。当該地区においても梅毒患者は増えており,男性 6 例,女性 4 例とやや男性優位であった。風俗店に通う青壮年男性が多かったことは,全国的傾向に合致していた。男性同性愛者および HIV 重複感染例は皆無であった。 硬性下疳 3 例,丘疹性梅毒 2 例,梅毒性乾癬 1 例,膿疱性梅毒および扁平コンジローム 1 例,ばら疹 3 例と極めて多彩な臨床像を呈していた。ほぼ全例に対してアモキシシリン内服治療を選択し,ほぼ全例で STS 抗体価の速やかな低下とともに臨床的治癒が得られた。なお,今回は晩期梅毒を除いた集計とした。梅毒の多彩な臨床症状と梅毒血清反応の複雑な動きを十分理解することは皮膚科医の大きな責務であり,病院内において今後ますます主導的役割を果たすことが求められる。 (皮膚の科学,18 : 139-143, 2019)
著者
宮田 明子 夏秋 優 小倉 千香 松本 晴子 山西 清文
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.407-410, 2004

46歳,男性。平成15年3月下旬に,ホタルイカの生食をした。同年4月上旬より前胸部左側にそう痒感を伴う移動性の紅斑が出現してきたため,当科を紹介され受診した。初診時,前胸部左側に不整形で不規則な線状の浮腫性紅斑が存在し,一部に浸潤と紫斑を認めた。移動性紅斑の先端と紫斑部を皮膚生検したところ,紅斑先端部では旋尾線虫幼虫の虫体を認め,紫斑部では軽度の血管炎を認めた。皮膚生検後,皮疹は著明に改善した。
著者
三宅 雅子 志賀 久里子 柳原 茂人 遠藤 英樹 大磯 直毅 川田 暁
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.105-109, 2018 (Released:2018-12-14)
参考文献数
13

80歳代,男性。以前より糖尿病があり,インスリン治療を行っていた。初診の2ヶ月前から左下腹部に皮下硬結が出現したため近医皮膚科を受診し,精査目的で当科に紹介された。当科初診時,左下腹部に 4~5cm 大の自覚症状のない皮下硬結を認めた。臨床経過,臨床所見,病理組織所見からインスリンボールであると診断した。インスリンボールはインスリン由来のアミロイドがインスリン注射部位に沈着することにより生じる皮下腫瘤である。インスリンボールは他部位と比べつまみやすく,注射時の痛みを感じにくいためインスリン使用患者は腫瘤部を好んでインスリン注射部位に選ぶ傾向にある。しかしながらインスリンボールは他部位と比べインスリンの吸収が阻害されるため,患者の血糖コントロールの悪化につながる。糖尿病患者を診察する際はインスリン注射部位を観察し,インスリンの注射手技を定期的に確認・指導することが望ましいと考える。(皮膚の科学,17: 105-109, 2018)
著者
川島 眞 水野 惇子
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.1, no.5, pp.338-346, 2002 (Released:2010-08-25)
参考文献数
16
被引用文献数
3

アトピー性皮膚炎並びに乾皮症などに起因し, 保湿剤の外用を必要とする乾燥症状を有する患者40名に対して, 「ロコベース (R) リペア」の使用試験を実施した。本剤は, セラミド3, コレステロール, 遊離脂肪酸を配合した保湿クリームである。4週間の使用試験において, 皮膚所見の改善度及び安全度を含む有用性判定では, やや有用以上が85.0%と高い有用性を認めた。副作用は掻痒感または掻痒感の増強が3例認められ, 1例は非観察部位に使用中であった外用薬の塗布により, 1例は抗ヒスタミン薬の服用により回復した。他の1例は何ら処置を施すことなく試験期間終了後に症状が消失した。これらの結果から, 本剤はアトピー性皮膚炎や乾皮症等に起因する乾燥症状に対して有用で, 安全に適用可能な保湿クリームであることが示唆された。
著者
中村 晃一郎
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学
巻号頁・発行日
vol.5, no.7, pp.B21-B23, 2006

アトピー性皮膚炎(AD)の病変部にはT細胞,好酸球,肥満細胞などの浸潤を認め,これらの細胞がサイトカインやケモカインを産生することによって皮膚炎の増悪,かゆみの増悪を惹起していると考えられる。筆者らは,ADの病態における白血球走化因子としてのケモカインの作用が明らかにした。またADの標準治療薬として使用される副腎皮質ステロイド軟膏やタクロリムス軟膏などの免疫調節薬が,ケモカイン産生に対して抑制作用を有することを明らかにした。ADの病態におけるケモカインの作用について最近の知見を紹介した。
著者
笹川 征雄
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.343-349, 2004

シックハウス症候群と化学物質過敏症が同義語とされたり,シックハウス症候群を化学物質過敏症に包括する概念があったりして混乱を招いている。混迷した状況で情報が発信され,臨床診断,基礎研究にまで深刻な影響を及ぼしている。両疾患の歴史的な経緯や概念を比較し,関連研究論文や自験例の総括から,住環境との因果関係,室内の揮発性有機化合物と症状に関する量-反応関係,症状や症状の再現性,病態・発症機序の違いなどから,両疾患は明確に区別される。化学物質過敏症の発症には,社会心理学的要因が関与し,心因性や精神科疾患の関与が深いと考えられる。シックハウス症候群の定義を,「住環境による健康障害である」とした。
著者
堤 敦子 田中 宏樹 小野 雄治 梅田(戸上) 久美 梅田 幸嗣 磯田 憲一 波部 幸司 西川 政勝 水谷 仁
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.486-492, 2016

乾燥肌成人女性ボランティアを対象に,新規低刺激性全身洗浄料(nachu 高保湿ボディソープ:ダスキン)と従来品(うるおいボディソープ:ダスキン)を用い,各群15名の二重盲検による4週間の二群並行試験を行った。前腕皮膚の角層水分量,経表皮水分蒸散量に加え,使用感のアンケートと皮膚科専門医による問診・視診で評価した。結果:角層水分量にて両手共に改善傾向が認められ,統計学的には全被験者では左前腕,支給タオル使用者のみでは右前腕で有意な改善が確認され,角層水分量変化量の群間比較も改善をみた。なお,試験期間中に両洗浄剤に起因する有害事象は確認されなかった。以上より,新規洗浄剤が従来品に比し高い保湿性を持つことが考えられた。(皮膚の科学,15: 486-492, 2016)
著者
杉浦 啓二 杉浦 真理子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.120-125, 2008

17歳,高校生。アトピー性皮膚炎で通院加療中,皮疹の悪化を繰り返していた。昼食に唐揚げを摂取した後の体育授業中に蕁麻疹を生じ,痒みのため掻破し,アトピー性皮膚炎が悪化していた。血液検査,経過,誘発試験より,唐揚げ粉による食物依存性運動誘発アナフイラキシー(FDEIA)と診断した。唐揚げ摂取後2時間は運動しないよう指導したところ,蕁麻疹は消失し皮疹は軽快した。その後,調理実習の際,両手の皮疹とアトピー性皮膚炎の悪化を生じていた。パッチテスト結果より遅延型ラテックスアレルギーと診断した。調理の際,ゴム手袋の使用を中止するよう指導し,両手の皮疹及びアトピー性皮膚炎は軽快した。
著者
岩月 啓氏 大野 貴司 山崎 修
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.5, no.Suppl.7, pp.B29-B32, 2006 (Released:2011-03-11)
参考文献数
16

アトピー性皮膚炎の増悪因子の一つとして黄色ブドウ球菌は重要である。黄色ブドウ球菌表面のタイコ酸はTh2型免疫応答へシフトさせ,protein Aは表皮角化細胞からIL-18を持続的に産生させる。Enterotoxin A(SEA)とB(SEB)は,正常表皮角化細胞にICAM-1 やHLA-DRを発現させる。また,アトピー性皮膚炎患者の半数以上はSEAまたはSEBの両方あるいはいずれか一方に対するIgE型抗体を有する。SEBの経表皮的感作によって真皮に好酸球や単核球細胞浸潤を誘導でき,Th2型サイトカインであるIL-4 mRNA発現を起こすが,Th1型サイトカインのIFN-γは発現しない。最近,スーパー抗原によって制御T細胞(Treg)の機能である抑制効果が失われることが示された。黄色ブドウ球菌はその菌体成分や外毒素によってアトピー性皮膚炎を増悪させる。しかし,皮膚に定着している黄色ブドウ球菌を完全に除菌し,無菌状態に保つことはできない。角層内でバイオフィルムに包まれて静止期にあるような定着(colonization)した黄色ブドウ球菌に対しては,抗菌療法も消毒も十分な効果発現は期待できない。皮膚を清潔に保ち,適切なアトピー性皮膚炎治療を実施することにより,黄色ブドウ球菌を増えすぎないようにコントロールして,正常細菌叢と仲良くするストラテジーが理想的と思われる。
著者
髙山 恵律子 上村 義季 近藤 淳 吉川 大和 瀬戸 英伸
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.422-426, 2017

8歳,男児。マイコプラズマ感染によると考えられた Stevens-Johnson 症候群を発症した。高熱と咳嗽を伴い,皮膚の紅斑と水疱はごく少数であったが,眼,口唇・口腔,陰部の粘膜症状が重症で2度のステロイドパルス療法および免疫グロブリン投与を要した。翌年,マイコプラズマに再び感染した。その際は咳嗽に続き高熱と,全身に猩紅熱様の紅斑を生じたが,粘膜症状はごくわずかで,ステロイド外用のみで速やかに軽快した。マイコプラズマの再感染時,Stevens-Johnson 症候群や多形紅斑を再発した報告は少数あるが,本例のように表現型が異なる皮膚粘膜症状を呈した報告は過去に見出せなかった。ただしマイコプラズマ感染による皮膚粘膜症状は多彩であり,マイコプラズマ感染と因果関係が広く知られた症状と異なる場合や,皮膚粘膜症状が複数回生じた場合,上気道症状を伴わない場合等は,マイコプラズマ感染の検索が見落とされやすく注意が必要である。マイコプラズマ感染に伴う皮膚粘膜症状はおもに宿主免疫応答により生じるといわれるが,加えて遺伝的要因,菌株要因など多要因の関与が推察された。(皮膚の科学,16: 422-426, 2017)
著者
横関 博雄
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.14, no.23, pp.S25-28, 2015

近年、スギ花粉症患者に呼吸器症状、消化器症状、咽頭症状、発熱なども見られることが良く知られスギ花粉症は全身性疾患の一つと考えられている。また、スギ花粉症の患者に合併してスギ花粉が皮膚に接触することが原因と思われるスギ花粉皮膚炎と呼ばれている皮膚症状が見られることがある。このスギ花粉皮膚炎は飛散するスギ花粉抗原の皮膚への接触による空気伝搬性接触皮膚炎(airborne contact dermatitis)の一つと考えられてきている。花粉皮膚炎はスギの飛散する2月から4月までだけではなく10月から12月までの秋にも発症する。秋に発症する花粉皮膚炎はスギ花粉による皮膚炎とブタクサ、ヨモギ花粉による秋花粉皮膚炎である。今回、スギ花粉皮膚炎の臨床的特徴、発症機序、治療法、予防法、他のアレルギー性接触皮膚炎などとの鑑別方法に関して述べたい。治療はマスク、眼鏡、マフラーなどでスギ花粉が皮膚に接触することを予防するとともに、スギ花粉症に準じて非鎮静性の第2世代の抗ヒスタミン薬の内服が必要である。また、スギ抗原が皮膚内に入るのを予防するために、角層のバリア機能を保つスキンケアも必要不可欠である。春先に生じる顔が赤くなる皮膚炎には化粧、洗剤、毛染めなどによるアレルギー性接触皮膚炎以外にスギ花粉皮膚炎があることを念頭に置いて診療する必要がある。(皮膚の科学,増23: 25-28, 2015)
著者
谷岡 未樹 松永 佳世子 秋田 浩孝 片山 一朗 乾 重樹 石井 正光 小林 裕美 相場 節也 菊地 克子 石川 治 永井 弥生 照井 正 高柳 たかね 古江 増隆 吹譯 紀子 加藤 敦子 山﨑 貞男 宮地 良樹
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.170-182, 2011 (Released:2012-10-23)
参考文献数
8
被引用文献数
2

顔面に尋常性ざ瘡のある女性患者を対象に,低刺激性・低アレルギー性メーキャップ化粧品dプログラム®スムースアップファンデーション(パウダリー),スムースアップファンデーション(リキッド),スムースアップフェースパウダー(おしろい)の安全性を評価することを目的とする4週間の使用試験を実施した。解析対象例(85例)における副作用発現率はパウダリー2.1%,リキッド0%,おしろい0%で,副作用の症状は軽微であった。試験開始時と比較した終了時におけるざ瘡の炎症性皮疹(紅色丘疹,膿疱)および非炎症性皮疹(面皰)数は有意に減少した。Dermatology Life Quality Index を用いた生活の質の評価は「総合」「症状・感情」「レジャー」のスコアが有意に改善された。Visual Analogue Scal (VAS) による顔面の皮膚状態に関する満足度も有意に上昇した。以上の結果より,本試験試料の低刺激性・低アレルギー性メーキャップ化粧品は女性の尋常性ざ瘡患者が安全にかつざ瘡を悪化させることなく使用することができるだけでなく,生活の質を改善すると結論した。(皮膚の科学,10: 170-182, 2011)
著者
高田 香織 飯塚 香織 澤本 学 熊本 貴之 磯貝 理恵子 山田 秀和
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.9, no.6, pp.541-544, 2010 (Released:2011-12-26)
参考文献数
18

29歳,男性。初診の2ヶ月前から上肢に痒みを伴う皮疹が出現し,徐々に拡大してきたため当院を受診した。6ヶ月前からチンチラを飼い始め,同じ頃にチンチラに脱毛斑が出現した。左前腕に母指頭大の鱗屑を伴った紅斑および丘疹が見られ,KOH 直接鏡検にて真菌陽性,体部白癬と診断した。スライド培養では円形の小分生子があり,ぶどう状を呈していた。また,らせん器官も認めたため分離菌を Trichophyton mentagrophytes と同定した。PCR 法では Arthroderma vanbreuseghemii と同定された。チンチラも動物病院を受診し,鏡検にて白癬と診断された。治療はテルビナフィン外用にて皮疹の軽快を認めた。今後チンチラを含めたげっ歯類の飼育の増加に伴ない真菌感染が増加することが考えられる。(皮膚の科学,9: 541-544, 2010)
著者
柴田 史子 杉浦 久嗣 上原 正巳
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.150-155, 2004 (Released:2011-07-13)
参考文献数
10
被引用文献数
1

アトピー性皮膚炎患者でしばしばみられる冬季の皮膚の乾燥が洗濯洗剤の使用を避けることで改善されるかを検討した。対象:冬季に肩周囲の皮膚の乾燥状態が増強するアトピー性皮膚炎軽症例26名。方法:電解水洗浄型洗濯機(SANYO ASW-HB700)の洗剤ゼロコースで洗濯した衣類を2週間着用し,その前後で皮膚症状の変化を調べた。結果:洗濯洗剤の使用中止により皮膚の乾燥は26名中24名(約90%),乾燥性湿疹は26例中16例(約60%)で改善した。衣類に残留する洗濯洗剤が冬季に被服部にみられるアトピー性皮膚炎の乾燥皮膚の一因であることが示唆された。
著者
船坂 陽子 田村 真吾 薄木 晶子 荒木 敬司 大橋 明子 市橋 正光
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.138-143, 2002

2000年10月1日から2000年11月30日までの2ヵ月間に神戸大学医学部附属病院皮膚科外来を受診した女性の尋常性痙瘡患者22例に対し, 「ノブ (R) ACスキンケアシリーズ」の使用試験を実施した。<BR>本製品は, Propionibacterium acnesに対して抗菌作用を有する感光素201号, 抗炎症効果が知られるグリチルリチン酸ジカリウムを配合するなどしたスキンケアシリーズで, 化粧落とし, 洗顔料, 化粧水および保湿ジェルの4品からなる化粧品である。2週間の使用試験において副作用例はなく, 全症例22例中21例に安全性を認めた。1例において, 洗顔料の使用部位に本試験品とは因果関係不明の紅色丘疹を認めたが, 使用中止により症状は軽快した。<BR>これらの結果から, 本試験に供した「ノブ<SUP> &reg; </SUP>ACスキンケアシリーズ」は痙瘡患者に対しても安全に使用できるスキンケア製品と考えられる。
著者
片桐 一元 倉橋 理絵子 波多野 豊
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.8, no.Suppl.12, pp.B690-B694, 2009 (Released:2012-04-18)
参考文献数
9

慢性ストレスにより皮膚バリア機能回復障害が誘導され,glucocorticoidsがそのメディエーターとされている。今回,我々は,急性ストレスによる皮膚バリア機能障害について解析を行った。12時間の過密環境での飼育ストレス負荷により,皮膚バリア機能の回復障害が生じた。あらかじめ機能的除神経を施したマウスでは,ストレスによる影響が消失した。さらに,サブスタンスPの皮内投与により皮膚バリア機能回復障害が生じた。以上の結果より,急性ストレスでは末梢神経機能を通じて皮膚バリア機能回復障害が誘導されることが明らかとなり,サブスタンスPが有力なそのメディエーターであると予想される。