著者
野田 智子 稲垣 千絵 柴垣 亮 池田 佳弘 西藤 由美 岸本 三郎
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.148-151, 2008

32歳,女性。初診の1年8ヵ月前の第2子妊娠時,近医にて疱疹状膿痂疹と診断された。今回,第3子妊娠約8ヵ月頃より体幹,四肢に紅斑,膿疱が出現。疱疹状膿痂疹の再発と診断し,活性型ビタミンD3軟膏及びステロイド外用剤を行い,出産後皮疹は軽快した。発熱等全身症状はなかった。
著者
貞政 裕子 池上 望 康井 真帆 矢口 均 比留間 政太郎 鶴野 寿一 篠永 哲
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.249-252, 2008

69歳,女性。平成19年2月に中米のコスタリカ共和国へ旅行し,帰国後より左側腹部に小結節が出現し徐々に大きくなった。4月3日近医で粉瘤の診断のもと切開術を施行され,翌日同部からハエ幼虫が圧出された。幼虫はヒトヒフバエ(<I>Dermatobia hominis</I>)と同定された。中南米からの帰国者に粉瘤様の紅色結節をみた場合は本症も考慮する必要があると思われる。
著者
藤村 響男
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.7, no.Suppl.10, pp.A38-A44, 2008 (Released:2011-05-18)
参考文献数
10

ADは,免疫学的にはTh2ドミナントな疾患で,抗原に対するTh1/Th2応答の変動によって臨床経過が異なる。我々は以前,難治性AD患者が水痘や麻疹感染後にAD症状が数ヶ月にわたって改善する現象を解析し,この軽快現象は感染ウィルスを排除するために皮疹部において産生されたIL-12が,ダニ抗原応答性Th2細胞に作用しサイトカイン産生パターンがTh2タイプからTh1タイプにスイッチしたためと結論づけた(J Allergy Clin Immunol;100:274-282,1997)。これらを背景として今回,コンビ株式会社機能性食品事業部の協力を得てIL-12産生刺激能の強い乳酸菌株を選定し,動物実験と臨床試験によりアレルギー疾患に対する乳酸菌の効果を検討した。
著者
中内 恵美 鷲尾 健 三木 康子 正木 太朗 錦織 千佳子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.470-475, 2016

50歳代,男性。糖尿病性腎症による腎不全にて10年来血液透析を施行されていた。2015年春頃より左第2,3指,右第1,4趾に壊死の付着した潰瘍が出現し,悪化したため前医より当科に紹介受診となり,同年6月に精査加療目的に入院した。単純X線検査などからカルシフィラキシスを疑い,Ca・P 値の内科的調整を行った上で局所のデブリドマンを行ったところ指趾潰瘍が改善したため同年8月に退院し外来加療を継続した。しかし,同年冬頃から再度右第4趾の壊死の悪化,および第3趾潰瘍が新生したため2016年初頭に再入院となった。入院時,足趾の壊死に加えて両下腿伸側にそう痒性の角化を伴った粟粒大から大豆大までの紅色丘疹ないし小結節が多発していた。右第3趾からの生検による病理組織学的所見からカルシフィラキシスと診断した。また両下腿伸側の結節からは変性した弾性線維の経表皮的排出像があり,長年の糖尿病や透析に伴う acquired perforating dermatosis と考えた。カルシフィラキシスの治療に対してチオ硫酸ナトリウムの点滴静注を行ったところ,両下腿の角化性局面も平坦化して改善を認めた。チオ硫酸ナトリウムは組織に沈着している不溶物を可溶化し,さらに炎症を抑制することで acquired perforating dermatosis をも改善させたと考えた。(皮膚の科学,15: 470-475, 2016)
著者
加野 尚生 冨高 晶子 鈴木 加余子 赤松 浩彦 松永 佳世子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.232-236, 2002

台風が通過した翌日に経験したマムシ咬傷の2例を報告した。症例1: 65歳, 男性。畑作業中, 右第3指をマムシに咬まれ受診した。減張切開し, マムシ抗毒素ウマ血清、ステロイド剤点滴静注を主体に治療し軽快した。症例2: 64歳, 男性。蜂の巣を採取中, 道端に腰をおろした瞬間, マムシに左第2指を咬まれ受診した。マムシ抗毒素ウマ血清皮内テストが強陽性であったため抗毒素は使用せず, ステロイド剤点滴静注を主体に治療し軽快した。
著者
松下 記代美 山崎 文恵 前田 晃 荒金 兆典 川田 暁 手塚 正
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.201-205, 2003

有棘細胞癌は一旦化学療法や放射線療法に抵抗性を獲得すると治療に難渋する場合が多く,効果的な治療法の開発が求められている。この観点から言うと,少なくとも対癌免疫能の再活性化は治療抵抗性の癌に罹患している患者に残された最後の可能性の一つである。そこで我々は浸潤性有棘細胞癌に対しインターロイキン2(IL-2)の腫瘍内投与を行い良好な結果を得たのでここに報告する。患者75歳,女性。右下肢の再発性の多発性有棘細胞癌に対し10日間IL-2の局所投与を行った。IL-2の投与により腫瘍のサイズは著明に縮小し,免疫染色を行ったところ腫瘍周囲にCD1a陽性細胞の浸潤,CD8陽性T細胞優位の細胞浸潤を認め,<I>in situ</I> TUNEL染色上腫瘍細胞のアポトーシスを認めた。以上の結果より治療抵抗性の皮膚SCCに対しIL-2腫瘍内局注は有効であることが示唆された。
著者
松下 記代美 山崎 文恵 前田 晃 荒金 兆典 川田 暁 手塚 正
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.201-205, 2003

有棘細胞癌は一旦化学療法や放射線療法に抵抗性を獲得すると治療に難渋する場合が多く,効果的な治療法の開発が求められている。この観点から言うと,少なくとも対癌免疫能の再活性化は治療抵抗性の癌に罹患している患者に残された最後の可能性の一つである。そこで我々は浸潤性有棘細胞癌に対しインターロイキン2(IL-2)の腫瘍内投与を行い良好な結果を得たのでここに報告する。患者75歳,女性。右下肢の再発性の多発性有棘細胞癌に対し10日間IL-2の局所投与を行った。IL-2の投与により腫瘍のサイズは著明に縮小し,免疫染色を行ったところ腫瘍周囲にCD1a陽性細胞の浸潤,CD8陽性T細胞優位の細胞浸潤を認め,<I>in situ</I> TUNEL染色上腫瘍細胞のアポトーシスを認めた。以上の結果より治療抵抗性の皮膚SCCに対しIL-2腫瘍内局注は有効であることが示唆された。
著者
土山 真司 鷲尾 健 高砂 恵美 正木 太郎 福永 淳 小川 聡 斉藤 雅也 矢野 嘉彦 錦織 千佳子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.51-56, 2016 (Released:2016-06-02)
参考文献数
13

40歳代,女性。幼少時期よりアトピー性皮膚炎と診断され加療を受けてきたが,最近では治療を自己中断していた。2015年春頃より全身のそう痒が増悪したため近医より当科に紹介受診となり,精査加療目的に入院した。季節の変わり目に皮疹が悪化するとの訴えがあり,うつ熱症状もあったため発汗機能異常を疑い全身温熱発汗テストを施行したところ顔面や体幹部の発汗低下を認めた。齲歯も複数あり,外分泌腺機能低下を疑い精査を進めたところ,抗 SS-A,SS-B 抗体陽性であり小唾液腺の導管に多数の細胞浸潤を認めシェーグレン症候群との診断に至った。アトピー性皮膚炎に対して外用治療を開始したところ,皮膚所見や好酸球の減少とは逆に肝逸脱酵素の数値が上昇した。シェーグレン症候群合併例のため,他の自己免疫疾患の併発についても精査したところ原発性胆汁性肝硬変が判明した。アトピー性皮膚炎では一般的に発汗機能異常が認められるが,発汗低下が著明な場合はシェーグレン症候群の合併も考慮に入れる必要があると考えられた。またアトピー性皮膚炎治療中に原発性胆汁性肝硬変に関連した肝逸脱酵素の数値が上昇した原因につき,Th1/Th2/Th17 バランスを含めて考察した。(皮膚の科学,15: 51-56, 2016)
著者
東 禹彦
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.5, no.6, pp.456-460, 2006

陥入爪の治療として行ってはならない治療法は楔形切除法,フェノール法および爪甲側縁先端を切除する方法である。形状記憶合金板法,B/Sブレイス法,超弾性ワイヤー法は柔軟性のある巻き爪に対しては有用な治療法であるが,深爪で起きる陥入爪に対しては有用性が低い。VHO法は柔軟性のある巻き爪や爪甲側縁の長い軽症の陥入爪に対しては有用である。一方,アクリル人工爪療法は全ての症例,すなわち重症の巻き爪や陥入爪に対しても有用である。
著者
立林 めぐ美 大磯 直毅 川田 暁
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.14, no.6, pp.403-410, 2015

非ステロイド性抗炎症薬含有テープ剤などの貼付剤は皮膚と密着し,主剤の皮膚への浸透性を高めて効果を発揮するが,各種成分へのアレルギー感作が成立し,アレルギー性接触皮膚炎や光アレルギー性接触皮膚炎が生じうる。貼付により皮膚バリア機能が低下すると,アレルゲンの皮膚内への浸透性が高まり,感作がより生じやすくなる。しかしながら,貼付剤による皮膚バリア機能におよぼす影響はほとんど評価されていない。20歳以上の本研究に同意が得られた健常人ボランティア20例を対象にロキソプロフェンナトリウム水和物貼付剤とケトプロフェン2%貼付剤を7日間連続貼付し,貼付終了直後および貼付終了7日後における皮膚バリア機能に及ぼす影響を検討した。評価項目として経皮水分蒸散量(TEWL: transepidermal water loss)と角質水分量(capacitance)を測定した。角質水分量に貼付剤間の差は認められなかった。ケトプロフェン2%貼付剤群では,貼付終了直後と貼付終了7日後の経皮水分蒸散量が優位に高値を示した。テープ剤の各種成分の選択と構成比の最適化を図り,皮膚バリア機能が低下しない,もしくは低下しにくい貼付剤の開発と普及が望まれる。(皮膚の科学,14: 403-410, 2015)
著者
東 禹彦
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.6, no.6, pp.649-652, 2007 (Released:2010-12-06)
参考文献数
8

第1回目はトラネキサム酸5%含有クリームとトラネキサム酸0.5%含有クリームの肝斑に対する効果を二重盲検,群間比較試験で行なった。やや有用以上の有用率は両群とも70%以上であった。第2回目はトラネキサム酸5%含有クリームとその基剤を対照として,肝斑に対する効果を二重盲検,群間比較試験で行なった。やや有用以上の有効率はトラネキサム酸5%含有クリームが54%,対照のクリーム基剤が48%で両群間に差はなかった。しかし,重症度による層別解析を行ったところ重症例ではトラネキサム酸5%クリーム外用群(7例)の改善率が85.7%で,対照クリーム外用群(10例)の改善率は30.0%であった。U検定を行ったところ有意差を認めた。
著者
五木田 麻里 山田 陽三 葉 乃彰 藤田 博己 夏秋 優
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.186-190, 2017

60歳代,女性。発症の20日前に淡路島北部にて墓掃除,発症の10日前に六甲山南側の山麓部にて木の剪定作業を行った。8月中旬より発熱,全身の皮疹が出現したため,当科を受診した。初診時,体幹,四肢を中心に淡い紅斑が多発し,手掌や足底にも紅斑を認めた。また,下腹部に2ヶ所の刺し口を認めた。検査所見では白血球増加,血小板低下,CRP 高値,肝障害,CK 上昇を認め,ペア血清による Rickettsia japonica 抗体価の有意な上昇を認めたことより日本紅斑熱と診断した。ミノサイクリンの投与により皮疹は軽快したが,経過中に後頸部痛と四肢運動感覚障害が出現し,精査の結果,無菌性髄膜炎,多発単神経炎と診断した。その後,アジスロマイシンとシプロフロキサシンの投与でこれらの神経症状は軽快した。日本紅斑熱に神経障害を合併した例は自験例以外に5例報告があり,全例無菌性髄膜炎を認めたが多発単神経炎の合併は自験例のみであった。(皮膚の科学,16: 186-190, 2017)
著者
塩原 彩加 尾藤 三佳 服部 佐代子 坂元 花景 小西 啓介
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.63-67, 2016 (Released:2016-06-02)
参考文献数
13

40歳代,女性。SLE のためプレドニゾロン 13mg を内服中であった。臀部の小水疱を主訴に当科を受診した。帯状疱疹の診断で入院し,アシクロビル 250mg×3回/day 点滴を開始した。自覚はないが残尿 750ml があり,尿検査では膿尿を認めた。セフジニルの内服および導尿を開始したが,入院12日目,38度台の発熱,血圧低下を生じ,尿路感染による敗血症性ショックと診断した。尿培養で緑膿菌を認めたため,セフタジジム投与を開始し,感染は落ち着いたが尿バルーンは留置したまま退院となった。腰仙髄領域の帯状疱疹では残尿の有無に注意し,経時的に残尿測定を行う必要がある。そして残尿量が多い場合には尿路感染への注意が必要である。(皮膚の科学,15: 63-67, 2016)
著者
西嶋 攝子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.3, no.6, pp.622-627, 2004 (Released:2011-11-07)
参考文献数
1

薬物療法ではクリンダマイシンの外用剤と合成レチノイド剤であるアダパレンについて解説した。理学療法ではケミカルピーリングについて我々の実験成績を中心にニキビに対する効果を検討した。今回の講演内容の多くはすでに「皮膚の科学」にトピックスとして掲載ずみである。
著者
遠藤 英樹 大磯 直毅 川田 暁 黒田 啓 多島 新吾
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.360-366, 2006 (Released:2011-02-18)
参考文献数
8

後天性掌蹠角化症患者30例を対象として,活性型ビタミンD3外用薬であるマキサカルシトール(オキサロール®)25μg/g軟膏を1日2回8週間外用し,有効性と安全性を検討した。(1)皮膚症状の紅斑,角化・鱗屑,亀裂について4週後と8週後に投与前に比して有意な改善が認められた(p‹0.05)。(2)中等度改善以上の有効率は4週後73.1(19/26)%,8週後74.1(20/27)%であった。(3)局所刺激を含む有害事象は認められなかった。(4)患者印象の好ましい以上は4週後80.8(21/26)%,8週後85.2(23/27)%であった。(5)有用度の有用以上は76.7(23/30)%であった。以上の点より活性型ビタミンD3外用薬であるマキサカルシトール25μg/g軟膏は後天性掌蹠角化症に対して有用性の高い薬剤である事が示唆された。
著者
小澤 麻紀 田上 八朗
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.1, no.6, pp.418-423, 2002 (Released:2010-08-25)
参考文献数
10

アトピー性皮膚炎の患者20例を対象に, 黄色ブドウ球菌属等に対する抗菌作用を有するb-ツヤプリン (ヒノキチオール) 配合保湿クリーム (ヒノキAPクリーム) の有用性と安全性を検討した。ほとんどの症例で乾燥症状の改善を認めた。協力が得られた11症例についてはヒノキAPクリームと基剤のみの塗り分け試験を行い, 使用前後の角層機能と黄色ブドウ球菌数を測定した。角層機能は, どちらの側とも使用後に回復した。黄色ブドウ球菌数はヒノキAPクリーム使用側で減少する傾向がみられた。本試験品に起因する副作用は認められなかった。以上より, ヒノキAPクリームは保湿効果が高く安全性に優れ, 黄色ブドウ球菌が増悪因子のひとつであるとされるアトピー性皮膚炎の治療補助剤として有用であると考える。(皮膚の科学, 1: 418-423, 2002)
著者
立林 めぐ美 川田 暁 松尾 仁子 中野 創
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.382-386, 2014 (Released:2015-02-13)
参考文献数
18

65歳,男性。20歳頃より多量の飲酒歴があった。初診の約6ヶ月前より露光部に水疱形成を繰り返すようになり,当科を紹介され受診した。初診時,顔面に色素沈着,両手背に水疱・びらん・痂皮がみられた。病理組織学的所見は表皮下水疱で,PAS 染色にて真皮上中層の血管壁に PAS 陽性物質の沈着を認めた。臨床検査では,軽度の肝機能障害と尿中ウロポルフィリンの著明な上昇を認めた。HCV 抗体,HBs 抗原,HBs 抗体は陰性であった。患者末梢血を用いて遺伝子検索を行ったが,uroporphyrinogen decarboxylase 遺伝子,hemochromatosis 遺伝子の変異は同定されなかった。後天性の晩発性皮膚ポルフィリン症と診断し,禁酒を指導した。さらにプロトポルフィリンIXの吸収波長の最大のピークが 405~410nm にあることから,405~450nm の波長域の光を吸収するように作製したファンデーション剤を使用させたところ,現在水疱の新生はみられていない。本症においては可視光を防御するファンデーション剤の使用が有用と考えられた。(皮膚の科学,13: 382-386, 2014)
著者
大橋 苑子 荒井 利恵 政次 朝子 太田 深雪 堀口 裕治
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.164-167, 2009 (Released:2010-08-22)
参考文献数
12

62歳,男性。5年来の掌蹠の汗疱状皮膚炎が強いそう痒を伴って全身に拡大した。初診時,躯幹に紅斑と丘疹,掻破によるびらんと小さな潰瘍がみられ,四肢の中枢側には苔癬化した局面と痒疹様の皮疹がみられた。大きな水疱はなかった。掌蹠には汗疱様の小水疱や血疱,および小型の水疱やびらん面が分布していた。組織学的には陳旧性の水疱蓋下面にghost basal cell(核の抜けた好酸性に染色される基底細胞)が配列し,再生表皮には表皮内のように見えるが複雑な経路で真皮に連絡する新しい水疱がみられた。真皮上層には好酸球の強い浸潤がみられた。直接蛍光抗体法により表皮基底膜部にはIgGとC3の線状の沈着がみられた。またELISA法では患者血清中に抗BP180抗体が確認された(インデックス値320)。異汗性類天疱瘡が全身に拡大したものと診断し,プレドニゾロン(初期量30mg/日),ミノサイクリン(150mg/日)およびニコチン酸アミド(900mg/日)の併用療法を開始したところ,皮疹は数日の経過で消退した。本症例は異汗性類天疱瘡が何らかの機序で増悪し,全身に拡大したものと考えた。
著者
宮地 良樹 Mizzi Fabienne 三田 哲也 白 立岩 生駒 晃彦
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.278-293, 2016 (Released:2016-10-06)
参考文献数
12

目的:本治験は,各単剤と比べたアダパレン0.1%/過酸化ベンゾイル2.5%配合ゲルの有効性および安全性・忍容性を,日本人尋常性ざ瘡患者を対象に12週間の治療において検討することを目的として施行された。方法:本治験は,多施設共同,無作為化,二重盲検,実薬対照,並行群間比較の第III相臨床試験で,計417例の被験者が参加し,治験薬は12週間,1日1回,顔面全体に塗布された。総皮疹数の最終来院日の減少率を有効性主要評価項目とした。安全性・忍容性は有害事象や局所刺激性評価などの指標を用いて評価した。結果:本配合ゲルの総皮疹数に対する有効性は高かった(減少率の中央値:82.7%)。単剤に対する優越性は,アダパレン0.1%ゲル(68.6%)に対しては統計学的に有意(p<0.001)であった一方,過酸化ベンゾイル2.5%ゲル(81.6%)に対しては有意でなかった。重症や重篤な有害事象は報告されなかった。局所刺激症状を経験した被験者の割合は,配合ゲルがアダパレン0.1%ゲルや過酸化ベンゾイル2.5%ゲルよりも多かったが,いずれの群でもその症状はほとんどが軽症か中等症であった。結論:本治験により,本配合ゲルの日本人尋常性ざ瘡患者における高い有効性と安全性・忍容性が明らかになった。この結果はこれまでの海外データに矛盾せず,本配合ゲルの尋常性ざ瘡治療における良好なリスク・ベネフィット比を支持するものである。(皮膚の科学,15: 278-293, 2016)