著者
目時 弘仁
出版者
東北大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

女性における出産イベントが血圧に及ぼす影響を検討した。外来血圧では、経産婦に比べ初産婦で高値を示し、先行研究と一致した。しかしながら、家庭血圧では、初産婦と経産婦で差はなく、非医療環境下での血圧が初産婦・経産婦で差がないという先行研究とも一致した。外来血圧のみに基づく妊婦の血圧評価では、特に初産婦の血圧を過大評価する可能性があり、家庭血圧などの非医療環境下での血圧を考慮した血圧評価の必要性が示唆された。
著者
小松 孝太郎
出版者
信州大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究は,証明の学習状況を改善するために,数学的探究において「操作的証明」(action proof)を活用する活動に着目し,その児童・生徒の活動を促進する方法を明らかにしようとするものである。本研究では,数学教育学の文献解釈,題材の数学的な分析,そして小学五年生及び中学三年生を対象とした教授実験の実施とその分析から,児童・生徒の活動を促進する教材を開発するための指針を得た。
著者
江頭 良明
出版者
同志社大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究課題では、自閉症患者から見つかったシナプス接着因子neuroliginの1アミノ酸変異を再現したノックインマウス、及び野生型マウスにおいてRNA干渉によりneuroliginをノックダウンした神経細胞で、シナプス機能を電気生理学的に解析した。体性感覚野での解析から、neuroliginの点変異とノックダウンのいずれにおいても、興奮性シナプス入力と抑制性シナプス入力のバランスが崩れることが明らかとなった。また、海馬での解析からは、ノックインマウスにおいて長期増強現象の後期相が選択的に消失していることが明らかとなった。
著者
影山 康徳
出版者
浜松大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

関節リウマチ(RA)の病像の首座は関節滑膜にあることから、RAの治療において滑膜切除術が行われている。今回、人体への侵襲が比較的少ない治療法である光線力学療法(フォトダイナミックセラピー)(PDT)をRA患者の滑膜切除へ応用することを目指して基礎研究を行った。PDTを行う際の光感受性物質としてATX-S10(Na)、フォトフリン、5-aminolevurinic acid(5-ALA)を使用し、RA培養滑膜細胞にPDTを行ったところ、すべての光感受性物質においてPDT効果を認めた。RAの動物モデルであるマウスII型コラーゲン関節炎モデルにおいて、フォトフリン、5-ALAを投与した後、2~3時間で関節に405 nmのレーザー光を照射し、蛍光を測定した結果、関節組織に蛍光は見られたものの、関節炎を発症した部位と発症していない部位における蛍光強度に明らかな差が見られなかった。従って前述の光感受性物質の使用における動物実験では、PDTを滑膜切除に応用するにはまだ解決すべき問題点があると考えられた。
著者
山田 豊和
出版者
千葉大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

今日の情報社会を支えているのは、ナノスケールの微小な磁石である。我々の身の回りのパソコンをはじめ、情報の記憶・書き込み・読み込みは、磁石のN極S極の向きを利用している。磁石の向きを読み取るために、磁気ヘッドを使う。磁気ヘッドは、2つの小さな磁石の間に金属などの無機物は挟んだものである。ひとつの磁石の向きは常に固定であり、他方は検出する磁石の向きにより、その方向を変える。この2つの磁石の間に電流を流しておくと、2つの磁石の向きが平行な場合電流は多く流れ、反平行では減少する。この効果は巨大磁気抵抗(GMR)効果と呼ばれる。これまで、磁気ヘッドは無機物で作られてきた。これに代わる新たな物質として有機物がある。我々は、インクなどの色素分子として広く普及・使用されてきているフタロシアニン分子を2つの小さな磁石の間にいれ、さらに単一分子を使用することで1ナノメートル(十億分の1メートル)の大きさのGMRヘッドを作成した。有機分子と磁石との電子スピン相関の解明を、スピン偏極走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて行った。平成22年度は、コバルトナノ磁石の上につけた単一フタロシアニン分子(H2Pc)に、STM磁性探針(Co薄膜をコートしたW探針)を接触させ、この2つのコバルト磁石の向きが平行な場合と、反平行な場合の電子伝導測定を行ったところ、60%のGMR比を得た。有機分子の無い場合に比べて、1ケタ大きい値であった。有機分子を利用することで、無機物には無い新たな特性の発現を確認した。研究と並行して、ドイツ・カールスルー工大学から千葉大学へのSTM装置の移動を完了した。鉄ウィスカ単結晶上のマンガン膜を新たな基板として使用する。これを用いることで、弱い外磁場で容易に磁化方向を反転できる。外磁場印加のためのコイル系の設置、また磁性探針の向きを制御するための回転機構の取り付け・改造を行った。
著者
鳥丸 猛
出版者
弘前大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

近年顕著に認められる急激な気候変動によって樹木個体群の死亡と加入パターンの間の不均衡(すなわち、非平衡状態)の程度は増大している。この現象により、これまで集団遺伝学が仮定してきた動的平衡にある個体群動態に基づく理論モデルでは樹木集団内の遺伝子動態を十分に予測できない可能性が考えられる。したがって、今後も急激な気候変動に曝されることが予想される森林群集の遺伝資源の保全のためには、自然現象の変動性を組み込んだより現実的な集団遺伝学モデルに基づく遺伝子動態の予測(すなわち、判断基準の提供)が課題となっている。本研究では、台風による撹乱を受けてきた鳥取県大山ブナ老齢林の森林群集を対象に個体群統計学的調査と遺伝分析から収集されるデータおよび気象データを用いて、非平衡状態にある個体群動態を基礎にした樹木集団の遺伝的構造の形成過程(遺伝子動態)を記述する集団遺伝学モデルを開発し、台風撹乱体制が森林群集の遺伝的多様性に及ぼす影響を予測する。本年度は、既設の固定調査区(面積4ha)内で0.5haサブプロットを設定し、ブナ林の主要構成樹種であるコミネカエデ、ハウチワカエデ、ブナの稚樹(樹高30cm以上、胸高直径5cm未満の幹)の毎木調査を行った。その結果、サブプロット内には、コミネカエデ、ハウチワカエデ、ブナの稚樹の幹密度(haあたり)は、それぞれ648本、1548本、3420本であった。また、マイクロサテライト遺伝マーカーによって遺伝子型を決定するために、毎木された稚樹から葉を採取した。以上のように、本年度は、個体群統計学と遺伝分析を実施するための研究基盤を確立した。
著者
中澤 篤史
出版者
一橋大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

日本固有のスポーツのあり方である運動部活動は、いかなる構造の中で存立している/してきたのか。本研究では、運動部活動の存立構造を明らかにするために、ボランティアとしての教師の積極性に注目し、なぜ教師が運動部活動へ積極的にかかわるのかを、質的・歴史的アプローチから明らかにすることを目的とした。質的アプローチからは、中学校運動部活動へのフィールドワークで得られたデータを下に、顧問教師の運動部活動への意味づけ方を考察した。歴史的アプローチからは、戦後から現在までの運動部活動そのものと顧問教師のかかわり方の変遷を考察した。
著者
林 真由美
出版者
愛知医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2008

地域の知的障がい者施設の職員を対象に、生活支援に関する冊子(教材)の送付と研修会の実施により、職員の支援行動の変化を調査した。冊子は全国の施設調査の結果に基づき作成した改訂版冊子を使用した。冊子を用いた行動変化は、既に生活支援に取り組む施設に効果は低かったが、支援を実施していない施設では取り組み状況は有意に増加した。また、多くの生活支援に取り組む施設では、冊子より研修会実施による効果が高かった。
著者
清川 泰志
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本年度に得られた成果の概要は以下の通りである1.警報フェロモン候補分子の絞り込み及び同定これまでの研究により確立した方法を用いて警報フェロモンを多数匹のドナーラットから放出させ、それを吸着剤(Tenax)に捕捉し、含まれる成分を3つに分画したところ、そのうち1つの画分においてのみフェロモン活性を有することが明らかとなった。次にその画分に含まれるメジャーピーク物質を全て揃えることで合成ブレンドサンプルを作製し、そのフェロモン活性を生物検定法により判定したところ、フェロモン活性は認められなかったため、警報フェロモン分子はマイナーピーク物質であることが明らかとなった。そのため上記画分をさらに3つに分画したところ、そのうちの1つにのみフェロモン活性が認められることが明らかとなった。現在、この画分に含まれている物質を分析しているところである。2.安寧フェロモン解析のための実験系の改良前年度に確立した安寧フェロモン評価系を用いて、安寧フェロモンに対する理解を深める目的で実験を行った。主嗅覚系で受容された安寧フェロモン情報は前嗅核へと伝達されることが示唆されているが、その後フェロモン情報が扁桃体へと機能的に伝達されているかは不明であった。そのため、前嗅核と扁桃体を非対称的に破壊することでこの問題を検討したところ、安寧フェロモン情報は前嗅核から同側の扁桃体へと機能的に伝達されることが明らかとなった。またトレーサーを用いることで、前嗅核が主嗅球からフェロモン情報を受け取っていることを解剖学的にも確認した。現在は、パートナー由来の匂い物質のみを提示することでこれまでと同様の現象を引き起こすことが可能であるかを検討することで、安寧フェロモン同定の基礎となる実験系を整備しているところである。
著者
阪本 公美子
出版者
宇都宮大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

タンザニア南東部の母系的社会では、離婚女性などの女性世帯主世帯やシングル・マザーが目立つが、彼女たちの脆弱性と自在性、コミュニティ内の相互扶助ネットワークの内包性について、質問票調査やライフ・ヒストリーの聞き取りから明らかにした。女性世帯主世帯は、夫婦世帯と比較すると食料生産が不足することが多いが、収入の有無では顕著な差はなく、若い未婚女性や離婚女性は商売、年配の寡婦の女性は(個人差は大きかったが)周囲による支援による生計戦略がみられた。他方、独立以前の母方居住の時代は男性が結婚前に婚労働をし、出産後、女性の判断で未婚の事例もあるのに対し、ウジャマー集村化した現在は、男性の判断によって未婚である事例が目立つ。
著者
志賀 永嗣
出版者
東北大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

炎症性腸疾患を対象としたGenome wide association study (GWAS)のメタ解析によって、NKX2. 3が潰瘍性大腸炎感受性遺伝子候補であることが示された。NKX2. 3が感受性遺伝子であることを確定するために(1)NKX2. 3遺伝子領域のTag SNPを用いて、日本人潰瘍性大腸炎と相関するハプロタイプを同定した。(2)同定したリスクハプロタイプは、潰瘍性大腸炎炎症局所において非リスクハプロタイプと比較し高発現していることが確認された。(3)NKX2. 3は少なくとも、血管内皮培養細胞にて発現していた。
著者
大谷 直輝
出版者
埼玉大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

本研究では、理論と方法論の両面から言語構造を動機づける認知的・談話的な基盤についての考察を行った。具体的には、大規模な言語コーパスを参照して、実際の使用文脈の中から現れる、英語の不変化詞の談話機能や文法機能を考察した。また、方法論の面では、言語の身体性や反意語間に見られる非対称性に注目した質的方法論と、文法的・意味的・談話的な要素のコーディングに基づく量的な方法論を融合させ、言語を経験的に分析するための手順を示した。
著者
赤江 雄一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

説教受容に対する説教執筆者の意識の問題に関連して、平成22年6月に名古屋大学で開催された第2回西洋中世学会大会の大会シンポジウム報告を行った。同報告は、査読を経て、論文として『西洋中世研究』誌上で刊行された。また、平成22年7月にスペイン・サラマンカで開催されたInternational Medieval Sermon Studies Society Symposium において本プロジェクトについて発表を行なった。