- 著者
 
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             清水 美知子
             
          
 
          
          
          - 出版者
 
          - 関西国際大学
 
          
          
          - 雑誌
 
          - 研究紀要 (ISSN:13455311)
 
          
          
          - 巻号頁・発行日
 
          - no.5, pp.91-110, 2004-03 
 
          
          
          
        
        
        
        本稿は,1950~60年代の日本における<女中>イメージの変容を,「家事サービス職業補導」「ホームヘルパー養成講習」という二つの事業に焦点をあてて考察するものである。第二次世界大戦後の混迷が落ち着きを見せるようになると,都市部では再び女中の供給が需要に追いつかない状況に陥った。そんな女中払底の対応策として労働省が打ち出したのが,家事技術者を養成して手不足の家庭に派遣するという事業である。1956年,東京・新宿に「家事サービス公共職業補導所」が開設された。同所は,未亡人等の女性を対象に短期間で家政婦や女中など家事サービス職業に必要な知識と技術を習得させる機関。いっぽう,1960年に始まった「ホームヘルパー養成講習」は,従業員家庭の主婦が出産・病気等の場合に,事業所から派遣される家事援助者を養成するプログラムである。いずれも,女中不足の緩和のみならず,就職が難しい中年女性の雇用を創出するねらいもあったらしい。これらの事業は,女中の職業的な地位を高めるとともに,"家事サービスは中年女性の仕事"というイメージを生み出した。かつて農村の娘たちの主要な働き口のひとつであった住み込み女中は,高度成長期に,家政婦やホームヘルパーといった中年女性の通勤職業にとって代わられたのである。