著者
武藤 久枝 平松 夕奈
出版者
岡崎女子大学・岡崎女子短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:09168400)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.15-25, 2004-03-25

人間福祉学科の一期生47名を対象として初めての介護実習に参加する動機づけを実習参加直前と直後において5段階評定尺度によって把握し、その後の学習に及ぼす影響を検討した。その結果、1)実習参加前では実習に対する不安感や緊張感を強く感じながらも学習意欲は高かった。2)実習後では良い介護を身につけたいとの学習意欲が高まったものの、実習時期が早くて事前準備が不十分としていた。3)実習前と後における共通内容の質問を比較した結果、とくに変化が大きかったのは実習は楽しかったことと自信がついた点であった。肯定的心構えの項目を中心にほとんどの項目で肯定的に変化していた。以上から、学生は実習経験を有意義に意味づけるよう変化した。今後の課題として、学生が自己の実習体験を肯定化して内在化していく過程をカリキュラム編成につなぐことである。
著者
小島 一夫
出版者
つくば国際大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13412078)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.73-85, 2008

本研究は,エリクソン(1959)の「アイデンティティ形成は,青年期に始まり終わると言うものではなく(中略)その大半が一生涯を通じて続く無意識的な発達プロセスである」の理論に基づいた生涯発達心理学の視点に立って,ライフサイクルの中で現役を引退し,キャリアトランジションすることが,あるアスリートにどのような意味を持ち,そして,どのような引退後の適応過程を辿ったかを元アスリートへのインタビューをもとにアイデンティティ再体制化の過程について豊田・中込(1996),豊田(1999)の仮説の検証と考察を(1)競技引退に伴うアイデンティティ再体制化のプロセス,(2)社会化予期と時間的展望について,(3)競技引退がその後の職業期危機に与えた影響,という3点に絞って行った。そこから以下の4つの点が推察された。(1)競技引退に伴うアイデンティティ再体制化のプロセスにおいては5つの過程がある。(2)社会化予期と時間的展望については事例により異なる。(3)競技引退がその後の職業期危機に与えた影響については,競技期間中におけるアスリートのアイデンティティ確立の心理・社会的背景(性差,投入の個人差,種目,競技実績,競技の知名度等)とトランジションに伴う社会化予期・時間的展望が密接に関係している。(4)アスリートのキャリアトラジションはアイデンティティを形成する過程の特殊性と相まって,その難しさがある。
著者
下橋 淳子 寺田 和子
出版者
駒沢女子大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02884844)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.1-6, 2003-03-03
被引用文献数
3

果実の抗酸化性、調理加工中の加熱や成分間反応で生成する褐変物質などの抗酸化性への影響を知るために、DPPHラジカル消去能を測定し、次のような結果を得た。1. 果実のDPPHラジカル消去能は、キウイフルーツやアメリカンチェリー、イチゴなどで果汁1ml当たり1400nmTrolox相当量前後の値を示し、高い抗酸化性が示唆された。2. アントシアン系色素を含む果実にはDPPHラジカル消去能が高い傾向がみられたが、皮にアントシアン系色素を含むブドウでは、皮を除いた場合のラジカル消去能は低値であった。3. 抗酸化性が高く、果実に多く含まれているアスコルビン酸は、10分以内の加熱では加熱時間の違いによるDPPHラジカル消去能への影響が認められなかった。4. 調理加工過程における加熱は、DPPHラジカル消去能にほとんど影響を与えないことが示唆された。5. 調理加工過程におけるアミノカルボニル反応やカラメル化反応によって生成する褐変物質には非常に高いDPPHラジカル消去能が認められた。
著者
古山 和男
出版者
国立音楽大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02885492)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.89-100, 2007

日本語律文の「七五調」は、かな文字2音で構成される音節を1拍とする拍節リズムで詠じられる。この1拍を構成する2音は、音楽的な勢いにより時間の長短を生じる。これは「イネガル音符」と同じ現象である。この「イネガル音符」や「カダンス」に関わる、拍節の「ムーヴマン」という古典派以前の音楽概念を援用して考察するなら、「七五調」の「字余り」の意味とそれが許される条件、「四三調結句の忌避」の理由が、「ムーヴマン」の加速の方向を区別して認識することで明快に説明できる。また、この「ムーヴマン」の加速方向という観点で、現代の口語を分析すれば、日本語固有のリズムの原理が明らかになる。2語が連結されると、後の語頭が濁る現象、あるいは「乱れ」と捉えられている言葉の変形も、この原理に従った法則性の高いものである。
著者
松原 純一
出版者
聖徳大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02892677)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.323-334, 1989-12-15
著者
村瀬 隆二
出版者
千葉大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.19-41, 1959
著者
伊藤 直子
出版者
国立音楽大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02885492)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.13-24, 2007

本稿は大正期のオペレッタ受容のあり方について、当時もっとも人気の高かったスッペの《ボッカチオ》を例に考察することを目的とする。まず最初に社会的・文化的背景として、都市化と大衆化、消費と娯楽、メディアの発達などの現象を挙げ、音楽的下地としては、明治期すでに外来歌劇団によるオペレッタ公演や軍楽隊によるオペレッタ関連楽曲の演奏が行われていたことを確認した。大正期のオペレッタ受容は明治期の官主導型の洋楽受容とは様相を異にし、帝劇、ローヤル館、浅草と上演空間を転じながら、大衆化の道のりを歩んでいった。上演の実際については、オペレッタ受容に不可欠である訳詞の観点から主に論を進め、代表的な訳者の一人で、《ボッカチオ》の訳詞を手がけた小林愛雄を取り上げ、あるべき訳詞の姿を求めて文語体から言文一致体へと至る小林の訳業と、その後の浅草オペラにおける庶民的かつ自由奔放な訳詞の世界を追った。
著者
笠井 哲
出版者
福島工業高等専門学校
雑誌
研究紀要 (ISSN:09166041)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.71-78, 2003-03-10

The purpose of this paper is to consider the meaning of technology in the third chapter of Gulliver's Travels. In Swift's days the Scientific Revolution was completed. The scientific contents in Gulliver's Travels were almost derived from the Philosophical Transactions of the Royal Society. It seemed that Swift severely satirized the scientific studies in those days. But he satirized not the scientific studies themselves, but the biased man that forgets himself in them. Practically, while the technological advances can promote the welfare of mankind, they can blight it. In recent years the ethical education for the engineers starts in Japan. The Gulliver's Travels has the great meaning, in that it had already warned about the future of the technology in the 18th century.
著者
奥 美佐子
出版者
名古屋柳城短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13427997)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.51-65, 2003-12-20

美術における摸倣は肯定的にも否定的にも扱われてきた歴史をもつ。摸倣の意味は変化し、現代美術においては表現ツールとしてのスタンスを得た。本稿では摸倣をポジティブに、且つ摸倣の意味を広く捉えて、幼児の描画表現の過程で出現した模倣の要件を幼児の模写能力から検討したいと考えた。前項「現代美術と幼児の造形における摸倣のスタンス」で分類した摸倣の3タイプにおける視覚的要件、空間的要件、人的要件について検討した結果、視覚的要件と空間的要件が密接な関係にあることがわかった。人的要件は前2者程には影響をもつとは考えにくく、人的要件が何らかの影響をもつ場合は、日常の人間関係を反映していると考えられた。描画過程における摸倣の出現はビジュアルな要素が優先していると考えられる。描画における幼児間での摸倣を扱った研究を進めているが、幼児間で摸倣がどれほどの精度で可能かを確認するため、幼児間で模範と模写の関係を決めて描画の摸倣の実験をした。パーツと構図から模倣度を求めた結果、数値にはばらつきがあるが、5歳児の模写能力はかなりの精度で模範を模写できることがわかった。視覚による情報摂取と、摂取した情報の表現への反映が可能であることで、描画過程における摸倣は、'絵がかけないから摸倣する'という見方を払拭することができたのではないだろうか。