著者
桐生 正幸
出版者
関西国際大学
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
no.14, pp.243-252, 2013-03

本研究では,身近で発生した殺人事件が,地域防犯への関心や,犯罪に対するリスク認知と不安感に及ぼす影響について検討した。2007年10月に幼女が殺害された加古川市にて活動する防犯ボランティアが研究対象である。この殺人事件は,彼女の家の前にて刃物で刺された未解決事件である。調査は,兵庫県の5市にて行った。加古川市と他の市は,防犯活動が活発な地域である。調査回答者は,全部で361名(女性130名,男性231名。平均年齢67.3歳)のボランティアであった。調査結果は次の通りである。加古川市のボランティアは他の市よりも,1)治安悪化を認識し,2)高い犯罪不安感を感じていた。This study examined the effect of a neighbouring murder case on risk perception, anxiety about crime, and concerns about crime prevention. A volunteer crime prevention group in Kakogawa city, where a little girl murder occurred in October 2007 was examined. This case involved the stabbing of a victim in front of her home, which has remained unsolved. The investigation involved five cities in Hyogo prefecture. In Kakogawa city and other cities, the anticrime activity was active. There were 361 volunteers involved in the survey. 130 are women while 231 are men and the average age is 67.3 years old. The survey results indicated that the volunteers in Kakogawa had higher perceptions than the volunteers in other cities in 1) recognizing that the public peace has worsened; and 2) feeling of anxiety for the increased in crimes.
著者
木村 倫幸
出版者
奈良工業高等専門学校
雑誌
研究紀要 (ISSN:03871150)
巻号頁・発行日
no.35, pp.118-124, 1999
著者
佐藤 広志
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.14, pp.147-160, 2013-03-31

兵庫県の大学等進学状況は,県外への流出も県外からの流入も多い流動的な状況にあり,結果的に県内の大学入学定員と県下卒業生数とがバランスする程度の量的規模になっている。2011年9月に,兵庫県北播磨地区に所在する全日制高校を対象に実施した高校2年生調査によると,その進学希望はまだ漠然としたものだろうが,一年上の学年の同地区の進学率実績をかなり上回り,潜在的な進学需要も観察される。北播磨地区のおかれた地理的条件を踏まえて考えると,同地区の高校生は通学の利便性を強く求めており,これはつまるところ,通学所要時間を主とした心理的コストへの鋭敏な反応であると考察できる。
著者
福田 博美
出版者
文化女子大学
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.17, pp.65-71, 1986-01-31

一般に守りと呼ばれるものは,木片や紙片に神名や神のしるしを書いたもので,神仏の力により身を守ると信じられるものの総称である。家の内外に貼りつけるものを御札,身につけるものを御守と区別しており,前者は守りと住生活,後者は衣生活つまり服装との関わりを示すものである。御守を身体に直接あるいは身体を覆う衣服につけるか,何方にしても守りが木片や紙片の状態では携帯が難かしく,袋に入れる守袋として用いられたのである。本稿は守袋の種類を捕え,首に懸けて着装する懸守と胸守に着眼し,文献・絵画資料を中心に,その変遷について社会的背景と服装との関連性を鑑みて考察することを試みるものである。
著者
宮入 恭平
出版者
国立音楽大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:02885492)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.117-127, 2012

2011年3月11日に発生した東日本大震災によって引き起こされた東京電力の福島第一原子力発電所事故は、日本国内における原子力エネルギー政策を根本から問い直す契機になった。3.11が発生してから時間の経過とともに、「絆」や「がんばろう!日本」といった言説は希薄になった。その一方で、TwitterやFacebookといったソーシャルメディアを中心に叫ばれてきた反原発の声は、テレビや新聞といったマスメディアからも聞かれるようになった。チャリティに偏向していたポピュラー音楽シーンにも、反原発を掲げる政治性に注目する動きが見られるようになった。 第二次世界大戦後の日本では、商品としてのポピュラー音楽に偏向するあまり、音楽の政治性が可視化されづらい状況にあった。しかし、ポスト3.11の原発問題によって、音楽と政治の関係は無視できないものになっている。本稿では、日本のポピュラー音楽シーンにおける反原発運動を検証しながら、音楽の存在意義について考える。
著者
広沢 俊宗
出版者
関西国際大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13455311)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.85-96, 2001-03-31

Peplau, & Perlman (1982)は、孤独感を研究する際に、孤独感の先行条件、孤独感経験の諸特性、および孤独感に対処する方法の三者を区別することが有益であることを見出した。本研究では、この考え方に準拠し、(a)孤独に対する原因帰属、感情反応、対処行動、および孤独感との相互関係、ならびに(b)対処行動の因子構造について吟味された。調査は、大学生を対象に3種類の質問紙と2種類の尺度を用いて実施された。それらの質問紙および尺度は、孤独の原因、感情反応、および対処行動に関する質問紙と、改訂版UCLA孤独感尺度、ならびに異なった関係における孤独感尺度であった。結果は、以下の通りである。1)孤独に対する原因帰属と感情反応は高度に構造化され、Weiss (1973)の提案する情緒的孤立と社会的孤立の区別に充分適合することが示された。2)対処行動の主成分分析により、男子では6因子、女子では7因子が抽出された。そして、男女間の因子の重要性の順位、およびその内容に差異のあることが示された。
著者
森田 進
出版者
恵泉女学園大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:09178325)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.A1-A18, 1999
著者
宮地 弘太郎
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.14, pp.209-216, 2013-03-31

本学テニス部選手に対して短期的なフィジカルトレーニングプログラムを実施した。Pre-test においてRegular 群Non-regular 群の間で上体起こしと立ち幅跳びの測定において有意な差が伺えた(P<.05)。3ヶ月後のPost-test においては両群間では有意な差が伺えなかったものの,全部員に対して上体起こし,5方向走,往復走で有意な差が伺えた(P<.05)。よって,3ヶ月の短期的なフィジカルトレーニングメニューは効果的であったことが示唆された。今後は,測定項目を増やし,技術とトレーニングの関連性を定量化し縦断的研究を推奨したいと考える。
著者
坂上 雅翁
出版者
関西国際大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13455311)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.25-33, 2008-03

光明山寺を中心とした南都浄土教についてみるとき,覚樹,実範,永観をはじめ,光明山寺から高野山に移り,のちに法然に帰依した明遍や,高野山往生院に移りのちに京都禅林寺の十二世となった静遍の存在はよく知られている。本論では,まず東大寺東南院三論系の念仏別所としての光明山寺の性格を,最近の研究成果を元に再検証する。さらに,高野山を始め,醍醐寺,禅林寺との関係,および大阪一心寺蔵「一行一筆阿弥陀経」や『高野山往生伝』をとおして,中世の南都仏教界における光明山寺を中心とした南都浄土教の展開をみていく。
著者
浅田 孝紀
出版者
筑波大学附属坂戸高等学校
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
no.39, pp.49-55, 2002-03

本研究では、生徒のグループによって創作された文語作文を、授業中の観察とあわせて分析し、文語作文という作業が、古文に対する言語感覚によって支えられているという示唆を得た。そして、古文の理解や表現に ...
著者
寺井 英子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.34, pp.27-46, 2005

本実践は,生徒の選書に関する知識や技能の幅を広げ,読書をめぐる豊かなコミュニケーション体験を積ませることにより,生徒をより一層読書好きにさせることを目指して取り組んだものである。それによって,文学作品の魅力を感じ取ったり分析したりしながら,作品まるごとを深く読み味わう力を伸ばすことも考えた。そこで,本単元では,三省堂神田本店,リブロ池袋店,小石川図書館の協力を得て,書店や図書館のニーズに応じて文庫本のキャッチコピーやボディコピーを作り,競合的なプレゼンテーションを行うという場を設定することによって,さまざまな選書の方法や,読書,特に文学読書をめぐるコミュニケーションを学ばせることができるよう工夫した。特にキャッチコピーとボディコピーを入れたポップを作る活動を通して,キャッチコピーで文学すること,つまり,それらを使っていかに文学作品を読み深め,読み味わい,文学的な表現を生み出し楽しむかを追求した。プレゼンテーション当日は,書店や図書館の方に依頼者(判定者)として参加していただいた。プレゼンテーション後の質疑応答では,キャッチコピーやボディコピーをめぐって,豊かな文学や読書に関するコミュニケーションが営まれた。プレゼンテーション終了後,キャッチコピー・ボディコピーは,実際にポップに仕上げて書店や図書館に掲示していただいた。生徒は学習過程全体を通して非常に意欲的に取り組み,学習後の振り返りでは,選書の幅が広がり,新しい読書の楽しみを発見したという感想が多数認められた。