著者
中村 雅子
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.179-198, 2020-12-15 (Released:2020-12-23)
参考文献数
20

クラウドファンディングはすでに新しい資金調達手段として多様な実践者および研究者の注目を集めている.本研究ではオンライン調査によってクラウドファンディング利用者の多様性について実証的に検討した.日本の調査会社のオンラインモニターを用いて,支援者または提案者として購入型または寄付型のクラウドファンディングを使ったことがある者を対象に2018年5月に回答を依頼した.本論文の目的は以下の二点である.第一に日本のクラウドファンディング支援者の実態を明らかにした.また支援者の多様性を明らかにすることを第二の目的とした.25項目の変数を用いてクラスター分析を行い,五つの類型を抽出した.これらの類型間では支援理由や今後の利用意向などにも違いが見られた.
著者
菊地 剛正 國上 真章 高橋 大志 鳥山 正博 寺野 隆雄
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.199-214, 2020-12-15 (Released:2020-12-23)
参考文献数
14

組織研究では,実在のビジネスケースと組織シミュレーションのログとを比較対照するアプローチがある.両者の実効性のある接地のため,個々のエージェントの行動の詳細な記録を指すミクロ・ログではなく,ミクロ・ログの類型を対象とした分析手法が提唱されている.しかし,当該手法は,分析者のモデルに関する知識が前提であり,あらかじめログの類型を設定する必要があるなど,改善の余地がある.そこで本稿では,組織シミュレーションのミクロ・ログ分析にクラスタリング手法を適用することで,以下の2点を拡張した方法論を提案する:a)分析者がシミュレーションログの類型を事前に設定する必要がないこと,b)シミュレーションログの分析粒度を変えうること.組織の外部環境認識に係る意思決定プロセスを表現するエージェント・モデルを構築し,ミクロ・ログの類型化を行うことで,提案手法の要件が満たされることを例示した.
著者
柳田 浩孝 倉橋 節也
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.251-271, 2021-03-15 (Released:2021-03-30)
参考文献数
26

本研究の目的は,スタートアップ企業のパフォーマンスと彼らに対する外部支援の関連性について調査を行うことである.分析に際しては,2,897件(第1回調査時点)のスタートアップ企業から回答を得られたアンケート調査を用いた.分析手段としては,因果推論手法の1つである傾向スコアマッチングを採用した.まず外部支援とパフォーマンスを分類したうえで個々の支援ごとに効果を検証したところ,大半の支援ではスタートアップ企業のパフォーマンスを改善する因果効果を認めることができなかった.次に,一部の外部支援を採り上げ,その他支援との組み合わせ効果を検証したところ,非公的資金と公的資金支援の組み合わせで売上が有意に成長したなど新たな因果効果が確認された.これらの結果から,目指す自社の将来像に基づき,受け入れる外部支援やその組み合わせを慎重に模索していくことの有効性が示唆された.
著者
吉田 和樹
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.273-294, 2021-03-15 (Released:2021-03-30)
参考文献数
9
被引用文献数
3

新しいビジネスモデルを構想段階で概念設計し,検証するためのプロセスを提案する.このプロセスでは,ビジネスモデルキャンバス(BMC)上でSWOT分析を通して自社の強みや弱みを明確にし,ビジネスモデルパターン(BMP)を選択して新しいビジネスモデルの創出に向けた方針を策定する.その方針に沿って,アクションフレームワーク(AF)を適用して新しいビジネスモデルを創出するための施策を決定する.そして,この施策を通して,新しいビジネスモデルに移行していく過程について,システムダイナミクス(SD)によるシミュレーションを実行して,その実現性,収益性,成長性を検証する.この提案における新規の点を以下に記す.・概念設計から検証までの一連の作業をプロセスとして定義・BMPを取り入れて方針を策定・BMCのブロックごとにSDモデルの作成方法を定型化・BMCのブロックごとにAFの適用結果に合わせてSDモデルの拡張部分の作成方法を定型化・BMPごとにSDモデルとして定型化できる部分を部品化本論文のあらすじは,1章が序論,2章が概念設計プロセスの説明,3章が検証プロセスの説明,4章が今後の課題,5章が本論文のまとめである.
著者
吉村 喜予子 木野 泰伸
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-29, 2021-06-15 (Released:2021-06-30)
参考文献数
17

製薬企業のコールセンターには,薬についての問い合わせが多く寄せられる.その内容は多岐に渡ることから,新製品発売準備に経験値がない場合は対応の困難が想定される.本研究では,発売初期の製品の問い合わせ内容の汎用性に着目し,発売初期の製品問い合わせ内容を入力データとして,テキスト分析することにより,問い合わせ内容の種類を概念として抽出し,構造化し,可視化した.さらに,抽出した概念を用いて同じ製品の期間別のデータと,疾患領域が異なる別製品のデータに対して適用し,汎用性を検証した.その結果,発売初期の製品から抽出した概念は,発売初期以降の期間と疾患領域が異なる製品においても包括的に適用可能であることが確認された.抽出した概念には期間によって増加傾向や減少傾向の特徴を示すものがあり,異なる2製品に増減傾向の共通性と特異性が確認された.このことから,新製品発売準備における実務的な示唆を得られた.
著者
大川 順也 雲居 玄道 後藤 正幸
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.31-46, 2021-06-15 (Released:2021-06-30)
参考文献数
25

一般的な質問応答システムでは,ユーザから与えられた質問を解析し,情報源となる文書集合から,質問に対する適切な回答を検索するモデル(回答文書検索モデル)を構築することで回答候補を抽出し,回答の自動化を実現している.コミュニティQAサイト(cQAサイト)における質問・回答文書に対して,回答文書検索モデルを構築する場合,基本的な手法として質問文書の類似度による手法が考えられる.しかし,cQAサイトで見られるような,質問ごとに存在する回答文書の多様性を的確に掴みながら,適切な内容の回答文書を提示することは困難であると考えられる.そこで本研究では,トピックモデルの代表的な手法であるLatent Dirichlet Allocation(LDA)を用いることで,従来手法では対応できなかった回答文書の多様性を考慮可能な回答文書検索モデルの構築手法を提案する.最後に,提案モデルの有効性を検証するため,実際にcQAサイトに投稿された質問・回答文書を用いた検証実験を行い,検索結果の性能を評価するとともに,得られた結果に基づいて考察を行う.
著者
金澤 真平 楊 添翔 後藤 正幸
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.47-64, 2021-06-15 (Released:2021-06-30)
参考文献数
12

中古ファッションアイテムの買取・出品・販売を行うECサイトではアイテムのブランドやカテゴリ,コンディションなど,商品情報が非常に多様であるため,出品価格の決定は重要かつ難しい課題の一つである.本研究の提案モデルでは,出品システムによって設定された出品価格を変更した場合の販売結果を観察するため,価格変更テストを設計する.一方,販売価格の予測精度を高めるため,アイテムの特徴と予測精度に関する情報をもとにアイテムのクラスタリングを行い,価格変更テストの結果データをモデルの検証データとして活用することで,高い精度で予測可能なアイテム群を発見する.そして,クラスタリングによって高い精度で予測可能であると特定されたアイテム群を提案モデルに適用可能なアイテム群と捉え,それらのアイテムに関して出品価格を変更した場合の販売価格を予測する.また,その予測結果に基づいてアイテムごとの出品価格と販売価格の関係性を捉え,適切な出品価格設定に関する分析を行う.
著者
大川 順也 雲居 玄道 後藤 正幸
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.39-54, 2020-06-15 (Released:2020-07-03)
参考文献数
27
被引用文献数
1

近年,多くの企業で,システムやサービスに関する問合せをオンラインで受け付けるシステム(質問応答システム(Question Answering (QA) systems))が導入されている.この質問応答システムにおいて,Webフォームやメールなどが取り入れられ,電子文書形式で問合せの送信が可能となっている.その際,送られてくる問合せ文書に対する回答文書は人手で作成されているのが現状である.そのため,過去の問合せ・回答履歴データを活用することで,回答文書作成作業の自動化ができると,企業内の業務効率化にとって有益であると考えられる.しかし,問合せ文書の内容は自動対応が可能な案件や,人手による個別対応が必要な案件など,多岐にわたっている.そのため,最初からすべての問合せ・回答文書を学習し,回答文書作成の自動化をすることは困難である.そこで本研究では,問合せ・回答文書の関係性を分析するモデルを構築する.最後に,本手法の有効性を示すために,某大手企業の質問応答システムに蓄積された問合せ・回答文書の実データに対して提案モデルを適用して検証を行う.
著者
向 正道 横田 明紀 栗山 敏 鎗水 徹 黄 婷婷
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.105-127, 2020-09-15 (Released:2020-09-28)
参考文献数
32
被引用文献数
1

IT戦略は経営戦略に沿って策定されるべきである,または,IT戦略は経営戦略の一部であるという議論がある.しかしながら,経営戦略とIT戦略ではそれぞれの戦略に沿って整合すべき構成要素が異なり,情報システム刷新時にそれらの構成要素間が適切に調整できず,不整合を生じた「ねじれ構造」による問題を誘発しやすい.本研究では,情報システム刷新時にプロジェクトの納期遅延を起こしやすい構造的要因を分析するための「経営戦略とIT戦略のねじれ構造モデル」を提案する.このモデルに基づき,基幹系システム構築プロジェクトの計画納期達成/未達要因を考察することで,本モデルの妥当性と有効性を実証する.
著者
高田,朝子
出版者
経営情報学会誌編集事務局
雑誌
経営情報学会誌
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, 2005-12

本研究は、危機対応時の現場に情報を収集し発信する機能を持つ人物が存在すると、問題解決に資することを、地下鉄サリン事件に対応した聖路加国際病院の事例研究を通じて考察していくことが目的である。サリン事件対応時に院内に3つの情報のハブが発生し機能したことによって、状況情報を院内に提供したのと同時に、手順情報として具体的な対応策を組織内に示した。このことが同病院が成功裏に事件に対応できた鍵要因となった。危機対応の際には、現場にハブが発生すること、そしてそれを有用することを念頭において対応行動を組み立てる事が必要である。ハブが発生するために重要な3つの要素とは、「多くの情報を得る場」と「情報を発信しようという意志をもった人間」、「発信された情報を受容する組織」であった。「情報を得る場」については、物理的に多くの状況情報を得る組織環境をつくることであった。
著者
大川 順也 雲居 玄道 後藤 正幸
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.39-54, 2020

<p>近年,多くの企業で,システムやサービスに関する問合せをオンラインで受け付けるシステム(質問応答システム(Question Answering (QA) systems))が導入されている.この質問応答システムにおいて,Webフォームやメールなどが取り入れられ,電子文書形式で問合せの送信が可能となっている.その際,送られてくる問合せ文書に対する回答文書は人手で作成されているのが現状である.そのため,過去の問合せ・回答履歴データを活用することで,回答文書作成作業の自動化ができると,企業内の業務効率化にとって有益であると考えられる.しかし,問合せ文書の内容は自動対応が可能な案件や,人手による個別対応が必要な案件など,多岐にわたっている.そのため,最初からすべての問合せ・回答文書を学習し,回答文書作成の自動化をすることは困難である.そこで本研究では,問合せ・回答文書の関係性を分析するモデルを構築する.最後に,本手法の有効性を示すために,某大手企業の質問応答システムに蓄積された問合せ・回答文書の実データに対して提案モデルを適用して検証を行う.</p>