著者
金 太一 柿澤 幸成 清藤 哲史 中冨 浩文 齊藤 延人
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.9, pp.646-654, 2021 (Released:2021-09-25)
参考文献数
33

脳幹部海綿状血管奇形では, 神経症状のリスク, 病変を全摘出できる視野の確保, およびsafe entry zone (SEZ) などを考慮しつつ, 病変の最表層部を進入口としたアプローチを三次元空間的に検討する必要がある. そのためには, 脳幹内の神経線維や神経核などの解剖知識が必須となる. 本稿では脳幹の解剖を三次元的に理解することを目的として, 脳幹三次元コンピュータ・グラフィックスの無料アプリ 「脳観」 を活用しながら, SEZを中心とした脳幹部の解剖について概説する.
著者
益澤 秀明 平川 公義 富田 博樹 中村 紀夫
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.104-110, 2004-02-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
31
被引用文献数
2 4

交通事故による脳外傷後には,特徴的な知的障害・人格変化・社会適応障害が後遺しやすい.しかし,専門家も見過ごしやすいため社会問題になり,"高次脳機能障害"とよばれるようになった.しかし,この命名では従来からの高次脳機能障害と紛らわしく混乱が生じている.そこで"脳外傷による高次脳機能障害"とよぶことにした.本障害は外傷後の意識障害の期間と関連し,急速に生じる全般性脳室拡大の程度とも関連する.つまり,本障害はびまん性軸索損傷やその他のびまん性脳損傷によってもたらされる大脳白質損傷による神経ネットワークの障害と考えられる。画像所見変化に注目することにより非外傷性疾患との鑑別も容易であり,急性期管理に携わる脳神経外科医の眼が後遺症評価においても重要である.
著者
中山 晴雄 荻野 雅宏 永廣 信治 岩渕 聡
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.4-8, 2018 (Released:2018-01-25)
参考文献数
20
被引用文献数
2

近年, スポーツに関わる頭部外傷, 中でも脳振盪への社会的注目が高まっている. スポーツ頭部外傷の問題点は従来から指摘されているように, 急性硬膜下血腫に代表される重症頭部外傷と繰り返し受傷する脳振盪である. 本稿では, 脳神経外科医が知っておくべきスポーツ頭部外傷の検査と対応として, ①スポーツ頭部外傷に関する共通の認識, ②小児を含むスポーツ頭部外傷の現場での対応, ③繰り返すスポーツ頭部外傷の危険性, ④競技者および関係者への指導方法について概説する. 今後, 競技復帰への適切な判断や指導における脳神経外科医の役割が期待される.
著者
高瀬 香奈 三島 弘之 綾部 純一 渡辺 正英 土屋 雄介 丸山 拓実 益子 悠 立石 健祐 田中 良英
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.305-311, 2021 (Released:2021-04-25)
参考文献数
24

放射線治療の晩期障害として放射線誘発性腫瘍があるが, 組織型の異なる放射線誘発性脳腫瘍が併発した症例の報告は稀少である. 症例は49歳男性. 8歳時に右前頭葉腫瘍の摘出術を受け, 当初星芽腫の診断で51Gy/37frの拡大局所照射を施行された. 照射後41年, 初発のてんかん発作で救急搬送され, 右前頭葉脳実質の不整形腫瘍と周辺の円蓋部に硬膜付着腫瘤を認めた. 両病変に対して摘出術を施行し, それぞれ膠芽腫, 髄膜腫と診断された. 再検討の結果, 初発腫瘍は退形成上衣腫と診断された. 小児期に放射線治療を受けた患者では長期間経過しても放射線誘発性腫瘍のリスクが存在するため, 長期にわたる慎重な経過観察が重要である.
著者
伊予田 邦昭
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.660-665, 2009
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

道路交通法の改正に伴い,てんかんをもつ人(a person with epilepsy;PWE)でも条件により運転免許取得が可能となった.そこで実務を担当する主治医と広島県警道路交通部運転免許課に免許取得にかかわる適性判定や免許交付状況調査を施行し,運用上の問題点や課題を検討した.(1)法改正の認識はあるが,患者への説明提示不十分,(2)新規の免許取得率が一般の場合に比べ高く,許可交付件数も年々増加しているのは法改正の普及効果だが,一部に発作予知予測精度や保留期間の策定に不安がある,(3)PWEの交通事故率は5.5%で一般と大差なかったが,発作と事故との関連性が示唆され,服薬コンプライアンス不良例が多かった.以上から判定にはより柔軟性を持たせ,患者・主治医への一層の啓発活動が必要である.
著者
西山 健一 藤井 幸彦
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.349-356, 2013 (Released:2013-05-25)
参考文献数
21

本稿では, 水頭症および関連する嚢胞性疾患に対して髄液路を作成する脳室鏡手術を提示し, 必要な解剖と知識を概説した. ここで術式は “脳室-脳槽短絡術” と “脳室内閉塞機転の解除” に大別される. 鏡視下で目印となる脳室内構造の把握に加えて, 前者では脳槽の構築と内部血管の, 後者では脳室壁直下の神経路と神経核の理解が必須である. “Third ventriculostomy” では, 両側乳頭体と漏斗陥凹とを結ぶ三角形の中心を目印に, 脳底動脈および同頂部から中脳に向かう動脈群の損傷を避けて, 脚間槽に穿孔する. この際, 脚間槽を縁取る二葉のLiliequist's membraneの確認が重要である. “Temporal ventriculostomy” では脈絡裂の仮想延長線を目印に, 前脈絡動脈の損傷を避けるようにcarotid cisternの後方からcrural cisternに穿孔する. “Aqueductoplasty” では, 動眼神経核, 内側縦束, 滑車神経路の損傷を避ける. なお, 水頭症関連疾患では正常構造を留めていない症例があり, 術前画像の詳細な検討が肝要である.
著者
吉藤 和久 越智 さと子 村上 友宏 金子 高久 小柳 泉
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.208-215, 2011
参考文献数
18

手術治療を行った連続34例の腰仙部脊髄脂肪腫(円錐部脂肪腫20例,終糸脂肪腫14例)について,脂肪腫の形態的特徴と臨床経過について検討した.脂肪腫の形態的所見のうち,「脊髄の脊椎管外突出」,「脂肪腫が脊髄と広く移行」,「神経根とその硬膜貫通部の異常」のいずれかが認められる場合,症候性となる可能性は高く,手術においては神経学的合併症,係留解除困難,術後のクモ膜下腔狭小の残存に有意に影響した.術前MRIでは脊髄の脱出と脂肪腫の広汎な移行は診断が可能であったが,神経根の走行異常は50%の症例で診断可能であった.このような脊髄脂肪腫の形態は,臨床経過や手術の困難性の予測に有用な所見と考えられる.
著者
間中 信也
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.10, pp.771-778, 2012 (Released:2012-11-09)
参考文献数
16

頭痛の診療は, 国際頭痛分類第2版と, 慢性頭痛の診療ガイドラインを活用して行う. 片頭痛には多くの急性期治療と予防療法が存在する. トリプタン (セロトニン1B/1D受容体作動薬) は片頭痛の特異的治療薬であり, 現在 (2011年9月), スマトリプタン, ゾルミトリプタン, エレトリプタン, リザトリプタン, ナラトリプタンの5種類, 錠剤, 口腔錠, 点鼻液, 皮下注射液ののべ10製剤が使用可能である. 満足するトリプタンの効果を得るには, 的確な診断と, アロディニア出現前の早期服用が求められる. 頻回使用 (月10日以上) により薬物乱用頭痛を招くので, そのおそれがある場合は片頭痛予防療法を併用する.
著者
端 和夫
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.9, pp.592-595, 2001
参考文献数
8
被引用文献数
3 2

UCAS JAPANについて研究プランとバックグラウンドを紹介し, その必要性と妥当性を考察した.UCAS JAPANはすべての未破裂脳動脈瘤の登録事業で, 大規模な前向きコホート研究といえる.この研究は, 未破裂脳動脈瘤の破裂率, 治療結果に関して, 個々の患者の治療方針の決定に役立つ知見を欠く現在, 必要かつ最適の研究である.構築される大きなデータバンクは, 未破裂脳動脈瘤の多様な属性に対応した多くの未知の臨床病態を明らかにすることが期待される.
著者
豊田 長康
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.446-451, 2012-06-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
2

わが国の医学論文数の動向を知るためにトムソン・ロイター社学術文献情報データベースおよびU. S. National Library of MedicineのPubMedを用いて分析した.わが国の臨床医学および基礎的医学の論文数は,主要国の増加に対し2000年頃から停滞あるいは低下して国際シェアが急激に低下し,相対被引用度も停滞していた.臨床医学および基礎的医学とも地方国立大学での低下が著しく,両者は正の相関を示した.国立大学法人化,大学予算削減,新医師臨床研修に起因する若手医師の流動化等の外的負荷に対応困難な地方国立大学の人的研究インフラ(研究者数や研究時間)が弱体化したことが主因と推測する.
著者
相原 徳孝 山田 和雄 小出 和雄 梅村 淳 金井 秀樹 羽柴 基之
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.157-160, 1996
参考文献数
3
被引用文献数
1 1

最近経験した最大径4cm以上のpetroclival meningioma2例に対して,術中にS状静脈洞内圧の変化をモニターした.2例ともS状静脈洞の試験閉塞前後で圧の上昇をみなかったが,気道内圧負荷により1例は圧の上昇をみた.気道内圧上昇負荷によっても圧の上昇をみなかった症例で,S状静脈洞を切断して腫瘍を摘出したが,術後S状静脈洞閉塞による合併症をみなかった.他の1例ではS状静脈洞の内圧が試験閉塞前後でほとんど上昇を示さなかったが,気道内圧上昇負荷がかかると圧の上昇を示し,静脈還流予備能に違いがあることが示唆された.
著者
原 政人 赤堀 翔 深谷 宜央 山本 優
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.300-306, 2018 (Released:2018-04-25)
参考文献数
13

上下肢のしびれや痛みを主訴に来院する患者は多い. 鑑別診断を行うにあたり最も重要なのは, 神経診断を確実に行うことである. 症候と神経診断である程度の診断を固めた後に, 画像所見, 電気生理学的所見を総括し, 診断を確定する. 神経高位として, 脳・脊髄・神経根以外に上肢では, 胸郭出口症候群, 手根管症候群, 肘部管症候群, ギオン管症候群などを, 下肢では, 腓骨神経絞扼障害, 足根管症候群, 梨状筋症候群などを考慮する必要がある. 末梢神経絞扼障害においては, しびれ・痛みの神経支配領域を考えるのが診断にたどり着く近道である. Tinel徴候, 肢位による症状誘発テストは末梢神経疾患の診断においては今なお非常に有用である. 最近では, MRIや超音波検査などの画像診断が発達してきているが, 電気生理学的検査が今も重視されている. 末梢神経絞扼障害においては, 初期の症状においては局所安静が非常に有用で, その他, 理学療法, 薬物療法などの保存的治療が中心になる. 症状が強く日常生活に支障をきたしているもの, 筋力低下をきたしているもの, 症状が進行するものに対しては手術を考慮する. 日本は, 諸外国とは異なり, 神経診断と外科治療が分担されておらず, このためむしろフィードバックが確実に得られ, 診断能力の向上, ひいては手術手技の向上に寄与している可能性がある. 診断においては神経内科医, 治療に関しては整形外科医も関与しているが, 末梢神経疾患は神経全体を扱うことのできる脳神経外科医が取り組むべき疾患である.
著者
工藤 純夫 和智 明彦 佐藤 潔
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.370-375, 1995-07-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

MRIを用いて髄液の拍動速度を測定することで,脊髄くも膜下腔内をゆっくり移動する髄液を捉える方法を開発した.本方法により髄液循環における拍動とは異なった髄液のゆっくりした移動が測定可能と考えられた.各年齢層の正常例において,頸髄周囲4箇所の髄液拍動と移動の測定を試みたところ,髄液のゆっくりした移動は脊髄腹側が背側,側面のものに比較して有意に遠かった.また脊髄腹側の髄液移動と髄液拍動速良には正の相関がみられた.髄液のゆっくりした移動速度の年齢分布は乳児期から加齢とともに増加する傾向を有し,10歳前後で100〜200mm/minとpeakに達した.また,頭蓋骨縫合の癒合を認めない新生児,乳児では,1心拍間の髄液移動距離は少ないものの心拍数は多く,1分間の移動距離(速度)は成人に匹敵するかそれを上まわる特徴があった.
著者
里見 淳一郎 永廣 信治
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.42-51, 2016 (Released:2016-01-25)
参考文献数
42
被引用文献数
2 3

硬膜動静脈瘻 (以下DAVF) は後天性疾患であり, 多くの症例が血管内治療の対象となる疾患である. 本疾患の病態把握と治療適応, 適切な治療方法についてレビューする.  DAVFの自然歴は, これまで静脈還流異常 (静脈洞閉塞, 皮質静脈逆流, 静脈うっ滞) が悪化に関与する因子として長く認識されてきたが, 近年, DAVFの発症形式が自然歴に大きく影響するとした報告が相次いでいる. また, 自然消失に関して, DAVFは静脈還流路の閉塞性変化を伴いつつ消失に向かう症例も多い.  治療適応に関して, 治療によるメリットが自然経過, 周術期合併症によるデメリットを上回るためには, 発症形式, 血管撮影所見, 罹患部位等, さまざまな因子を総合的に判断することが重要である.  治療方法に関して, 血管内治療は, 短絡部位より近位の動脈側の塞栓はシャント量減弱に一定の効果を有するが, 根治に至らないことが多い. 一方で, 経静脈的塞栓は, 短絡部位の流出側を閉塞する手技であり, 根治の率が高いものの, 治療遂行にあたっては, 皮質静脈逆流を残さないよう努める必要があり, また, 正常静脈還流に関与する部位の塞栓は避けなければならない. 前頭蓋窩, 頭蓋頚椎移行部など, 外科的治療が血管内治療より容易で適切と考えられる部位もあるが, 今後, 液体塞栓物質 (NBCA, Onyx) を用い経動脈的シャント閉塞を目指した根治療法の発展が期待されている.
著者
菱川 朋人 平松 匡文 杉生 憲志 伊達 勲
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.120-126, 2019 (Released:2019-03-25)
参考文献数
19

未破裂脳動脈瘤における自然歴, リスクスコア, 治療成績, 高齢者未破裂脳動脈瘤に関する最新の知見を紹介する. 本邦の自然歴の理解はUCAS Japanが基本となる. UCAS Japanのデータから構築された3年間の破裂リスク予測スコアは信頼性が高く有用である. 本邦の未破裂脳動脈瘤の治療成績はクリッピング術, コイル塞栓術ともに良好である. 本邦での高齢者未破裂脳動脈瘤は年間破裂率1.6%で年齢, サイズ, 部位が破裂に関与する. 当科の治療成績はクリッピング術とコイル塞栓術でほぼ同等であったが, 海外からの報告ではコイル塞栓術がより良好とするものが多い. 本邦独自の治療リスクスコアの確立や高齢者未破裂脳動脈瘤に対するガイドライン策定が望ましい.
著者
藤村 幹 冨永 悌二
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.10, pp.844-850, 2016 (Released:2016-10-25)
参考文献数
24
被引用文献数
2 1

頭蓋外内血行再建術は脳虚血症状を有するもやもや病に対する有効な治療法である. 直接血行再建術による術直後から脳血流改善に加え, 間接血行再建術により慢性期血管新生誘導が期待できる. 鈴木分類で示される本疾患の基礎病態, すなわち内頚動脈系から外頚動脈系への緩やかな血流依存の変換 (IC-EC conversion) といった本疾患に内蔵された生理的代償機構を達成・促進するうえでも, 頭蓋外内血行再建術は完成されたコンセプトを持つ治療法である. Japan Adult Moyamoya Trialの結果を受け, 本術式の適応は出血発症例にも拡大傾向にある. 周術期においては脳虚血や過灌流症候群などの合併症回避が重要である.
著者
宮武 伸一
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.8, pp.605-612, 2013 (Released:2013-08-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1

悪性腫瘍に対する新規放射線 (粒子線) 治療法として, ホウ素中性子捕捉療法 (boron neutron capture therapy : BNCT) が提唱されている. われわれは2002年より本治療法をのべ133例に及ぶ悪性神経膠腫と悪性髄膜腫に適応してきた. また最近, 症候性脳放射線壊死に対する抗血管新生療法を積極的に展開している. 本論文では, 第32回日本脳神経外科コングレス総会「グリオーマ 新しい時代の到来」において発表した上記内容に若干の加筆を行い, ここに発表した.
著者
林 基弘 堀場 綾子 田村 徳子 川俣 貴一
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.431-440, 2018 (Released:2018-06-25)
参考文献数
36
被引用文献数
1

聴神経腫瘍に対する定位的放射線治療, その中でも歴史的に古くかつ最高精度のガンマナイフによる臨床成績に関して多くの報告がすでになされている. 10年を超える比較的長期のフォローにおいて, 腫瘍成長制御は91~97%, 聴力温存は49~55%, そして顔面神経温存は93~100%と報告され現状でのコンセンサスとほぼなっており, 外科手術のそれと比較しても決して劣らない数字となっている. しかし, 現存線量設定に至ってまだ25年程度の歴史であるため, 40歳代以下の若い患者に対する治療コンセンサスは十分に得られておらず, まだ治療医ごとの個別の裁量に任されているのが現状である. 最近ではMRI画像の革新的進歩と, そのうえでの微小解剖学に根差した治療計画も実践されるようになり, 顔面神経は当然, 蝸牛神経の走行までを考慮して過照射せぬよう意識して照射治療が行えるようになった. このような技術革新を背景に, 現状における聴神経腫瘍に対する治療指針を定位照射治療医の側面から以下のように提案している. 大型腫瘍 (Koos stage 4) においては基本外科的摘出. 一方で, 小中型腫瘍 (Koos stage 1~3) においては, たとえ内耳道内腫瘍であっても経過観察は基本否定的であり, 有効聴力かつ若い患者 (40歳代以下) であれば外科的摘出を, 手術拒否もしくはそれ以上の年代の有効聴力患者 (50歳以上) に対しては定位的放射線治療を勧めるべきである. さらに神経線維腫症2型において, 聴力温存必至であるため定位的放射線治療による早期介入を積極的に行うべきと考えている.