著者
杉生 憲志 枝木 久典 平松 匡文 菱川 朋人 春間 純 髙橋 悠 村井 智 西 和彦 山岡 陽子 佐藤 悠 胡谷 侑貴 木村 颯 伊達 勲
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.384-392, 2022 (Released:2022-06-25)
参考文献数
7

Digital subtraction angiography (DSA) の三次元画像やslab maximum intensity projection (MIP) 画像に加え, DSAとMRIやCTとのfusion画像により, 血管と脳・神経や骨構造との関係性が明瞭に描出可能となり, 血管機能解剖の理解が容易となった. 本稿では, 各種疾患の具体例を示しながら, われわれが行っている臨床例の実際を紹介したい. これら最新の診断技術と解剖を熟知した血管内治療医が詳細な術前診断を行うことによって病態理解が深まり, 開頭術を含む脳神経外科全体の治療成績が向上することが期待される.
著者
中田 光俊 木下 雅史 中嶋 理帆 篠原 治道
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.356-367, 2022 (Released:2022-06-25)
参考文献数
75

高次脳機能とは, 伝達・表現・理解・遂行するためのヒトの高度な機能の総称である. 脳神経外科手術において高次脳機能を温存するためには, その機能局在および関連する神経ネットワークを知ることが必須である. われわれは白質神経線維の走行を理解するためには白質解剖が最も優れた手法であると考える. 高次脳機能を司る上縦束, 下前頭後頭束, 下縦束, 前頭斜走路, 帯状束は白質解剖で剖出できる. 覚醒下手術中に適切なタスクを用いて, これらの神経線維束が担う高次脳機能関連領域を同定することが可能であり, 同部位を傷害しないことで全身麻酔手術では温存し得なかった高次脳機能を意図的に温存できるようになった.
著者
横須賀 公彦 松原 俊二 山口 真司 戸井 宏行 桑山 一行 平野 一宏 宇野 昌明
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.10, pp.796-800, 2012 (Released:2012-11-09)
参考文献数
17
被引用文献数
2 2

低髄液圧症候群に対する診断・治療については, 近年数多く報告されている. 意識障害を伴う症例報告はあるが重篤な経過をとる症例は少なく, 死亡例は1例のみ報告されている. われわれは, 急激に意識障害が進行し, 1度のドレナージ術と2度のEBPを行うも不幸な転機をとった症例を経験した. 意識障害を伴う症例は両側のCSDHを併発している症例が多く, 血腫量により治療方針を決定することが望ましい. また, 漏出部位の確定が困難でEBPの治療効果が不十分であれば早期に次の治療を行う必要がある. 腰椎部でのEBP, 硬膜外持続投与, 手術による閉鎖術などを積極的に行うべき症例が存在することを知っておく必要がある.
著者
都築 伸介 豊岡 輝繁 景山 寛志
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.765-771, 2016 (Released:2016-09-25)
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

硬膜下血腫を合併した低髄液圧症候群の病態は複雑で, さまざまな治療法および治療経過が報告されている. その理由は, 硬膜下血腫の病態が単一ではなく, また同一症例であっても治療を行う時期によって血腫の病態が異なるためではないかと推察される. 適切な治療を行うためには, 治療を開始する時点での血腫の病態を正確に把握することが重要である. われわれは血腫の病態を把握する目的で血腫腔内圧モニタリングを試みた. 結果, 血腫の病態が可視化され, これを正確に把握することが可能となり, 適切な治療を行い得た. 本法は保存的治療が無効な, 硬膜下血腫合併低髄液圧症候群に対する治療の選択肢となり得ると思われた.
著者
山口 智 杉山 一彦 岡村 達憲 山崎 文之 梶原 佳則 有田 和徳 栗栖 薫
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.12, pp.783-788, 2001-12-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
19

1977年10月-2000年9月までの間に広島大学脳神経外科で入院・治療を行った脳幹グリオーマ12症例について検討した.内訳は男性5例, 女性7例で, 診断時の平均年齢は27歳であった.腫瘍の局在は橋が10例, 延髄が2例であり, 6例で手術が, 全例で放射線療法, 化学療法が行われた.全体の再発期間中央値は26週で, 生存期間中央値(median survival time ; MST)は71週であった.調査時点で11/12例が死亡していた.死亡例について, MSTより長期にわたり生存したもの(long-term survivors ; LTS), MST以下の生存期間のもの(short-term survivors ; STS)に分けて各群の特徴について検討した.成人は小児よりLTSが多い傾向にあり, 診断時のCTもしくはMRIにて造影効果の認められるものではSTSが多い傾向にあった.また, 診断に至るまでの初発症状の継続期間が1カ月以下のものではSTSが多い傾向にあった.
著者
安原 隆雄 佐々田 晋 髙橋 雄一 伊達 勲
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.284-294, 2022 (Released:2022-05-25)
参考文献数
35

腰椎は運動器であり, 骨・椎間板・靱帯・関節などの変性を基にして生じる病態が腰椎変性疾患とされ, 具体的には腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症・腰椎変性側弯/後弯などが挙げられる. 診断には病歴聴取・神経診察・画像診断が重要である. 多くの腰椎変性疾患に対して, 生活指導や内服などの保存的治療は有効である. 症状が急を要する場合や保存的治療が無効の場合には侵襲的治療が選択されるが, 本稿では最近の技術発展を紹介する. 一方, 現在行われている腰椎手術の95%以上は後方法である. 不安定性の高い症例や変形矯正を要する症例では固定術が必要であるが, 術後感染や隣接椎間障害, 医療経済上の問題などあり, 除圧術が見直されている.
著者
安藤 直人 花北 順哉 高橋 敏行 深尾 繁治 北浜 義博 南 学
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.11, pp.852-857, 2007-11-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
32

当センターにて約3年半の期間に外科的治療を行った腰部脊柱管狭窄症男性症例206例中4例で勃起症状がみられた.4症例とも歩行に伴う勃起であり,馬尾型の症状を呈し,陰部のシビレを伴うことが特徴的と思われた.腰部脊柱管狭窄症では,歩行時には静脈還流障害に伴い馬尾神経が阻血状態となり,感覚入力系神経に異常な興奮性を生じ,それがシビレなどの過剰な症状を惹起しながら,仙髄勃起中枢に興奮性の入力となりうると推測される.したがって,腰部脊柱管狭窄症での歩行誘発性勃起は,synapticな反射性勃起とする仮説が有力であると考察した.
著者
横堀 將司 山口 昌紘 五十嵐 豊 亦野 文宏 廣中 浩平 恩田 秀賢 桒本 健太郎 荒木 尚 布施 明 森田 明夫 横田 裕行
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.220-228, 2016 (Released:2016-03-25)
参考文献数
27

頭部外傷や脳卒中, 心停止後症候群 (post cardiac arrest syndrome : PCAS) など, 神経救急疾患において脳保護・脳蘇生を指向したモニタリングの重要性が強調されている. また, 依然challengingではあるが, 各種モニタリングを治療方針決定に生かす試みも始まっている. 新しいモニタリングとしてPCAS患者でのaEEG・rSO2による予後予測, 神経外傷モデルによるバイオマーカー (UCH-L1, GFAP) 測定などが挙げられる. これらモニタリングと治療の往復がさらなるエビデンス構築に寄与すると期待される.  本稿は神経救急分野におけるモニタリングの重要性と, それらを加味した治療戦略確立の重要性を提示する. 救急脳外科疾患における “判断と行動” の一助になれば幸いである.
著者
杉生 憲志 平松 匡文 徳永 浩司 菱川 朋人 大熊 佑 春間 純 清水 智久 伊達 勲
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.37-43, 2013 (Released:2013-01-25)
参考文献数
35
被引用文献数
4 4

硬膜動静脈瘻では脳・脊髄の硬膜上に動静脈短絡が形成され, その症状と予後は主として静脈側によって規定されることから, 静脈導出路の形態に基づく分類が臨床的にも重要である. 特に脳表静脈に逆流がみられる例では, 早急な治療が必要とされる. 治療は手術, 放射線, 血管内治療が単独, または併用で行われてきたが, 現在ではその中心的役割を担うのは血管内治療である. 一般に, 病変が静脈洞壁に存在するsinusal type (海綿静脈洞部や横静脈洞部など) では罹患静脈洞をコイルで閉塞する経静脈的塞栓術 (TVE) が, 静脈洞のない硬膜上に存在するnon-sinusal type (前頭蓋底やテント部, 脊髄など) では液体塞栓物質で瘻孔部を閉塞する経動脈的塞栓術 (TAE) が主流となる. 血管内治療で根治が困難な, あるいは治療リスクの高いnon-sinusal typeに対して, 手術による瘻孔閉塞 (静脈側の凝固切離), あるいは状況によっては定位的放射線治療が行われる.
著者
宮嶋 雅一 下地 一彰 木村 孝興 新井 一
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.564-573, 2017 (Released:2017-08-25)
参考文献数
11
被引用文献数
4 2

2014年11月にJNS Pediatricsに掲載された米国ガイドラインに基づいた小児水頭症の標準治療について概説する. このガイドラインでは以下の9つの臨床的課題が取り上げられている. すなわち, ①未熟児出血後水頭症の管理, ②脳室カテーテル留置における内視鏡, 磁場式ナビゲーション, 超音波の有用性, ③シャント術と内視鏡的第三脳室底開窓術の予後の比較, ④種々のシャントバルブによる治療効果の比較, ⑤抗生剤の術前投与の有効性の有無, ⑥抗生剤入りのシャントシステムと通常のシステムの比較, ⑦シャント感染の治療法, ⑧脳室穿刺部位と脳室カテーテル先端の留置位置の比較, ⑨脳室サイズの測定はシャント治療効果の判定となるか否か. これらの問題に対してシステマチックレヴューが行われ, エビデンスベースのガイドラインとして報告されており, それぞれの研究結果および推奨する方法が紹介されている.
著者
野田 公寿茂 谷川 緑野 太田 仲郎 小田 淳平 原口 健一 木下 由宇 宮崎 貴則 近藤 智正 渡邉 定克 上山 博康
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.65-68, 2021 (Released:2021-01-25)
参考文献数
1

脳神経外科疾患に対する治療手段の多様化などにより, 開頭術者は限られた症例で効率的に手術手技を学ぶ必要性が高まっている. さらに, “働き方改革” など社会情勢が変化する中, 外科医にとっても時間生産性向上が求められている. デジタルイラストレーションの特徴を踏まえ, 筆者らが行ってきた時間生産性, 教育効率性向上を目指した手術イラストを用いた手術教育について報告する.
著者
髙井 敬介
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.326-332, 2017

<p> 脊髄動静脈奇形 (AVM) の分類は数多く複雑でわかりにくい. 1967~2015年の脊髄動静脈奇形に関する英文論文を調べ, 分類の歴史的変遷をまとめた. 1971年の脊髄血管造影の導入による硬膜動静脈瘻 (AVF) と硬膜内AVMの報告, 1986年の脊髄辺縁部AVFの顕微鏡手術の報告, 1993年の脊髄辺縁部AVFの血管内治療の報告, 2002年の脊髄AVMの顕微鏡手術および血管内治療の報告, 2009年と2011年の硬膜外AVFの顕微鏡手術および血管内治療の報告など, 歴史的転機となる報告があった. 画像診断の発展, 顕微鏡手術の発展, 血管内治療の発展が, 脊髄AVM分類の歴史的変遷に大きく寄与した.</p>
著者
福田 修 遠藤 俊郎
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.89-95, 2004
参考文献数
30
被引用文献数
9 1

近年,スノーボードの流行には目をみはるものがあるが,スキーも従来型スキーからカービングスキーが主流となり,また極端に短いファンスキーの愛好者も増えている.スノーボード頭部外傷は,その構造上の特性から,スキーに比べ5〜6倍の発生頻度があり,緩斜面での転倒やジャンプにより後頭部を打ちやすい特徴がある。重症例に関しては,スキーでは衝突により頭蓋骨骨折や脳挫傷を,スノーボードでは転倒により急性硬膜下血腫を起こしやすい.同血腫は脳挫傷を伴うことが少なく,架橋静脈の破綻によるpure subdural hematoma であり,メカニズムとして回転外力が想定されている.スキー・スノーボードによる頭部外傷の現状・予防策など,自験例および文献報告から報告する.
著者
橋口 公章 秦 暢宏 吉開 俊一 谷村 晃
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.8, pp.564-569, 2003-08-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
17
被引用文献数
5 6

悪性腫瘍の硬膜転移に伴う硬膜下血腫の2症例を経験した.症例1では腫瘍細胞の硬膜静脈内への浸潤がみられた.硬膜静脈の閉塞の結果,硬膜内層の毛細血管からの出血が起き,硬膜下血腫が形成されたと推測した.さらに,腫瘍細胞の静脈洞閉塞により頭蓋内圧亢進が生じたと推測した.症例2では,血液凝固異常あるいはDICが血腫形成に関与していた.また,血腫外膜が未発達であることが,大量の間欠的な硬膜下腔への出血に関与していると思われた.
著者
高畠 靖志 宇野 英一 若松 弘一 岡田 由恵 金子 拓郎 土屋 良武
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.125-128, 1998
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

脳梗塞で発症した62歳の男性, 脳血管造影で, 左内頸動脈から分岐し, 脳底動脈へと連なる異常血管を認めた.対側の椎骨動脈は低形成であった.three-dimensional CT angiography(3D-CTA)を行ったところ, その異常血管は舌下神経管を貫いて後頭蓋窩へ入っていることから, persistent primitive hypoglossal artery(PPHA)と診断した.3D-CTAは任意の方向からの立体的な観察が可能であり, 空間分解能が高い.そのため, 骨と血管との相互の関係といった解剖学的な位置関係を把握するのが容易である.本症例においては, 舌下神経管を貫くことが明確に示され, PPHAの診断に有用であった.
著者
長束 一行
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.145-150, 2004
参考文献数
3

頸動脈病変の診断に超音波検査を用いた場合のメリットは,狭窄率や潰瘍の有無といった形態的な情報ばかりでなく,組織性状も推測できることにある.形態診断:狭窄率の精度に関しては,Bモード,カラードプラ,パワードプラ画像に血流速度の情報を加味することで,90%以上の正診率があるとされている.どの診断法をgold standard とするのかという問題もあるが,われわれの成績では画像からの計測のみでは高度狭窄例では過小評価される傾向があった.また,石灰化の強い例などでは計測不能なこともあり,血流速度による狭窄率の評価を併用する必要がある.しかし血流速度による狭窄率の測定はさまざまなパラメーターが用いられ,まだ標準化されていないという問題点がある。組織性状診断:超音波で見えるプラークは,輝度からecholucent,echoqenic,hyperechoicと分けることができ,均一性からhomogeneous,heterogeneousと分類できる. echolucentなものは血腫や粥種,echogenicなものはfibrosis,hyperechoicなものは石灰化を反映しており, 90%以上の精度で組織性状と一致するといわれている.しかし,現在エコー輝度による分類は検者の主観で決定されており,診断装置の機種や設定によりかなり見え方も異なる.今後エコー輝度の定量化が必要と考えられている.
著者
横田 裕行
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.12, pp.942-950, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

重症頭部外傷は, 高い死亡率とさまざまな後遺症の可能性から外傷学の分野でも大きな位置付けがなされている. そのような中で, 頭部外傷を合併した多発外傷患者では体幹外傷を専門とする外傷医と脳神経外科医の密接な連携が必要となるが, 本邦における外傷治療は「防ぎ得る外傷死」の回避のための標準的治療と, 重症頭部外傷治療における治療と管理のガイドラインの発刊によって大きく進歩してきた. 一方, わが国の著明な高齢化社会を反映して高齢者頭部外傷の増加が大きな問題となっている. 高齢者頭部外傷は身体機能の低下, さまざまな既往症の存在から若年者に比較して予後が不良となる. このような背景から重症頭部外傷, 特に高齢者において病態把握の目的でさまざまな頭蓋内モニタリングやバイオマーカーの測定が行われている.  以上のような頭部外傷の治療や管理の困難性の共通認識のもとに, 2014年に日本脳神経外傷学会総会・学術集会と日本外傷学会総会・学術集会でジョイントシンポジウムが企画された. このシンポジウムでは高齢者を含む頭部外傷患者の転帰を改善するための多くの課題や新しい試みなどが議論された.
著者
坂井 恭治 西口 充久 谷本 尚穂 寺坂 薫 菅谷 廣司 東 徹 杉生 憲志
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.8, pp.537-540, 2001-08-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
24
被引用文献数
1

症例は60歳, 女性で, 末梢性前大脳動脈瘤破裂による左急性硬膜下血腫で発症した.来院時, 昏睡状態, 瞳孔は両側とも散大し対光反射は消失, 除脳硬直肢位を示した.緊急に開頭し, 硬膜下血腫を除去, 外減圧術を行った.その後, 意識レベルは徐々に改善したが, 左片麻痺が明らかになった.MRI T2強調画像で小脳テントの延長線上の右大脳脚に病変を認めた.これはKernohan's notch周囲のmyelin destructionをとらえていると思われた.
著者
白根 礼造 林 俊哲 三宅 裕治 冨永 悌二
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.7, pp.510-517, 2010
参考文献数
21
被引用文献数
1

脳神経外科医にとって最初の関門であるシャント手術ではあるが,専門医取得後には真剣に向き合う機会は少ないと考える.昨今のシャントシステムの発展は驚嘆に値し,小さなシステムの中にさまざまな機能を含んでいて,経験を積まなければそのすべてを理解するのは困難であろう.しかし,個々の症例に対し適切なシステムを選択し,バルブ固有の特性に関して必要十分な説明を行うことは医療者側の責任である.本論文では,患者背景による水頭症病態の差異,髄液シャントの歴史的背景,現在普及しているシャントバルブの基本理念および特性,シャント手術に際しての注意点に関して解説した.