著者
橋本 尚美 山根 冠児 沖井 則文 石之神 小織 恩田 秀賢 田路 浩正 花谷 亮典
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.7, pp.525-530, 2009-07-20 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
3 3

特発性脳脊髄液減少症には,数週間の安静や点滴による治療を行い,非改善例に自家血硬膜外注入療法が適応される.今回,特発性脳脊髄液減少症に対する自己血注入療法後5日目に症状が再発し,その後,慢性硬膜下血腫と昏睡を生じた症例を経験した.意識障害に対しては保存的な対応が可能であったため,再度自己血注入療法による脊髄液減少症の治療を先行した後に,穿頭洗浄術を行い症状の改善を得た.髄液漏の再発に伴い,急激な脳圧変化が生じ,硬膜下血腫の増悪や意識障害をきたしうる.さらには検査時の腰椎穿刺が頭蓋内環境の変化を誘発する可能性も考慮する必要があり,初回治療により症状が改善した後にも十分な観察が必要である.
著者
小野 純一 山浦 晶
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.128-134, 1994-03-20 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
4 5

頭蓋内椎骨脳底動脈の解離性動脈瘤50例を出血例と非出血例の2群に分類し,臨床的特徴,血管撮影所見および長期的転帰について検討した.年齢・性差では非出血例は若年男性に多く,解離部位は出血例では椎骨動脈に多いという特徴を認めた.また血管撮影所見の経時的変化では非出血例で血管の形状が改善する例が多い傾向を示した.長期的転帰は出血例ではくも膜下出血の重症度と相関した.外科的治療群では死亡例はわずか1例であり,また保存的治療群でも軽症例では全例転帰良好であった.また非出血例の長期的転帰は外科的治療群・保存的治療群ともに良好であった.
著者
新谷 好正 伊東 雅基 井戸坂 弘之 中林 賢一 卯月 みつる 新谷 知久 早瀬 知 馬渕 正二
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.889-896, 2014 (Released:2014-11-25)
参考文献数
36
被引用文献数
1

脳動脈瘤の開頭手術において, クリッピングのために瘤の減圧を要する場面に時折遭遇するが, 母血管の一時遮断が困難な例がみられる. そのような例に房室伝導を強力に抑制する作用をもつadenosine triphosphate (ATP) の急速静注による短時間の循環停止 (transient cardiac arrest : TCA) 法が有効である. 経験した全例において短時間の心停止に伴う動脈瘤の著明な減圧が得られ, 安全なクリッピングに大きく寄与した. 合併症はみられなかった. TCA法に習熟した麻酔科医との緊密な連携が不可欠であるが, 本法は母血管の一時遮断に並んで考慮すべききわめて有用な方法である.
著者
キッティポン スィーワッタナクン
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.505-514, 2017 (Released:2017-07-25)
参考文献数
12

開頭手術と同様に血管内治療脳神経外科領域において正確な血管解剖の知識が安全な治療に必要である. 特に治療そのものが正常血管に影響を与える可能性が高い硬膜動静脈瘻や頭蓋底腫瘍の塞栓術の場合, 脳血管撮影では確認しにくい血管吻合や脳神経を栄養する血管があり, 正確な解剖の知識が要求される. ここでは特に血管吻合が豊富である眼窩領域, 海綿静脈洞領域, 頭蓋頚椎移行部領域について脳神経外科医が最低限身につけておくべき血管解剖を解説する.
著者
秋山 恭彦 宮嵜 健史 萩原 伸哉 中右 博也 神原 瑞樹 吉金 努 辻 将大 藤原 勇太 内村 昌裕 永井 秀政
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.10, pp.728-737, 2017 (Released:2017-10-25)
参考文献数
32

頚動脈ステント留置術は, 全身性動脈疾患であるアテローム性動脈硬化症に対し, 頚部局所のアテロームを制御する治療で, 低侵襲であるために, 周術期の心筋梗塞をはじめとする全身性合併症を低く抑えることが可能である. しかし, 治療本来の目的は脳梗塞予防であるため, 現行の治療は, 周術期の脳虚血イベントを十分に制御できているとはいえない. 本稿では, これまでの頚動脈ステント留置術と頚動脈内膜剝離術のランダム化比較試験および, そのサブ解析の結果を概説し, 本治療法の現状と課題を周術期脳虚血合併症に焦点をあて整理し, 次世代への治療の進歩を探る.
著者
徳永 浩司
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.10, pp.827-833, 2016 (Released:2016-10-25)
参考文献数
50
被引用文献数
2

頚動脈狭窄症に対しては, 1990年代以降の大規模ランダム化試験によりCEAの有効性が確立され, その後CASが導入され, CEAとの比較試験が行われた. 現在も各試験の長期的追跡と, 最良内科的治療を含む新たな試験が進行中である. 実際の臨床現場では, 患者の年齢, 症候, 治療時期, 基礎疾患, 過灌流リスクなどの背景, および大動脈弓形状やプラーク性状, 対側閉塞などの解剖学的特徴と術者の技量を勘案して治療手段を選択している. 最近はMRI, CTA, エコーなどの頚動脈イメージングで脳卒中リスクを層別化する動きが盛んである. 本稿ではCEAかCASかの治療手段選択にあたって理解すべき, 上記の項目に関する知見について概説する.
著者
岩崎 真樹 神 一敬 加藤 量広 大沢 伸一郎 下田 由輝 中里 信和 冨永 悌二
出版者
The Japanese Congress of Neurological Surgeons
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.9, pp.744-749, 2014

両側頭蓋内電極留置によって術前精査と逆側の発作起始を捉えた側頭葉てんかんの1例を経験した. 症例は35歳右利き男性. 20歳のときに難治の複雑部分発作を発症した. 頭部MRIとFDG-PETは正常. 発作間欠時に両側側頭部のてんかん棘波を, 発作時に右側頭部に始まる脳波異常を認めた. 両側海馬と側頭葉に頭蓋内電極を留置して記録したところ, 左海馬に始まり対側海馬に伝播する発作が確認された. 左側頭葉前半部切除術を行い, 術後12カ月にわたり発作は完全消失している. 病理学的に皮質形成異常と海馬硬化が認められた. 側方診断に疑問がある側頭葉てんかんは, 両側電極留置によって発作起始を確認することが重要である.
著者
高見澤 幸子 森野 道晴
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.705-711, 2015 (Released:2015-10-25)
参考文献数
9
被引用文献数
2

難治性てんかんに対する迷走神経刺激療法は, 比較的手術手技が容易であるが, 迷走神経の正確で迅速な同定が重要である. 迷走神経とその周囲の総頚動脈 (CCA) および内頚静脈 (IJV) の解剖学的位置関係にはバリエーションが多く, 症例によっては迷走神経の同定に難渋することがある. われわれは, 頚部迷走神経の走行をCCA, IJVとの位置関係から5つのタイプに分類した.  Type 1 : IJV内側でCCA腹側, Type 2 : IJV内側でCCA外側, Type 3 : IJV内背側でCCA腹側, Type 4 : IJV内背側でCCA外側, Type 5 : CCA背側.  最も頻度が高いのはType 3である. Type 1から5になるにしたがい, 手術手技が煩雑になり, 難易度も高くなる. このような解剖学的バリエーションを念頭に置いてVNS手術に臨むことは, 初心者でも安全で正確な手術を行ううえで効果的である.
著者
亀山 元信 小沼 武英 昆 博之
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.12, pp.816-821, 2004-12-20
被引用文献数
3

全国的なスポーツ外傷データベースの構築は重症スポーツ外傷の発生予防の見地から重要な意義があり,本邦でもその整備が期待される.直接的スポーツ外傷による死亡は頭部外傷に,後遺症を残す重症例は頸部外傷に多く発生している.特に重症頭部スポーツ外傷予防のために脳震盪の意義を再確認すること.second impact syndromeを防止するために脳震盪後の試合復帰についての統一的なガイドラインの導入が早急に望まれる.またスポーツ外傷だけでなく一般外傷においても,本邦における外傷初期診療ガイドライ(JATEC)に準じて初療からの管理が行われるべきである.
著者
櫻井 卓 上山 憲司 大里 俊明 荻野 達也 遠藤 英樹 御神本 雅亮 高平 一樹 浅野目 卓 中村 博彦
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.748-753, 2016
被引用文献数
3

<p> 慢性硬膜下血腫は脳神経外科領域で遭遇する機会の多い疾患であり, 治療法としては穿頭術が標準的な治療となっている. 血腫の排液により症状の改善を認め, おおむね良好な成績を得ているが, 術後血腫の再発をまれならず経験する. 今回当院で経験した慢性硬膜下血腫の再発危険因子を検討し文献的考察を加えて報告する.</p><p> 2014年1月1日~2015年7月31日に当院で手術を施行した慢性硬膜下血腫187症例 (222手術例) を対象とし, 患者因子, CT所見について後方視的に比較した.</p><p> 再発は187症例中26症例に認め, 再発率は13.9%であった. 統計学的に有意差 (p<0.05) を認めた再発危険因子は, 患者因子では年齢, 高血圧の既往, 抗凝固薬の内服であった. 術前CT所見では, 血腫量, 正中偏位, ニボーであった. 術後CT所見ではday 1, 7での血腫縮小率であった.</p><p> 再発を起こす例は術後1週間で血腫がすでに増大していることが多く, 術後翌日から1週間後にかけての血腫増大または増大率により, 再発を早期に予測できると考えられる.</p>
著者
常盤 嘉一 倉田 彰 宮坂 佳男 橘 滋国 矢田 賢三 大和田 隆 菅 信一 向野 和雄 高木 宏
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.128-132, 1993
被引用文献数
2

視野障害をきたす特徴的な水頭症の所見を得るために,後頭蓋窩腫瘍にて閉塞性水頭症をきたした28例の画像を検討した.視野障害群(n=6)と視野正常群(n=22)で,計測を含めたCTの検討を行った.第3脳室幅の著明な拡張と,同脳室の著明な下方進展が視野障害をきたす特徴的な所見であった.すなわち,両群間で,側脳室の拡大の程度に有意差はなかった.視野障害群では第3脳室幅(平均12 mm)が有意に嵩値を示した.また第3脳室の著明な下万伸展(トルコ鞍内への陥入)例が視野障害群(4/6例)で有意に多かった. MRIは2例中1例で視交叉と第3脳室および内頚動脈との関係を明瞭に描出した.今後,視野障害の責任病変の把握に有用となることが期待された.
著者
梶 龍兒
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.310-315, 2005-05-20

種々の不随意運動は大脳基底核, 小脳, 大脳皮質, 脊髄などを含むフィードバックループの障害と考えることができる.本論文では大脳基底核とそれを含む運動ループの生理的な役割と疾患, 特にパーキンソン病とジストニアにおける異常について詳説する.このループ内では運動に関係した知覚入力のみが処理されていると考えられるが, その選択(gating)に異常をきたすと運動に不必要な筋の収縮がみられ, ジストニアなどの不随意運動をきたす.パーキンソン病ではこの感覚入力と運動出力のgain control (scaling)の異常が起こり運動が過少になる.このような知覚情報処理が基底核の生理と病理できわめて重要な意味をもっている.
著者
平沼 直人
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.506-512, 2016 (Released:2016-06-25)
参考文献数
6

未破裂脳動脈瘤コイル塞栓術死亡事件を例に, 医療訴訟について紹介し, 脳神経外科領域において医療水準論をどう捉えるか考察し, 慢性硬膜下血腫除去術後のドレナージチューブ抜去に伴う大量出血のような合併症を取り上げ, 説明こそ最大の防御であることを結論とした.
著者
大同 茂 難波 克成 小野 恭裕 田宮 隆 大本 堯史
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.12, pp.796-800, 2001-12-20
被引用文献数
1

9歳男児, 思春期早発症を伴った大脳基底核部HCG(human chorionic gonadotropin)-producing germinomaの1例を報告した.頭痛・嘔吐・左不全片麻痺・性早熟を主訴に近医を受診し, CTおよびMRIで右基底核部に腫瘍を認め, 当院紹介となった.入院時, 血清HCG値は90mIU/mlと上昇していた.定位的腫瘍生検を行い, 病理組織はgerminomaで, 血清HCG値の軽度上昇を認めることから, HCG-producing germinomaと診断した.化学療法(ICE療法)および放射線療法(拡大局所照射24Gy)を実施した結果, 血清HCG値は正常化し, 画像上, 腫瘍はほぼ消失した.本症例では, 腫瘍から産生されるHCGのLH作用により思春期早発症をきたしたものと考えられた.
著者
川又 達朗 片山 容一
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.666-673, 2009-09-20
被引用文献数
4

スポーツ医学の分野では,脳振盪が注目されており,予防を中心にさまざまな研究が行われている.軽症の頭部外傷である脳振盪の予防が強調されるのはなぜであろうか.スポーツによる脳振盪の特徴は,繰り返して起こしやすいこと,軽症であるがゆえに診断,重症度の評価と競技への復帰時期の判断が難しいことである.繰り返す脳振盪は,頭部外傷後脳症や脳振盪後症候群などを引き起こす.尚早な復帰はセカンドインパクト症候群や急性硬膜下血腫など,重篤な頭部外傷の発生につながる可能性がある.脳振盪を起こしやすいスポーツ環境は,急性硬膜下血腫による死亡率が高いことも報告されている.スポーツ頭部外傷,特に脳振盪について現状の考え方をまとめる.
著者
溝口 昌弘
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.366-377, 2015 (Released:2015-06-25)
参考文献数
93

TCGAに代表される大規模癌ゲノム解析により, 体系的かつ包括的なゲノム解析が推進され, グリオーマにおいて新たな知見が続々と報告されている. ゲノム, トランスクリプトーム, エピゲノムといった複層的な解析により, その全体像が明らかとなりつつある. 次世代シークエンサーに代表される, 近年の技術開発に伴い, その解析速度は飛躍的に向上し, 大量のゲノムデータが公開されるとともに, その複雑さも明らかとなった. 本稿では膠芽腫を中心に, これまで明らかとなった知見を総括し. 現時点での問題点と今後の課題について考察した.
著者
中川 俊男 端 和夫
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.341-350, 1995-07-20
被引用文献数
11

1988年3目から開始した脳ドック600例中,36例(6.0%)に37個の無症候性未破裂脳動脈瘤が発見された.初期の370例に施行したIA-DSAと最近の230例に施行したMRAにおける発見率の差はなかった.発見された動脈瘤は,94%が10mm以下で破裂例に比べ前交通動脈瘤が少なく,内頸動脈瘤,特にC2-3,C3部瘤が多いことが判明し,前者に比較し後者が破裂しにくい可能性が示唆された.また,2親等以内にくも膜下出血の家族歴をもつ人では,15.5%という高率(p<0.01)に未破裂脳動脈瘤が発見された.37個のうら33個が手術適応があるとしたが,インフォームド・コンセントの結果,26例26個の動脈瘤に対して根治手術(neck clipping)を施行した.手術死亡率0%,手術罹病率は嗅覚減退の1例(3.8%)のみであった.今後,手術適応のない症例の取扱いなど問題点を克服していくことができれば,有効なくも膜下出血の予防をすることができると思われた.
著者
田中 秀一 川西 昌浩 加茂 正嗣 西原 賢太郎 山田 誠 横山 邦夫 伊藤 裕
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.200-206, 2011-03-20

骨粗鬆症性椎体圧迫骨折では,圧潰椎体の後壁が脊柱管内に突出して脊柱管狭窄をきたし,腰痛に加えて神経症状を呈すことがある.今回,本病態の7症例(平均74歳)に対し低侵襲治療を目的に,一期的に椎体形成術と後方除圧術を施行し短期治療成績を検討した.術後,腰痛は全例で軽快し,JOA scoreは術前10.6から術後20.3,椎体高は前方と中央で有意に改善した.歩行不能であった3例とも歩行可能となり,跛行は4例中3例で消失した.こく短期間の検討では,同法は低侵襲に骨折椎体の前方支持性と神経症状,腰痛を改善できた.同法の有効性を論じるには症例の蓄積と長期経過観察が必要だが,特に固定術が躊躇される症例で治療オプションとなる可能性がある.
著者
前田 剛 春山 秀遠 山下 正義 大野 奈穂子 石崎 菜穂 長谷川 一弘 田中 茂男 渋谷 諄 小宮 正道 牧山 康秀 秋元 芳明 平山 晃康 片山 容一
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.517-522, 2006-07-20
被引用文献数
4

スポーツによる顎顔面骨骨折は,交通事故,転落・転倒に次いで3番目に多く,10〜20歳代の男性が大多数を占めた.種目では野球/ソフトボールが最も多く,次いで空手,サッカー,ラグビー,ボクシングの順であった.受傷原因は,格闘技においては全例が打撃を含めた対人衝突であったが,球技においても大多数が対人衝突による受傷であった.骨折の好発部位は下顎骨体部であり,多発骨折例では下顎骨体部と対側の角部との骨折が最も多く認められた.スポーツによる頭蓋顎顔面骨骨折の特徴を十分理解したうえで,マウスガードやフェイスガード付ヘルメットなど各種スポーツの特性にあった予防対策の検討を行うことが必要であると考えられた.