著者
糸川 英樹 加納 六郎 金子 茂 中嶋 暉躬 安原 義 与那原 孫伝
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.67-71, 1981
被引用文献数
8

サソリモドキ類は世界で約70種が知られ, 日本には1属2種, タイワンサソリモドキTypopeltis crucifer Pocock, 1894とアマミサソリモドキT. stimpsonii (Wood, 1862)を産する。これらは肛門付近から酢酸臭の強い分泌液を噴射する。米国産大形種Mastigoproctus giganteusについてはEisner et al. (1961)の報告がある。われわれは沖繩石垣島産タイワンサソリモドキの噴射液を, ガスクロマトグラフィー, マススペクトラム法, 高速液体クロマトグラフィーを用いて調べ, その組成は, 酢酸81.7%, カプリル酸5.4%, 水12.9%で, 活性アミン, ペプチド様物質は痕跡程度であった。Eisnerの報告では酢酸84%, カプリル酸5%, 水11%で, このように地域, 属が異なるのに噴射液の組成がほぼ同様であることは興味深い。
著者
田原 雄一郎 望月 香織
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.139-143, 2005
被引用文献数
2

33種のハーブのエタノール抽出液をベニヤ板製のゴキブリのシェルター(5cm×5cm, 5mm隙間)に浸漬させ, チャバネゴキブリ10頭(♂または♀)を放ったプラスチック円形容器(半径15cm, 高さ17cm)に無処理シェルターとともに対角の位置に置いた.それぞれのシェルター区に48時間で落下した糞の数から忌避性を求めた.その結果, デイル, セロリ, キャラウェイ, クミン, コリアンダー(以上, セロリ科), シナモン(クスノキ科), メース(ニクズク科)およびトウガラシ(ナス科)を処理したシェルター区には糞の落下数が極めて少なく, 無処理区のシェルターに90%以上の糞が落下した.これは, これらのハーブを処理したシェルターを忌避したからと判断した.忌避性は1ヵ月以上持続した.また, ハーブ抽出液を80倍程度希釈しても効力は維持した.他方, アニス, サンショ, オニオン, ユーカリなどの抽出液では誘引性が確認された.
著者
渡部 泰弘 田原 雄一郎
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.1-8, 2010
被引用文献数
3 1

Lethality and repellency of emulsifiable concentrates (EC) or microencapsulated concentrates (MC) of fenitrothion, diazinon, propetamphos and chlorpyrifos-methyl were examined with 12 separate colonies of the German cockroach, Blattella germanica. Field colony individuals were collected from 5 different restaurants situated on the 7th floor of a building in Koto-ku, and 7 restaurants located on the 5th floor of another building in Meguro-ku, Tokyo, Japan. Adult male progeny of each colony were released into a container with insecticide-treated harborage surfaces. All colonies, except for the one from the Italian restaurant in Koto-ku, showed low levels of susceptibility to fenitrothion EC and MC, diazinon EC and MC, chlorpyrifos-methyl EC and propetamphos EC. However, the levels of lethality against colonies varied even though they originated from the same floor of a building. The poor efficacy of the test insecticides was probably a result of long-term use of these compounds in this area of building. Various susceptibilities among colonies indicate that the German cockroach does not frequently hybridize between restaurants even located on the same floor of a building. Propetamphos MC was the most effective against all exposed colonies, followed by fenitrothion MC and diazinon MC. Changes in behavior toward insecticides and insecticide resistance in the EC formulations may cause low mortalities in cockroaches. The test colonies showed two different types of low susceptibilities, one due to high aversion to the test formulations and another due to insecticide resistance.
著者
高木 正洋 津田 良夫 和田 義人
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.223-228, 1995
参考文献数
12
被引用文献数
12

羽化後4∿5日齢の未吸血雌1,478頭を螢光塗料(0.5% Rhodamine B水溶液)でマークし, 長崎大学医学部キャンパス内のグビロガ丘に放逐した。再捕獲雌数の時間的変化および空間的な違いを調査するために, 固定した10ヵ所で9日間人囮採集を行った。その結果, 合計348頭(23.55%)の雌が再捕獲された。捕獲地点間で観察されたマーク個体数の違いを, 各捕獲地点の放逐地点からの距離とそこで捕獲された無マーク虫数を独立変数とした重回帰によって分析した。放逐地点からの距離の標準回帰係数は時間経過とともに低下し, 一方無マーク虫のそれは逆に高くなった。また, 再捕獲虫数の時間的変化を対数回帰分析し, 放逐地点および調査地域におけるマーク個体の生残確率を求めた。
著者
比嘉 由紀子 津田 良夫 都野 展子 高木 正洋
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.205-209, 2000
被引用文献数
4 16

1998年9月, 長崎大学熱帯医学研究所敷地内で家屋周辺の茂み及び裸地においてヒトスジシマカの24時間採集を行い, 周辺環境の異なる採集場所における吸血活動性と密度のちがいを調べた。ヒトスジシマカの密度は茂みで高く, 屋内や裸地で低かった。吸血活動は薄明薄暮に高まり, 夜も高かった。最も活動性が高い薄暮には, 統計的な有意差はみられないが, 昼間や夜間に比べて屋内や裸地で採集される雌個体の割合が高かった。以上の結果からヒトスジシマカの生態における夜間の吸血活動の重要性と薄明薄暮には茂み以外に裸地や屋内などでも吸血される機会が増加することが示唆された。
著者
朝比奈正二郎 野口 圭子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, 1968
被引用文献数
2 1
著者
長谷山 路夫 飯塚 信二 大前 比呂思 津田 良夫
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.191-197, 2007
被引用文献数
9

Aircrafts arriving at Narita International Airport, Japan were inspected for mosquito vectors of human diseases accidentally introduced into the country. During 5 years from 2001 to 2005 a total of 2, 161 aircrafts were inspected and 28 adult mosquitoes were found from 26 (1.2%) of the aircrafts. Thirteen aircrafts with mosquitoes came from North and South America, 12 aircrafts from Asia and Oceania, and one aircraft from Europe. The mosquito species found in the aircrafts were Culex pipiens complex, Anopheles sinensis, Aedes vexans nipponii, Cx. tritaeniorhynchus. Mosquito species occurring at the government ordinance area of Narita International Airport were examined by dipping collection of larvae, ovitraps, light traps, and dry ice traps, and identified into 12 taxa belonging to 8 genera. In the terminal building of Narita International Airport, adults Cx. pipiens complex were collected year round suggesting the establishment of foreign vector mosquitoes accidentally introduced from tropical/subtropical areas through aircrafts. All of 15, 231 adult mosquitoes examined were negative for 5 mosquito-borne diseases ; yellow fever, dengue fever, Japanese encephalitis, West Nile fever, and malaria.
著者
黒佐 和義
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.235-244, 1958
被引用文献数
1

1.人体に水疱性皮膚炎を惹起する有毒甲虫Xanthochroa waterhousei Haroldアオカミキリモドキの生活史・習性につき観察を行つた.2.成虫・幼虫及び卵の形態を簡単に記載した.成虫の重要な種的特徴は腹端部に見出された.幼虫は胸部各節及び第1・2腹節の背面と第3・4腹節の腹面に顆粒を伴つた疣状膨隆部を具えるが, 初齢では不顕著であつた.また終齢幼虫は無眼であるが, 初齢では2対の単眼が認められた.卵は両端の円い棒状で乳白色を呈し, 長さ約1.3〜1.4mm, 幅約0.35〜0.41mmであつた.3.本邦各地に於ける成虫の出現期間を調査した.特に東京都成増と福岡県浮羽地方ではライトトラップを用いて季節的消長を調査した.大分県佐伯地方では4月下旬より6月中旬迄, 浮羽地方では5月上・中旬より7月上・中旬迄(稀には7月下旬迄), 神戸附近では5月中旬より7月中旬迄, 東京都成増では5月中旬より7月上・中旬迄出現し, 関東・中部の山岳地帯や北海道では9月に入つてからもなお活動するもののあることが知られた.一般にその発生は初夏の候に最も多いが, 北上するにつれて, また海抜高度を増すにつれて出現期の遅れる傾向が著明に認められた.4.成虫は夜間活動性で昼間は樹木の葉裏などに静止していて活動するものを殆ど見ないが, 夕刻に栗などの花の廻りを群飛する習性のあることを認めた.野外観察, 摂食実験, 消化管内容の検査などから成虫は種々の花特に花粉を食するものと考えられた.砂糖水のみを与えて飼育した成虫のうち採集後42日間生存したものがあつた.5.東京都成増で成虫の灯火飛来の時刻的消長を調査したところ, 明かに前半夜型で, 特に暗化後1〜2時間以内に集中的に採集された.6.成虫に圧迫を加えると, 前胸背の前縁と後縁のやや側方部, 翅鞘の縦隆線, 趺節の末端等から水様透明の毒液を分泌するのが認められた.7.交尾は雄が雌の背上に同方行に平行して乗る型である.また雌が他の雌の背上に平行して乗り, 一見雄が雌に交尾をいどむ際の行動によく似たふしぎな動作を行うものが飼育器内でしばしば認められた.8.飼育器内で雌が産卵管を長くつき出し狭い間隙に挿入して卵を塊状に産下するのが認められた.1卵塊中の卵の数は調査例(5例)では56〜221個であつた.卵は常温(13.9〜31.6℃)では約7〜14日で孵化した.9.幼虫は野外では杉の丸太の接地部及び土中部のやや腐朽した材部(縁材)に穿孔していたものが見出された.よつて土を盛りそれに杉の半腐朽木を埋めこんだ大形水槽を用意し, 孵化直後の第1齢幼虫を放つて飼育を試みたところ, 翌年5月に1頭の成虫が羽化出現した.従つて本種は1年1世代と考えられる.10.本邦各地で昼間野外から採集された成虫は雌雄の個体数に著しい差が認められなかつたが, 東京都成増で夜間灯火から得られた成虫の性比を調べたところ雄は雌に比べて極端に少くて総数の2%にすぎないことが知られた.これは雄の慕灯性が雌よりも弱いことによるものと考えられる.
著者
糸川 英樹 加納 六郎 中嶋 暉躬 安原 義
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.83-86, 1985
被引用文献数
4

日本産有毒鱗翅目の12種(カレハガ科 : マツカレハ, ツガカレハ, イワサキカレハ, タケカレハ;イラガ科 : イラガ, クロシタアオイラガ, アオイラガ, ヒロヘリアオイラガ;ドクガ科 : ドクガ, チャドクガ, モンシロドクガ;マダラガ科 : タケノホソクロバ)の幼虫の毒針毛, 毒棘中に含まれているヒスタミンとセロトニンの定量を, イオン交換高速液体クロマトグラフィーを用いて行った。セロトニンは, すべての種において見出すことができなかった。ヒスタミンは, カレハガ科4種には見出せなかったが, 他の8種にはすべて見出され, その定量を行った。
著者
頓宮 廉正
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.299-300, 1995
参考文献数
5

1997年7月7日前後に岡山大学歯学部棟2階の事務室にダニが多数発生した。ダニは体長約1mmで全体に赤色を呈していた。形態的特徴よりハマベアナタカラダニの成虫と同定した。これらのダニは人を刺すことはなかったが, 机上, 書類, ロッカー壁, 側壁面等を這い回り不快感を与えた。1週間以内に自然消滅したが窓より侵入したものと考えられた。しかしその発生源は特定できなかった。
著者
中村 譲 山形 洋一 高岡 宏行 高橋 正和 OCHOA A. J. Onofre MOLINA Pedro A. 高橋 弘
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.51-58, 1981
被引用文献数
3

国際協力事業団のグアテマラ共和国におけるオンコセルカ症の研究と防除プロジェクトは1976年から5年計画として開始された。その昆虫学部門は, エスクイントラ県サンビセンテパカヤ郡のパイロット地区の北部を流れるラバデロス川流域において最初のブユ駆除をおこなった。対象種はSimulium ochraceumとし, テメフォス10%固型剤を水量0.5l/secあたり2g投入することを2週ごとに繰り返した。作業は1979年3月下旬より開始され, 同年5月末までの結果につき報告した。同川には支流が21本あり, 支流上流部で水量0.1l/sec以上の流れのすべての水源と, 途中で2倍以上に水量が増加する点とを殺虫剤投入点としたところ, 5月末現在で投入点は57カ所となった。投入薬量は合計242gであった。作業量は2人1組で乾季で1日半であった。殺虫剤投入前に19支流調査して11支流にS. ochraceum幼虫が存在したが, 2回目の殺虫剤投入後には21支流中4支流のみで同種幼虫が見いだされた。幼虫定期観察のための2カ所の定点においては, 10分間採集法でも人工基物(シリコンチューブ)法でも1∿5週後に幼虫はゼロになった。成虫は, 殺虫剤投入2∿4週間前に人囮3時間採集法で286∿403個体採集されたが, 徐々に減少し, 5月かには6個体になった。テメフォス固型剤は, ブユ幼虫に対する高い有効性とともに作製, 保存, 運搬, 投入などの点から野外での実際の散布計画でも有望と思われる。
著者
中嶋 暉躬 安原 義 吉田 久信 上野 弥生 大塚 智恵 浜本 昌子 信森 光子 平井 裕子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.139-147, 1984
被引用文献数
8

本邦産スズメバチ科のハチ毒キニンを単離し, その構造を解析した。すでにわれわれが構造を解析したものも含め, 9種類の本邦産ハチ毒キニンのアミノ酸配列からPolistes属, Vespa属およびVespula属のハチ毒キニンの構造上の特徴を提示した。
著者
川田 均 堂原 一伸 新庄 五朗
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.317-322, 1987
被引用文献数
3 27

昆虫に対して高い幼若ホルモン様活性を示すピリジルエーテル系化合物, S-31183の薬剤感受性系およびピレスロイド抵抗性系イエバエ幼虫に対する活性を, 種々の方法により検討した。局所施用法, 短時間の浸漬試験, および人工培地への混入試験により, S-31183はイエバエ幼虫に対して高い羽化阻害効果を示し, その活性はメトプレンやジフルベンズロンの活性に勝った。ピレスロイド抵抗性系のイエバエを用いた準実地的な試験においても本剤は高い効力を示し, イエバエ幼虫防除への実用化が期待された。
著者
福田 昌子 . 佐藤 寛子 Choochote Wej 高岡 宏行
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.121-123, 2004

Gynandromorphism was found in one adult black fly of Simulium asakoae collected while attracted to a human in Thailand. This is the first record of sexual mosaicism of Simuliidae in Thailand.
著者
大滝 哲也 長 正雄 引地 徳郎 桑原 豊吉 安富 和男 朝比奈 正二郎
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.193-198, 1964
被引用文献数
1

1.1964年6月10日より9月6日まで, 埼玉県越ケ谷市の大規模な養鶏業者が集まつている部落で, そこに多量に発生しているオオイエバエを駆除する目的で, 殺虫剤撒布による野外実験を実験した.2.撒布殺虫剤はいずれも人畜低毒性の, Nankor Sumithion, Dipterexを選び, 部落を3つの実験区にわけ, それぞれ2週間おきに6回各乳剤の稀釈液を撒布した.第1回から第3回の散布までは, 原体量で0.05%を含む各乳剤の稀釈液を, 鶏舎ならびに乾糞場の鶏糞に1m^2当り500mlずつ撒布した.第4回から第6回までは鶏糞の他に, 鶏舎ならびに付近の住居の天井, 壁面に対する残留噴霧(0.5%, 1m^2当り50ml)もあわせ実施した.3.ハエの棲息密度の調査には, ハエ取りリボンと, ハエ取り紙を用いた.その結果, 殺虫剤撒布前に非常に多かつたオオイエバエは, 薬剤撒布によつて次第に減少し, 第3回撒布以降は極めて少数となつた.しかし, その頃からイエバエが増加しはじめ, 一時その数がかなり多くなつた.4.この地区でのオオイエバエの多量発生は, バタリーないしケージ鶏舎によるニワトリの多羽飼育と深い関係があると思われるが, オオイエバエの殺虫剤撒布による減少と同時にイエバエが多量に発生しはじめたことは特殊な条件によるものか, 一般的なものか, なお検討する余地が残されている.