著者
佐々木 均 秦 和寿 野沢 森生 橋場 利雄
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.329-331, 2020-12-25 (Released:2020-12-17)
参考文献数
26

The role of zebra stripes is considered to be defensing from blood sucking by insects, such as tsetse flies and tabanid flies, those perform actively host-seeking flight. Aedes albopictus is opportunistically blood sucker, so, the reaction to zebra stripes may be different from such flies. Thus, we investigated the reaction of A. albopictus to the rugs of three color patterns, black, white, and zebra stripes. During the sunny days on August and September, 2019 with three different times in a day (morning, daytime, and evening), we counted the number of mosquitoes landed on the rugs on human decoy at a park in Tokyo. Significant difference (p<0.05) was found in the total number of mosquitoes landed on the three types of rugs, while no significant difference (p>0.05) was found in the numbers of mosquitoes landed on the rugs at each observation time. The number of A. albopictus which landed on the black-colored rug was two times more than that of a mosquito flying around the face of human decoy, while those on the rugs of white color and zebra stripes were a half and only 3% of those flying around the face of human decoy, respectively. The lured A. albopictus landed smoothly on the black rug, but the landings were not smooth on the zebra-striped rug. It was revealed that A. albopictus avoids zebra stripes as same as tsetse flies and tabanid flies.
著者
黒佐 和義
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.245-276, 1958-12-10 (Released:2016-09-04)
被引用文献数
8 8

1)線状皮膚炎を惹起する有毒甲虫, Paederus fuscipes Curtisアオバアリガタハネカクシの生活史・習性について野外観察並びに実験的調査を行い, また各期の外部形態を記載した.2)成虫は体長7mm内外で一見蟻のような形状を有する.蛹は体長4.5mm内外の裸蛹で, 全体乳白色乃至橙黄色を呈し, 前胸背の前縁部と後縁部及び第1, 3〜7腹節の側端に各1対の非常に長い剛毛状突起がある.第2齢(終齢)幼虫は体長4〜6mmで, 細長く, 白色乃至橙黄色を呈し, 第9腹節に1対の長い尾突起を具える.第1齢幼虫は体長2.2〜2.4mm.卵は殆ど球形で, 産下当初は淡黄白色で長径約1.1〜1.2mmであるが, 発育に伴つて急速に増大し, 色彩も黄褐色に変る.3)本種は本邦では北海道から九州迄全土に亘つて広く分布するが, 概して暖地に多産し, 水田・畑・池沼の周辺・川岸などに棲息する.成虫は地表及び雑草上で生活する.東京都の成増では成虫は4月下旬乃至5月中旬頃から10月下旬に亘つて灯火に飛来し, 6・7月頃にピークを形成するのが認められた.成虫の灯火飛来活動はいわゆる前半夜型に属し, 暗化後2時間半以内の飛来個体が1夜の総飛来数の過半に達した.4)交尾の際, 雄は雌の背上に乗り, 大腮で雌の前胸と中胸の間の縊れた部分をくわえる.卵は地表の土壌間隙に1個ずつ産下される.1頭の雌の総産卵数は18〜100個(平均約52.3個)であつた.越冬した雌は4月下旬乃至5月中旬から通常7月中・下旬迄産卵を行い, 6月上旬に羽化した成虫は7月から9月に亘つて産卵を行つた.5)卵期間は3〜19日で, 孵化率は96.2%であつた.幼虫期は僅か2齢からなる.第1齢及び第2齢の期間はそれぞれ約4〜22日及び7〜36日であつた.老熟した幼虫は浅い土中に蛹室を造り, 約2〜9日後蛹化する.蛹の期間は約3〜12日であつた.6)成虫は雑食性であるが, 特に食肉性の傾向が強く, 野外では種々の昆虫, ダニ, 土壌線虫などを捕食し, また植物のやや腐敗した部分などを食するのが見られた.幼虫の食性も成虫と同様であつて, 捕食性の傾向が強く, 実験室内では牛肉或いはキュウリの一片の何れを与えても飼育することが出来た.7)周年生活環は東京附近では不規則で1年3世代のものと2世代或いは1世代のものがある.越冬は常に成虫態で行われる.越冬の際多数の個体が集団を作ることがある.8)有毒物質は卵・幼虫・蛹・成虫の何れからも証明された.成虫では有毒物質は体液中に含まれており, 虫体が破壊されて体液が外へ洩れ出ない限り皮膚炎を起すことはないと考えられる.本邦に産するPaederus属のハネカクシ8種のうち, fuscipes, tamulus, poweri, parallelusの4種は有毒物質を含むことが判明したが, 線状皮膚炎の原因として実際に重要なのはアオバアリガタハネカクシ唯一種である.本邦に於いて筆者により明かにされた灯火飛来性を有する68種のハネカクシの内には皮膚塗擦試験で軽微な皮膚炎を惹起するものがあるが, アオバアリガタハネカクシ以外に線状皮膚炎の症状を呈するものはない.
著者
山内 健生 小原 真弓 渡辺 護 安藤 秀二 石倉 康宏 品川 保弘 長谷川 澄代 中村 一哉 岩井 雅恵 倉田 毅 滝澤 剛則
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.23-31, 2009
被引用文献数
1

1991-2007年に富山県においてフランネルによるマダニ採集を行い,3,562個体のマダニ類を採集した.これらのマダニ類は次の2属9種に分類された:キチマダニHaemaphysalis flava,ヤマトチマダニH.japonica,ヒゲナガチマダニH.kitaokai,フタトゲチマダニH.longicornis,オオトゲチマダニH.megaspinosa,ヒトツトゲマダニIxodes monospinosus,タネガタマダニI.nipponensis,ヤマトマダニI.ovatus,シュルツェマダニI.persulcatus.ヤマトマダニは標高401m以上の地域における最優占種で,それより低い標高域においても少なからぬ密度で分布することが示された.キチマダニは標高400m以下の地域における最優占種であった.ヒゲナガチマダニ,オオトゲチマダニ,およびヒトツトゲマダニを富山県から初めて記録した.ヒトツトゲマダニからRickettsia helveticaの近縁リケッチアが検出され,富山県における紅斑熱患者発生の可能性が示された.
著者
小久保 醇
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.250-252, 1961-12-25 (Released:2016-09-05)
被引用文献数
1 1

1. The parasites recovered from the pupal collections of pine-moth in Kashima district, Ibaraki Prefecture during June 12 to July 5, 1961 are shown in Table 2. The most abundant species was Sarcophaga harpax Pandelle and it was recovered from 10 per cent of the field-collected pupae. 2. The number of Sarcophaga harpax found in each host was 1 to 21, and mostly 3 to 8.(Fig. 1) 3. Brachymeria minuta Linne was recovered from the Sarcophaga pupa as the secondary parasite.
著者
大利 昌久 新海 栄一 池田 博明
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.111-119, 1996-06-15 (Released:2016-08-23)
参考文献数
44
被引用文献数
16 16

The redback spider, Latrodectus hasseltii, is a common venomous spider in Australia. This species had not been recorded in Japan until late 1995. Large numbers of redback spiders were collected in Osaka City and in Yokkaichi City, Mie Prefecture, in November 1995. Another species of widow spiders, namely, the brown widow spider L. geometricus, was also collected in various ports : Yokohama, Tokyo, Nagoya, Osaka and in Okinawa. The author has reviewed current available information on widow spiders including the life cycle, reproduction, hunting behavior, systematics and distribution of each species, etc. The invasion route of these species into Japan is also discussed. The invasion of redback spiders into Japan apparently dates back several years as frequently old, empty egg sacs have been found. There is no information on how the redback spiders survived the winter season in Japan. Fortunately, so far in Japan no biting cases have been reported.
著者
早川 博文
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.155-161, 1978-06-15 (Released:2016-09-05)

岩手県下の沢内村, 雫石町および滝沢村において採集された成虫と幼虫の標本にもとづいて, 新種Atylotus hasegawaiハセガワキイロアブを記載した。本種はA. horvathi (Szilady)ホルバートアブとA. bivittateinus Takahasiフタスジアブに酷似しており, 外部形態による区別は容易でないが, その生態は明らかに相違している。これら近縁な3種の主な形態的特徴点についても比較を行なった。本種名は成虫を最初に採集された長谷川勉氏に献名したものである。
著者
小松 謙之 戸田 光彦
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.83-84, 2019-06-25 (Released:2019-08-07)
参考文献数
9

鹿児島県徳之島にて2018年7月7日にスズキゴキブリ(雄成虫1個体)を捕獲した.この記録は,標本に基づく徳之島での初めての報告となる.
著者
緒方 一喜
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.228-234, 1958-12-10 (Released:2016-09-04)
被引用文献数
1 3

ドクガEuproctis flava Bremerの疫学的性格を論じ, 東京附近の被害実態を疫学的に検討した.1.日本産Euproctis属10種について, 毒針毛保有の有無, 発生量について検討した結果, E. similis, xanthocampa, piperita, pulverea, kurosawai, pseudoccnspersa, staudingeriの8種は, flava類似の毒針毛を持つ事を確めた.E. torasan, curvataでは確認し得なかつたが, 被検標本が雄成虫だけであつたためであろうと考える.2.E. flavaを含めて, 毒針毛をもつ少くとも, 上記8種について比較してみると, 種によつて疫学相が甚だしく違う.わが国で普通に害を与える重要な種は, flavaとpseudoconspersaの2種で, 特に前種が甚だしい.これは, 異常的な大発生をして, 他の種に比べて発生量が桁はずれに大きい点に原因があるように考えた.3.わが国のドクガ大発生地は, 比較的限られているが, 共通した棲息環境として, 低い灌木叢林と, 瘠悪土壤の丘陵地帯が多い事を指摘した.4.古くから日本各地でドクガの大発生はみられていたのであるが, 最近に到つて, 大きな社会問題となつた.この理由について二・三考察したが, 大きな原因は人間の心理的, 社会的な変化に基くものであろうと推察した.5.東京都内で, 1956, 57年に起つたEuproctis属の種類による被害は, ドクガ成虫によるものが一番多く, チャドクガ幼虫, 成虫によるものも少なからずあつた.6.ドクガ成虫による被害は, 職業別に, 家庭の主婦, 勤め人, 学生に多い.罹患場所は, 殆んど屋内で, 18時から24時までの前夜半に多い.6時から10時までの朝にも少しみられた.罹患部位は, 腕, 胸部, 首に多い.また, 被害は, 1頭の成虫で1人の罹患者が出る場合が一番多かつた.7)ドクガの蛹による被害は1例もなく, 幼虫によるもの2例, 卵によるもの1例があつた.8)チャドクガ幼虫による被害は, 罹患時刻が昼間に多く, また罹患場所は全例が庭である点が, ドクガ幼虫の場合と異るが, 他の疫学相はよく類似していた.
著者
岡本 紀久
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.259-267, 1989
被引用文献数
3

紫外線によるゴキブリ防除の可能性を探るため, 殺菌灯の照射野にゴキブリが侵入する頻度と, 室内放飼実験による致死効果について検討した。シェルターを設けたゴキブリ行動自動記録装置を作製し, 殺菌灯から約10cmの距離に赤外線センサーを置き, 強力な紫外線照射野へのゴキブリの侵入頻度を観察記録した。チャバネゴキブリも, ワモンゴキブリも殺菌灯の近くにかなり高頻度に現れ, 大部分の幼虫は1週間以内に, 成虫も2週間以内に死亡するのが観察され, 致死効果が認められた。チャバネゴキブリとワモンゴキブリの幼虫と成虫をゴキブリ飼育用の恒温室内に一定数放飼し, 恒温室中に設置した殺菌灯下で活動するか否かを煤紙を置いて調べ, 毎日1回死体を集めて累積死亡率を求めた。その結果, 両種の幼虫とチャバネゴキブリの成虫は, 殺菌灯下を自由に歩き回り, 紫外線線量が高いほど死亡率も高いことが見いだされた。しかし, ワモンゴキブリの成虫は, 殺菌灯の光が強すぎるとこれを避ける傾向があり, 致死率も低下することが観察された。とはいえ, 殺菌灯下に餌を置いた場合には, 強い線量の殺菌灯下でも動き回り, 致死率が高まることが観察された。これらの観察結果から, 殺菌灯から照射される紫外線を利用するゴキブリ駆除の可能性が示唆された。殺菌灯を住居内に設置する方法については今後さらに検討を行い, 安全かつ効率的な基準を確立する必要があると考えている。
著者
田原 雄一郎 神谷 桜 渡部 泰弘
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.101-107, 2011-06-15 (Released:2011-12-15)
参考文献数
10

粘着トラップによる3種ゴキブリ(チャバネゴキブリ,ワモンゴキブリおよびトビイロゴキブリ)の捕獲率「(捕獲数÷放飼数)×100」は日ごとに低下した.これは粘着トラップを避ける個体が増加したことによると判断した.チャバネゴキブリでは令別,雌雄での比較で♂>♀>老齢>若令の順に捕獲率は高かった.特に,若令は捕獲されにくかった.一週間にわたり捕獲をまぬがれた個体(経験群)と新しく放飼された個体(未経験群) では,常に前者の捕獲率が低かった.これは,経験ゴキブリ群が粘着トラップに捕獲されないような行動を「学習」したものと推察した.経験群をしばらくトラップから避けて飼育する中断期間を与えたところ,トラップを避ける行動は5週間まで維持された.粘着板を避けるには触角の働きが大きいと思われる.触角の先端部の微毛は粘着面を感知するだけでなく,粘着面への付着を防いでいると考えられる.生きている間は触角を空中に保持し,死亡すると付着した.モニタリングや殺虫剤の効果判定の目的で,粘着トラップを連続して使用したり,頻繁に使用したりすると,トラップ捕獲率が低下し,得られたゴキブリ指数がその場のゴキブリ生息状況を正しく反映しない可能性があることに留意すべきである.
著者
今井 長兵衛 前田 理
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.367-372, 1976
被引用文献数
3 11

京都産ヒトスジシマカを用いて卵期に発育を休止する現象を実験的に検討した。1)卵をDO高濃度の水や蒸留水, くみおき水に浸すと孵化率が低いが, DO低濃度の水やクロレラを含む水に浸すと高率に孵化した。2)短日(8時間日長)で飼育した成虫からの卵は長日(16時間日長)で飼育した成虫からの卵と比較すると低い孵化率を示した。また親成虫の吸血時期をおくらせると孵化率の低下がみられた。3)うまれた卵を24時間以上の保湿の後に7日間乾燥させると, くみおき水やDO高濃度の水での孵化率が著しく低下したが, その後にクロレラを含む水やDO低濃度の水に浸すと大部分が孵化した, 6時間以下の保湿の後に乾燥させた卵は大部分が死亡した。4)長日飼育の成虫と短日飼育の成虫とからの2卵群をそれぞれ二分して7日間乾燥させた場合と浸水放置した場合とを設定し, おのおのを高低3段階のDO濃度の水につけて孵化率を調べた。いずれのDO濃度においても長日浸水放置区に比較して他の3区での孵化率の低下がみられ, 最も低かった短日乾燥区では中濃度以上のDOに対する孵化率は0%であった。以上の結果にもとづいて, ヒトスジシマカの孵化反応性とその適応的意義について考察を行なった。
著者
小川 賢一 佐藤 英毅
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.355-360, 1993
被引用文献数
10 14

群飛しているセスジユスリカの雄の音響応答を音響トラップを用いて野外で調べるとともに, 雌雄の羽音周波数を羽化当日から羽化後4日目まで毎日, 10℃, 15℃, 20℃および25℃の各温度条件下で測定した。群飛は成虫の発生源の河川際の桜の木の幹横および枝下に, 地上0.5mから5m以上の高さに形成された。群飛は平均98.0%が雄で構成されていた。雄は主に周波数180Hzから390Hzの音響に対して応答し, トラップに誘引・捕獲された。しかし, 一定の気温条件下では, 雄が顕著に応答する音響周波数の範囲がかなり狭いことも明らかとなった。この雄の音響応答において, 捕獲に最適な音響周波数と気温との間にきわめて高い正の相関が認められ, 音響周波数の変動は10Hz/℃であった。雌雄の羽音周波数は同一気温条件下で, 羽化当日から羽化後4日目までほぼ一定であった。雄の羽音周波数は同日齢の雌より常に高くて, 1.27倍から1.68倍であった。いずれの日齢においても, 羽音周波数と気温との間にきわめて高い正の相関が雌雄ともに認められた。その羽音周波数の変動は雄で18&acd;21Hz/℃, 雌で10&acd;12Hz/℃であった。さらに, 気温に対する雄の音響応答の回帰直線と気温に対する雌の羽音周波数の回帰直線はいずれの日齢においても一致した。これらのことから, セスジユスリカの雄は気温の影響を受けて変動する雌の羽音周波数に的確に同調し, 応答できる聴覚能力を有していることが明らかとなった。
著者
田原 雄一郎 望月 香織
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.139-143, 2005
参考文献数
9
被引用文献数
2

33種のハーブのエタノール抽出液をベニヤ板製のゴキブリのシェルター(5cm×5cm, 5mm隙間)に浸漬させ, チャバネゴキブリ10頭(♂または♀)を放ったプラスチック円形容器(半径15cm, 高さ17cm)に無処理シェルターとともに対角の位置に置いた.それぞれのシェルター区に48時間で落下した糞の数から忌避性を求めた.その結果, デイル, セロリ, キャラウェイ, クミン, コリアンダー(以上, セロリ科), シナモン(クスノキ科), メース(ニクズク科)およびトウガラシ(ナス科)を処理したシェルター区には糞の落下数が極めて少なく, 無処理区のシェルターに90%以上の糞が落下した.これは, これらのハーブを処理したシェルターを忌避したからと判断した.忌避性は1ヵ月以上持続した.また, ハーブ抽出液を80倍程度希釈しても効力は維持した.他方, アニス, サンショ, オニオン, ユーカリなどの抽出液では誘引性が確認された.
著者
佐藤 卓 松本 文雄 安部 隆司 二瓶 直子 小林 睦生
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.195-204, 2012-09-30 (Released:2013-07-06)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

It was previously reported that the northern limits of geographic distribution of Ae. albopictus in Japan are Akita and Iwate Prefectures. In this study, we carried out larval surveillance from 2009 to 2010 to clarify the present distribution of the mosquito in Iwate Prefecture and to analyze the relationship between climatic conditions and the northern distribution of Ae. albopictus by the geographic information systems (GIS). Distribution of Ae. albopictus was found in 34 collection sites from 7 cities and 2 towns in this study. Around the collection sites in Senboku 2 Chome, Morioka City where Ae. albopictus larvae were collected in 2009, an intensive investigation was carried out in 2010, and more than 20 colonies of Ae. albopictus were collected. This suggests that Ae. albopictus population has been established in Morioka City. The relationships between climatic conditions and distribution of Ae. albopictus in Iwate Prefecture were analyzed using 1 km mesh climate data from 2006 to 2010, and the following conditions were suggested for the presence of Ae. albopictus populations: >10.8°C annual mean temperature, >-1.4°C daily mean temperature in January, >185 days/year with >10.8°C mean daily temperature and >1,350 degree days of effective accumulated temperature per year.
著者
高木 正洋 津田 良夫 和田 義人
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.131-138, 1995
被引用文献数
10

ヒトスジシマカの分散と産卵を, 標識再捕獲法とオビトラップによる卵数調査の組合せによって調査した。吸血させた雌と雄を蛍光塗料でマークし, 長崎大学医学部キャンパス内のグビロガ丘に放逐した。20個のオビトラップを調査地域内に均一に配置し, 産卵数を放逐前2週間, 放逐後9日間調査した。また10ヵ所では人囮採集も行った。放逐前の卵および成虫密度, 放逐点からの距離を変数として, 放逐後各オビトラップで観察された産卵数, 再捕獲された成虫数について重回帰分析を行った。その結果, オビトラップの産卵数と放逐点からの距離の間に高い相関関係が見られた。再捕獲雌数は, 放逐後の2日間には放逐地点からの距離と, また放逐後4&acd;5日目には, 無マーク雌数と高い相関を示した。
著者
飯室 勇
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.183-189, 1956
被引用文献数
1

1.サトウダニは各種の品質の市販砂糖のうち精製度のすぐれたグラニュー糖, 上白などには全く繁殖をみず, 水分, 窒素分, 灰分などの不純物含量の高い粗製品, 即ち, 三温, 中白, 黒砂糖などには至適温度(25〜28℃)及び至適湿度(ほゞ75%R.H.)においてはおびたゞしく繁殖し, 約1カ月後には1gにつき500疋以上時には900疋も見出されるほどの密度に達する.2.25℃の至適温度において三温砂糖における繁殖と湿度の関係を各種の過飽和塩類溶液による調湿装置により検討した結果, 純水(100%R.H.), KNO_3(ほゞ92%R.H.), KCl(ほゞ84%R.H.)の環境においては砂糖がすみやかに醗酵してダニの増殖をみず, NaCl(ほゞ75%R.H.)の環境ではおびたゞしい増殖がみられたが, K_2CO_3(ほゞ42%R.H.)の環境にあつては乾燥が甚しくダニは忽ち死滅し, 醗酵も起らず, 長く砂糖が良好な状態に保存されることを知つた.3.三温を至適湿度, 即ち過飽和食塩水で調湿した容器に入れ, 色々な段階の温度に調節した恒温器内に保存してサトウダニの繁殖状況をしらべた結果, 37℃では速に死滅するが, 28℃においては凡そ40日後に1gあたり約900疋の最高密度に達して以後次第に減少し, 25℃, 20℃, と温度が下るにつれてその増殖はおそく, 最高密度も低くなるが長期にわたり繁殖がつづき, 10℃以下ではほとんど増殖を認めないことが見出された.4.砂糖の品質, 湿度及び温度が好適な条件においてサトウダニが増殖を始めると, その発育期別の構成(幼虫, 前若虫, 後若虫, 成虫)が逐次変遷してゆき, 先ず幼虫が高い比率を占める"若い集団"の時期が現れるが, 繁殖が限度に達し, やがて総個体数が減少し始めると"集団の老化"が起つて幼虫が少く比較的後若虫の多い集団に変つてゆく.