著者
浅野 二郎 仲 隆裕 藤井 英二郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.7-12, 1987-03-31

わが国の住宅建築の重要な様式の一つとして「書院造り」がある。この書院造りの住宅に対応する庭園として書院庭園がある。本論文は法然上人絵伝、獅引絵などの絵巻物類あるいは町田家旧蔵本・上杉家蔵本洛中洛外屏風などの諸史料を主な検討素材とし、また寺院における庭空間の取り扱いなどをも併せ考えつつ、書院庭園の成立にかかわるさまさまな要素を検討,考察したものである。
著者
野島 義照 沖中 健 小林 達明 坊垣 和明 瀬戸 裕直 倉山 千春
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.115-120, 1993-03-24
被引用文献数
13 9

建築物の壁面につる植物を被覆させることによる夏期の壁面温度の上昇抑止効果を把握するための測定実験を行った。簡易建築物の南側につる植物で覆われた壁面とつる植物のない壁面とを設け,壁面温度,壁面での熱流の経時変化を,晴れた日,曇りの日,晴れた日で室内は冷房,という3種類の異なった条件の日に計測した。そのうち1日の計測では,つる植物の葉からの水分の蒸散量,地際の幹での樹液流速の計測,熱赤外線ビデオカメラを用いた南側壁面全体の表面の温度分布の画像撮影をも行った。壁面の緑化により壁面の最高温度を約10℃低下させることができること等が確かめられた。また,日中,壁面緑化による壁面温度の低減量が大きくなるにつれて,葉からの蒸散量も大きくなる傾向が見られた。
著者
俵 浩三
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-15, 1993-08-27
被引用文献数
1 1 1

植物への理解を深めることは造園学の重要な基礎となるが,植物情報源として大きな役割をはたす植物図鑑の発達史は,造園史,植物学史,理科教育史の分野を含めて十分に研究されていない。そこで,(1)明治以降に出版された一般野生植物を対象とする植物図鑑の発達史を展望して時代区分を行い,その特徴を明らかにするとともに,(2)とくに明治40年ころに近代的,啓蒙的植物図鑑を出現させた原因には,当時の初等理科教育における博物重視と,画一的ではない「身近な自然」を教科書とする教育の方針があったこと,(3)さらに「牧野植物図鑑」の成立には,牧野を敬愛す人々によってつくられた英雄伝説的な'誤伝"があること,を明らかにした。
著者
龍居 竹之介 小野 一成
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.5-8, 1958-08-10 (Released:2011-04-13)
被引用文献数
1

Mr. Kinsaku Nakane published a thesis titled “The Ruins of the Pond-Garden that once existed in the Ryoanji Temple and the Age when its Rock-Garden was built” on the Journal of the Japanese Institute of Lanpscape Architects (March, 1958, Vol.21, No.4), and wherein he presumed, based on an on-the-spot survey of the ruins and study of the literatures concerned, that the Rock-Garden was built during the Kan-ei Era (1624-1644) and named Kotaro and Seijiro as the builders thereof.However, in the said thesis, many defects have been found in the dealing of the historical materia is and remarkable leap in the logic as well has been noticed on the determination of the age ih which the Rock-Garden was built and the names of the builders thereof.Therefore, desiring that the future study by Mr. Nakane on the subject matter may be continued on the basis of justifiable historical materials as well as reasonable logic, we have hereinbefore pointe out the faults in the method of study noticed in his thesis.
著者
本中 真
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.223-231, 1991-02-28 (Released:2011-07-19)
参考文献数
40

前報では, 橘俊綱が白河上皇との会話の中で「地形」「眺望」を指標として選定した4庭園をとりあげ, 4者の相互の形態的な比較検討を試みた。そして彼の選抜に合格した庭園と選に漏れた庭園との差を明らかにし, 同時に彼の挙げた2つの選考指標の意味についても明らかにした。本報告は, さらに考察を進めて2人の間に交わされた会話の政治的背景を探り, 選考基準のいま一つの性格について明らかにしようとするものである。
著者
山根 ますみ 篠原 修 堀 繁
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.215-220, 1989-03-30 (Released:2011-07-19)
参考文献数
34
被引用文献数
6

長期的にみた場合の景観に対するイメージ形成のメカニズムを解明するための試論として, 東京の自然の代表である武蔵野を取りあげ, 各時代毎のイメージの内容とその変化の過程, イメージ変化と景観変遷との関係, イメージ変化の要因について分析した. その結果, イメージと景観は異なる変化のしかたをしてきたこと, イメージ変化のきっかけとして文学作品などが重要であったことが明らかになった.
著者
木村 三郎
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.73-78, 1987-03-31 (Released:2011-07-19)
被引用文献数
1 1

我国における「公園対緑地」の問題については多くの研究があり, 既に言及し尽くされた感がないでもない。果してそうであろうか。試みにいささかその視点を変えて吟味して見ると案外新しい解釈も成り立ってくることに気づく。しかもそれを造園史的な経過の中の一環として位置づけて見ることは正に重要なことと言はざるを得ない。又, 筆者のこれまでしばしば言及してきた一連の造園用語解の研究として把握してゆくことも一案と考える。
著者
渡辺 達三
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.193-208, 1992-12-25

松平定信は致仕後,自らを楽翁と号し浴恩園の整備を進め,そこにハスの品種を多数集め,それを観賞し,蓮譜『清香譜』を完成させている。それまでは,ハスの品種観念も曖昧で,品種数も数種とり上げられているたすぎなかったが,『清香譜』では九十余種記載されていたといわれ,蓮譜史上,画期的な意義を有する。しかし,その『清香譜』は戦後,散逸し,その実像は明らかでない。また,翁のハスの観賞についても,その実態についてはほとんど知られていない。そこで,本稿では,楽翁のハスの観賞の態度・あり様について,また,その大きな事績である『清香譜』について考察するものである。
著者
朴 容珍 沖中 健
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.115-120, 1989-03-30 (Released:2011-07-19)
参考文献数
6

つる植物による壁面緑化は, 植栽地の位置によって「登はん」と「下垂」の2つのタイプに分けることができる。本研究はナツヅタ・オオイタビ・キヅタ・ツリガネカズラを用いた植栽実験によって, 壁面での登はんと下乖状態におけるその成長量及び生育状況を比較検討したものである。その結果, 成長量は企種について登はん区が下垂区より明かに大きかった。壁面被覆のパターンは登はん区がピラミッド形を下垂区が縦長の帯状を呈した。
著者
沖中 健 山内 啓治 藤井 英二郎
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.102-107, 1987-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
4
被引用文献数
6 6

我が国の主要な壁面登はん性つる植物としてのナツヅタについて, その壁面付着に関する圃場実験を行った。設定した実験因一子は, つるの傾斜角度・日照条件・つるの太さとジベレリンの散布である。実験の結果, つるの傾斜角度・日照条件とつるの太さは, ナツヅタのつるの付着性に大かな影響を与えるが, ジベレリンの散布はあまり大きく関与をしないことがわかった。
著者
河原 武敏
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.13-18, 1993-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
2
被引用文献数
1

平安鎌倉時代の植栽管理については, 主として作庭書や発掘調査などから論じられてきたが, 本研究は更に古記録のほか, 生活描写の色濃い日記・随筆・説話・物語・絵巻などから資料を収録して考察することとした。その結果,(1) 管理担当の職名。(2) 植栽の維持作業には, 清掃とその時間帯・植物の手入れ・剪定・植替え・伐採・草焼き。(3) 庭園植物の繁殖には, 株分け・挿木・接ぎ木・播種。(4) 植栽の保護施設には, 柵囲い.植桝・霜除け・控木の存在が明らかとなった。
著者
外村 中
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-14, 1992-04-08
被引用文献数
1 3

『作庭記』にいう枯山水は,はたして,日本独自のものだろうか。本論は,日本,韓国,並びに,中国の古代庭園に関する文献や,考古発掘資料の代表例を比較検討することにより,『作庭記』にいう枯山水の源流は,中国の古代庭園に見出し得るのではなかろうかと考える理由を明らかにしたものである。
著者
森 忠文
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.14-23, 1978-02-15
被引用文献数
3

京都御所周辺は, 明治維新のころまでは多くの公家の住む屋敷町であったが, 明治2年の東京遷都ののちは, 公家は東京に移りあるいは他に転出して, 一部の建物は取りこわされて空地となり, やがて土地建物の所有も一般民間人の手に移っていった. 一方その邸宅跡には学校や裁判所が設けられ, 御所で博覧会が開かれるなど御所周辺は変貌した.<BR>明治10年 (1877) 2月, その対策として, 明治天皇の御沙汰書が出され, 大内保存事業が始まった. これは, 御所をながく保存するための前提として, 周辺の民有地を買収するとともに建物を撤去し, 御所への火災延焼のおそれをなくしようとするものであって, そのために明治10年から21年まで毎年4000円を支出すること, またその事業を京都府に委任するというものであった.<BR>京都府は大内保存掛を置いて鋭意事業を推進し, 幾多の曲折を経て, 明治13年 (1880) に当初予定された構想にさらに追加工事を加えたもののほとんどすべてを実現した. このようにして初期の御苑は成立したのである. すなわち, 民有地を買収し, 建物を撤去し, 周囲に石積土塁を設けて境界とし, 奥まったところにあった門を土塁の線に移設し, 道路を設け, 御所周囲, 主要道路, 石積土塁上等の植樹その他雑工事を行なったのである. 予定では21年までとなっていたが, 保存費の繰上げ交付によって促進され, 期間は短縮された. またそれに要した経費は少くも45000円であった.<BR>御所そのものの維持管理は, この事業とは別に宮内省において京都府が協力して行なわれていたので, 大内保存事業はもっぱら間接に御所を保存するために行なわれたものである. これを今日的に言えば, 御所を文化財としてながく守るための環境整傭事業であった.<BR>この事業の着想が正しかったということは, その後, 100年の御苑の歴史が実証している. この大内保存事業すなわち御苑造成事業は, 明治初期において, 御所を文化財として保存するために行なわれ, しかも成功した大規模な造園事業として評価されるべきものと考える.
著者
進士 五十八
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.73-78, 1984-03-30 (Released:2011-07-19)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

Agingは古びることの意・本論は日本庭園の精神的特質の代表的側面とされてきた“わび・さび”の現代的解釈をAging概念を導入することによって次のように結論した。モンスーン知戻高温多楓土下では自然材が時間経過によってAgingがかかり, 風化変質腐朽してゆく“さび”の語源にその意味が含まれるようにこれを日本的風土文化の美意識は評価した。時間美としてのAgingは西洋庭園意匠に人工の廃墟が用いられたように造園の本質的要素でもある。
著者
赤坂 信
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.232-247, 1991-02-28 (Released:2011-07-19)
参考文献数
73
被引用文献数
1

ドイツ郷土保護連盟の設立 (1904) の歴史的背景と社会的動機を探り, 連盟の改称が提起されるまでの四半世紀間の活動内容及びその変遷を明らかにすることを目的とした。郷土保護運動の当初の段階は近代的発展によって郷土の風景や生活習慣が消失していくことに対する抗議や救済が主目的であった。やがて保護育成の対象は郷土の空間の構成するモノから郷土を担うヒト (Volk) へ移行する。すなわち望ましい民族の育成が課題となっていく。
著者
笹谷 康之 中村 良夫
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.318-323, 1985-03-30
被引用文献数
2 1 3

摘要 伝統的な農村集落とは村人にとって一つの小宇宙を構成しており,そこには濃密な意味が込められた象徴的な場所・領域一方向か存在し,土地にまつわる肌理細かい空間認識の体系が認められる。そこて本論ては,多摩丘陵の一角にある川崎市久末集落を事例に,地名,地物の空間的認識,集落内集団の呼称,土地にまつわる伝承,古老の体験なとから,村人の民俗分類に立脚した集落の空間構成について報告するものてある。
著者
岡崎 文彬
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.2-5, 0000

Der Park von Wilhelmshohe bei Kassel besteht auszwei, sich sehr unterscheidenden Teilen. Der obere Teil mit dem Oktogon und der Kaskade wurde von Guernieri auf Wunsch des Grafen Karl im italienischen Barcckstil gartnerisch gestaltet, wahrend der grosse iibrige Teil unter Kurfurst Wilhelm I im landschaftlichen Stil angelegt wurde. Es gibt in Deutschland mehrere Parks oder Garten mit franzosischer oder landschaftlicher Gestaltung wiez. B. in Nymphenburg und Schwetzingen, die Mischung von italienischem und landschaftlichem Stil ist jedoch sehr selten. Sicher hatte Graf Karl, wenn er noch langer gelebt hatte, auch noch einen Garten im franzosischen Stil anlegen lassen. Dank des guten Kontrastes von regelmassigen und naturgemassen Parkteilen, ist Wilhelmshohe nicht nur einer der grossten, sondern auch der schonsten Parks in Deutschland bzw. in der Welt.
著者
岡 畏三郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.83-92, 1940
被引用文献数
1
著者
渡辺 達三
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.19-24, 1993-03-31 (Released:2011-07-19)
参考文献数
48
被引用文献数
1

わが国前近代のハスの観照の歴史的な変遷をみ, 1) 上代では, ハスへの観照がみられるが, 中国からの影響の大きい, 女性, 恋愛などの寓意性をもった人事中心のものであること, 2) 中古では, ハスの植物や生態などの特性がよく観察され, それを基礎にした植物や, 釈教, 人事上の事柄について観照されていること, 3) 中世では現実的, 実践的な性格を強め, ハスは環境との連係を強め, 空間, 時間, 音響などの再構成された, 複合的な事象の中で, それらとの連関において観照されていること, 4) 近世では, 前代の現実的指向, 環境との連係の傾向をいっそう強め, その植物や生態等の特性に即したものとなり, 釈教的な観照はほとんどみられなくなっていること等をみた。