- 著者
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山田 育穂
岡部 篤行
- 出版者
- 公益社団法人 日本都市計画学会
- 雑誌
- 都市計画論文集 (ISSN:09160647)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.3, pp.923-928, 2016-10-25 (Released:2016-10-25)
- 参考文献数
- 10
空間自己相関は,地域の空間的な近接性と属性的な類似性との関連を示す概念であり,都市空間で発生する事象の空間分布やその背景にあるプロセスを理解するうえで,重要な役割を担っている.MoranのI統計量は,地区データの空間自己相関を扱う際に最も広く用いられている手法のひとつであるが,その潜在的な問題については一般にあまり認識されていない. MoranのI統計量による検定がその分布の漸近的な正規性を仮定して構築されているのに対し,通常のデータでI統計量の正規性が達成される可能性は低い.従って,I統計量の正規性を仮定した仮説検定では結果に偏りが生じる恐れがあり,またこの問題を避けて用いられるシミュレーションによる検定方法であっても,結果にはシミュレーションに特有のばらつきが生じる.そこで,本研究ではMoranのI統計量の確率分布の裾野に着目した大規模シミュレーションを通じて,仮説検定で用いられる棄却限界値の推定式を構築する.達成の難しいI統計量の正規性や都度のシミュレーションに依らない平易な推定式を提供することで,検定結果の安定と信頼性の向上に資することを目的とする.