著者
渡邊 雅恵 須永 康代 石渡 睦子 荒木 智子 伯耆田 聡子 井上 和久 柳田 千絵 吉岡 明美 清宮 清美
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.112, 2009

【目的】 近年女性の理学療法士(以下、PT)が増えており、埼玉県理学療法士会(以下、県士会)でも会員の約半数が女性である。その中で出産・育児の関係で離職するPTが多いのが現状である。また、女性に限らず労働条件等で転職・離職するPTも少なくない。<BR> 復職支援システム検討委員会は、離職率の低減および離職をした会員が復職できるようシステムを検討していくことを目的にアンケート調査を実施した。<BR>【対象と方法】 2008年10月における、県士会に登録されている会員2168名を対象に郵送調査法アンケートを実施した。内容は基本属性(経験年数、年齢、家庭環境、就労状況)、職場環境(職場形態、人数、収入、残業、制度利用状況)等を多選択方式および自由記載での回答とした。<BR> なお、対象者には、依頼文書にアンケートの目的を提示した上で、無記名調査、データの統計的処理、個人情報の保護等の説明を記載し、調査に同意していただける方のみアンケートを返送していただいた。 【結果】 回答数は960名、回収率は44.3%であった。男女比はほぼ同数。平均年齢は30.5歳で58%が30歳以下であった。就業しているPTは943名(98.2%)、離職中は17名(男1、女16、1.8%)であり、離職中の女性に注目した。16名の平均年齢は30歳でそのうち子ども有りは11名であった。離職の理由は、転居が多く次に結婚・出産・育児・健康上の理由であった。復職希望は、有りが8名、条件付きが4名であった。復職が困難な理由として、託児所の問題が最も多く70%をしめていた。その他に、労働条件、育児の問題、通勤条件があった。託児所に関しては、職場に職員専用託児所はあるがPTは利用できないという回答もあった。県士会に対するアンケートの自由記載として、保育施設の確保、パート・非常勤の求人情報の提供、出産育児に理解のある職場環境づくりがあった。また、それ以外にも職場を長期間休むことにより最新の情報入手困難、次々に変わるシステムを理解するのが困難、知識や技術の低下などがあり、それらに対するフォロー体制を作ってほしいという要望が見受けられた。<BR>【考察】 今回アンケートに回答して下さった離職者PTが少なく実態は把握できていない。しかし、就業を継続することや復職するために出産・育児、特に託児所の有無に関する影響が大きいことが再確認できた。<BR> 今回のアンケートの結果を基に、今後県士会としてフォロー体制を作るための研修会など復職支援の検討をすすめていく。
著者
大熊 仁美 鈴木 修 村山 幸照
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.97, 2007

【目的】当会では約1年毎に各部門のセラピストの異動があり、毎年4~6月に各部門で技術的な新人教育が実施されている。しかし、訪問業務内では技術的な部分以外でも様々な問題を経験する事が少なくない。今回、過去2年間に報告された訪問業務におけるトラブル・事故を分析し、今後の教育内容について検討した。<BR>【方法】平成17年1月~平成18年12月に当院の訪問リハビリテーション(以下リハ)センター松本地区で発生したヒヤリハット・事故・苦情を、報告書をもとに後方視的に調査した。平成18年12月現在、当センター松本地区のセラピストは理学療法士11名、作業療法士6名、言語聴覚士2名で、職種経験年数1~3年13名、4~6年3名、7~9年3名、訪問経験年数1年12名、2年4名、3年3名である。<BR>【結果】2年間の総訪問件数34292件のうち報告のあったケースは48件であった。内訳は、車両関連が21件(交通事故16件、交通違反2件、交通被害3件)、情報共有(連携)に関する苦情が22件(訪問予定の確認ミス16件、連携不足5件、その他1件)、リハ実施時の事故が5件(歩行時の転倒2件、移乗時の転倒1件、床上動作時の転倒1件、その他1件)であった。交通事故は、82%が午後の時間帯、69%が利用者駐車場、56%がバック時に発生していた。訪問予定の確認ミスは、50%が介入1ヶ月以内の新規の利用者で発生しており、転倒事故は全て介入開始4ヶ月以内に発生していた。また、セラピストの部署異動が行われる12月~3月頃にトラブル・事故が多発する傾向にあり、セラピストの訪問経験が4ヶ月以内の期間で49%、1年以内の期間で82%のトラブル・事故が発生していた。さらに、一人当たり平均14 時間以上の超過勤務となった月にトラブル・事故が多発している傾向を認めた。<BR>【考察】調査結果より、訪問業務に関するトラブル・事故は、職種経験よりも訪問経験の浅さが強く影響していることが示唆され、利用者側のフィールドで実施するという訪問業務の特殊性を考慮した教育を、訪問経験の少ない時期にセラピスト行う必要性が確認された。内容としては、1)過去のトラブル・事故の傾向の把握、2)緊急時の対応(リハ中の事故・急変、車両トラブル、苦情等)、3)接遇、4)在宅でのリスク管理と指導、5)介護保険制度、などの実践に即した教育研修を実施し、周知徹底することが課題であると考える。また、少人数によるグループ管理体制の確立とともに、グループ内でのon the job trainingの内容を具体化し業務の効率化を図り、適切な業務量を維持していく必要性が示唆された。
著者
桜井 進一 猪股 伸晃 武井 健児 青柳 壮士 中澤 理恵 坂本 雅昭 富沢 渉
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会
巻号頁・発行日
vol.28, pp.99, 2009

【目的】<BR>群馬スポーツリハビリテーション研究会では,H14年の全国高等学校野球選手権群馬県大会(以下:夏季大会)から理学療法士(以下:PT)によるメディカルサポート(以下:サポート)を開始以降,サポート対象となる大会・内容を拡大し継続してきた。そこで,H14年からH20年までにサポートした計12大会における結果を整理し,必要とされているサポート内容とその経時的な変化の傾向について報告する。<BR>【対象・サポート内容】<BR>夏季大会はH14年度にベスト16以降16試合から開始,H15年度からベスト32以降31試合,H18年度以降は1回戦からの全66試合となった。またH18年から秋季関東地区高等学校野球大会県予選(以下:秋季大会),H19年から春季関東地区高等学校野球大会県予選(以下:春季大会)の準々決勝以降7試合のサポートも開始した。サポート内容は,試合前のコンディショニング及び試合中のアクシデントに対する対応を基本とし,夏季大会では4回戦以降で両チームの投手・野手に対する試合後のクーリングダウンを実施した。尚,上記規定試合以外の夏季大会1~3回戦,春季・秋季大会では監督からの依頼に応じた投手のクーリングダウンを実施した。<BR>【結果と考察】<BR> 過去12大会にサポートに参加したPTは延べ589名(実数158名)であり,内訳は夏季7大会で延べ308試合,523名,春季・秋季計5大会で延べ35試合,66名であった。夏季大会4回戦以降でのダウンは延べ202チーム,投手183名に実施した。ダウン実施の際に肩や肘に痛みの認められた投手は計49名,27%であった。全大会における応急処置やテーピング,依頼による投手クーリングダウン等の対応件数は延べ584件(287名)であり,対応内容はテーピング107件,アイシング65件,熱中症対応61件の順に多かった。傷害部位別では上肢が延べ128件,下肢が延べ153件,傷害内容別では打撲98件,筋痙攣78件,熱中症65件の順に多かったが,経時的変化はみられなかった。サポート内容の経時的変化として,H18年度までは規定試合以外での投手へのクーリングダウンの要請は0件であったが,H19年度12件、H20年度33件と急増しており,コンディショニングによる障害予防の重要性が各校へ浸透してきていると考えられた。 7年間でのサポート対応の増加を踏まえ,我々はマンパワーの確保,障害予防に必要とされる知識・技術の向上が必要と考えられた。
著者
町 雅史 萩原 礼紀 唐牛 大吾
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.17, 2008

【はじめに】超高齢社会となった本邦は、変形性膝関節症(以下膝OA)の患者も増加する傾向にあり、その治療法の一つとして人工膝関節全置換術(以下TKA)が選択され件数が増加している。当院整形外科のTKAの手術件数は3000関節を超えているが、90歳以上の手術患者は比較的稀である。本症例は心疾患や腎不全を合併した超高齢であったが、両側同時人工膝単顆置換術(以下Bil UKA)を施行し、その後順調に経過し22病日で自宅退院となった一症例を経験したので、ここに報告する。<BR>【症例紹介】症例:93歳女性、身長143cm、体重41kg、BMI 20 診断名:両側膝OA 主訴:両側の膝関節痛、歩行困難、ADL動作困難 既往歴:白内障、慢性腎不全(Stage2)、大動脈弁狭窄症(中等症) 現病歴:昭和63年頃より特に誘引なく両側膝痛が出現、近医にて保存的加療。平成19年9月14日の入院時に、術前検査にて大動脈弁狭窄、慢性腎不全を認め手術延期となり一時退院した。同年11月14日に再入院し、同月21日にBil UKAを施行した。 手術情報:セメントUKA、使用機種はOxford Phase3(BIOMET社製)、アプローチ方法は皮切5cmの内側最小侵襲(以下内側MIS)、手術時間は2時間45分、出血量は術中20cc、術後100ccであった。<BR>【理学療法評価(術前/退院時)】ROM‐t:膝関節屈曲右130°/130°左130°/120°、伸展右-10°/0°、左-15°/-5° MMT:膝関節屈曲右4/4左4/4、伸展右3/3左3/3 疼痛:両側内側裂隙の動作時痛両側ともNRS5/0、創部痛NRS右10/1左10/1 10m歩行テスト:平均時間13.8秒/13.6秒、歩数21歩/22歩 ADL(BIにて):90点/100点 OA grade:右4左4 FTA:右188°/175°、左188°/175° JOA:右65/85点、左65/85点<BR>【経過及び治療プログラム】術前にオリエンテーション、初期評価、動作指導を行った。3病日より車椅子乗車、関節可動域訓練を行い、5病日より訓練室にて関節可動域訓練、筋力増強訓練、平行棒内立位・歩行練習を開始した。6病日にサークル歩行を開始し、9病日にT字杖歩行を開始した。10病日より階段昇降を開始した。19病日にノロウィルス疑いのため一時中止、その後床上動作・ADL指導を経て、22病日に自宅退院となった。治療法は当科TKA術後プロトコルを用いた。40分2単位を20回実施した。<BR>【考察】本症例は93歳という超高齢において、他のTKA患者と遜色無く22病日という期間で後療法を順調に進めることが出来た。それは当科プロトコルに基づき後療法を進め、患者自身にもセルフケアの励行を徹底し疼痛コントロールを良好に出来た事が成因であると推察された。本症例の治療経験から、厳重なリスク管理の下に適切な運動負荷をかけ、他職種との連絡を密にし、術後早期に疼痛自制内で可及的に歩行訓練を行い、活動量を維持向上させることが重要であると考察された。今後も更なる症例集積と検討が必要であると思われる。
著者
宗村明子 藤崎公達 成田雄一 鈴木拓也 馬場玲子 毛利悦子 西井優瑠
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.35, 2016

<p>【はじめに】症例は夜勤業務に就労しており,治療継続に問題が山積していた.症例に対し多職種が関わることで,身体機能や治療へのモチベーションの向上と治療効果の一助となったので報告する.</p><p>【症例・経過】50 歳代男性.健康診断で高血糖を指摘され当院受診,血糖コントロール不良にて糖尿病と診断され,初めての糖尿病教育入院となる.症例は夜勤業務に就労しており,昼夜逆転の生活を約20 年続けていた.入院初期より運動や治療に対するモチベーションが低く受動的であった.理学療法介入,多職種との情報共有,各職種による個別指導を行った.なお,症例に対し主旨を文章にて説明し記名による同意を得た.</p><p>【方法】運動指導,生活スタイルの聴取により退院後の運動プランの作成を行った.また,看護師によるインスリン自己注射指導,栄養士による栄養指導,薬剤師による薬剤指導,作業療法士による精神・心理面への介入,カンファレンスで多職種と情報共有を行った.そして,退院後は外来受診時に経過確認を行った.</p><p>【結果】入院時体重:63kg から60kg へ減量,入院時HbA1c:9%から6.6%へ改善し,3kg の減量,血糖コントロールの改善の一助となった.また,作業療法士の介入により,精神・心理面の変化があり,治療へのモチベーションの向上がみられ,運動介入においても自らプランを立て,退院後継続することが出来た.</p><p>【考察】理学療法介入に加えて,多職種との情報共有,各職種による個別指導を行った.結果,治療へのモチベーションの向上が確認され,自ら夜勤帯から昼間の仕事へ変更するなど,治療に前向きに取り組む姿勢が見られた.多職種協同で関わることで,専門的視点から,患者の異なる生活スタイルに合わせたアプローチが可能となる.そして,身体機能の変化や血糖コントロールの改善,治療へのモチベーションの向上により,患者自身も生活スタイルの変更を行い,治療へ前向きに取り組むことが出来,多職種協同で関わる重要性を再確認する一例となった.</p>
著者
宇佐美 太一 加藤 宗規
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.257, 2017

<p>【目的】</p><p>発症3 ヶ月時点で,トイレの動作と移乗が全介助でオムツを使用していた重度右片麻痺患者に対して行った,課題指向型の立位訓練による効果を検討した.</p><p>【方法】</p><p>80 代男性,左内頚動脈閉塞による重度片麻痺と全失語.Brunnstrom recovery stage(以下,BRS)は右側上下肢,手指全てI.</p><p>97 病日の基本動作は寝返り・起き上がり:中等度介助,座位:見守り,移乗:重度~中等度介助,立ち上がり:中等度介助,歩行:重度介助であった.トイレ介助を目標に縦手すりを用いた立位保持90 秒を目標として介入を追加した.縦手すりを用いた立位保持をベースライン期として,介入1 期は左肩を壁に寄りかかりながら縦手すり使用,介入2 期は左肩を壁に寄りかかることを除去し,縦手すりのみ使用した.いずれも顔の前方にタイマーを配置した.介入は1 日3 回とし,成功した場合には即時に称賛するとともに,3 回終了後はグラフを提示しながら結果のフィードバックを行い,前回よりも改善した場合も称賛を行った.1 日の3 回連続成功により段階達成と判断した.</p><p>【説明と同意】</p><p>本報告はヘルシンキ宣言に基づき、家族に書面にて説明を行い、同意を得た.【結果】</p><p>95 ~98 病日のベースライン期では30 秒の立位保持も困難,介助数は平均10 回を超していた.99 病日の介入1 期初日より改善がみられ徐々に介助数が減少し,介入15 日目には3 回とも成功,介入2 期初日の介入16 日目には縦手すりのみで3 回とも成功した.これらの期間において,機能的自立度評価法(97 →122 病日)は、トイレ動作1 →2 点,トイレ移乗1 点→3 点となった.その間に失語・BRS の結果に変化はなかった.</p><p>【考察】</p><p>発症後3 ヶ月が経過した重度片麻痺と全失語の患者に対して用いた壁に肩をつけるプロンプト・フェイディング法を用いた立位保持訓練は課題指向型の練習として有効であったと考えられた.</p>
著者
上村 朋美 加藤 宗規
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.P-13, 2020

<p>【目的】段階的難易度調整による麻痺側への移乗練習の効果を検討した.</p><p>【方法】80歳代,男性.診断名は,両側大脳梗塞,右慢性硬膜下血腫,肺炎であり,障害名は右片麻痺,失語症,構音障害,嚥下障害であった.入院後のADLは全介助であり,基本動作も介助を要した。立位は右へ傾き,7病日の立位の荷重率(正中位)は右50%,左43%,最大荷重率は評価困難であった.42病日の立位も荷重率は変化を認めなかった.また,移乗の介助量も変化なく,非麻痺側への方向転換は軽介助であったが,麻痺側への方向転換は全く行なうことができなかった.そこで,非麻痺側への移乗練習を介入1,麻痺側への移乗練習を介入2として練習を開始した.環境は,縦手すりを使用した.そして,車いすに対し椅子を30°に配置し,方向転換開始と終了の足の位置をビニールテープで示した.最終目標は非麻痺側・麻痺側共に90°の方向転換見守りとし,30°,45°,90°の順に実施した.角度の変更は,3日連続成功後に行った.評価は,介助量の変化を身体的ガイダンス0点,タッピング+口頭指示1点,口頭指示2点,見守り3点とし,3回の合計点数を記録した.介入2は,介入1の90°方向転換が実施可能となった後に開始した.</p><p>【倫理的配慮】本研究は,ヘルシンキ宣言に則り行われ,症例の家族から承諾を得た.当院研究倫理委員会の承諾を得た(倫理番号1572).</p><p>【結果】42病日目から非麻痺側への方向転換を開始し,90°の方向転換が50病日目で行見守りとなった.同日に麻痺側への方向転換練習を開始し,90°の方向転換が64 病日目で見守りとなった.なお,この期間に認知機能,運動麻痺は不変であった.</p><p>【考察】今回の移乗練習は,難易度の低くい非麻痺側から再構築したため,無誤学習として有効に機能したと考えられた.</p><p>【まとめ】今後の課題は,難易度調整によって,非麻痺側への移乗練習がより早期に開始できる可能性を検討する必要がある.</p>
著者
井出 友洋
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.1, 2006

【はじめに】 変形性股関節症に対しての保存療法の希望者に対しての装具などの選択に難渋する経験もあると思います。今回、末期変形性股関節症の症例について、既存の股関節サポーター以外の工夫による除痛の効果を得た2症例について報告する。<BR>【症例1】 70歳女性、平成16年12月7日初診、右変形性股関節症と診断、平成17年10月13日装具採型、股関節機能判定(以下JOA)右44/100点、X線像の評価判定0・20/100点、末期股関節症、同年12月6日痛みの軽減、平成18年2月7日(装具装着117日目)JOA60/100点で、+16点。<BR>【症例2】 75歳女性、平成16年1月28日初診、左変形性股関節症と診断、平成17年10月27日装具採型、JOA35/100点、X線像の評価判定0・20/100点、末期股関節症、同年11月26日痛みの軽減、平成18年2月18日(装具装着114日)JOA左36/100点で、+1点。<BR>【結果】 症例1のJOA変化は疼痛10→20点、立ち上がり・しゃがみこみ・車バス乗り降りが2→4点、計16点増加、症例2のJOA変化は可動域80→50度でー3点、腰掛2→4点、しゃがみこみ0→2点、計1点増加。<BR>【装具内容】 既存の関節サポーターにプラスチックにて股関節前面から後面まで包み、臼蓋への求心力を高められるものをつくり、サポーターに付属させた。<BR>【考察】 JOA判定基準やX線像評価において本2症例は末期股関節症であり、手術適応例であるが、本人希望により、保存療法を試み、痛みの軽減目的で装具療法となった。X線より、大腿骨骨頭変形も著明であり、股関節周囲筋力低下による歩行時痛が有り、歩行時の大腿骨骨頭求心力低下が痛みの原因と考え、これを補助するよう装具を考慮し、股関節の不安定性の減少により、痛みの軽減につながったと考えられる。また、症例1については可動域等の変化はないが、疼痛とADL面の改善が高く、これによる効果は高いと思われる。しかし、症例2においてはJOA変化は少なく、股関節屈曲可動域の減少はあったが、ADL面での改善があることから、今回の装具考案については良好な結果が得られたと思われる。<BR>【まとめ】1.末期変形性股関節症の2症例の装具検討による工夫について。2.装具内容において既存の股関節サポーターにプラスチックを付属させ、 大腿骨骨頭の求心力を高め、股関節の不安定性軽減により痛みの軽減とJOA変化につながったと考えられる。3.今後も既存の装具による工夫により、痛みやADLの改善を図りたい。
著者
北野 守人 吉部 亮 野間 靖弘 平塚 哲晃 望月 武
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.216, 2011

【はじめに】<BR>平成21年 全国高等学校野球選手権大会 東・西東京大会(以下夏季大会)からメディカルサポートチームは東京都高等学校野球連盟(以下都高野連)の依頼により「大会期間中の高校野球選手のコンディショニング、スポーツ障害予防の啓発を図る」ことを目的に発足した。そこで、東京都での高校野球メディカルサポートの活動内容と結果を報告し、今後の課題を考察する。<BR><BR>【対象と内容】<BR>夏季大会は準々決勝以降の14試合(2会場)、春季東京都高等学校野球大会(以下春季大会)・秋季東京都高等学校野球大会(以下秋季大会)は準決勝以降の3試合(1会場)に出場した選手を対象に実施した。理学療法士4名はベンチ裏で待機しチームからの依頼や傷害発生時等の必要と判断した場合にサポートを行なった。その内容は、アイシング・コンディショニング・テーピング・今後の指導・急性外傷への応急処置等であった。平成22年 夏季大会準決勝から看護師1名が参加し、救護室で主に観客に対し熱中症や傷害発生時等にサポートを行なった。また、後進育成のため理学療法養成校から学生助手を採用している。実際に行なったサポート内容は全て記録用紙に記載し、大会ごとにメディカルサポート報告書を作成し都高野連に提出した。<BR><BR>【結果】<BR>2年間における理学療法士の総サポート件数は、36試合で167件(平成21年 夏季大会 16試合 36件、平成22年 春季大会 12件、平成22年 夏季大会 88件、平成22年 秋季大会 31件)であった。サポートで多い順は、アイシング80件、コンディショニング42件、テーピング・今後の指導17件。1試合平均は約5件であった。部位別のサポートでは上肢が約47%、下肢が約44%、頭部・頚部・体幹が約9%であった。また、看護師の対応件数は熱中症35件、外傷7件、救急搬送7件であった。<BR><BR>【考察と今後の課題】<BR>夏季大会において、メディカルサポート実施件数が前年の2.4倍に増加した。これは、都高野連の広報活動や前年度の実績に加え、夏季大会の抽選会前に実施した理学療法士による公演活動などがメディカルサポートの認知向上に寄与したと考えられる。今後更にメディカルサポートを浸透させるため、大会期間中だけではなく大会に向けたコンディショニング・障害予防へ、より深く関われるよう年間を通じて啓蒙活動を行うことが重要である。また、部位別のサポート結果から上肢へのサポートが多く、今後も競技特性に沿ったスポーツ障害への研鑽継続のためメディカルサポートチーム内での情報交換・講習会を行なっていく。よって、高校野球選手のコンディショニング・スポーツ障害予防のため都高野連・指導者・審判団・メディカルサポートチームが更に協議し、組織的な医療連携を構築し協動で選手のサポートをしていくことが重要である。
著者
岡山 知世 高村 隆 小野寺 萌 岡田 亨
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.81, 2008

【目的】<BR>肩関節周囲炎いわゆる五十肩は、中高年に多くみられる肩関節疾患である。三木らは「明らかな起因を証明しにくい特発性の初老期の有痛性肩関節制動症」と定義している。臨床においては患者に詳細な問診を行うと何らかの動作が誘因となり発症しているケースを多く経験する。肩関節周囲炎における疼痛を引き起こしたと思われる自覚動作(以下、発症誘因動作)の実態についてアンケート調査を施行し、若干の知見を得たので以下に報告する。<BR>【対象・方法】<BR>2007年10月~2008年2月までに当院を受診した肩関節周囲炎患者40歳以上65歳以下の男性10名、女性22名、合計32名(平均年齢56.6歳)を対象とした。対象の除外項目は、中枢・内科・精神・循環器・呼吸器疾患の既往のあるもの。肩関節術後。外傷とした。調査方法は、自己記入形式でアンケートした。調査項目は、1誘因動作の自覚の有無、2発症誘因動作内容、3痛みの発生状況、4発症後の対応、5原因となる動作の作業時間(連続作業時間・1日作業時間)6作業姿勢の6項目とし、同時にJOAスコアも調査した。<BR>【結果】<BR>1、発症誘因動作、ありと回答した患者は18名(65.6%)、なし、5名(12.5%)、わからない、と回答したものは7名(21.8%)であった。2、発症誘因動作の内容は、パソコン作業、重いものを持つ動作、拭き掃除、寝ながらゲームをした等の回答を得た。3、痛みの発生状況は、徐々に痛くなった20名(62.5%)、急に痛くなった5名(15%)。4、発症時の対応は、病院受診18名、病院でない治療機関4名、湿布17名、冷やした2名、温めた2名、何もしない4名、その他4名であった。5、連続作業時間の平均は30分以内4名(12.5%)、1時間以内が3名(0.9%)、1~3時間が8名(25%)、その他7名(21.8%)。1日作業時間は4.12時間であった。6、作業姿勢は坐位12名(48%)、立位12名(48%)、その他1名(4%)。平均JOAスコア67.9点であった。<BR>【考察】<BR>諸家の報告から、「肩関節周囲炎は特別な誘因なく発症する」という文献が多く散見されるが、今回の結果では、65.6%以上に本人が自覚する誘因動作を認める結果が得られた。痛みの発生状況では、発症誘因動作の有無にかかわらず、62.5%が徐々に痛みが生じてきたと回答しており、誘因動作を本人が自覚できないケースが含まれていると考えられた。日常生活動作での肩関節周筋の筋緊張の増加や筋疲労をひき起こす動作は、手関節や上肢の動作を安定させるために肩関節周囲筋群に持続的収縮が強いられる動作が多く、さらに作業への集中などが加わり、長時間の実施による筋疲労の蓄積や作業姿勢への自覚ができず、具体的な誘因動作の特定を阻害しているものと考える。
著者
橋本 美樹 桜井 康徳 小野 竜也 本多 律子 岩井 さくら
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会
巻号頁・発行日
vol.27, pp.96, 2008

【はじめに】全校児童141人の那須塩原市立青木小学校では5年生の総合的な学習の一環として福祉の授業を行っている。今回、理学療法士(PT)が関与して小学生に車椅子体験の出前授業を試みる機会を得たので報告する。<BR>【活動の実際】PTについての啓蒙と障害への理解を得ることを目標に、PT4名で当日出席の5年生28名(男14名 女14名)を対象に2時限分行った。1時限目は医療職をクイズ形式やパネルを使って紹介した。次に車椅子の使用説明後、班別にリレー形式でUターンやジグザグコースを回り自力駆動を体験させた。2時限目は班別に校内探検(障害者用トイレ、一般トイレ、スロープ、段差、電話、水道、階段、教室内など)をし、介助の模擬体験をさせた。最後に、バリアフリーの利便性、マンパワーによるサポートの必要性、そういった点への介入がPT業務の1つであると説明した。後日まとめの授業で感想文を書いてもらい授業終了となった。<BR>【結果】医師と看護師は全員が知っていたがPTを知る児童は1名だけだった。この学級では今回の授業の前にも「未来ちゃん体験(高齢者疑似体験)」を行ったが担任教師が指導しただけなので専門性は不十分で、遊んだりしてしまう児童もいたそうだが、今回我々が関与したことで緊迫感が生まれ、専門家による臨場感あふれる指導に関心を示してくれた。感想文では「体の不自由な人は不幸なわけじゃなく不便なだけだ(3名)」とわずかに障害を正しく理解できた児童もいるが、「車椅子は大変だ(14名)」が最も多く「車椅子の人は一人では何もできない・かわいそう(4名)」と逆に偏見を持ってしまった児童もいた。<BR>【今後の展望】様々な刺激を柔軟に吸収する学童期に、逆に障害者と接する機会の少ない日本社会では福祉の心が育ちづらい。学校側ではキャリア教育・ボランティア教育として専門性の高い外部講師を望んでおり、我々PTがその専門的知識や経験・ネットワークを活かせればと考え、双方合意の上で今回の活動が実施された。学校側からは好評で活動の継続を切望された。今後の続編として、車椅子で活躍されている方を招き、障害も個性の1つとしてとらえ、共に生きていく仲間であることを学ぶ機会を与えたい。今回は栃木県士会公益事業部の活動として行ったがこの活動をどういう形で継続していくか、資金調達やスタッフの確保が今後の課題となった。<BR>【まとめ】成人への介護指導等のみならず、未成年に対して障害を考える機会を提供することは、ノーマライゼーション社会を築く担い手の育成に貢献できる。そこにPTが専門性を活かして自ら積極的に介入していく必要があることを提言する。
著者
山本 尚史 中村 学 中崎 秀徳 吉田 昂広 杉ノ原 春花 美崎 定也 加藤 敦夫
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.39, 2010

【目的】 当法人は2008年より高校アメリカンフットボール(アメフト)部のメディカルサポートを行っている。高校のアメフト選手は技術、知識、身体機能の未熟さから傷害発生の危険性は高い。今回、高校アメフト選手の身体特性と傷害発生との関連を明らかにすることを目的に、メディカルチェックとアンケートを実施した。【方法】 2009年度秋季公式戦前のA高校2・3年生アメフト部員(平均年齢±標準偏差:16.9±0.7歳、身長172.3±6.3cm、体重78.7±16.2kg)40名を対象に調査した。事前に顧問・監督・選手に本調査の趣旨を十分に説明し同意を得た。メディカルチェックは柔軟性「指床間距離(FFD)、踵殿間距離(HBD)、下肢伸展挙上(SLR)、股関節内旋(HIP IR)、全身関節弛緩性(GJL)」、瞬発力「プロアジリティテスト(PAT)、立ち幅跳び(SBJ)」を実施した。SLRとHIP IRは4段階で簡易的に測定した。アンケートは受傷部位(上肢、下肢、頸部・体幹)について自己記入させた。統計解析は柔軟性と瞬発力の計7項目を変数としてクラスター分析を行い、3群(A群、B群、C群)に分類した後、3群間において7項目で一元配置分散分析またはKruskal-Wallis検定(有意水準5%未満)を行った。さらに3群間の身体部位別受傷人数をまとめた。【結果】 分類された3群はA群11名、B群10名、C群18名となった。FFDはB群が有意に長く、HBDはC群が有意に長かった。SLRはB群がA群およびC群と比較して有意に大きく、HIP IRはC群がA群およびB群と比較して有意に小さかった。GJLは各群間に有意差を認めた。PATはB群がC群より有意に速く、SBJはC群が有意に短かった。身体部位別の受傷者数は上肢:A群5名、B群4名、C群6名、下肢:A群6名、B群3名、C群6名、頸部・体幹:A群1名、B群2名、C群5名であった。【考察】 FFD、SLRが乏しく瞬発力が良好な群(A群)、柔軟性、瞬発力ともに良好な群(B群)、柔軟性、瞬発力ともに乏しい群(C群)に分類された。A群はハムストリングス、背筋群の柔軟性の乏しさが傷害発生と関連していると考えられる。C群では頸部・体幹の傷害発生が多く、柔軟性と瞬発力との関連が強いことが予想される。B群では他群と比較し傷害発生は少ないが、コリジョンスポーツの特性を軽視できない結果となった。しかしA群、C群のような特徴的な身体特性が傷害発生と関連することが明らかとなり、今後の理学療法介入の手がかりになると考えられる。【まとめ】 身体特性をグループ化して理学療法介入を効率よく行うことは傷害予防に繋がると考える。今回の調査の限界は短期間であること、対象者数が少ないことが挙げられ、今後も引き続き調査が必要である。
著者
藤井 稜二 加藤 宗規
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.P-16, 2020

<p>【目的】重度左片麻痺を呈した脳幹梗塞患者に行ったビニールテープの足型を用いたプロンプト・フェイディングによる移乗動作学習の有効性について検討した.</p><p>【方法】90歳代男性.右橋底部の梗塞,前頭葉の萎縮.3 病日に理学療法開始.7病日目で寝返りと起き上がりは中等度介助,端座位は後方へ転倒,起立は手すりにつかまれば可能,移乗は健側への移乗は見守りで可能だが,麻痺側への移乗は方向転換時に膝折れ,あるいはステップが困難なため中等度介助を要した.麻痺側下肢への荷重練習を重ねても,移乗の状態は同様であった.9病日時点でSIAS運動機能は上肢:2/1,下肢:1/0/0.体幹失調を認める.下肢触覚中等度低下,下肢位置覚軽度鈍麻,等尺性膝伸展筋力体重率:非麻痺側42.9%/麻痺側0 %,下肢最大荷重率:非麻痺側95%/麻痺側43.2%,FIM:25/126点であった.そこで10病日から,移乗開始地点と到達地点にビニールテープで足型を示して成功させ,段階的にテープを除去するプロンプト・フェイディングによる3段階の学習を行った.3段階の練習は,段階 ①:足型プロンプトを使用(非麻痺側:赤,麻痺側:青),段階②:足型プロンプトを麻痺側のみ使用,段階③:声掛けのみで実施とした.初日は段階①から3回行い,3回連続の成功した場合には段階を引き上げた.段階と成功回数,成功率を記録し,成功や改善には称賛と身体接触をした.翌日からは,前回の最高段階から実施した.</p><p>【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に基づき,被検者に本研究の趣旨を説明し同意を得た.当院研究倫理審査委員会の承認を得た(番号1574).</p><p>【結果】介入初日に段階①,②を達成,その後2日連続で段階③が可能であり,介入は終了した.この期間における麻痺,下肢最大荷重率,感覚に改善は認めなかった.</p><p>【考察】介入は移乗動作の獲得に有効であり,難易度としても適切であったと考えられた.</p>
著者
堀江 直樹 小山 夕美 山本 典子 大竹 朗
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.176, 2011

【目的】<BR>当地域では平成20年11月より脳卒中地域連携パスが導入され,当院は回復期病院としての役割を担っている.パス導入以前に比べ在院日数は短くなっているが,諸般の理由により長期入院となる症例がある.今回,入院長期化した群と短期群とで比較検討し,若干の考察を加えたので報告する.<BR>【方法】<BR>平成20年11月から平成22年11月までに当院に入院した脳卒中パス患者135例(平均在院日数72±29.4日)の中から,在院日数100日以上の患者21例(以下長期群:121.1±15.7日)と在院日数40日以内22例(以下短期群:33.5±5.1日)について以下の項目を検討した.<BR>検討項目:年齢,NIHSS(入院時,退院時),下肢Br.Stage(入院時,退院時),B-ADL(入院時,退院時),退院時Barthel Index(以下BI),家族構成,復職及び家事復帰.<BR>【結果】<BR>年齢は長期群65.6±10.7歳,短期群75.5±11.7歳で差があった.NIHSSは,入院時は長期群8.0±5.0点,短期群2.3±1.9点.退院時は長期群5.6±4.4点,短期群1.5±2.2点であり,脳卒中は長期群が短期群に比較し重症であった.下肢Br.stageは長期群では入院時にstageIII以下の割合が62%,退院時は38%であった.短期群では入院時・退院時共に5%と変わらず,長期群は短期群に比較し麻痺が重度であった.<BR>ADL評価のB-ADL(退院時)は,長期群4.0±4.1点,短期群2.0±3.3点で差があったが,BIは長期群68.1±29.4点,短期群が81.6±24.1点と短期群に軽症の傾向があった.家族構成については老老介護,一人暮らし,二人暮らし,三人暮らし以上について検討したが両群で特徴は見られなかった.復職及び家事復帰に関しては両群共に3例ずつあり,差は無かった.<BR>【考察とまとめ】<BR>入院長期化した症例は,年齢が若く,機能面,ADL面ともに重症であった.家族構成に関しては介護力の不足などが影響するかと考えられたが,両群間で差は無かった. 当院では入院時に長期入院を防止するためにハイリスクスクリーニングシートを使用し,早期からMSWの介入を行っている.しかしそのような対策を行っていても,入院長期化してしまう症例がある.当地域は山間部で多雪の地域を有し,雪の影響により退院時期が延長することもあり,地域的な特色も影響していると考えられた.
著者
北野 守人 柳井 孝介
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会
巻号頁・発行日
vol.31, 2012

【はじめに】<BR>東京都高等学校野球連盟(以下都高野連)からの依頼を受け、合同練習(以下練習)、壮行試合及び日米親善野球 東京選抜ロサンゼルス遠征(以下遠征)におけるメディカルサポート(以下MS)を実施した。そこで、遠征における活動内容を報告し、今後の課題を考察する。尚、発表するにあたり都高野連の同意を得た。<BR>【対象と目的】<BR>東京都の高等学校から1・2年生の選手20名を平成23年度 秋季東京大会の結果を参考に都高野連の役員会にて選抜。練習(4日間)、壮行試合(2試合:日大三高 全国優勝メンバー、東都1部リーグ 選抜チーム)及び遠征:平成23年12月23~31日(4試合)に参加した選手20名を対象に実施。理学療法士は、対 東都1部リーグ 選抜では2名、遠征等は1名参加。遠征のMS目的は、1.傷害・障害予防2.感染予防3.時差ぼけ対策4.体調管理の4点を挙げ、対策・準備・対応を進めた。<BR>【結果】<BR>MSを行なった選手は20名中17名、内容別件数は延べ143件(練習・壮行試合:41件、遠征:102件)。内訳は、アイシング70件、野手コンディショニング17件、テーピング15件、外傷14件、今後の指導9件、投手コンディショニング7件、体調管理指導4件、栄養指導3件、処置3件、生活指導1件であった。身体部位別件数は196件(練習・壮行試合:51件、遠征:145件)で練習は肩・肘関節、遠征では肩・肘関節だけでなく手指・股関節・大腿・下腿も多かった。<BR>【考察】<BR>1)感染予防:機内では感染対策としてマスクの配布・着用を実施。遠征2日目に選手1人が喉痛を訴えたので、全選手に夜間用のミネラルウォーターを2本に増加、うがい薬・マスクを2日分配布。乾燥防止に就寝前に浴槽への湯張りを指示。その後、感染の悪化・発症はなかった。2) 介入件数・選手との会話の増加:遠征に入ると介入件数・選手との会話が多くなり、食事量が少ないと声も挙がったため夜食にバナナを2本配り対応。遠征では肉料理が多かったため摂取カロリーは足りていたと思われるが、野菜・米が少ないことから腹持ちがしなかった可能性が考えられた。3)野手コンディショニング介入回数増加:遠征時の平均湿度18%のグランドは非常に固く、芝生がない捕手・内野手への疲労が蓄積したと予測した。尚、介入した全選手は日米親善試合には復帰した。<BR>【海外遠征の課題】<BR>食事・設備改善だけでなく綿密な遠征日程を把握した上で僅かな時間をどのように有効活用をし、選手のケアにあたるか検討の必要性を感じた。また、遠征後に選手・監督から感謝の言葉を頂いたが、個人的な技術等へのスキルアップを更に図っていきたい。最後に、遠征に帯同させて頂き都高野連・米国の役員に対し心より感謝を申し上げます。
著者
大関 勇人
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.338, 2011

【はじめに】<BR>今回,当訪問リハにて脳出血重度左片麻痺,高次脳機能障害を呈した症例を担当する機会を得た.本症例では基本動作,移乗動作獲得と共に生活範囲の拡大を目指した.その経過について若干の考察を加えて報告する.<BR><BR>【症例紹介】<BR>58歳男性 脳出血後遺症(左片麻痺) 要介護3 高次脳機能障害像(左半側空間失認,易疲労性,易怒性,注意障害等)が認められる.キーパーソン.妻 2009年10月発症. 2010年6月自宅退院後,訪問リハ開始.<BR><BR>【初期評価】<BR>左片麻痺(Br.Stage上肢・手指I下肢II)感覚は表在・深部覚ともに重度鈍麻.机上テストは異常なし.動作時の左上下肢の忘れ著明.注意の持続困難や易怒性等が見られる.Barthel Index35点.<BR><BR>【経過】<BR>2010年6月,訪問リハ開始(週2回).ポータブルトイレ・ベッド等の移乗時転倒頻回.基本動作も介助量多い.基本動作,移乗練習中心にアプローチ開始.妻にも介助方法を指導した.<BR>易疲労性や注意持続困難のため,こまめな休憩や動作の反復練習を行った.動作時の左上下肢の管理や車椅子のブレーキのかけ忘れが見られたため,簡単な言葉で口頭指示するよう工夫した.その結果徐々にブレーキのかけ忘れが軽減,転倒の頻度減少.移乗動作が監視レベルに改善し,活動範囲も拡大した.<BR>2010年8月,ケアプランの見直しを行ない訪問リハの頻度を減らし1時間以上2時間未満の通所リハを導入した.<BR>2011年1月,車椅子ブレーキのかけ忘れはほぼ改善.左上下肢の管理も良好となる.その後再度ケアプランの見直しを行ない現在は週1回の訪問リハビリ.週4回のデイサービスを利用中である.四点杖歩行軽介助で10m可能.Barthel Indexは60点に向上.<BR><BR>【考察】<BR>本症例は重度の麻痺,高次脳機能障害の影響もあり動作獲得に時間を要した.具体的には,動作の反復練習や声かけなど中心にアプローチを行なった.また,同時に家族指導も行ないコミュニケーションを図った.この取り組みが移乗動作の改善・左側への注意力向上及び在宅生活の安定につながったのではないかと考える.<BR>生活の安定と共に,ケアプランの見直しを行い活動範囲の拡大を目的に通所リハを導入した.その結果,定期的な外出の機会増加や一定のリズムで生活を送ることにつながった.高次脳機能障害に対しては身体機能面のみでなく生活環境についてもアプローチを行う事が大切であると考える.<BR> 本症例は50代と年齢も若いため在宅生活の拡大を図るとともに社会参加の拡大も今後の課題である.今後も生活動作のアドバイスや家族指導などを継続して行ない生活をサポートする必要があると考える.
著者
林 友則 保木本 崇弘 樋口 謙次 中村 高良 木山 厚 堀 順 来住野 健二 中山 恭秀
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.P-9, 2020

<p>【目的】急性期の脳卒中診療において、早期から退院の可否や転院の必要性などに関しての転帰予測が求められる機会は多い。現在までの脳卒中転帰予測に関する報告の中で、急性期の転帰予測をフローチャート形式にて示した報告は少ない。そこで本研究では、決定木分析を用いて初回理学療法評価から転帰予測モデルを作成することを目的とした。</p><p>【方法】対象は2012年7月から2015年4月までに当大学附属4病院に入院し理学療法が開始された脳梗塞,脳内出血患者496名とした。開始日が発症当日または発症後1週間以上経過している対象59例を除いた438例(男性315 例,女性123例,年齢69.3±13.0歳)を対象とし、退院群163名と転院群275名の2群に分類した。理学療法開始日数、NIHSS、GCS、上田式12段階片麻痺機能検査(以下、12グレード法)、ABMS各項目、年齢、病態(脳梗塞、脳出血)、性別、就労の有無、キーパーソンの有無、同居家族の有無、家屋環境をカルテおよび評価表より収集した。それらを独立変数として、退院、転院を従属変数とした決定木分析を実施した。統計解析ソフトはRを使用した。</p><p>【倫理的配慮】本研究は当大学倫理委員会の承認を得た上で、ヘルシンキ宣言に遵守して行った。</p><p>【結果】退院に関しては、NIHSSが3未満である場合(85 %)、そして、NIHSSが3以上であっても、12グレード法が9以上かつABMSの立ち上がりが2以上の場合(69 %)が退院となる決定木が得られた。転院に関してはNIHSSが3以上、12グレード法が9未満の場合(81%)と、NIHSSが3以上、12グレード法が9未満かつABMSの立ち上がりが2未満の場合(64%)が転院となる決定木が得られた。</p><p>【考察】退院の転帰予測には、NIHSSの点数に加え、分離運動の可否、立ち上がりの安静度が影響していると考える。今回の決定木による転帰予測モデルは、急性期の脳卒中診療において臨床的な判断基準を示すことが可能であり、転帰予測に有効であると考えられる。</p>
著者
大高 知世 野口 涼太
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.88, 2011

【目的】<BR> H22年度の診療報酬改訂により、回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期病棟)における「休日リハビリテーション提供体制加算」が新設された。それに伴い、回復期病棟で365日体制をとる病院が増えてきている。当院でも、H22年4月より導入しているが、365日体制によるリハビリテーション(以下、リハ)の効果判定はまだ少ない。そこで今回、365日体制前後の単位数・在院日数・Functional Independence Measure(以下FIM)・転帰を比較し、今後の365日体制における課題検討に役立てたい。<BR>【方法】<BR> 対象はH21.4.1~12.31(53例:男性27名,女性26名,平均年齢74±12.1歳)及びH22.4.1~12.31(59例:男性27名,女性32名、平均年齢76±11.3歳)の期間中に当院回復期病棟に在院していた脳血管障害患者である。なお、前者がリハ日数5.5日/週である365日体制前群(以下、前群)、後者がリハ日数7日/週である365日体制後群(以下、後群)とする。両群について、1人1日当たりの単位数(総単位数/在院日数)・在院日数・各月毎のFIM増加数(運動・認知・総得点)・入院時から退院時までのFIM増加数(運動・認知・総得点)・転帰をカルテより後方視的に情報収集した。それぞれウェルチのt検定、もしくはマン・ホイットニ検定による統計学的処理により365日体制前後群での2群間比較を行なった。<BR>【結果】<BR> 1人1日当たりの平均単位数(前群3.0±1.1,後群3.9±0.9)では前群より後群が有意に多く(p<0.05)、平均在院日数(前群136±34.8,後群123±35.6)では前群より後群は有意に少なかった(p<0.05)。また、1ヶ月毎のFIM増加数において前群より後群で比較的大きい値を示す傾向にあるが、統計学的な有意差は認められなかった。入院時から退院時までのFIM増加数(前群18.1±17.1,後群31.6±21.6)においてのみ、後群で有意に大きい値を示した(p<0.05)。転帰は前群(自宅67.9%,老健18.9%,療養11.3%,他1.9%)と後群(自宅57.6%,老健23.7%,療養11.9%,他6.8%)で有意差はなかった。<BR>【考察】<BR> 今回、提供単位数の増加や在院日数の短縮、FIM増加数の向上がみられ、365日体制下でのリハ提供における有用性が示唆された。今後、在宅復帰率の向上を図るため、実用的なADL能力の獲得に向け、リハ提供体制だけでなく技術・知識等における更なる質の向上が課題であると考える。
著者
久保田 悦章 市川 遥 杉山 矩美 吉野 涼太 法山 徹
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.O-19, 2020

<p>【目的】脳卒中患者の歩行自立可否は転帰先を検討する上で重要であり、患者本人や家族も自立を望んでいる事が多い.先行研究では回復期病棟入棟時の運動機能から,歩行自立に関連する要因を検討しているものは多いが認知機能を含めて検討したものは少ない.本研究では,回復期病棟入棟時の基本属性や運動及び認知機能から歩行自立に関連する要因を検討した.</p><p>【方法】当院回復期病棟に入棟した脳卒中患者84名を対象とした.調査項目は年齢,性別,病型,麻痺側,発症後日数,入棟時NIHSS,mRS,Br.Stage,基本動作能力,FIM総得点,運動得点(mFIM),認知得点,及び下位項目,退院時移動とした.退院時移動(歩行)が6点以上を自立群,5点以下を非自立群とし単変量解析を行った.その後従属変数を歩行自立可否,単変量解析で有意差を認めた項目を独立変数とし多重ロジスティック回帰分析を行った.採択された変数はROC曲線を用いcut off 値を求めた.単変量解析はt検定,Mann-whitneyのU検定,χ<sup>2</sup>検定で実施し,有意水準はp=0.05とした.本研究は当院企画運営委員会の承認を得て行った.</p><p>【結果】自立群は43名(男28,女15),非自立群は41名(男14,女27)であった.歩行自立群と非自立群の単変量解析において,年齢,麻痺側,発症後日数を除く項目に有意差がみられた.多重ロジスティック回帰分析では,性別,mFIMが採択された(判別的中率81.0%).有意な独立変数は性別(OR3.46.95%CI1.19-10.04, p<0.05),mFIM(OR0.94.95%CI0.91-0.96, p<0.01)であった.歩行自立のcut off値はmFIM46点(感度81.4%,特異度75.6%, AUC0.88)となった.</p><p>【考察】脳卒中患者の歩行自立には性別,入棟時mFIM が関連していることが示唆された.性別は,平均年齢が女性で高かったことが影響したと思われた.mFIMはADL全般を反映しており,歩行の自立においても重要な因子であることが考えられた.また,cut off値の精度については比較的良好であり,歩行の自立において臨床上の指標となり得る可能性が示唆された.</p>
著者
板場 一訓 今井 正義
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.307, 2011

【目的】<BR>スポーツにはスポーツ特有の姿勢(フォーム)があり競技中の姿勢制御の熟達は精巧なパフォーマンスを決定する。本研究ではスポーツの中でも特に野球の重心制御の特徴を足圧中心の変化から検討することである。<BR>【方法】<BR>対象は、野球選手(以下:B群)、運動習慣のない男性(以下:C群)の10名とした。また、利き脚は右脚である。課題は、重心動揺計(GS-11・アニマ社製)を使用し、裸足で開眼と閉眼で1分間の両脚立位・左右片脚立位保持をそれぞれ3回施行し、単位時間軌跡長、単位面積軌跡長、左右方向・前後方向の最大振幅を算出した。統計処理は、One-way ANOVAを適用し多重比較検定にTukey Kramer法を適用し有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】<BR>B群、C群の左右の片脚立位において、単位面積軌跡長、左右方向最大振幅、前後方向最大振幅は、それぞれ閉眼時に比べ開眼時は有意に短かった。B群・C群間の比較では、C群に比べ、B群が有意に短かった。単位時間総軌跡長は、B群は、左右片脚立位において、開眼時、閉眼時共に有意差はなかった。しかし、C群は、右片脚立位では有意差はなかったが、左片脚立位で開眼に比べ閉眼が有意に短かった。<BR>【考察】<BR>B群は利き脚に比べ非利き脚関係なく足圧中心がコントロールされ、C群は利き足での開眼・閉眼は左右差なく重心動揺をコントロール行っているが、非利き脚では重心動揺が増加している。野球は投球動作やバッティング動作など不安定な状況でのパフォーマンスが求められ、足底からのフィードバック制御、フィードフォワード制御がより必要になる。また、足底からのフィードバックに加え、足部周囲や他関節からの体性感覚・固有感覚からのフィードバックが必要であるため、競技の特性上、体性感覚系をより活性化させていることが考えられる。野球に限らず直接地面と接する競技では足部が安定することで身体運動軸が安定し、運動の伝達効率が改善され重心位置のコントロールが行いやすくなり、下肢、骨盤、体幹、頸部の筋が効率よく反応し、高いパフォーマンスを発揮しやすい状態になっているものと考える。<BR>【まとめ】<BR>野球選手は高いパフォーマンスを発揮するために運動習慣のないものに比べ、高度な姿勢制御を行っている。