著者
平田 史哉 稲垣 郁哉 小関 博久 財前 知典 関口 剛 大屋 隆章 多米 一矢 松田 俊彦 平山 哲郎 川崎 智子
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.31, 2012

【目的】<BR>臨床において明らかな外傷がないにも関わらず手関節痛をきたし,日常生活を大きく制限されている症例を多く見受ける.これらの症例の特徴として安静時に尺屈位を呈していることが多い.尺屈の主動作筋である尺側手根屈筋は豆状骨を介し小指外転筋との連結が確認でき,双方の筋が機能的に協調することは既知である.小指外転筋は小指外転運動や対立機能,手指巧緻動作に関与し,筋出力低下に伴い手関節周囲筋群の筋バランスの破綻に繋がると考える.そこで尺側手根屈筋との連結がみられる小指外転筋の筋出力低下を,尺屈位で補償し小指外転筋機能を代償しているのではないかと仮説を立てた.そこで本研究では手関節を中間位,尺屈位の二条件にて,各肢位の小指外転運動(以下AD)時における小指外転筋及び手関節尺側筋活動の違いについて表面筋電図を用いて比較検討した.<BR>【方法】<BR>対象はヘルシンキ宣言に沿った説明と同意を得た健常成人6名12手であった(男性5名,女性1名:平均年齢28.6&plusmn;3.77歳).測定肢位は端座位とし,上肢下垂,肘関節90度屈曲,前腕回外位にて計測した.前腕を台に置き,他動的に中間位,尺屈位を設定し各肢位でADを行った.尺屈位は手関節掌背屈が出現しない最大尺屈位と規定した.被検筋は小指外転筋(以下ADM),尺側手根伸筋(以下ECU),尺側手根屈筋(以下FCU)とした.各被検筋に対して5秒間の最大等尺性随意収縮を行い,安定した2秒間の筋電積分値(以下IEMG)を基準として各筋におけるAD時の%IEMGを算出した. 統計処理には,対応のあるt検定を用い,中間位,尺屈位における各筋のAD時の%IEMGに対して比較検討を行った. なお有意確率は5%とした.<BR>【結果】<BR>尺屈位においてADM,ECUの活動に有意な増加を認めた(ADM:p<0.01 ECU :p<0.01).しかし,同肢位ではFCUの活動に有意な増加は認められなかった.<BR>【考察】<BR>本研究によりFCUの活動増加を伴わない手関節尺屈位においてADMの活動が有意に増加することが示唆された.ADMは豆状骨から起始し,近位手根骨列と機能的に協調する.手関節尺屈位において,豆状骨は三角骨と共に橈側へ滑り,かつ尺側近位へひかれる.これにより豆状骨の腹側部に起始するADMは中枢へ牽引され筋張力により豆状骨が安定し,ADMの筋活動が向上したと考える.これらのことから日常生活を尺屈位で過ごすことでADMの筋出力を補償しうる可能性があるのではないか.<BR>【まとめ】<BR>手関節尺屈位が手関節筋群に影響を与えることが示唆された.ADM筋出力低下は,代償的な手関節尺屈位をもたらし,手関節構成体にメカニカルストレスを与える可能性が示唆された.また肘関節,肩関節への影響も考慮した追加研究を行う.
著者
長坂 脩平
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.191, 2017

<p>【はじめに】</p><p>結帯動作から肩関節下垂位に戻る際に生じる疼痛を主症状とした左肩関節周囲炎と診断された患者に対し、肩甲胸郭関節機能改善に着目してアプローチした結果、疼痛の軽減を認めたためここに報告する。</p><p>【症例紹介】</p><p>40 歳代女性。平成28 年10 月頃誘因なく発症。様子を見ていたが疼痛改善せず、平成28 年11 月下旬に当院を受診されリハビリ開始となる。</p><p>【説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言に則り本人へ十分な説明を行い、同意を得て実施した。</p><p>【理学所見】</p><p>疼痛は結帯動作から左肩関節下垂位へ戻る際に左肩関節前方に生じていた。左肩関節屈曲・外転の可動域制限、疼痛は認めず、肩甲上腕関節の副運動も制限は認めなかった。鑑別検査として腱板機能、前方不安定検査を実施したが陰性であった。静止立位では左肩甲骨外転・上方回旋を認め、疼痛出現動作時は外転・上方回旋を生じ、これを徒手的に修正することで疼痛は消失した。またTh3,4,5 レベルでの左胸椎椎間関節、左胸肋関節、左肋椎関節の可動制限を認めた。</p><p>【介入・結果】</p><p>肩甲胸郭関節機能改善を目的に左胸椎椎間関節、左胸肋関節・左肋椎関節の可動制限改善に介入した。介入後、左胸椎椎間関節・左胸肋関節・左肋椎関節の可動性は向上し、静止立位での肩甲骨位置の左右差は消失した。結帯動作から下垂位に戻る動作時に認めた肩甲骨の外転は消失し、肩甲骨への徒手的誘導を加えなくても疼痛は消失した。</p><p>【考察】</p><p>結帯動作時に生じる疼痛は肩関節2nd 内旋可動域低下との相関が報告されているが、本症例の特徴とは一致しなかった。理学所見から本症例の疼痛は肩甲上腕関節の可動性低下・不安定性に由来するものではなく、肩甲骨の機能異常の結果、結帯動作から下垂位に戻る際に肩甲骨に過度の外転が生じていることが原因と考えた。介入として、肩甲骨機能異常に関連する胸郭・胸椎の可動性を改善することで、結帯動作から下垂位へ戻る際の疼痛の消失につながったと考える。</p>
著者
石谷 勇人 室井 聖史 望月 良輔 石垣 直輝 黒川 純
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.67, 2017

<p>【目的】</p><p>成長期腰椎分離症に対する治療は骨癒合を目的とした装具療法が主に選択され,装具期間中の運動は中止されることが多い.しかし近年では,長期間の運動中止により骨癒合後も競技復帰に期間を要するため,装具期間中に早期理学療法の併用が行われている.本研究の目的は, ジュニアスポーツ選手の腰椎分離症に対する治療として,装具療法と早期理学療法の併用が競技復帰に与える影響を検討することである.</p><p>【方法】</p><p>対象は2012 年から2015 年に腰痛にて当院を受診し,片側L5 分離症と診断され,骨癒合を目的として装具装着を指示されたジュニアスポーツ選手37 名とした.装具期間中に安静にしていた17 名( 装具群) と,早期理学療法として股関節ストレッチ等の運動療法を併用した20 名( 併用群) の2 群に分類した.検討項目は,装具期間,装具療法終了から競技復帰までの期間(復帰期間)を装具群と併用群を比較検討し,各群の癒合率も算出した.競技復帰の定義は,全体練習に参加した日とした.統計処理はMann-Whitney U 検定,χ<sup>2 </sup>検定を用い,有意水準は5%とした.本研究は,当院倫理委員会の承認を得て実施し,対象者に本研究の趣旨,目的等を説明し,同意の上で行った.</p><p>【結果】</p><p>装具期間は装具群96.5日,併用群87.2 日であり,両群間に有意な差はみられなかった.復帰期間は装具群29.3 日,併</p><p>用群19.9 日であり,併用群は装具群よりも有意に短かった(p=0.034).癒合率は装具群76%,併用群75%であり,有意差な差はみられなかった.</p><p>【考察】</p><p>両群とも装具期間に有意差がなく,同等な骨癒合率がみられたことから,早期理学療法の介入は分離部への骨癒合に影響を与えないものと考える.復帰期間において,併用群は装具群に比べて有意に早く練習に復帰していたことから,装具療法と早期理学療法の併用は,柔軟性・筋力が維持でき,装具療法終了後にスムーズなスポーツ動作の獲得が図れることで早期の練習復帰が可能であると考えられる.</p>
著者
仲島 佑紀 小林 雄也 高村 隆 岡田 亨 戸野塚 久紘 高橋 憲正 菅谷 啓之
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.78, 2011

【目的】<BR>少年期の野球肘内側障害(以下、内側型野球肘)において、一般に画像上の異常所見により長期の投球禁止となる場合が少なくない。当院では早期より理学療法を施行することで安静期間の短縮を図ってきた。本研究の目的は少年期の内側型野球肘における、画像所見の違いによる競技復帰への影響を調査することである。<BR>【対象】<BR>2005年1月から2010年8月までに当院を受診した小中学生野球選手で内側型野球肘と診断され、競技復帰までの経過観察が可能であった症例のうち、明らかな画像上の異常所見を認めなかった144例をN群、内側上顆骨端核の裂離を有していた248例をS群とした。画像所見における分類は、当院放射線技師により撮影された初診時X線所見を主治医が診断したものを用いた。医師の指示の下、全例初診時より投球禁止と共に理学療法を直ちに施行した。なお、上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の合併例は除外した。<BR>【方法】<BR>N群、S群における競技完全復帰率を算出した。さらに両群を完全復帰群(C群)、不完全復帰群(I群)に分類し、N-C群・N-I群・S-C群・S-I群の初診時と復帰時における身体機能の群内比較を行った。、次に復帰時の身体機能、ならびに復帰までの期間N-C群とN-I群、S-C群とS-I群で比較した。身体機能は肘関節可動域、肩甲帯機能(CAT・HFT)、股関節機能(SLR・HIR・HBD)評価を用いた。統計学的処理にはMann-Whitney U検定、Wilcoxon符号順位検定を用いた。なお本研究には当院倫理委員会の承認を得て行った。<BR>【結果】<BR>完全復帰率はN群82%、S群87%であった。N-C群、S-C群においてCAT・HFT・SLR・HIRが初診時よりも有意に改善していた(p<0.01)。N、S群ともにC群がI群に比しCAT・HFT・SLR・HIRが有意に大きかった(p<0.05)。復帰までの期間はN-C群:7.0±4.4週、N-I群:3.1±2.7週、S-C群:7.8±4.5週、S-I群:3.8±4.7週であった。<BR>【考察】<BR>今回の調査では画像所見にかかわらず競技完全復帰は7~8週で80%以上が可能であった。内側型野球肘の投球禁止期間は緒家により様々だが、安静期間における身体機能改善を目的とした理学療法アプローチは、競技復帰への重要な要素であるといえる。I群は機能改善が不十分かつ復帰までの期間が短く、コンプライアンスの悪い例であったと考えられる。競技復帰において画像所見は必ずしも影響するとは言えず、身体機能も含めた包括的な評価により投球再開を医師とともに協議し、症例に呈示していく必要があると思われる。
著者
佐々木 和優 長 正則 大石 健太 山岸 辰也 今村 仁
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.F-21, 2020

<p>【はじめに】精神疾患を合併した術後症例に関与する機会が増えてきており、精神疾患のリハビリテーション(以下リハ)の知識が必要な場面を多く経験する。しかし、術後リハの報告は精神疾患の合併で除外されやすく報告数が少ない。今回、TKA術後の統合失調症患者のリハを行い、精神的安定と共に機能改善し自宅復帰した一例を経験したため報告する。</p><p>【説明と同意】ヘルシンキ宣言に沿って対象者に発表の主旨を説明し同意を得ている。</p><p>【症例紹介】60歳代女性、既往歴は脊髄性小児麻痺(小児期に右肩関節固定術)。現病歴は統合失調症(5年前)。 左変形性膝関節症(2年前)。本年、左TKA目的で入院。</p><p>【経過及び結果】入院時評価は、歩行は独歩自立。主訴は左膝荷重時痛でNRS8/10。全体像は通常の会話可能も内向的。従命反応緩慢であった。TKA翌日リハ再開。 全荷重下での立位訓練時に強い左膝折れを起こし、膝関節展開縫合部皮下断裂の診断。術後14日目に断裂部再縫合術施行。術後は筋力強化練習や慎重な荷重練習と歩行練習を実施。術後38日目から段差昇降練習を実施。術後47日目に自宅退院。退院時評価は、歩行はT字杖自立。 荷重時痛なし。全体像は笑顔が多くなり自らの発言増加。 従命反応良好。自主練習が増えた。</p><p>【考察】本症例は術後、膝折れを起こし、関節展開縫合部皮下断裂を生じた。断裂部再縫合術後は、患者にわかりやすく丁寧に注意点や練習の目的などのオリエンテーションを行い、理解の向上で安全性を高める様に努めた。 統合失調症患者の多くは病識の欠如や理解力の低下を認めるが、症例はリハへの理解が深まり、指導した自主練習が増える等、ポジティブな行動変容が得られたことが、ADLの再獲得、自宅復帰に繋がったと考える。精神疾患合併症例の術後リハは、疾患特有の精神症状の理解とそれに応じた個々の対応をリハ計画に加えプログラムを安全に進めることが重要であると考えられた。</p>
著者
斎藤 広志 小尾 尚貴 山田 祐子 竹内 大樹 兼岩 淳平 多田 智顕
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.F-25, 2020

<p>【はじめに】超音波検査は体表から触知できない深層を可視化でき、患者へ与える負担が少ない検査法である。 今回肩挙上時に疼痛を訴える肩関節周囲炎患者に対して、理学療法評価に超音波診断装置を用いて機能評価、治療介入を行った症例を経験したので報告する。</p><p>【症例】40代女性。2018年12月更衣動作で受傷し、右肩関節周囲炎と診断。</p><p>【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に沿い発表目的を説明し同意を得た。</p><p>【初期評価】右肩ROM自動屈曲100°他動屈曲160°外転90°であった。整形外科的テストはNeer Test陽性。上腕骨頭の超音波動態評価で、肩関節外転時に肩峰と大結節の衝突を認めた。結帯肢位内旋動作の上腕骨頭前方移動量は左右差を認めなかった。Horizontal Flexion Test 陰性であった。肩甲胸郭機能はElbow Push Test陽性。 MMTは肩甲骨外転・上方回旋3肩甲骨下制・内転3であった。JOAスコア67点であった。</p><p>【理学療法経過】超音波動態評価で肩関節外転時に肩峰と大結節の衝突を認めた。また、結帯肢位内旋動作の上腕骨頭前方移動量は左右差を認めなかった。評価上から肩甲胸郭関節機能障害を認めた。以上評価結果から肩甲胸郭関節機能障害から肩峰下インピンジメントが生じていると判断して、肩甲胸郭関節機能に対し理学療法を実施した。理学療法プログラムは前鋸筋トレーニング、小胸筋ストレッチ、側臥位で肩関節外転運動を実施した。 4週間理学療法を実施し、右肩ROM自動屈曲175°外転170°に改善した。Neer Test陰性、超音波動態評価の肩関節外転時の肩峰と大結節の衝突も消失した。MMTは全項目で改善を認めた。肩挙上時痛消失し、JOAスコア97点と改善した。</p><p>【考察】超音波動態評価から上腕骨頭の動態を可視化することで、肩甲胸郭機能に対しての治療を立案でき、疼痛と可動域が改善したと考える。</p>
著者
小出 慧
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.P-24, 2020

<p>【目的】立位や座位での頭部前方位が上肢機能不全を引き起こすと報告されているが,肩関節疾患の症例に対し背臥位にて介入する場合が多い.そこで今回は,背臥位での頭部位置の違いが肩関節運動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.</p><p>【方法】被験者は健常成人男性11名(24.5±1.5歳)とした.課題動作は右側の肩関節最大屈曲動作と肩関節屈曲90° とし,各3回ずつ施行した.背臥位にて頭部の高さ0cm・ 3cm・5cmの3条件を,木材を頭部の下に置く事で設定した.測定機器はデジタルカメラ2台を用い,それぞれ頭頂部と右肩峰が中心となるよう設置した.マーカーを頭頂部・右肩峰・右腋窩から骨盤に下ろした線と第7肋骨が交わる点(以下,側腹部)に貼付した.動作前後の側腹部の高さの変化量,安静位での頭頂部と右肩峰の高さの差を撮影した画像よりImageJにて算出した.また肩関節最大屈曲時の角度を計測した.データ解析は平均値を代表値とし,頭部の高さの3条件間で比較検討した.統計処理はSPSS(IBM社製)を使用し一元配置分散分析及びTukey検定を用い有意水準5%未満にて実施した.</p><p>【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づき対象者に対し事前に研究の趣旨を十分に説明し同意を得て実施した.また本研究は当院倫理委員会の承認を得て行った.</p><p>【結果】側腹部の移動量は3cmが0cmと比べ有意に少ない結果を得た.右肩関節最大屈曲角度は3cmが5cmと比べ有意に大きい結果を得た.安静位での頭頂部と右肩峰の高さの差は3cmが他条件と比べ有意に少ない結果を得た(p<0.05).</p><p>【考察】0cmの条件では頭部位置が低く,過度な胸椎前弯が生じたと考える.5cmの条件では頭部位置が高く,先行研究にて頭部前方移動すると肩関節屈曲可動域制限が生じると述べていることから,本研究でも同様に制限が生じたと示唆される.このことから3cmの条件は姿勢変化が少ないと考えられ,要因として安静位での頭頂部と右肩峰の高さの差が少ないことが示唆された.</p>
著者
山手 千里
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.69, 2006

【はじめに】<BR> 整形疾患において,患側への免荷を余儀なくされることにより,全荷重時期となっても患側下肢への荷重困難となるケースは少なくない.今回,左大腿骨頚部骨折患者において患側荷重を促すため,恐怖心を排除した環境下での課題を導入し,結果が得られたので報告する.<BR>【症例紹介】<BR> 60代,女性.平成17年10月18日,左大腿骨頚部骨折受傷.同年10月20日,手術(CHS)施行された.術後リハは翌日より開始し,患側荷重は術後7日より1/2PWB,術後14日より全荷重可となった.荷重開始時の下肢筋力はMMT4level,足底感覚の左右差はないが,荷重時には「体重をかけるのが恐い。」との訴えがみられていた.全荷重可となった術後14日時の左側下肢荷重量は,安静立位において体重59kg中,15kgと右側へ偏位していた.<BR>【方法】<BR> 1/2PWB開始後より荷重訓練開始し,平行棒にて両下肢へ体重計を設置し,視覚的フィードバックと口頭指示による荷重訓練を行った.術後14日で全荷重可となったが,1週間後も恐怖心の影響があり,患側荷重量の向上が得られなかった.そこで,より患側下肢への荷重を促すため,平行棒にて両下肢へ体重計を設置した状態で,weight shiftを目的としたペグ移動の課題(以下ペグ課題)を施行し,患者には荷重に注意を向けさせず,ペグ課題に集中させた.<BR>【結果】<BR> 荷重訓練開始時,左下肢荷重量15kg,視覚的フィードバックと口頭指示による荷重訓練の左下肢荷重量は20kgであった.ペグ課題開始時の左下肢荷重量は25kgであった.またペグ課題開始時の遂行時間は右から左への移動(以下右→左)で49.61秒,左から右への移動(左→右)で44.83秒であり,課題開始から1週間後,右→左41.94秒,左→右38.74秒であった.課題遂行時の左下肢荷重量は30kg,左下肢への最大荷重量は45kgであった.歩行はT字杖での自立歩行が可能となった.<BR>【考察】<BR> 従来,整形疾患に対する荷重訓練では,視覚的フィードバックによる自己修正を促すか,セラピストの口頭指示による荷重の修正を行うケースが多く見られる.しかし,恐怖心が阻害因子となり,歩行場面では患側への荷重が不十分となり,歩行時のweight shiftが困難となっている.これらの事を考えると,荷重訓練時に恐怖心を取り除いた環境下でweight shiftを必要とする課題を与え,姿勢制御や歩行の安定化へと結びつける事が重要である.今回,weight shiftを目的としたペグ課題により患側下肢への荷重が可能となり,静止立位及び歩行能力が向上したことが示唆された.
著者
齋藤 涼平
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.177, 2017

<p>【はじめに】</p><p>ボクシングのパンチは、ジャブ、ストレート、フック、アッパーの4 種類とされている。今回左フックでの痛みが強いと訴える左肩インピンジメント症候群と診断されたボクシング選手を担当する機会を得た。各パンチ動作の動作分析を行い、患部への力学的負荷を推察し理学療法を実施したので報告する。</p><p>【症例紹介】</p><p>症例は30 歳代男性。職業プロボクサー、中量級の日本トップランカー。主訴は左フックの時に左肩が痛い。現病歴、1 年ぐらい前から左肩の痛みが発生、試合後に疼痛が強くなり当院受診し理学療法開始。ヘルシンキ宣言に基づき症例には同意を得た。初期理学的所見関節可動域(Lt)肩関節屈曲160°1st 外旋/60°2nd 内旋/50 °疼痛評価安静時- 動作時痛+( 左フックNRS7/10 左ストレートNRS2/10) 整形外科テスト Neer- Hawkins+ CAT+ HFT+ EPT+</p><p>【理学療法および経過】</p><p>3 か月後に試合が決まっておりスケジュールを考え理学療法(週2 回)を行った。1 カ月で肩関節の可動域制限の改善と肩甲骨と胸郭のmobility とstability の向上。2 か月目では、ミット打ちでの強さを向上。フォームによって疼痛がありビデオでのフォームチェック等行った。3 か月目ではよりステップを踏んだ中やスパーリング等の実践を行っていく事で、競技復帰を行った。</p><p>【考察】</p><p>シャドーでの動作分析を行った際に、ジャブやストレートやアッパーは両股関節での重心移動や胸郭の動きは、矢状面上の前後/ 上下系になるが、フックでは両股関節と胸郭では回旋系の動きであった。症例はインファイタータイプでステップが少なく、両股関節での回旋が少ない中で肩甲胸郭を固めてしまい肩甲骨の動きが少ない中でフックをすることで、肩甲上腕関節に負荷が増大したと考えられる。</p><p>【まとめ】</p><p>ボクシングのパンチの種類の力学的課題を考え、症例の動作分析を行い力学的負荷を推察し、それを軽減するための運動療法を実施することは重要と考える。</p>
著者
萩原 文子 中村 とも子 大槻 かおる 寺尾 詩子 大島 奈緒美 井上 早苗 堀 七湖 大塚 敬三
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.98, 2008

【はじめに】日本理学療法士協会や神奈川県理学療法士会の報告では会員の退職や休職の理由として出産や育児が大きな比率を占めているとされている。制度的には男性も育児休業(以下育休)の取得が可能であるが厚生労働省の調べによると2006年度の男性育休取得率は0.57%であり政府目標の10%には程遠い状況である。今回育休の取得経験のある男性理学療法士(以下PT)及び作業療法士(以下OT)より経験談や意見を聴取し,男性の目から見た育児・仕事との両立・制度などの問題点などを明らかにするため,調査を行なったので報告する。<BR>【方法】事前に作成した調査票により面接又はメールにより実施した。<BR>対象者:男性PT3名・OT1名<BR>調査内容:家庭環境・職場環境・育休取得について<BR>【結果】育休取得時年齢:28~40歳 <BR>育休取得期間:2~12ヶ月(平均5.75ヶ月) 3名は妻の育休取得後・1名は妻の産後休暇期間<BR>職場:公的又は準公的施設<BR>職場のPT・OT数:2名~28名(平均11.25名) <BR>休業中の代替者の確保:2施設あり・2施設なし<BR>職場内保育所の設置:4施設共なし<BR>職場での女性の育児休業取得:3施設取得し易い・1施設退職圧力等はなし<BR>リハビリ部門の対応:4施設とも協力的。3施設では代替者の募集が行なわれた。<BR>良かったこと:親としての責任感が持てた。子供とゆっくりとした時間が持て向き合うことが出来た。人としての幅が広がった。病院以外の世界にも目を向けるきっかけとなった。患者さんが帰っていく家庭や地域がみえ,指導へもつながることがたくさんあった。<BR>困ったこと:特になし<BR>要望:育休が取得可能であることや取得によるメリットなどの情報発信をして欲しい。事務職員が制度を理解しスムーズな手続きが行なわれるようになって欲しい。待機児童をなくしいつでも認可保育園に入れるようにして欲しい。<BR>男性PT・OTに対して:育児に深く関ることにより父親として,人として,職業人として多くのメリットがあるのでどんどん取得して欲しい。<BR>【考察】今回の調査は偶然アクセスできた5名のうち協力を得られた4名という非常に少ない数の調査であるが全ての職場が公的又は準公的な施設であった。<BR>職場の規模や職員数・取得期間や時期などは様々であった。<BR>困ったことは全員が特になしと,良かったこととして子供や家族との関係・人としてやリハビリテーションを担う職業人としての向上を挙げており育休取得によりメリットが大きいことがわかった。<BR>女性の育休取得がし易い職場では男性も取得し易いのではないか,保育所の必要性,どうしたら育休をすすめていけるかなど更なる状況把握・育休制度の啓発と代替者の補充が容易になるよう人材バンクなどの整備なども進めていく必要があると思われ,今後も活動を続けていく。<BR>
著者
金城 拓人 粕山 達也 中川 和昌 猪股 伸晃 岡田 みゆき 中澤 理恵 坂本 雅昭 渋澤 克利 渡辺 英輔
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.74, 2009

【目的】<BR>我々は,群馬県高等学校体育連盟バスケットボール専門部との連携により,高校バスケットボール競技に対してメディカルサポート活動(以下,サポート)を行った.我々は,以前より高校野球競技,中学・高校サッカー競技にサポートを行っているが,初めて女子の競技も対象となった.今回,その内容をまとめ,傷害傾向を把握し,今後の方向性を検討した.<BR>【方法】<BR>サポートは,全国高等学校選抜優勝大会群馬県予選会(以下,選抜大会)の準々決勝以降(出場16校,14試合),群馬県高等学校バスケットボール新人大会(以下,新人大会)の決勝リーグ(出場8校,12試合)に行った.スタッフは,理学療法士をボランティアとして参加を募り,会場に4名以上配置した.<BR> サポート内容は,理学療法ブースを開設し,再発予防や疼痛等の症状軽減目的の処置,応急処置を行った.また,コート内にもスタッフが待機した.<BR>【結果】<BR>参加したスタッフは,選抜大会延べ8名,新人大会延べ10名であった.<BR>サポートを依頼した学校数は,選抜大会5校,新人大会6校であった.<BR>依頼件数は総件数52件のうち,選抜大会21件(男子11件,女子10件),新人大会31件(男子19件,女子12件)であった.<BR>対応部位は総件数52件のうち,足関節19件,膝関節14件,手指10件であった.傷害内容は捻挫20件,靭帯損傷9件,突き指9件であった.男女の内訳は,男子の総件数30件のうち,足関節14件,手指10件であった.女子は総件数22件のうち,膝関節13件,足関節5件であった.傷害内容は男子が捻挫15件,突き指7件であった.女子は靭帯損傷7件,捻挫5件であった.応急処置依頼は9件で,うち2件(全て女子)は膝関節靭帯損傷の疑いにて,医療機関への受診につなげた.<BR>対応内容は,テーピング34件,ストレッチング4件,止血処置3件,アイシング3件であった.<BR>【考察】<BR>初めての試みだったが,依頼件数は大会毎に増えていることから,選手や指導者の潜在的なニーズは存在し,今後も増加することが考えられた.<BR>対応部位は下肢関節に多く,ジャンプやカッティング動作の多い競技特性を示した結果となった.対応内容は足関節捻挫に対する,再発予防や症状軽減目的の依頼が大半を占め,不安感や疼痛を抱えている選手が多いことが感じられた.今後のサポートでは,単にテーピング等の技術提供にとどまらず,エクササイズやケアの方法等を積極的に指導することも必要と考えられた.また女子においては,膝関節への対応が多く,靭帯損傷を疑う傷害も高頻度で発生しており,発生予防策の検討も今後の課題と考える.
著者
上井 雅史 伊藤 昭 田中 隆晴 平野 弘之
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.73, 2008

【目的】<BR> プライマリケア診療ではうつ病患者の80% に頭痛、腹痛、腰部・関節・首など骨格筋系の疼痛のような身体症状がみられる。気象各要素と痛みの度合いの関係に関する報告が多い。能力障害、VAS(Visual alanogue scale)および抑うつの相関関係をみる報告もある。しかし、VAS増減値から比較した報告は少ない。今回、我々は当クリニックを受診した患者に対しアンケートを行い、VASの増減、うつ傾向の度合いおよび天候に注目して検討した。これらの結果につき文献的考察を交え報告する。<BR>【対象】<BR> 対象者は運動器疾患を有し運動療法を実施している患者52名(男3名、女49名)であった。アンケート調査の実施に合意を得られたのは30名(男1名 女29名)、平均年齢は72.8±8.1歳であった。データ欠損、回答の拒否などを対象から除外した。<BR>【調査の方法と内容】<BR> 調査期間を2008/2/4より2/10の一週間とした。VAS測定時間を全例午前9時頃に行った。うつの評価にSDS(Self-rating Depression Scale)を用いSDS40未満を正常群、40点以上を抑うつ群とした。疼痛の評価にVASを使用した。疼痛の期間内でのVAS最大値から最小値を引いたものを疼痛の増減値とした。気象データは東京管区気象台の午前9時のデータを用いた。期間内での最大、最小VAS値を測定した。検討項目がVAS増減値とSDS、および天候それぞれのデータの、最大および最小の日時のVAS変化とした。統計学解析にMann-whitney U testを用いた。<BR>【結果】<BR> SDS40点未満の正常群が15例であった。40点以上の抑うつ傾向群15例であった。SDSとVAS増減値(p<0.05)の間には関連性が認められた。SDS40点未満の正常群ではVAS増減値の平均が1.34±0.89であった。一方SDS40点以上の抑うつ傾向群VAS増減値平均が3.80±2.86であった。期間内での気圧、温度および湿度とVAS値の間に相関関係を認めなかった。<BR>【考察】<BR> 今回の調査でVAS測定を9時としたのは、運動量による変動を極力除外するためであった。抑うつ群にVAS値の増減が有意に高かった。気象条件よりもうつ因子の方が疼痛の増悪に影響していた。現在セロトニン系とノルアドレナリンの下行経路に異常が発生すると機械的な感覚刺激が、不快なまたは痛みを伴う身体症状へと転換されることがわかっている。よって運動器疾患であっても、身体と心理面の疼痛原因の判別が重要で、精神心理面を考慮した評価、治療が必要である。
著者
佐々木 千絵 児玉 雄二
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.47, 2007

【目的】日本における車椅子テニス選手の躍進は目覚しく、ワールドカップ等でも上位に食い込み活躍を見せている。長野県においてもジャパンカップ車椅子テニス大会が開催され、昨年度で第20回を数える。長野県理学療法士会では十数年にわたり、大会期間中の理学療法サービスを実施してきた。今回はスポンサー撤退により、大会が縮小した過去2年間の大会に限定し、車椅子テニス競技の障害特性について報告する。<BR>【方法】大会会場に理学療法室を設置し、治療用簡易ベッド、物療機器、テーピングテープなど用意し、理学療法士を7名程度常勤させ、期間中選手がいつ来室しても対応できる体制をとった。利用が込み合う時間帯は予約制とし、スムーズに運営できるように配慮した。<BR>【結果】過去2年間の大会参加選手のべ112名。理学療法サポート利用選手のべ59名であった。試合前の利用者は11件。試合と試合の間18件。試合後30件であった。障害部位の内訳としては、肩甲骨周囲筋群22件、肩関節6件、利き手肘外側8件、利き手肘内側6件、その他手関節、頚部、腰部等20件であった。症状は筋硬結24件、疲労21件、運動時痛21件、圧痛15件、その他19件であった。障害期は急性期5件、亜急性期3件、慢性期51件であった。対応はマッサージ37件、ストレッチ29件、アイシング8件、テーピング4件、物理療法4件、その他9件であった。<BR>【考察】車椅子テニス競技は、利き手にラケットを握り、車椅子を操作(以下チェアワーク)しながらプレーする競技である。ターン、ダッシュ、ストップなどのチェアワークは勝敗の鍵を握る1つで、練習でも重要視されている。障害発生要因は利き手側の過用症候群のみではなく、チェアワークによる要因も大きいと考えられる。また、車椅子をすばやくターンするときには、上肢のみでなく頚部、体幹、腰等を回旋させているため、頚部・腰等に障害を抱える選手が多いとも考えられる。<BR>【おわりに】障害者スポーツ大会は、スポンサーの有無によりその規模がかわってしまい、かつメディアの注目度はけっして大きくはない印象にある。一方選手の身体特性は元来から有する障害に加え、スポーツ障害を併発しているため、複雑化している場合も多い。当士会では、1998年に冬季パラリンピック大会を支援した経験があり、その事を生かしながら、今後も障害者スポーツの活動を支援してゆきたいと考えている。
著者
羽田野 稔 平野 祥子 宮島 いずみ 深川 新市 浜辺 政晴
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会
巻号頁・発行日
vol.31, 2012

【目的】<BR>当院では平成23年4月より365日リハビリテーション体制に移行し日,祝日に休日リハビリテーション(以下休日リハ)を開始した.そこで職員意識調査を通して当院における休日リハに関わる職員の現状を把握し,職員の意識の変化や看護部・リハ科間の連携等の点での影響を知ることで今後の更なるサービスの向上や業務改善に役立てることを目的とした.なお本研究は当院倫理委員会の承認を得た.<BR>【方法】<BR>調査方法はアンケートとし対象は当院回復期病棟に所属しているリハビリテーション科職員55名.配布期間は平成23年10月24日から11月20日.調査内容は,1.患者家族との関わりについて2.病棟職員との関わりについて3.患者への対応について4.患者の治療効果について5.リスク管理について6.休日リハの今後について7.休日出勤の負担についての7項目とした.回答方法は,無記名自記式とし4段階選択・二者択一・自由記載を併用した.<BR>【結果】<BR>55名に配布し54名から回答を得た.1.患者家族との関わりは「変わらない」が72%で最も多かった.2.病棟職員との関わりは「変化があった」が56%で以前と比べてADL場面の情報収集が行ないやすいとの回答がみられた.3.患者への対応は「変化があった」が70%で患者の訴えを傾聴できるとの回答が多かった.4.患者の治療効果は「どちらともいえない」が57%であった.患者の身体能力に対しては一定の効果があると思う一方で患者の精神的・身体的への負担を考えるとどちらともいえないとの回答や、休日リハ実施による治療効果の判定が難しいとの回答が多かった.5.リスク管理は「とても不安」「不安」「少し不安」が67%で人員的に手薄な休日の急変時対応に自信がないという回答が多かった.6.休日リハの今後は継続した方がいいという回答が89%と多かった.7.休日出勤の負担は「変わらない」が59%であったが一方「負担が大きい」「負担である」が30%で家庭との時間調整に苦慮するとの回答もあった.<BR>【考察】<BR>今回の意識調査より患者家族・病棟職員との関わりに変化はなかったものの患者への対応には著明な変化があった.また,職員が休日の患者の急変時対応に自信がない,休日リハ実施による患者の治療効果が主観的にはあまり感じ取れない,休日リハの継続にあたり今以上の休日出勤回数になった際,職員が負担と感じる等の問題点が示唆された.対策は,回復期病棟に所属している職員は定期的に急変時対応を確認する機会をつくる,休日リハ実施後の患者の治療効果を客観的数値に示し職員間で認識を共有する.また,更なる充実した休日リハを実施していく上での休日出勤者の人員確保が今後の課題となると考える.
著者
藤本 鎮也 佐藤 慎一郎 浅岡 祐之 西原 賢 星 文彦
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会
巻号頁・発行日
vol.31, 2012

【目的】<BR>本研究の目的は下部体幹に装着した非拘束慣性センサのデータに基づいて坐位からの歩行動作の相分けを行い,理学療法士の動画観察による相分けと比較し,その妥当性を検証することである。<BR>【方法】<BR>対象は健常若年男性5名(年齢19.5&plusmn;0.5歳)であった。また,評価者として臨床経験年数の異なる理学療法士3名の協力を得た。課題として、肘掛のない椅子の背もたれに軽くもたれた坐位からの歩行動作(Sit-to-walk)を最大速度にて行うよう指示した。慣性センサは,3軸加速度計と3軸角速度計、そして通信用のBluetoothを備えた小型無線ハイブリッドセンサ(WAA-010,ワイヤレステクノロジー社) を使用し,第3腰椎高位の下部体幹に装着し,サンプリング周波数50Hzにて慣性データをパソコン(以下PC)に取り込んだ。同時にPCにUSB接続したWebカメラ(UCAM-DLY300TA,エレコム社)にて側方より動作を録画した。慣性センサデータと動画の同期と取り込みにはSyncRecord Ver.1.0(ATR-Promotions社)を使用した。取り込んだ下部体幹の慣性センサデータの前後方向加速度とPitch方向の角速度変化から運動開始,離殿そして歩き始めの瞬間を特定し出現までの所要時間を算出した。理学療法士の観察による分析は,録画データをPC上で再生し,速度を自由に変えながら3人の理学療法士が運動開始,離殿そして歩き始めを判断し,画面上のタイムコードを読み取り所要時間を計測した。データ解析は,まず理学療法士による分析結果の再テスト法による検者内信頼性および検者間信頼性を検証し,続いて下部体幹センサに基づく結果と理学療法士の分析結果の相関分析を行った。データ処理と解析にはExcel 2010及びSPSS for Win ver.18を使用した。本研究は協力者に研究内容の説明を行い,書面にて同意を得た後、転倒防止や個人情報保護等に配慮しながら行った。<BR>【結果】<BR>理学療法士の分析結果の信頼性は検者内検者間共に高い信頼性を示した(ICC:&rho;=0.99-1.00,p<0.01)。下部体幹装着慣性センサにより特定された全ての結果と理学療法士の分析に基づく結果の間で高い相関が認められた(運動開始r=0.99,離殿r=0.99,歩行開始r=0.99,いずれもp<0.01)。<BR>【考察およびまとめ】<BR>理学療法士の分析結果は,動画の再生速度を変化させながらタイムコードを利用した時間計測を行ったことで信頼性が高まったと思われる。理学療法士の分析結果と下部体幹装着慣性センサの結果が高い相関を示したことは,下部体幹装着慣性センサによる相分けの臨床適用の可能性を示唆するものであると考える。