著者
雨宮 俊彦
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.89-141, 2000-09-25

本論文では,視覚記号の基本的な問題をあつかった。第1部では,視覚記号と聴覚記号の比較,音声言語と絵的記号の比較がなされた。そして,著者は,種々の視覚表示と視覚表現が,マー(1982)のとなえる視覚的情報処理における諸段階の表象と諸側面に関連して位置づけられることを指摘した。第II部では,グッドマン(1968)による記譜性にかんする記号論とデイーコン(1997)によるシンボリック・レファランスの成立についての説が,それぞれ批判的に検討された。最後に著者は,視覚記号における四種類のレファランス(外延指示、共示、例示、表現)のしくみの解明をこころみた。付録では,マンガ(日本のストーリーコミックス)表現が,音声言語表現と絵的表現の融合したものとして分析された。
著者
吉岡 至
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.65-92, 2021-03-31

2019年2月24日、沖縄で実施された県民投票は辺野古沿岸への普天間飛行場移設・新基地建設のための「埋め立て」の賛否を問うもので、沖縄の民意をあらためて示す一つの重要な機会であった。本稿は沖縄の地方新聞である『沖縄タイムス』と『琉球新報』が県民投票をめぐる争点や沖縄の民意をどのように伝えたのか、その報道の特徴を明らかにすることを目的としている。報道内容の分析を通じて、2つの側面― 県民投票に関する「全県実施」の可能性と「反対」の民意を強調していることを、その特徴として指摘した。
著者
橋本 理
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.5-42, 2007-03-25

This paper reviews and explains the significance and issue of community business. First it introduces points of contention in community business by comparing studies on non-profit organizations. Then, it explains that how the local and national Japanese governments have dealt with this issue. 本論文は、コミュニティビジネス論の展開を整理し、コミュニティビジネスの意義と問題点を明らかにすることを目的としている。第1に、コミュニティビジネスに関する議論がどのように展開されてきたかをNPO研究との比較のなかから整理する。第2に、コミュニティビジネスが国や自治体における政策のなかでどのように位置づけられてきたかを明らかにする。
著者
浅田 正雄
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.317-336, 1975-11-04

創立九十周年記念特輯
著者
高増 明
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-20, 2015-10

Japanese popular music (J-Pop) is currently facing a critical situation. After having reached a peak of JPY 600 billion in 1998, sales have dropped steadily throught the present day. The crisis exists in a quantitative as well as a qualitative aspect. The same types of songs are ranked in the hit-charts and J-Pop songs are produced to be salable only in the Japnese market. They deviate from global trends in popular music. In this article, we analyze how this music industry crisis developed and how it can be solved. We consider factors that drove the crisis by focusing on the economic stagnation and changes in the economic characteristics of music goods. As the policies that can rescue J-Pop from the crisis, we propose the possibility of indie records companies that the artists can establish by themselves as well as suggest government intervention in the music industries through taxes and subsideies. In the final section, we summarize the implications of this article and refer to the current state of the music markets in the US, China, and South Korea. 日本のポピュラー音楽は危機的な状況にある。音楽コンテンツの売上は1998年に約6,000億円に達したが、その後は傾向的に減少している。危機は、量的側面だけではなく質的側面についても存在する。最近は、同じタイプの音楽がヒットチャートの上位を独占し、日本のポピュラー音楽は、世界の動向からは乖離して、日本のマーケットだけを目指すようになっている。この論文では、危機がどのようにして生じ、それをどのように解決するのかを考えていく。危機を起こした原因としては、経済の停滞と音楽の財としての特性の変化に注目する。危機を救う方法としては、アーティスト自らがすべての役割をこなすインディーズと政府が音楽市場に介入し、音響機器に課税するとともに、補助金を交付する方法を提案する。最終節では、論文の内容を要約するとともに、日本の状況をアメリカ、中国、韓国と比較する。

1 0 0 0 IR BSE報道再考

著者
常木 暎生
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.213-232, 2007-03

BSE感染牛が日本で発見されてから5年半が経ち、BSE問題がようやく落ち着いた現在、BSEが人々に与えた影響を再検討する。新聞記事データベースを利用して記事内容を分析し、政府の初期対応の遅れ、徹底した牛検査、アメリカ牛輸入再開、人々のBSE不安、食品業界による牛肉偽装工作を検証し、BSE問題の背景には食の安全性に対する人々の懸念が存在していると論じた。
著者
高木 修 柏尾 眞津子 西川 正之
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.77-103, 1997-09-25

183名の教師と309名の大学生が,経済状況,宗教の影響,政治,国民及び国家の安全性,家庭の機能,自然環境などに関する価値の現状あるいは過去5年間にわたる変化をいかに認識しているかを明らかにするために調査票に回答した。Schwartz(1990)の12の動機づけ領域から構成された22項目から成る価値変容尺度が邦訳されたが,その一部は,日本の文化にふさわしい内容に変更された。教師は,大学生に比べて,価値の育成と人生の諸問題を克服する技術の養成における両親の役割が衰退し,国民や国家の安全性は脅かされるようになったと一層認識し,そのためか,政治に一層関心を示していた。物質主義者は,脱物質主義者に比べて,日本人であることに一層誇りを感じ,教育,法制度およびメディア等の社会制度を一層信頼していた。他方,脱物質主義者は,相互扶助の精神が弱まってきているだけでなく,人種や宗教や考えの異なる人への寛容度が低下してきていると一層認識していた。これらの結果に基づいて,今後の研究の方向性が提案された。
著者
片桐 新自
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-46, 1998-09-25

本稿は, 1987年以来5年おきに継続的に調査してきた「大学生の意識と価値観」の第3回調査を基礎とした論稿である。本稿の狙いは,この10年の間の大学生の意識と価値観の変化を明らかにすることにある。調査の結果,以下の5点が大きく変化したものとして浮き上がってきた。1)男女関係のあり方に関する意識の変化, 2)社会関心と上昇志向の低下, 3)政治に対する関心と参加意欲の低下, 4)自衛隊に対する肯定的見方の増加, 5)大学別の意識差の縮小。しかし,確かにこうした意識は変化しているが,他方で,その根底にある「やや個人主義的でありながら,他人との協調性を大事にし,大きな社会の変化を望まず,できることなら楽しく楽に暮らしていきたい」という価値観―筆者はこれを「個同保楽主義」と名付けている―自体は,大きな変化はしていないということも明らかになった。
著者
飯田 紀彦 井上 澄江 畑 律江 増田 浩二
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.87-111, 2001-10-31

「未来の高齢者」である若年者を調査することによって、任意後見制度をより有効に活用するための必要な情報を得る目的で意識調査を行った。対象者は、K大学の学生で男性79名(平均年齢22歳)、女性70名(平均年齢22歳)であった。われわれの先行研究である中高年齢群(平均年齢男性67歳、女性60歳)の任意後見制度に関する意識調査のデータを比較対照とした。任意後見制度の利用に否定的な回答をした人は、学生群3.4%、中高年齢群16.9%であった。学生群は、任意後見制度の利用の可能性を考えている人が多いことが分かった。痴呆症の病名告知を希望する人は、学生群は82%、中高年齢群は87%であり、学生群も大多数が告知を希望していることが分かった。学生群で、将来の仕事として成年後見人を考えている人は男性4%、女性10%であった。任意後見制度の利用は、今後増加することが予想され、制度のさらなる充実が望まれる。
著者
雨宮 俊彦
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.253-291, 2001-03-21

ソシオン理論の特徴は、みっつある。ひとつめは、エージェントとしてのソシオン間の荷重関係をプリミィテイブとすることである。ふたつめは、個人・社会のダイナミズムをとらえるために概念と記述法を、ツールとして提供しようとすることである。みっつめは、解明の目標とするのが、ローカルで個体的な過程とグローバルで集合的な過程の循環のダイナミズムと、個体内の主観的な荷重関係と個体外の客観的な荷重関係の間の内部化と外部化の循環のダイナミズムの二重の循環にあることである。本論文とつづく論文では、ソシオン理論を、エージェント・環境相互作用モデルとして定式化するための検討をおこなう。本論文では、エージェント・環境相互作用モデルの概観をおこない、荷重関係がエージェント・環境相互作用モデルでどのようにあつかわれるのか検討した。自律的エージェントの環境内での適応行動と学習、社会的感情が、荷重関係をもとに分析できることがしめされた。特集・ソシオン理論の冒険
著者
佐々木 土師二
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.197-269, 2006-03-30

観光心理学では、観光者行動だけでなく、観光地域の住民の行動も研究する必要があるが、現状では、ほとんど取り上げられていない。本稿では、外国の文献資料にもとづいて、ツーリズムが地域社会やその住民に及ぼす社会的・文化的インパクトの諸現象を概観した後、地域のツーリズム開発に対する住民の態度の実証分析にもとづく知見を通覧した。この住民態度の把握のためには、標準的態度尺度の構成の必要性が強調され、調査項目の収集が試みられた。さらに、Ap (1992)の論文に依拠して、訪問者と住民の相互作用に関する社会的交換理論による説明と仮説的命題が検討された。
著者
片桐 新自
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.83-114, 2009-10-30

Sociology should be sensitive to the situation of the current times,and able to analyze,predict and make timely proposals.Sociology shouldn't appear slowly as the interpreter after the situation settles,but should exist as a sharp too for analyses,predictions and proposals while the situation is changing.This paper contains analyses,predictions and proposals concerning situations that occurred during three years of men's change,for example,the birth of "Herbivorous boy".
著者
富田 英典
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.57-80, 2020-10-31

電子メディアによって電子メディアによってふたつの場所が重なっている。Paddy Scannell (1996) やShaun Moores (2004,2012, 2017) は、それをDoubling of Place と呼んだ。時間も電子メディアによって重なっている。ここでは、それをDoubling of Time と呼ぶ。本論文は、ミュージアム公式ARアプリを取り上げながらDoubling of Time の可能性について検証するものである。まず、世界中のミュージアムを対象に公式アプリの有無、アプリ機能の種類について調査を実施した。その結果、42か国のミュージアムに304の公式アプリがあることが分かった。そして、「インフォメーション」「館内マップ」「音声案内」「文字案内」「写真」などの機能が定番であり、ARやVRなどの新しい機能が登場していることが分かった。そこで、ARミュージアムアプリに焦点を合わせ、その内容を分析し4種類に分類した。次に、ミュージアムにおける歴史的価値のある展示物に対するAR利用の有効性に注目し、時間とARの関係について考察した。丸田一(2008)によれば、通信技術によって生まれるのが「同期」であり、複製技術によって生まれるのが「同位」である。この丸田の研究に依拠しながら、通信技術と複製技術、場所と時間の関係を分析する枠組みをつくった。通信技術による「同期」とは時間を共有することであり、時間の共有は同じ場所にいるような感覚を生み出す。それを本研究ではDoubling of Place と呼ぶ。これを可能にするAR技術が、その場所にはないコンテンツを重畳してくれる「場所AR」であると言える。それに対して、複製技術による「同位」とは場所を共有することであり、場所の共有は同じ時間にいるような感覚を生み出す。それを本研究ではDoubling of Time と呼ぶ。これを可能にするAR技術が、その時間にはないコンテンツを重畳してくれる「時間AR」であると言える。この枠組みからARミュージアムアプリについて分析し、Doubling of Time とDoubling of Place を同時に可能にするAR Door などのアプリが登場していることを明らかにした。
著者
安田 雪
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.33-46, 2013-12-20

This paper examines how dissemination by demagogues occurred and how hubs contributed to the rapid and widespread information diffusion in social media, namely Twitter. Examining the 40,711 demagoguerelatedtweets we crawled using TTC, just after the Great East Japan Earthquake, the hubs’ role in quick information diffusion was confirmed. Furthermore, we found that powerful information diffusion was causedby those we labeled “ignorant influencers” who have a large number of followers but display little knowledge. At a micro level, ignorant influencers do little harm; yet, at a macro level, when they are aggregated, they can cause serious information distortion in social media.本研究では、東日本大震災発生直後に収集した、「コスモ石油二次災害防止情報関連ツイートデータ」を用い、震災時におけるソーシャルメディア上の情報拡散行動及び情報拡散の状況の分析を行った。その結果、ソーシャルメディア上で個々のユーザーがもつ情報伝播力及び他者に対する影響力は、本人が保持する知識量とは完全に独立であり、ミクロレベルにおけるその差が、マクロレベルにおいてソーシャルメディア上で全体として拡散する情報の正確さや精度に著しい影響を及ぼすことを確認した。ソーシャルメディアを利用する個々のユーザーの影響力と、そのユーザーのもつ情報の正確さや知識量は独立であるにもかかわらず、一部の人々が著しい情報伝播力を持つことが、不正確な情報が膨大に拡散する重要な要因となっている。震災などの緊急時においては、可能なかぎり豊富で正確な知識をもつ人あるいは専門的な判断力を持つ人の直接的、間接的な情報伝播力をいかにあげるかが、ソーシャルメディアの発信する情報の信頼性を担保するために重要であることを指摘できる。結論として、ソーシャルメディア上の情報の拡散及び収束の困難性が、ソーシャルメディアのインフラともいえる人間関係そのもの認識及び統制の困難さに起因することを明らかにする。
著者
水野 由多加
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.157-179, 2012-03

新しい社会情報環境とマス・メディアの変化によって、広告を可能とさせる社会条件に関わる今日的な社会現象が生起してきた。本研究ノートは、今後の議論のために準備・編集された調査資料である。\nSome contemporary social phenomena have been occurred concerning allowance and conditions that can be advertising done, according to the changing new socio-technological environments and mass media. These are some investigative documents edited by the author to prepare the further discussions.
著者
木村 洋二 板村 英典 池信 敬子
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1-56, 2005-10-31

私たちはこれまで、北朝鮮による「日本人拉致」問題を日本の4大新聞がどのように報じてきたか、その報道姿勢を、見出し構成のあり方を中心に、2回にわたって分析してきた(木村・板村・池信2004、2005)。3回目にあたる本稿は、2004年11月9日から14日にかけて平壌で開かれた「第3回日朝実務者協議」に関連して、「拉致」問題を各紙がどのように荷重(重みづけ)して報道したかを分析する。見出しに「拉致」という用語が出現する頻度とその文字の大きさを測定し、時系列で変化を見るために前回同様に「荷重グラフ」を作成する。返還された「遺骨」が偽物であると判明した12月9日以降、各紙とも「経済制裁」の必要を訴える論陣を張った。「制裁」の使用頻度と文字面積についても時系列で荷重グラフを作成した。「制裁」の頻度や使用法にかなり荷重差がみられる。また、「制裁」の文字が含まれている見出し文あるいは文節の構成自体が、読者に正負の異なった印象を与えるのではないか、との仮説から、若干の意味論的構文分析を手がけるとともに、構文法の違いによってもたらされる見出しの分極性と印象強度をたずねる予備的なアンケート調査を試みた。
著者
松井 修視
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.19-34, 2010-11

This paper aims to elucidate how China wrestled with the problem of media access by foreign news organizations during the Beijing Olympics,and also to clarify how the Olympic Games themselves pushed China toward issuing new rules for increasing the freedom of foreign journalists. In addition it illustrates the complicated Chinese media system in which the regulations are operationalized."The Regulations on Reporting Activities in China by Foreign Journalists during the Beijing Olympic Games and the Preparatory Period" came into force as of Jan. 1,2007. These new regulations stipulated that foreign journalists had only to obtain an organization's or individual's prior consent when reporting in China. The regulations aresignificantly different from those issued in 1990 which required consent from local government or authorities when reporting in rural districts. The new regulations follow the major principles and spirit of the media rules introduced for the Beijing Olympic Games. After the Olympic Games,on Oct.17,2008,China announced a new law,essentially to sustain the Jan. 2007regulations. This shows how basic Chinese policy has opened the country to foreign media activities,and come to protect the lawful rights and interests of the permanent offices of foreign media organizations and foreign journalists. Even if China continues attempting to substantially control the foreign media and to maintain strict authoritarian rule over domestic media,loosening up on these controls should be expected in the very near future.2008年8月に開催された第29回北京オリンピック大会を契機に、中国においては、大会開催前から、また開催期間中を通して、中国に滞在する外国メディアに対して取材規制の緩和措置がとられた。この緩和措置は、オリンピックが終わったあとも継続して採用され、今日に至っている。国内のメディアに対しては、依然厳しい規制を行っている中国政府が、このオリンピックというスポーツイベントを通じて外国メディアに対し取材緩和措置をとるようになったことは、スポーツが法的なルールを変更する力を現実に持っているということでもあり、大変興味探い。本稿では、中国憲法による表現の自由保障、「出版管理条例」等に基づくメディア規制の現状を取り上げたあと、1990年の(旧)外国人記者及び常駐外国報道機関管理条例」、時限立法として制定された2007年の「北京オリンピック大会及び準備期間中の外国人記者の中国取材に関する規定」、オリンピック閉会後も引き続き規制緩和を認める2008年の「常駐外国報道機関及び外国人記者の取材に関する条例」のそれぞれの内容を紹介し、中国政府の外国メディア規制緩和措置に関して、その現状と問題点などについて整理を行った。
著者
村田 麻里子 パスキエ オレリアン 山中 千恵 伊藤 遊
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.57-81, 2014-10

※本研究の一部は、平成24年度関西大学在外研究による成果である。※本論文は、2013年度仁愛大学共同研究費およびJSPS 科学研究費・若手研究(B)研究課題番号:24730047 (代表 山中千恵)による研究成果の一部である。This paper reports on the special exhibition of Korean comics 'Flowers that Never Wilt' at the 2014 Angouleme International Comics Festival. It also analyzes the 'politics' involved in the festival site and the exhibition display. The exhibition, which dealt with the issues of 'comfort women', raised disputes among the three involved countries: Korea, Japan and France. This paper tries to carefully examine the cause of these disputes, and to clarify the differences or the gaps in their perspectives towards exhibiting such political issues.本稿は、フランス・アングレーム市で毎年開催されるアングレーム国際BDフェスティバルに出展された韓国漫画の展覧会「枯れない花」展を、現場のレポートを交えて概観するとともに、そこにおいて顕在化した場と展示の〈政治性〉についての考察を行うものである。これによって、日韓仏三国には、〈政治性〉をめぐる解釈に齟齬があること、またここには日韓間の問題だけではなく、ヨーロッパからみた「オリエント」としてのアジアという問題も、影を落としていることが明らかになった。