著者
常木 暎生
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.271-291, 2006-03-30

日本人の政治意識は低いと言われているけれども、政治討論番組は一定の視聴率を確保し、長期間に渡って放送されている。サンデープロジェクトと日曜討論の二つの政治討論番組における司会者の言動が視聴者にどのような印象を与えているかを内容分析とSD法によって分析した。日曜討論の司会者が発言権の分配に徹して、際立った印象を与えていないのに対し、サンデープロジェクトの司会者田原総一郎は討論を親しみ易く、活性化させ、楽しいものにしている反面、攻撃的、感情的で、苛立たしさ、迎合的といった印象を与え、視聴者の感性を刺激している。これにより視聴者は政治討論番組をおもしろく感じ、興味を示すようになっている。
著者
斉藤 了文 SAITO Norifumi
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.1-28, 2013-03

We construct a new technology study on artifacts. In this paper, artifacts as physical existence, designed objects, and products ordered by clients will be discussed in terms of living with objects produced by human craft. 技術論を、人工物を中心にまとめることがこの論文の目的である。理学と工学の相違から始めて、人工物を個物として取り上げる。そして、人工物は、科学技術を体現したものであるというだけでなく、発注者の意図を体現したものでもある。この観点から、責任を考えていく。そして、設計というポイントを取り出す。これらの自明の論点を展開することによって、新しい技術論を、人工物と共に暮らすという観点の下に立ち上げる。
著者
斉藤 了文 SAITO Norifumi
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.29-52, 2013-03

本研究は独立行政法人学術振興協会の科研基盤研究(C)課題番号22500972の助成を得た。This article describes ethical issues in technology caused by the Fukushima nuclear accident based on reports of the Accident Investigation Committee and remarks by the party concerned. Multifaceted technological and social problems which are critical for professional engineers will be explored. The focus will be on a number of points: technological design, engineers' decision, social and legal regulation, scientific communication, and so on. 三つの事故調査委員会の報告書及び当事者の発言を基にして、福島原発事故においてどのような工学倫理の問題が存在しているかを記述してみる。もちろん、大きな事故があれば、当然多様で多面的な問題領域が出現する。その中で、技術者という専門家にとって重要となる、技術と社会の問題の発見を試みる。第1節では、設計に関して割り切りや技術の継承を扱う。第2節では、吉田所長という技術者の行動を中心に、海水注入と東電撤退の問題を扱う。第3節では、社会の要請としての規制が現場の技術から乖離する問題を取り上げた。第4節では、技術者が社会に発信する場合の問題を取り上げた。第5節では、セキュリティや専門家としての活動に関わる安全問題を取り上げた。
著者
齊藤 了文
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.271-304, 2005-02-20

In this paper I explain some aspects of reading maintenance. The points discussed are complexity,individualization, heritage of engineering knowledge, and dynamic maintenance. ここでは、メンテナンスに関わる資料を幾つか引用し、整理する。その上でできるだけ統一的な仕方で、社会科学的、哲学的な問題領域を提示することを試みる。 システムの一生のうちで生誕の問題に現代は注目されている。また、廃棄も問題にされている。人工物を使い続けるということは、実は中心的問題であるはずだが、日常的で特に注目されていない。この営みを取り上げる。
著者
山本 雄二
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.61-90, 2016-11-15

本稿は2013年度・関西大学研修員制度による研究成果の一部である。
著者
高木 修 阿部 晋吾
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.71-86, 2006-03-25

本論文では、怒りとその表出に関わるこれまでの先行研究を、(1)進化、(2)生理、(3)動因-行動、(4)認知、(5)社会構成の5つのアプローチに分けて紹介する。その上で、各アプローチが怒りをどのように定義しているかを検討し、その相違点や関連性を示した上で、今後の研究の方向性について議論する。
著者
村田 麻里子 山中 千恵 伊藤 遊 YAMANAKA Chie 伊藤 遊 ITO Yu 谷川 竜一 TANIGAWA Ryuichi
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.95-113, 2012-03

本稿は、宝塚市立手塚治虫記念館を取り上げ、館がいかなるコンセプトのもとに設計・運営されているのか、訪れる来館者がその空間をいかに受容しているのかに注目して行った調査結果を考察するものである。地域活性化・地域振興を掲げたマンガ関連文化施設の一例として、その現状を来館者の行動から詳細に繙き、地域振興という言葉が抱える矛盾や、そもそもマンガを博物館などで扱うことの意義や課題が見過ごされてきた点について分析・考察する。This paper questions the purpose of manga museums intended to promote regional development. This has been at rend for more than 20 years in Japan,an d Tezuka Osamu Manga Museum is one of the earliest museums established for such purpose. Through conducting a visitor survey and analyzing the visitor's movements and attitudes,w e aim to understand what it means to adopt manga in a museum for regional development.
著者
杉野 昭博
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.47-61, 2008-03

日本では、社会福祉学は社会学の一部門として発展してきた。しかし近年では、両者はもはや別々の独立した学問と見なされることが多くなっている。本稿は、日本の社会福祉学の発展をふりかえり、社会学が寄与した点を二点指摘する。第一は、1960年代の「生活」や「コミュニティ」をテーマにした社会学研究によって、従来は所得水準にのみ関心を集中していた社会福祉学が幅広く「生活問題」や社会環境の問題にも関心を広げるきっかけを得たことである。第二は、心理学的分析が支持されることによって臨床心理士の仕事が増えるように、政府が社会学的分析を採用すればソーシャルワーカーの雇用が増えるという関係にあることである。したがって、社会学的なものの見方が20世紀の日本社会に徐々に一般化するにともなって、公的機関で雇用されるソーシャルワーカーが増加していったと考えることができる。今後の社会福祉学において期待される社会学的視点を用いた研究例として、福祉国家の社会史的研究と、個別援助実践の民族誌的研究と、社会福祉行政の政策過程分析の3つを示した。
著者
常木 暎生
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876819)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.29-43, 2011-03

How is the food looked at by the media today given that the concern about food is increasing these days? The purpose of this study is to clearly categorize and show food magazine photographs using the content analysis. It was found that the photographs of dishes were the most numerous in food magazines. The next most common photographs were those of the chefs who made these dishes. The photographs of cooking ingredients were also quite numerous. From the analysis of the photographs, it can be said that food magazines reflect the food culture in the modern society for example, eating out at restaurants by not only showcasing prepared dishes but also their creators and the cooking ingredients used. 食に対する関心が高まっている今日、メディアの中で食はどのように取り上げられているのであろうか。本研究では、食雑誌における写真ではどのようなカテゴリーが取り上げられているかを、内容分析によって明らかにすることが目的である。その結果、料理がもっとも多く登場しているのは、食雑誌という性格から当然であろう。次に多いのは作り手であるシェフの写真である。さらに食材もかなり多く登場している。写真からの分析であるが、食雑誌は単にお店、料理だけではなく、作り手、食材など、現代社会における食文化への関心の広まりが反映されている。
著者
矢野 秀利
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.71-94, 2009-03

The concept of Basic Income(BI) is well known in welfare economics. This paper aims to explain the BI system in camparison with public assistance and the negative income tax. Public assistance has many problems such as the means test, work disincentive and the stigma of receiving welfare payments. Some economists have proposed the negative income tax system in place of public assistance. The new guaranteed income system which is called BI has been proposed in the last decade. This new tax system may replace the existing income tax and social security contribution by abolishing poblic assistance, unemployment insurance and the minimum public pension. BI may be a better tool for redistribution policy, but it has some problems, for example, the financial difficulty for much tax burden and the question abouto work incentive effects.ベーシック・インカムの考えは最近の厚生経済の分野で知られるようになってきた。本稿はベーシック・インカムシステムを公的扶助、負の所得税との比較をしながら説明するものである。公的扶助には資産調査、就労意欲へのマイナス効果、そしてある種のスティグマのような問題点があり、専門家からは公的扶助に換えて負の所得税の導入が提案されてきた。そして、今、新しくベーシック・インカムのと呼ばれる所得保障制度が提唱されている。ベーシック・インカムを内蔵した新しい所得税制度は現存の公的扶助、基礎年金、失業保険を廃止して、所得税と社会保障を統合することを目指しているという意味で画期的な提案である。だが、この新しい制度にも問題点はある。つまり、新しい制度を支える財源的な困難と、就労へのインセンティヴが働くかどうかである。
著者
水野 由多加
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.87-111, 2017-10-31

In the latter half of 20th Century, Environmental Rights were studied in general terms. Until recently, there was little specific discussion about the Right to Informational Environment. The author approaches this topic from a variety of sociological and psychological viewpoints, including advertising web technology, environmental studies, and noise pollution studies.
著者
雨宮 俊彦
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2-3, pp.297-338, 2000-03-25

名づけの問題は,言語学,文化人類学,哲学,心理学など,おおくの分野の研究対象となってきたが,名づけをあつかう統合的や枠組みがないために,研究は断片的なものにとどまっている。本論文のシリーズでは,名づけの現象に認知科学的なみとうしを提供することをこころみる。今回は,言葉の意味について,ワードネットに具体化されているような古典的な見方と認知言語学的な見方を比較した。言葉の意味には, さまざまな側面がある。古典的な見方は,言葉の意味における,言葉と言葉の基本的な関係にかかわる静的で階層的な側面に焦点をあてるのにたいし,認知言語学の見方は,言葉と世界のインターフェースのよりダイナミックな側面に焦点をあてる。名づけは,おもに言葉の意味の,後者の側面と関連した現象であり,固定的で階層的な言葉の意味の体系のあちこちをつねに変化させていくちからである。
著者
水野 由多加
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.47-72, 2022-09-30

近年、コミュニケーションのデジタル化、その一般化にともなって、20世紀に、主としてマスメディアに依拠していた広告というコミュニケーションが混乱に陥っている。混乱とは、個人情報の広告利用についての常識の未生成であり、スマホの中のデジタル広告の横溢であり、好きな動画がいつでも見られる情報環境であり、何より人々の広告一般に対する態度の悪化である。筆者は日本社会において、哲学者が広告についていかなる言及を行ったのかというオリジナル資料を収集し、もって、今世紀にも移ろわない広告原理、つまり外形的ではない「広告の社会的役割の原型」についての考察の端緒を探ろうとする。
著者
橋本 敬造
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.29-46, 2008-03-30

フランスから生野銀山に招かれた鉱山技術者コワニエFrancois Coignetが来日した翌年に横浜に上陸した、いわゆる「お雇い外国人」、ザ・ヤトイ、がブラントンである。技術者として幕府に招かれ、次いで維新政府に雇われて、横浜におかれた「燈明台機械方頭」として多数の燈台を設計・建造したことで知られている。ブラントンはまた、鉄道敷設の必要性を建言し、まず京浜間の鉄道、次に両京・大坂間にも鉄道を敷設すべきこと等を建議し、さらに横浜はいうまでもなく、大阪や新潟の築港計画、あるいは橋梁設計なども手がけたことで知られる。こうした技術の導入が日本に近代化にとって極めて重要な意味をもったことを、ここに改めて強調しておきたい。
著者
井上 宏 多喜 弘次
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.45-72, 1981-11-30

神先秀雄・薄田桂・友松芳郎三教授古稀記念特輯