著者
杉山 弘晃 南 泰浩
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J95-A, no.1, pp.74-84, 2012-01-01

本研究では,ユーザへ情報を提示するシステムのための,ユーザの潜在的な情報要求の推定に基づく新たな情報提示タイミング決定方策を提案する.この方策により,システムは早過ぎる情報提示を抑制し,ユーザへ煩わしさを感じさせることなく主体的に情報提示することが可能になる.本研究ではこの方策におけるマルチモーダル情報の寄与を検証するため,最初に人と人のインタラクション実験を行い,利用可能なモダリティが変化したときの人が行う情報要求推定精度の変化について分析する.分析を通して,人はマルチモーダル情報を利用できないときは対話の流れを利用し,利用可能なときはマルチモーダル情報を利用することが示された.この結果をもとに,人の情報要求推定を実現するためのモデルを提案し,ユーザの潜在的な情報要求を表出させるよう設計した連想クイズ対話実験を通してその有効性を示す.
著者
大出 訓史 安藤 彰男 谷口 高士
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J97-A, no.4, pp.323-331, 2014-04-01

近年,様々な音響再生方式が提案されており,評価手法の確立が求められている.著者らは,体験品質という観点から,体験の肯定的な評価に使われる“感動”という言葉に着目し,感動評価尺度を提案した.これまでに著者らが実施した音楽聴取実験の結果,感動の評価値が高い評価者群と低い評価者群の印象の差が,感動評価尺度では大きく,音楽の感情価では小さいことがわかった.これは,感動の要因となる印象が,音楽の感情価とは異なることを示唆する.そこで,本研究では,音楽聴取時の感動の要因を探るため,感動の度合いに応じて差が生じる音楽や音響の印象を調べた.まず,感動評価尺度の一般化を目的に,118名による評価実験に基づいて感動評価尺度の再構成を行い,次に,音楽や音色,音響機器の評価に用いられる評価語80語を用いた音楽聴取実験を行った.その結果,感動の度合いによる評価者間の印象の差は,「音色がよい」や「艶がある」などの音響の印象で大きいことがわかった.感動の種類によって相関の高い音楽や音響の印象が異なることから,音楽の印象と音響の印象の組み合わせによって感動が促進される可能性が示された.
著者
河田 直樹 大久保 寛 田川 憲男 土屋 隆生 石塚 崇
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J94-A, no.11, pp.854-861, 2011-11-01

本研究では,CUDAとOpenGLを用いてGPUアーキテクチャによる三次元音響数値解析のリアルタイムの可視化(計算と同時に可視化を行う音響シミュレーション)について検討を行った.三次元音場の可視化法として,PMCCを提案し,その評価を行った.PMCCは従来の三次元空間中の複数断面を表示する(Multi Cross-section Contours)方法に不透過度を組み合わせた非常にシンプルな可視化方法である.また,PMCCは波動現象特有の干渉や散乱の把握もボリュームレンダリングに比べて分かりやすく,また,描画のための計算負荷も非常に少ない.平行な複数断面表示を行う場合もオクルージョンがほとんど発生せず,断面表示でありながら,三次元空間を一目で把握できる.まさに,擬似的三次元表示といえる.描画速度の評価より,CPUを用いる場合に比べて,GPUによって33倍程度の加速化が可能であることが分かった.GPU計算とPMCC描画の組合せにより,三次元音響数値解析のリアルタイムの可視化の実現可能性を明らかにした.
著者
田村 裕 中野 敬介
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J106-A, no.7, pp.201-207, 2023-07-01

無線通信におけるチャネル割当とグラフ理論における彩色問題は古くから関連性が示され,様々な研究がなされてきた.その中で多くの理論的な研究は,割当てるチャネル数の最小化を目指したものである.筆者らは以前の報告においてGrundy Coloringと呼ばれる色数が最大となる彩色を取り上げ,必要なチャネルを見積もり,幾つかの結果を示した.また,筆者らは以前に,チャネル干渉の程度を取り入れた従来のグラフ彩色を拡張した問題を提案し,幾つかの結果を得ている.本文では,Grundy Coloringに関して,干渉の程度を考慮した場合の点彩色について考察し,幾つかの結果とこれまでの結果との関連を述べる.
著者
畑野 航琉 中野 眞一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J106-A, no.1, pp.1-4, 2023-01-01

顧客の集合C,施設の集合F,各施設f ∈ Fの開設コストop(f),各顧客c ∈ Cの各施設f ∈ Fへの接続コストco(c, f)があたえられたとき,幾つかの施設を開設し,各顧客を開設施設に割り当て,かつ,各開設施設にr人以上の顧客を割り当てるようにしたい.このとき,全ての開設コストと全ての接続コストの合計が最小の解を計算する問題をmin-sum r-gathering問題という.本論文では,開設コストが0であり,接続コストが三角不等式を満たすとき,各顧客を最も近い開設施設に割り当てるという条件を追加したmin-sum r-gathering問題,すなわち近接条件付きのmin-sum r-gathering問題を解く,近似比3rの近似解を計算する多項式時間アルゴリズムをあたえる.このアルゴリズムは,rが定数のときこの問題を解く初の定数倍近似アルゴリズムである.
著者
甘利 俊一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:03736091)
巻号頁・発行日
vol.J69-A, no.6, pp.757-763, 1986-06-25

二つの地点で互に相関のあるデータが観測された場合に,両地点でそれぞれ独立に情報の縮約を行いデータの量を減らすことがある.経済データ,環境データなどにこうした例が多い.縮約したデータ(統計量)を持ち寄って両者を共通に支配する確率構造についての統計的推論を行う場合に,それぞれのデータを独立に情報縮約したことによって失われる統計情報量はどのくらいであろうか.いいかえれば,Shannonの意味での情報量の縮約を両地点で独立に行った場合に失われるFisher情報量はどの位であり,このときの最良のデータ圧縮法と推定法はどのようなものになるであろうか.本論文は,新しく相互Fisher情報量という概念を導入し,情報理論と統計学を結ぶ新しい理論を提唱してこの問題を解決する.確率分布空間の幾何学的構造を研究する情報幾何学の有効性がここでも示される.
著者
杉本 理 志田 崇 仰木 裕嗣
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J105-A, no.12, pp.168-174, 2022-12-01

FIDO2標準は,クレデンシャルをユーザとサーバーで共有しないことから,安心・安全な認証環境を構築できることで知られる.本論文においては,城西大学が独自に実装したFIDO2アプリケーション・サーバーによるパスワードレス環境において,なりすましのできない出席管理システムが退学者防止効果に与える影響ついて,出席不良者と退学率相関関係の視点にて分析を行った.分析の結果,「1年生の退学率・退学者数が最も多いこと」「リモート対応の中,退学につながる可能性のある「出席不良者」の確認対応に改善必要性があること」を確認し,FIDO2サーバーの活用は,こうした学生の退学者防止に一定の効果がある可能性があることを確認した.
著者
前田 壮志 大木 哲史 坂野 鋭
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J105-A, no.12, pp.175-178, 2022-12-01

耳認証系に対するオクルージョンの影響を,制御可能な変動を含まないデータベースに対して,画像処理的にオクルージョンを加えることで認証系に与える影響を調べた.オクルージョンとして,髪,イアフォン,イアリングを想定した人工的なオクルージョンを与えた認証実験を行ったところ,異なった画像記述子を用いた系であっても耳上部及び耳孔付近のオクルージョンの影響が最も大きいという事実が明らかになった.
著者
山野 広大 村松 大吾 武村 紀子 八木 康史
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J105-A, no.12, pp.146-155, 2022-12-01

本論文では人物の歩行時の特徴(歩容特徴)を用いた年齢推定手法を提案する.歩容特徴に基づく年齢推定においては,自由に歩行している人物の歩容が対象となるため,撮影角度の違いに対する頑健性が求められる.複数の撮影角度からの歩容特徴を学習に利用することで,頑健性を強めることができるが,学習に用いられる歩容特徴の撮影角度と一致しない撮影角度の歩行人物に対しては,推定精度は大幅に劣化する.そこで,本論文では,学習に含まれない撮影角度の歩容特徴の推定精度を改善する手法として,撮影角度抑制学習を用いた年齢推定を提案する.撮影角度抑制学習とは,撮影角度の影響を抑制する副課題のもとで主課題の学習を行うものである.高精度な角度分類器を用いた制約項を考慮しつつ主課題用の特徴空間を構築することで撮影角度の影響を抑制する.提案手法は,歩容公開データベースを用いて,複数の設定で評価を行った.その結果,提案手法は,学習に用いられていない撮影角度の年齢推定において大幅な精度改善を実現した.
著者
三田村 拓磨 田中 章
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J105-A, no.11, pp.125-135, 2022-11-01

様々な科学技術分野で重要な役割を担う最適化問題において,しばしば行列変数に直交制約が課される.当該制約の表現には様々あるが,その可微分性やパラメータ表示の簡便さから,歪対称行列のCayley変換により直交行列を生成する手法が採用されることが多い.しかしながら,歪対称行列のCayley変換では,全ての直交行列を網羅できないことが問題となっている.本論文では,歪対称行列全体に対するCayley変換の像が,直交行列全体からなる集合のどのような部分集合になっているかを主論点として理論解析を行い,結果として,それが正規直交基底の同値類の代表元を必ず生成できることを示す.このことは,歪対称行列のCayley変換を用いる妥当性が保証される最適化問題の範囲を明確化する.
著者
大崎 翔大 吉村 博幸
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J105-A, no.11, pp.136-143, 2022-11-01

指紋認証は,本人確認の手段として広く利用されているが,指紋を人工的に複製して他人になりすますことが容易に可能である.そこで,我々は,指紋画像から複数個の特徴量を抽出してこれらを統合することによって,人工指紋画像検出の高精度化を検討している.そしてこれまで,複数個の特徴量を用いて特徴量ごとに線形サポートベクタマシン(SVM)に学習させて識別器を作成して,検出結果の多数決を取る手法で識別誤差0.65%を得ている.本研究では,更なる識別精度の向上を目的とし,複数個の特徴量に最適な重みを設定して,これらの検出結果を統合する手法を提案する.本提案手法を人工指紋画像の識別実験に用いた結果,識別誤差0.40%を得た.また,実験結果から本提案手法においては,Latexを用いて複製された人工指紋画像が誤識別されやすいことを明らかにした.
著者
森 駿志 大塚 和弘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J105-A, no.10, pp.111-124, 2022-10-01

人と人との対話において対話者が表出する頭部運動には様々な機能があることが知られており,その認識のため畳み込みニューラルネットワーク(CNN) を用いた方法が提案されている.本論文では,対話者個人の頭部運動機能の概念を,頭部運動を介した聞き手・話し手間の相互作用機能へと拡張し,頭部運動機能を認識するCNNを転移させることで相互作用機能を認識するモデルを構築する戦略を提案する.この転移戦略の一つとして,複数の頭部運動機能について各々事前に学習されたCNNを再利用し,これらCNNの中間出力を特徴ベクトルとして抽出し,別の識別器により相互作用機能の認識を行うという戦略が含まれる.話し手・聞き手各々の機能認識CNNの出力について論理積をとる方策を基準として,提案した転移戦略を適用したモデルによる性能向上を検証した結果,話し手のリズム取りに対する聞き手の相槌という相互作用において,F値にて最高8.0ポイントの性能向上を確認し,また,話し手のリズム取りに対する聞き手の正の感情表出という相互作用では,最高13.9ポイントの性能向上を確認した.このように提案した転移戦略の潜在的可能性が確認された.
著者
鈴木 悠茉 市毛 弘一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J105-A, no.9, pp.106-110, 2022-09-01

本論文では,従来の学習モデルに複数スケールの画像特徴量を追加することで,低光量画像を高精度に鮮明化する手法を提案する.提案手法の有効性は,画像鮮明化のシミュレーションを通して評価される.
著者
松田 祐真 中川 匡弘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J105-A, no.7, pp.81-91, 2022-07-01

頭皮上脳波から情報を取り出し,使用者と機械とを繋ぐBrain Computer Interface (BCI)の研究が取り組まれ,感性の定量化が注目されている.深層学習技術の発展から,BCIの解析手法に深層学習アルゴリズムが用いられ,よい結果が報告されている.その一方,深層学習アルゴリズムはマシンパワーや大量のデータセットを必要とするなど,頭皮上脳波を用いたリアルタイムBCIとしての実装と運用には不向きな特徴も有している.本研究ではリカレントニューラルネットワークの一つであり,よりシンプルで高速なEcho State Network (ESN)を用いた手法を提案する.提案手法はESNの中間層出力の時系列をフラクタル解析することで高速に頭皮上脳波データの分類を行うものである.結果,ESNのフラクタル解析可能性が確認され,感性脳波データセットを用いた分類実験からよりリアルタイム性の高い実用的なBCIの構築可能性が示唆された.
著者
小川 翔也 石井 光治
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J105-A, no.5, pp.58-67, 2022-05-01

本論文では,合意制御におけるデータ駆動型最適化のネットワークに対する汎用化を目的に,ネットワーク中心性で制約したデータ駆動型最適化を提案する.先行研究のデータ駆動型最適化は学習したネットワークでのみ機能するエッジ重みを設計しており,学習していないネットワークでは効果的に動作しないという課題がある.そこで本論文では,統計的性質は同じだが学習に用いていないネットワークでも効果的に機能するエッジ重みをデータ駆動型最適化で設計する.そのために,複数の統計的性質が同じネットワークを学習データとして使用し,統計的性質が同じ異なるネットワークに対応した重みを導出する必要がある.そこで本論文では,ネットワークの統計的性質を効果的に表現するネットワーク中心性を用いてエッジ重みを制約したデータ駆動型最適化を提案する.計算機シミュレーションにより,中心性の種類による特性を示し,提案手法が未学習のネットワークで効果的に動作することを示す.更に合意制御の自律性を保つ次数中心性を発展させ,自身の次数だけでなく隣接ノードの次数を考慮した制約を用いて最適化を行うことで,更に特性改善することを示す.
著者
振津 勇紀 出口 大輔 川西 康友 井手 一郎 村瀬 洋 向嶋 宏記 長峯 望
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J105-A, no.4, pp.48-57, 2022-04-01

重要な公共交通機関として広く社会に普及している鉄道の沿線には,信号機や踏切など列車の安全運行を支える多くの設備が設置されている.これらの設備の日常的な整備や設置状況などに関する情報収集業務の多くは人手により行われており,その維持管理作業の自動化・効率化を実現する技術が強く求められている.このような課題に対して,営業運転中の列車に搭載したカメラにより前方を撮影した列車前方映像のみを用い,セマンティックセグメンテーションを施すことで鉄道環境における沿線設備などを自動認識する技術に期待が寄せられている.しかし,セマンティックセグメンテーションでは画素単位でクラス情報を人手で付与した学習データが必要であり,高い性能を得るために必要な大量の学習データを用意するコストは非常に高い.そこで本論文では,教師なしデータに対するセマンティックセグメンテーション結果とStructure from Motion(SfM)法による3次元復元結果を組み合わせることによってラベル付き3次元点群を生成し,それらを画像平面に投影することで擬似的なデータ拡張を行うSfM-student法を提案する.これにより,限られたラベルあり学習データのみからセマンティックセグメンテーションの精度向上を図る.実際の鉄道環境で撮影したデータを用いた実験を行ったところ,提案する3次元情報を利用した擬似的なデータ拡張手法は既存のデータ拡張手法と比べてセマンティックセグメンテーション精度を向上させることを確認した.
著者
森本 慎也 岩崎 翔 市毛 弘一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J104-A, no.12, pp.250-257, 2021-12-01

本論文では,スパースアレーアンテナの受信信号に対する適応ビームフォーミング手法,並びに仮想アレー受信信号の復調手法を提案する.著者らはこれまでに,実アレーの受信信号にKhatri-Rao (KR)積拡張処理を適用することで,到来方向(Direction-Of-Arrival; DOA)推定並びに適応ビームフォーミング性能の向上を確認している.しかしながら,ディジタル変調システムに仮想信号を用いる際には,仮想信号特有の性質から,実アレー領域の処理をそのまま採用することはできない.本論文では,拡張後の仮想信号に対応した新たな適応ビームフォーミング手法を検討し,仮想信号の復調時に位相情報を復元することによって,ビームフォーミング性能の改善を試みる.提案するビームフォーミング手法の性能は,計算機シミュレーションにより評価される.
著者
井手口 健 難波 朋和 古賀 広昭
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J83-A, no.7, pp.924-927, 2000-07-25

音楽聴取時に音源に対応した振動を聴取者の身体に付与した場合,音楽の印象がどのように変化するのか実験的に検討した.その結果,付与する振動の種類や振動の強さ,振動を付与する身体の箇所を選ぶことにより音楽の印象を強調できる見通しが得られた.
著者
松田 健 渡辺 澄夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J93-A, no.4, pp.300-308, 2010-04-01

混合モデル,ニューラルネットワーク,ベイジアンネットワークなどの特異モデルは情報工学において広く使われている.近年,特異モデルの学習の精度が特異点解消定理による代数幾何学的な方法によって明らかにされた.本論文では,重み付きブローアップによる学習係数の新しい算出方法を提案し,混合多項分布への応用によってその有用性を示した.
著者
永塚 守 清水 康敬
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J76-A, no.9, pp.1351-1358, 1993-09-25

本研究では,生体情報による教育用の映像ソフトウェアなどの客観的評価を行うことを目指し,CRTを使って視覚刺激を提示しながら瞳孔面積と脳波を同時に測定して,それらの変化を調べた.この同時測定を行うために,まず,CRTから脳波測定へのノイズの混入を防ぐ目的で,室外のCRTから被験者に刺激提示できるよう,光透過性のあるシールドガラスを使った特殊なシールドルームを設計し,その効果を確認した.また,瞳孔面積測定装置を装着することによる脳波測定への影響を明らかにした.次に,被験者に対して,平均輝度を一定に調整した意味のある静止画パターンを提示しながら瞳孔面積と脳波の同時測定を行ったところ,頭頂部の脳波の9.0-11.0Hzの帯域パワーと瞳孔面積の間に負の相関関係が見られた.また,被験者の興味が強いパターン提示時のデータは,瞳孔面積が大きく,帯域パワーが小さい位置に集中することがわかった.以上から,同時測定を行うことで,提示パターンの内容の違いを,より的確に区別できる可能性を示した.