著者
田村 裕之
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.438-444, 2014-12-15 (Released:2016-07-30)
参考文献数
2

太陽光発電システムの普及が急速に拡大している.しかし,火災事例や消防活動事例を調べると,太陽光発電システムからの出火や消火活動中の消防隊員の感電などが起こっており,火災や感電の面で安全対策が不十分なことが分った.そこで,太陽光発電システムが設置されている建物での出火危険性や消防活動時の危険性について,太陽光発電システムの構造や火災事例から課題を見出し,火災実験や発電実験を行った.その結果,火炎からの光でも発電すること,モジュールの一部が脱落しても発電を継続すること,モジュール表面の強化ガラスが熱によりフロートガラスに戻ること,人体に危険を及ぼす感電が起こりうること,などが分かった.これらを基に安全な消防活動を行うための対策をまとめた.
著者
田村 裕子
出版者
お茶の水女子大学大学院人間文化研究科
雑誌
人間文化論叢 (ISSN:13448013)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.4-1〜9, 2005

This paper notes that, in his diary, called Taiki, Fujiwara Yorinaga (1120〜1156), born in a family that produced regents/chief advisers to the Emperor during the era of rule by retired Emperors, refers to his deceased real mother as the "person of old", and its implied meaning is examined. In the background of this reference to her as the "person of old" was the existence of Minamoto Shishi, the legal wife of Tadazane, Yorinaga's father, who became Yorinaga's adoptive mother. She was something guaranteeing his legitimacy as a successor. It is this Shishi that Yorinaga identified as his mother, whom he must respect. However, the existence of his real mother was not entirely disregarded in his mind ; there are entries in his diary in which feeling of deep attachment to her can be detected. The reference to his real mother as the "person of old" represents internal fulfillment of the positioning of his two mothers, and symbolizes strong persistence in attaining the status of a regent/chief adviser to the Emperor, as well as the suppressed feelings for his real mother under that persistence, on the part of Yorinaga,\who was shortly to rush headlong toward the civil war of the Hogen era.
著者
山内 啓之 鶴岡 謙一 小倉 拓郎 田村 裕彦 早川 裕弌 飯塚 浩太郎 小口 高
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.169-179, 2022 (Released:2022-06-14)
参考文献数
25

近年,バーチャルリアリティ(VR)の技術が様々な分野の教育実践において注目されている.地理教育においてもVRを活用することで,対象者の地理的事象への関心や理解を向上できる可能性がある.そこで本研究では,仮想空間に再現した現実性の高い環境を観察したり,散策したりするVRのアプリケーションを構築した.対象は横浜市にある人工の横穴洞窟の「田谷の洞窟(田谷山瑜伽洞)」とした.アプリケーションは,田谷の洞窟保存実行委員会と研究者が連携して取得した洞窟内の三次元点群データと,筆者らが現地で撮影した全天球パノラマ画像,洞窟の小型模型,環境音を用いて構築した.アプリケーションの使用感と効果を評価するために,市民の交流イベントにおいてVRの体験会とアンケート調査を実施した.その結果,VRアプリケーションは,幅広い年代の利用者に体験の満足感や地理的事象に対する関心や理解を与えることが判明した.
著者
田村 裕之
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.413-418, 2009-12-15 (Released:2016-09-30)
参考文献数
8

電気用品が発火源となった火災の近年の動向として,おもな発生原因,電気用品種類別の火災件数の推移,火災事例を紹介し,あわせて,電気用品の製造や販売に関連した法規制についても紹介する.
著者
中村 哲 永尾 翔 田村 裕和 山本 剛史
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.287-292, 2022-05-05 (Released:2022-05-07)
参考文献数
29

陽子と中性子は電荷の有無という大きな違いがあるがほぼ同じ質量をもち,さらに核力に対する振る舞いもほぼ同じである.例えば陽子1個と中性子2個から構成される三重水素(3H)と陽子2個と中性子1個からなるヘリウム3(3He)は鏡映核の関係にあり,ほぼ同じ質量(約2,800 MeV/c2)をもつが,この両者の質量差から,陽子と中性子の質量差およびクーロン相互作用の効果を除外して,核力による3Hと3Heの束縛エネルギー(それぞれ約8 MeV)の差を求めると,わずか0.07 MeV程度しかない.これは陽子・陽子間と中性子・中性子間の核力の強さがほとんど等しいことを示している.このような陽子と中性子の入れ替えに対する核力(そして原子核)の対称性を荷電対称性(Charge Symmetry)という.核子だけで構成される通常の原子核に,最も軽いハイペロンであるラムダ粒子を束縛させたものをラムダハイパー核と呼ぶ.半世紀ほど前に実施された実験結果に基づいて,通常の原子核では良く成り立っている荷電対称性が4ΛH(三重水素にラムダ粒子が束縛した系)と4ΛH(ヘリウム3にラムダ粒子が束縛した系)の間で大きく破れているのではないか,と言われてきたが,その証拠とされる実験結果の一部は統計量,分解能のどちらも不十分であり,ラムダハイパー核における大きな荷電対称性の破れの有無は確定していなかった.この状況を打破すべく,我々は最新の実験技術を駆使した2つの実験をドイツMAMI電子加速器施設と茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設J-PARCで行った.MAMIにおいては薄い9Beフォイルに1.508 GeVの電子ビームを照射した.生成されたハイパー核の破砕反応から生じた4ΛHハイパー核は,その多くが標的中に静止して弱い相互作用により4He+π-に2体崩壊する.このとき放出されるπ-の運動量を精密に測定することにより,親核である4ΛHの基底状態の質量を過去の実験より10倍良い分解能で測定することに成功し,電子ビームを用いて生成したラムダハイパー核の崩壊π中間子分光法という新しい実験手法が確立した.この測定により4ΛH,4ΛHeの基底状態(スピン0)のラムダ束縛エネルギーに対して,その存在が示唆されていた大きな荷電対称性の破れが確かに存在することを明らかにした.一方,J-PARCハドロン施設においては,従来の4ΛHeの励起エネルギー測定で使用されていたNaI(Tl)検出器の25倍の分解能をもつゲルマニウム検出器群Hyperball-Jを用いて4ΛHeのスピン1の励起状態からスピン0の基底状態への脱励起に伴うγ線を精密分光することに成功した.この結果から4ΛHeの励起状態(スピン1)と基底状態(スピン0)のエネルギー間隔は従来信じられていた値と大きく異なり,4ΛHと4ΛHeの励起エネルギーに大きな荷電対称性の破れがあることを示した.さらに,励起状態(スピン1)のラムダ束縛エネルギーでは荷電対称性の破れは小さいことも分かった.これら2つの新測定により,質量数4ラムダハイパー核において確かに荷電対称性が大きく破れていることと,その破れ方がスピンに依存するという新たな知見が得られた.この現象はまだ理論的に説明できず,核力(バリオン間力)の我々の理解が不十分であることをさらけ出した.謎の解明に向けた研究が進められている.
著者
樋高 由久 古江 幸博 田村 裕昭 永芳 郁文 本山 達男 川嶌 眞之 尾川 貴洋 片山 隆之 川嶌 眞人
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.443-446, 2012-09-25 (Released:2012-11-27)
参考文献数
10

γネイルを用いた骨接合術後に二次骨折をおこした3例について報告する.〈症例(1)〉87歳,女性.施設で転倒し,左大腿骨転子部骨折を受傷.初回手術後35日目に転倒し,再骨折を認めた.〈症例(2)〉52歳,男性.施設入所中転倒し,左大腿骨転子下骨折を受傷.初回手術後38日目に転倒し,再骨折を認めた.〈症例(3)〉79歳,男性.ベッド上で左股関節痛により体動困難となり,左大腿骨転子下骨折を認めた.初回手術後182日目に転倒し,再骨折を認めた.全例がネイル先端から遠位横止めにかかる二次骨折であり,遠位横止め部位にかかる応力の集中が二次骨折に関与していることが考えられた.しかし,捻転力による二次骨折,ネイルの回旋や沈み込みによる変形や疼痛などの合併症を避けるためには,遠位横止めは必要であり,遠位横止めの是非は今後の検討が必要と考えられた.
著者
小倉 拓郎 早川 裕弌 田村 裕彦 小口 千明 守田 正志 清水 きさら 緒方 啓介 山内 啓之
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

小学校の総合的な学習の時間では,身の回りにある様々な問題状況について,問題の解決や探究活動に主体的,創造的,協同的に取り組む態度を育て,自己の生き方を考えることができるようにすることを目標としている(文部科学省 2008).この目標を達成するために,地域や学校の実態に応じて,自然体験や観察・実験などの体験的学習や,地域との連携を積極的に行うことが求められている.演者らは,自然地理学・地理教育・空間情報科学・建築学・歴史学・文化財科学などの専門分野を生かし,横浜市登録地域文化財に指定されている「田谷の洞窟」保存プロジェクトを実施している.このなかで,UAS(Unmanned Aerial System,通称ドローン)を用いたSfM多視点ステレオ写真測量や,地上レーザ測量(TLS: Terrestrial Laser Scanning)などを用いた高精細地表情報を基盤に,洞窟保全や文化財保護などの研究を通して,地域の地表・地下環境情報のアーカイブに取り組んでいる.本研究では,横浜市田谷町「田谷の洞窟」とその周辺域を対象とし,高精細地表情報の取得方法や利活用事例に触れることを通した課題発見型・体験型の地域学習を実践し,児童たちの学習効果について検証する. 本授業は,横浜市立千秀小学校第6学年の総合的な学習の時間および図画工作科を利用して実施した.当該校では,田谷の洞窟を主題として,1年間を通して地域の歴史や文化財の保存,環境についての学習を発展させてきた.学習のまとめとして,3学期にUAS-SfMやTLS由来の地表データから大型3D地形模型を製作した.地形模型作成プロセスを通して,児童たちは地形の凹凸や微細な構造を手で感じ取り,1・2学期に学習した地域学習の内容を喚起させた.その上で,デジタルで高精細な地形モデルや,アナログな立体模型を自由に俯瞰したり,近づいて観察したりすることで,さまざまなスケールにおける地域の構造物や自然環境の位置関係,規模について再認識することができた. 本授業のまとめとして地域で報告会を開催し,作成した大型3D地形模型を利用しながら地域住民や参画する大学教員・大学院生と意見交換を行った.生徒たちは意見交換を通して1年間の学習の整理だけでなく,多様な学問分野の視点や時空間スケールで地域を見つめなおし,自ら立てた課題の再考察や新たな課題を発見することができた.
著者
桝井 満里奈 田村 裕子 舩津屋 拓人 藤井 義郎 高橋 正純
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.118, no.8, pp.768-774, 2021-08-10 (Released:2021-08-10)
参考文献数
14

症例は90歳女性.胃幽門前庭部癌に対して幽門側胃切除,D2郭清,R1が施行され,pT4a(SE)N2M1(P,CY1),pStage IVと診断された.術後1年半目に腹膜播種が再燃し,四次化学療法としてNivolumab療法が開始された.癌病態悪化前の血清可溶性IL-2受容体(sIL-2R)/リンパ球(Ly)数比は比較的安定していたが,腫瘍増大とともに血清CA19-9値に並行して上昇した.
著者
野村 俊之 山本 昌彦 鈴木 光也 吉田 友英 大和田 聡子 重田 芙由子 池宮城 慶寛 田村 裕也
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.11, pp.869-874, 2011 (Released:2011-12-02)
参考文献数
10
被引用文献数
1

2007年8月より2009年7月までの2年間に, 東邦大学医療センター佐倉病院耳鼻咽喉科において良性発作性頭位めまい症と診断した1,145名を対象とし, われわれが考案した運動療法で治療を行った. われわれの方法は患側が特定できなくても整形外科疾患など頸椎・脊椎に問題のある症例でも, 患者が自宅で自分のペースで治療を行えるという特徴を有している. その結果1カ月以内に80.7%, そして3カ月以内では91.7%のめまい消失をみた. その中でも発症より1週間以内に受診した症例では2週間以内に80%の症例がめまいの消失をみている. めまい発症より受診時期が遅くなるにしたがって治癒期間も長くなる傾向があった.
著者
小倉 拓郎 早川 裕弌 田村 裕彦 守田 正志 小口 千明 緒方 啓介 庵原 康央
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2021年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.166, 2021 (Released:2021-03-29)

1.はじめに 防災学習は,初等教育における総合的な学習の時間において,従来の各教科等の枠組みでは必ずしも適切に扱うことができない探究的な学習として,地域や学校の特色に応じた解決方法の検討を通した具体的な資質・能力を育む課題学習の一例として挙げられている1).ハザードマップは防災学習でよく用いられるが,浸水高や震度分布などの複雑なレイヤ構造を有するため,児童らが一般的に苦手とする基礎的な地図の判読スキルのみならず,重なり合う地図上の情報を適切に取捨選択して理解する能力が要求される.そのため,発災現場などの非日常体験をより直感的に想像できる授業実践や教材の開発が求められる. そこで,実際に自然災害の生じた地域における小学校の児童を対象とし,校区内での被災状況をハザードマップと地形模型を援用した3Dマッピングにより把握することから,地域環境を見つめなおすという防災学習を実践した.本報告では,その実践の過程や学習内容,児童の気づきについてまとめる.2.授業実践の内容 本実践は,2019年度に横浜市立千秀小学校の総合的な学習の時間および図画工作科で計8時数実施した.ここでは,2017年度の小学校6年生が,航空レーザ測量にもとづく標高データ由来の地域の大型地形模型(縮尺1/1000)を製作したため2),これを3Dマッピングの基盤として用いた.一方,防災情報の基礎として,横浜市栄区洪水ハザードマップに描かれている浸水最大規模のレイヤ情報をスチレンペーパーで作成し,地形模型の上に貼り付けることで,通常は2次元の地図で提供されるハザードマップの情報を3次元的かつ実体的に表現した. 本地域では,令和元年台風19号の通過により,校区内で浸水被害や倒木,信号機の風倒などがみられた.児童らは校区内の台風通過後や過去の被災状況について,通学路や自宅周辺の観察や近隣住民への聞き取り調査を実施し,内容と位置をメモや写真にまとめた.調べた内容は地図と模造紙にも記入した(図1).また,被災内容を記したピクトグラムを作成し,調べた位置情報をもとに地域の大型地形模型の上に設置した(図2).その上で,授業の最終段階では,担任教諭や外部協力者としての大学教員・大学院生を交えて,被災した場所の位置や分布の特徴について議論した.3.結果と考察 児童らは地図に被災状況を並べる作業を通して,浸水箇所が河川に近いことや,信号機・テレビアンテナ等の損傷が住宅地に多いことに気づいた.その結果,校区内の地域でも,被災種類に地域性があることを理解した. その後,児童らは,自ら調査した情報を地形模型の上に乗せる作業を行うことによって,地形の凹凸と被災種類の関係に興味をもった.その結果,信号機の風倒箇所が谷部に集中していることに気づいた.地形に注目する中で,自然地形と人工地形の形状の違いについても関心をもち,地図と照らし合わせながら地形改変(宅地開発)や同じ標高の面(段丘面)について確認していた.また,道路や田畑が浸水した箇所は,ハザードマップで描かれていた浸水想定で浸水高が高い傾向を示す箇所に集中していることに気づいた.そこで,本地域の地形の成り立ちについて教員が説明し,旧河道であることを理解した. このように,大型地形模型を利用することによって,児童らに2次元の地図上での議論では浮かび上がらなかった,地形と被災内容の3次元的な空間関係を考える傾向が見られ,3Dマッピングによる考察の深化が観察された.3次元表現を行うことで,水平方向の位置関係や被災種類と土地利用との関係に対する関心から,垂直方向の関心にも目が届き,模型を上から俯瞰するだけでなく,しゃがむ,視点を変え斜め方向から360°回りながら眺める,といった身体を動かしながら対象を理解しようとする行動が見られたことも,3次元的な自然現象の想像・理解につながったと考えられる.4.文献1)文部科学省 2017. 小学校学習指導要領解説.2)田村裕彦・早川裕弌・守田正志・小口千明・緒方啓介・小倉拓郎 2020. 総合的な学習の時間を活用した地理・地形教育の実践−地域文化資源を用いた小規模公立小学校への地域学習から−, 地形, in press.
著者
岡本 芳晴 菅波 晃子 田村 裕
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.1042-1046, 2015 (Released:2018-08-26)
参考文献数
4

我々は,患者(ヒト,コンパニオンアニマル等)に安全・安心な医療技術として,ナノテクノロジーによる高機能性医薬品と光テクノロジーによる医療機器を融合した非侵襲性医療システムを構築すべく研究開発を進めている.具体的には,インドシアニングリーン(ICG)の基本骨格にアルキル鎖またはリン脂質を修飾したICG誘導体を脂質二重膜に組み込んだリポソーム製剤,インドシアニングリーン修飾リポソーム(ICG-Lipo)を開発するとともに,ICG-Lipoによるドラッグデリバリーシステム(DDS)と近赤外線診断治療装置を併用することにより,乳がんの早期発見を可能にする「非侵襲性同定法」,外科手術が不可能な症例に対する「非侵襲性治療法」,末期がん患者に対する「質の高い緩和医療」等の創生に取り組んでいる.ICGを用いたがん治療に関しては,獣医領域において,鳥取大・岡本らによる先駆的な試みがある.具体的には,表在性がんを対象にがん組織に少量の抗がん剤を含有するICG溶液を局注後,光照射(光線温熱化学療法)を行ってきた.一方ICGを血管内に投与した場合,血漿タンパク質と速やかに結合し,肝実質細胞に取り込まれて胆汁に排泄される.そのため,センチネルリンパ節や腫瘍組織を特異的かつ長時間にわたって同定することが困難であり,深部のがんに対しては有効な診断・治療法には至らなかった.千葉大・田村らは,ICGの血中半減期を改善するとともに,センチネルリンパ節や腫瘍組織への特異的集積と長期間繋留を可能とするリポソーム製剤としてICG-Lipoを開発した.さらに,医薬品としてのICG-Lipoと医療機器としての近赤外線診断治療装置を併用した非侵襲性医療システムとして,非侵襲性同定法ならびに光線力学温熱療法を構築してきた.しかしながら,ヒト医療への承認段階において高い壁に行く手を阻まれていた.その後,鳥取大・岡本らは,千葉大・田村らからICG-Lipoの供給を受けることにより,近赤外線治療装置を併用したがん治療に関する検討を実験動物を用いて2011年1月より開始し,その安全性と有効性を確認した.また,「産学連携コンソーシアム:鳥取大・千葉大・民間動物病院・飛鳥メディカル・東京医研・立山マシン」を2013年9月に形成し,コンパニオンアニマルを対象とした獣医師主導型臨床試験による診断・治療を実施するに至っている.
著者
田村 裕
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.291-299, 2022-04-01 (Released:2022-04-01)
参考文献数
34

無線通信におけるチャネル割当にグラフ理論における彩色問題が応用できるとの指摘は古くからあり,多くの研究が進められてきた.初期の段階では,自動車電話を想定したセルラシステムにおける研究であった.その後無線通信は発展し,多岐にわたる応用が考えられている.グラフ彩色もこれに対応して応用可能な研究が期待されるが,現状では十分でないと考えている.そこで,本文では,チャネル割当とグラフ彩色のこれまでと,発展した無線通信に対応が期待できるグラフ彩色を紹介する.その上で,無線センサネットワークに応用可能な具体的なグラフを取り上げ,本文で扱ったグラフ彩色を例示する.
著者
田村 裕 中野 敬介
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J106-A, no.7, pp.201-207, 2023-07-01

無線通信におけるチャネル割当とグラフ理論における彩色問題は古くから関連性が示され,様々な研究がなされてきた.その中で多くの理論的な研究は,割当てるチャネル数の最小化を目指したものである.筆者らは以前の報告においてGrundy Coloringと呼ばれる色数が最大となる彩色を取り上げ,必要なチャネルを見積もり,幾つかの結果を示した.また,筆者らは以前に,チャネル干渉の程度を取り入れた従来のグラフ彩色を拡張した問題を提案し,幾つかの結果を得ている.本文では,Grundy Coloringに関して,干渉の程度を考慮した場合の点彩色について考察し,幾つかの結果とこれまでの結果との関連を述べる.
著者
野々上 敬子 田村 裕子 岡﨑 恵子 多田 賢代 笹山 健作
出版者
関西福祉大学研究紀要編集委員会
雑誌
関西福祉大学研究紀要 = The journal of Kansai University of Social Welfare (ISSN:24326828)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.23-30, 2022-03-31

幼児と保護者の食や睡眠,運動習慣との関連性については十分に明らかにされていない.幼児と保護者の生活習慣(食習慣,睡眠習慣,運動習慣)の関連性を明らかにする.○○県O 市南部にある私立保育園3 園に通う保護者のうち,本研究の趣旨に同意が得られた133 名(3 歳児:42 名,4 歳児:45 名,5 歳児:46 名)を対象とした.調査期間は令和3 年6 月,保護者に調査票を配付し回収する留め置き法を用いた.質問項目は,家族構成,子どもの性別,保護者の健康状態,生活習慣・食生活,子育ての養育態度,子どもの様子,健康教育・食育への関心とした.幼児とその保護者を対象とし,生活習慣や食生活などについて調査した結果,保護者は睡眠が「十分とれていない」が約半数であり,子どもの睡眠時間は「10 時間未満」が約7 割,間食は「子どもが欲しがると与える」が約5 割であり,「健康教育,食育の必要性を感じる」は9 割,「イライラすることがある」は,保護者の約7 割,子どもの約4 割,「テレビゲームをする時間を決めていない」が約半数であった.幼児と保護者の生活習慣(食習慣,睡眠習慣,運動習慣)の関連性を明らかにした結果,保育所に子どもを預けている保護者において,時間的なゆとりがない人が半数を占めていたことから,睡眠時間が十分確保できない状況が窺われた.睡眠時間が十分確保されていないことから派生する生活習慣および食習慣への影響がみられた.保護者の健康状態や生活習慣は,良いとは言い難い状況であったが,子どもに対しては,しつけとして生活習慣を身につけさせたいと考えていた.これらのことから,保育所と地域および専門機関が連携協働し,保護者への支援が重要であると考えられた.
著者
三輪 裕介 穂坂 路男 三田村 裕子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.65-69, 2022 (Released:2022-01-01)
参考文献数
8

関節リウマチ患者では約15%にうつ病が合併することが報告され,合併症の中では最多である.オキシトシンは幸福ホルモンといわれ,うつ病,統合失調症,自閉症,摂食障害,発達障害,心的外傷後ストレス障害などさまざまな精神疾患において関連することが報告されている.しかし,関節リウマチをはじめとする自己免疫性疾患での報告は少なく,関節リウマチでは,血清オキシトシン濃度と直接関連のある因子は報告されていない.血清オキシトシン濃度は,測定系の問題,疾患そのもの,治療薬剤などに影響される可能性があり,関節リウマチにおける抑うつに対する臨床応用については,慎重な判断を要する.
著者
本山 達男 尾川 貴洋 小川 貴久 古江 幸博 永芳 郁文 川嶌 眞之 佐々木 聡明 渡邊 裕介 小杉 健二 川嶌 眞人 田村 裕昭
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.481-484, 2015-09-25 (Released:2015-12-03)
参考文献数
6

膝前十字靭帯(ACL)損傷に伴う骨挫傷は,MRIでのACL損傷診断の補助となる.ACL新鮮例のMRIでの骨挫傷について検討した.対象と方法)対象は2011年7月より2014年7月まで当院でACL損傷にて関節鏡もしくは鏡視下靭帯再建を行った41例,41膝,男性21例,女性20例,平均年齢30歳(13-58)右膝12例,左膝29例であった.MRIにて骨挫傷の有無,部位について,また受傷機転,スポーツ種目について検討した.結果)41膝中39膝(95.1%)に骨挫傷を認め,脛骨外側顆36膝,大腿骨外側顆28膝,脛骨内側顆13膝,大腿骨内側顆6膝であった.また内側コンパートメントの骨挫傷単独例はなく,外側コンパートメントの骨挫傷を合併していた.41例中39例はスポーツが原因で,バレーボール17例,バスケットボール10例,サッカー6例などであった.受傷機転はジャンプし着地時の受傷が21例と多かった.非接触型の受傷は34例(82.9%)を占め,接触型より内側の骨挫傷を多く合併していた.
著者
常山 聡 日下 起理子 田村 裕恵 小松 良一 久保田 芳正 櫻井 宏治 赤羽 弘充 高橋 昌宏
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.268, 2006 (Released:2006-11-06)

<緒言>乳腺粘液癌は、腫瘍性上皮細胞から細胞外へ分泌された粘液巣を特徴とする特殊型の浸潤性乳癌である。発生頻度は全乳癌の1_から_4%であり、比較的まれな腫瘍である。また、予後については他の組織型に比して良好である。今回我々は、17症例の粘液癌における予後因子について、他の組織型との比較を行なった。<対象と方法>1995年から2004年に当院外科にて手術が施行され組織学的に乳腺粘液癌と確認された17症例を対象とした。また、比較対象として2002年_から_2004年の期間に当院で手術施行され、組織学的診断において粘液癌を含む特殊型を除いた166症例を使用した。これらの症例について、予後因子としてのエストロゲンレセプター(ER)、プロゲステロンレセプター(PgR)、p53、Her2/nueとの比較を行なった。<結果>ERにおける陽性率は、粘液癌では17症例中16件が陽性であり94%であった。また他の組織型では、120症例中84件で陽性率は70%であった。 ERは乳癌における予後因子として有用とされており、悪性度と負の相関を示すとされている。今回の結果における粘液癌のER陽性率は、他の組織型に比して高く、予後が良好であることを示していると考えられる。また、粘液癌でER陰性の症例1例は、肺転移をおこしていた。 PgRについては、粘液癌で13例が陽性で陽性率76%、他の組織型では120症例中陽性68例で陽性率51%であった。 PgRも乳癌における予後因子として有用であり、ER同様に悪性度と負の相関を示している。今回の結果における粘液癌のPgR陽性率も、他の組織型に比して高く、予後が良好であることを示していると考えられる。また、肺転移をおこした粘液癌については、PgRも陰性であった。 p53については、粘液癌で1例が陽性で陽性率6%、他の組織型では126症例中45件が陽性で陽性率36%であった。 p53については、ER・PgRとは反対に悪性度と正の相関を示すとされている。今回の粘液癌のp53陽性率は、他の組織型に比し低く、予後が良好であることを示していると考えられる。 Her2/nueについては、粘液癌で1例が陽性で陽性率6%、他の組織型では146症例中30例が陽性で陽性率21%であった。 Her2/nueは、p53同様にER・PgRとは反対に正の相関を示すとされている。今回の粘液癌のHer2/nue陽性率は、他の組織型に比し低く、予後が良好であることを示していると考えられる。また、粘液癌でHer2/nue陽性の症例1例は、ER・PgRともに陰性で肺転移をおこしていた症例であった。<考察>乳腺粘液癌は他の組織型に比較して、予後は良好であるとされている。また今回検討した予後因子からも良好であることが示されている。また、粘液癌17症例中現在までに転移が確認されている1例については、ER・PgRともに陰性、Her2/nue陽性と今回検討した3つの予後因子が、悪性度の高い可能性を示している。乳腺粘液癌においては、予後因子で悪性度が高い可能性を示している場合、将来の転移の可能性も考慮し、経過を観察していく必要があると考えられる。今後、再発の有無を含めた術後経過と予後因子の関係についても更なる検討をしていく必要があると考えられる。