著者
関谷 勇司 長 健二朗 加藤 朗 村井 純
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.87, no.10, pp.1542-1551, 2004-10-01

DNSはインターネットの基盤サービスである.しかし,DNSのサービス状況を測定するための手法はまだ確立されていない.そこで本研究では,インターネットにおける名前解決システムであるDNSのパフォーマンスを測定並びに評価するための手法を確立する.本研究にて提案する手法は,世界各地において手軽に実施できる測定手法であり,どのようなDNSサーバ,若しくはDNSサーバ群に対しても行える手法である.本手法では,dnsprobeというツールとダイヤルアップを用いて手軽に測定を行い,基準DNSサーバを用いることによって,測定結果を補正することが可能である.これによって,世界各地からの測定結果を,補正して一律に比較することが可能となる.今回は,この手法を用いて,ルートDNSサーバヘの到達性を27地点から測定する.この結果によって,現在のルートDNSサーバヘの世界の各地点からの到達性と傾向をつかむことができる.本研究の手法を利用することにより,DNSサービスの公平性を判定したり,新たにDNSサーバを設置する場合の設置場所決定に関する一助とすることができる.
著者
津川 定之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.82, no.11, pp.1958-1965, 1999-11-25
被引用文献数
30

高度道路交通システム(ITS)で用いられる路車間通信システムと車両通信システムの展望を述べる.路車間通信システムは,1940年ごろから実験が行われ,交通情報提供,経路誘導,有料道路の自動料金収受など,現在実用化あるいは普及段階にある多くのシステムで用いられている.車両間通信システムは1980年ごろから研究が開始され,自動運転システムにおける車群協調走行など車両制御システムの実験に使用されているが,通信媒体やプロトコルに多くの課題が残されており,現在のところ研究段階にとどまっている.
著者
上山 憲昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.83, no.7, pp.999-1011, 2000-07-25
被引用文献数
17

IP網の帯域割当サービスに対して定額課金を適用した場合, 同一料金を支払っているにもかかわらず, ふくそう時にはサービスを利用できるユーザと利用できないユーザが生じることから, ユーザ間の公平性が満たされない.そこで各々の通信セッションを課金単位とする新しい課金手法を提案する.提案手法では, 個々のサービスに応じた料金をセッションを単位に設定でき, またユーザは使用した量に応じて料金を払えばよく, ユーザ間の公平性が満たされる.セッション価格にサービス要求発生率と発呼時の同時接続数という二つの網状態を反映させることにより, 総需要を平滑化し呼損率の低減と網収入の向上を図る.ユーザの選択行動を非集計行動モデルで, サービス需要を数量化理論I類のカルマンフィルタモデルで各々予測し, 網収入を最大化する最適価格セットを導出, 適用する.数値計算により, 定額課金や静的課金モデルに対する提案方式の有効性を示す.
著者
青野 智之 樋口 啓介 大平 孝 小宮山 牧兒 笹岡 秀一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.88, no.9, pp.1801-1812, 2005-09-01
被引用文献数
24

電波の送受信場所が異なると電波伝搬路特性の相関は急速に減少する.一方, 通信可能な2局間では電波伝搬の相反性が成立するため, 伝搬路特性の変化情報を利用することで, 受信場所が異なる第三者が盗聴困難な秘密鍵の生成・共有が可能となり, 鍵管理・鍵配送の必要のない秘密鍵生成・共有方式を実現できる.また, 民生品向け可変指向性アンテナとして開発中のエスパ(ESPAR : Electronically Steerable Parasitic Array Radiator)アンテナは, 可変容量素子であるバラクタダイオードを用いて指向性制御が可能であるため, 意図的に電波伝搬路特性を大きく変動させることが可能である.本論文では, エスパアンテナによる電波伝搬路特性の変動を利用した無線秘密鍵共有システムの試作に成功したので報告する.更に, 試作システムを用いた検証実験にて, 例えば128ビットの秘密鍵を3秒周期で変更するシステムの場合の鍵生成成功確率が99.998%以上となること, 及び盗聴局との相関特性から, 盗聴局が秘密鍵の解読に要する時間が, 7.19×10^4年以上かかる見積りとなることを確認した.
著者
田口 裕二朗 陳 強 澤谷 邦男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.65-70, 2000-01-25
被引用文献数
10

航空機搭載2次監視レーダへの応用を目的として, 給電素子に逆Fアンテナを用い, その前後に無給電素子として逆Lアンテナを配置した八木・宇田アンテナの広帯域化について述べている.モーメント法を用いた解析から, 導波器を給電素子に近接配置した構造により特性を広帯域化できることを明らかにしている.アンテナ寸法として導波器と給電素子の間隔を約0.05λ_0に近接配置し, 導波器の高さを約0.1λ_0, 全長を約0.4λ_0としたとき, VSWR≦2の帯域幅として18.8%及びこの帯域において前方と後方の利得比Gd / Grが約10dB以上の単一指向性を得ることができ, 実用上重要な送信周波数においてGd / Grは32.9dB, 前方の指向性利得Gdは8.0dBiの性能を有することを示している.また, 実験を行い, 解析値と測定値がほぼ一致することを確認している.
著者
土居 茂雄 山村 雅幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.48-59, 2004-01-01
被引用文献数
2

AntNetにおいて,一定時間ごとにフェロモンを揮発させるフェロモン揮発法DCY-AntNetが提案されている.そこでは,エージェントやパケットがリンクを移動するときの所要時間を考慮せずに一様にフェロモンを揮発させてしまうため,ネットワーク全体のトラヒックふくそうが起き,報酬が与えられない場合でもフェロモンを揮発させてしまう.このため,経路選択がランダムとなってしまい,系全体としてスループットの減少が起きてしまう.本論文では,これらを解決するために,ノードの局所的リンクコストを考慮に入れ,エージェントの移動に制約を加えたフェロモン揮発法を提案する.ベンチマーク問題や典型的なネットワークトポロジーでシミュレーションを行い,その有用性を確認した.
著者
野田 厚志 北須賀 輝明 田頭 茂明 中西 恒夫 福田 晃
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.643-655, 2009-03-25

本論文では,無線可視領域通信(WVAC : Wireless Visible Area Communication)において通信相手の特定を支援する名前解決ミドルウェアを提案する.WVACとは,近距離無線通信デバイスを用いて,ユーザの視界内に存在する端末と,一時的にネットワークを形成し,即座に情報交換を実現する無線通信のことである.提案ミドルウェアは,従来の名前を用いることに加えて,周辺端末との相対位置を補助的に提示することで,WVAC環境における通信相手の特定を効果的に支援する.提案ミドルウェアは,(1)ミドルウェアの機能を,アプリケーションが汎用的に利用できるように,シンプルなAPIを提供する.(2)事前に設定/配置が必要な専用サーバを必要としない.(3)キャリブレーションを必要とせずに,周辺端末の相対位置情報を取得できる測位手法を採用している.また,提案ミドルウェアのプロトタイプシステムを構築し,応用プログラムの作成と基礎的な評価を行った.評価の結果から,PDA程度の処理能力で十分に提案ミドルウェアを稼動できることを示した.
著者
鄭 雄鉉 山田 吉英 道下 尚文
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.90, no.9, pp.906-910, 2007-09-01
被引用文献数
5

UHF帯のRFIDタグアンテナとして,アンテナ長が0.035波長の超小形ノーマルモードヘリカルアンテナが研究されている.本論文では,更なる小形化における利得低下を救済する手段として,折返しアンテナ構成の導入法を明確にしたものである.まず,電波放射の必須条件である自己共振構造を求めるとともに,折返し構成として必要となる基本電気性能の確認を行った.次に,折返し構成の機能を明確に表す量である放射抵抗と導体抵抗のステップアップ比の違いを確認するとともに,放射特性や実用時に必須となるインピーダンス整合法を明らかにした.最後に,電磁界シミュレーションにより求めた値の妥当性と超小形折返しアンテナの実現性を検証するため,アンテナを製作し電気性能の測定を行った.測定での工失点は,放射抵抗と導体抵抗を測定により切り分けるため,アンテナを窒素冷却して測定する方法を用いた点である.測定と計算値は,入カインピーダンス,主偏波放射特性で良い一致が得られるとともに,放射抵抗と導体抵抗の値でも良い対応関係が得られたため,計算結果の妥当性を確認できた.
著者
山田 孝行 成瀬 央
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1063-1070, 2001-06-01
被引用文献数
2

光ファイバ中に発生する後方散乱光の一つであるブリルアン散乱光の中心周波数と入射光周波数との差が, 光ファイバのびずみに依存することに着目した光ファイバひずみ計測器が開発されている.このブリルアン散乱光の中心周波数の計測には, ブリルアン散乱光のパワースペクトル分布の推定が必要であり, 分布推定精度の向上により中心周波数計測並びにひずみ計測精度の向上を期待することができる.本論文は, このブリルアン散乱光のパワースペクトル分布推定問題に着目し, 推定のための重み付き最小2乗法の繰返しアルゴリズムを提案した.また, 提案した繰返しアルゴリズムの安定性について検討するとともに, シミュレーションにより提案手法の有効性を明らかにした.
著者
小川 清 澤井 新 飯田 登 萬代 雅希 渡辺 尚
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.88, no.11, pp.2251-2262, 2005-11-01

単一の端末に複数の通信インタフェースを接続し, 複数経路を利用するマルチホーミング通信環境においては, 往路と復路で異なる経路を利用すれば, より効率的な情報通信が可能となる場合がある. これを可能とするためには, 片方向の遅延を考慮して適切なインタフェースを選択する必要がある. しかしながら, 通信経路の負荷が時間帯, 通信量などによって変動することや, 往路遅延と復路遅延を簡単には分離できないことなどから, 正確な片方向遅延を直接求めることは一般的には困難である. 本論文では, 複数のパターンの往復概遅延の組から片方向の概遅延差を簡便に求め, これに基づいて経路を選択する方式を提案する. 本方式は, 通信相手との時刻同期, 測定のための制御パケットが不要で, ネットワーク層に依存しないため拡張性があることなどの特徴をもつ. また, 提案方式をICMPで計算機上に実装し, 種々のマルチホーミング通信環境で実験評価する. その結果から片方向経路選択が可能であり, 提案方式が有効であることを示す.