著者
石田 則明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.10, pp.1719-1727, 2002-10-01
被引用文献数
5

本論文は,チャネル間隔の狭小化を目的として,方形スペクトルを基本とした新しい波形伝送系を提案する.送信波形として,方形スペクトルを最も良く近似するk乗n段バタワース(以下,BWと略記)とし,受信フィルタとしては通常のm段BW形を用いその3dB帯域幅を選定することにより,受信波形の最適化を図った.C/N及びチャネル間干渉の点からk=2が最も望ましいことを明らかにした.この2乗BWスペクトルについて,アイ開口率,チャネル間干渉等を計算し,2乗BWを用いれば現行のPDCのチャネル間隔を約半分に縮小できる可能性を示した.
著者
木下 真吾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.11, pp.1819-1842, 2002-11-01
被引用文献数
31

配信時の信頼性が求められるファイル等のデータを多数のユーザに効率良く一斉配信するための技術として,リライアブルマルチキャスト(RM)が注目されている.インターネットにおいては,IPマルチキヤストを利用し,その上位レイヤにおいて信頼性保証を行うリライアブルマルチキャストトランスポートプロトコルの研究が活発に行われている.このうち主要なものは既に製品化され,衛星イントラネットを中心に実サービスでの利用も開始されている.一方,インターネットにおけるRMの本格的な普及を目的とし,IETFにおける標準化も1999年から進められている.本論文では,次世代データ配信技術を担うRMの研究,製品化,標準化,それぞれの最新状況と今後の動向について報告する.
著者
中河 隆仁 森 友則 朝香 卓也 高橋 達郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.230-241, 2010-02-01

Unstructured型P2Pネットワークにおいて,ユーザの嗜好性を考慮し,嗜好の近いピアをオーバレイネットワーク上で近くに配置するセマンティックP2Pネットワークの研究が盛んに行われている.しかし,従来のセマンティックP2Pネットワークでは,同じ内容のクエリを何度も同じピアに転送するクリッピング現象が生じるため,ヒット率の点において課題が残されている.そこで,本論文では,クリッピングの影響を抑える新たなセマンティックP2Pネットワークの構築法を提案する.本方式では,各ピアが保持しているコンテンツのジャンルの比率とピアが保持しているコンテンツ数を用いて,他ピアとの嗜好の近さを計算し,検索の際に嗜好の近いピアだけでなく嗜好の異なるピアにもクエリを転送することにより,クリッピングの影響を抑える.これにより,検索範囲を広くできヒット率を高めることができる.また,本論文では,シミュレーションによる評価を行い,提案方式の有効性を示す.更に,より実際のネットワークに近い条件下での評価を行うためにmixiの解析を行い,これにより得られたデータをシミュレーションモデルに組み込んで提案方式の評価を行う.
著者
上野 洋 深川 周和 飯田 登 水野 忠則 渡辺 尚
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.707-716, 2001-04-01
被引用文献数
2

モバイルコンピューティング環境のもとで, 即時系データと待時系データを統合的に送受信するマルチメディア通信方式として, 無線を使用した分散制御型の多重アクセス方式(DMMA)を提案する.DMMA方式は, (1)制御局を必要とせず, 端末が集まればその場でアドホック無線ネットワークを構築できる.(2)即時系データの連続性を保証しつつ低負荷時には待時系データの送信に複数のスロットを割り当て, チャネルの有効利用と不必要な遅延を回避する.(3)コンテンション領域(期間)が可変となるため, 即時系データを扱うには不向きなTreeアルゴリズムを, 領域が間欠的に現れる構造に改良している.(4)新規加入端末はある有限時間ネットワークを監視すれば網の状態を把握できるため, 動的に網に出入り可能である.以上の四つの特徴をもつ.また, DMMAの性能をシミュレーションにより評価を行い, その結果マルチメディアデータの種類によらず, 等しいスループットを提供できることを示した.
著者
林 孝典 山崎 真一郎 森田 直人 相田 仁 武市 正人 土居 範久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.523-533, 2001-03-01
被引用文献数
20

本論文では, インターネットの複数経路にパケットを分配してデータ伝送する方式について検討し, 各経路へのパケット分配方法とパケット順序の並べ替えの効果をシミュレーションにより評価した.シミュレーションでは, 同じ回線速度の2経路を用いてファイル転送する場合を対象とした.また, ネットワーク品質として, 固定伝送遅延時間, 遅延ゆらぎ, パケット損失を考慮した.その結果, データ送信側ではパケットを送信バッファ待ち時間が短い経路へ分配し, データ受信側ではパケット順序の並べ替えを行うと同時に, 2経路からパケットを受信してもデータの連続性が更新されなかった場合は, パケット損失が発生したと判断して順序待ちを解除する方式が, 最も安定したスループットが得られることがわかった.また, 2経路の遅延時間差が4パケット時間以内の場合は, パケットを2経路に交互に分配する方法を用いれば, パケット順序の並べ替えを行わなくても, 前者の方式と同等の性能が得られることがわかった.
著者
林 理三雄 安田 茂 石原 秀泰 張 宰赫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.254-262, 2001-02-01

九州地域(鹿児島, 熊本, 福岡)及び太平洋沿岸の地域(高知, 浜松, 静岡)の1分降雨量(降雨強度)観測データを用いて, 鹿児島の降雨の特徴を抽出した.また, 鹿児島における降雨の特徴が, 衛星放送電波の降雨減衰や斜め伝搬路特性に与える影響について解析した.その結果, 鹿児島では, (1)強い降雨強度の降雨が多く, 散発的な降雨が多い.(2)一般に降雨量は長時間の小降雨強度に依存することが多いが, 鹿児島では降雨強度の強い物の寄与が大きい.(3)散発的な強い降雨強度の降雨は, 小雨期と思われる10月に多い.地点降雨強度と斜め伝搬路における降雨減衰(区間降雨強度に関係する)を評価するため, 地点降雨強度と降雨減衰が同一累積時間率のとき, 地点降雨強度と降雨減衰の関係を求めた.結果, (4)地点降雨強度が雨域伝搬通路に一様にあるとすると, その等価通路長は実際の通路長よりも8〜10倍長くなることがわかった.
著者
ヴィスーティヴィセット ワサカ 門林 雄基 山口 英
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.8, pp.1215-1226, 2002-08-01
被引用文献数
1

IPマルチキャストは,大人数グループに同一データを効率良く配送するための機構として提案された.しかし,IPマルチキャストはグループの増加に伴いルータ負荷が大きくなるため,少人数グループが多数存在する通信に適していない.本論文では,少人数グループ通信を対象とした新しいマルチキャスト経路制御プロトコルSender Initiated Multicast(SIM)を提案する.SIMでは,受信者アドレスリストをパケットに添付し,ユニキャスト経路情報に基づくパケット転送を行う.また,SIMはルータ上にSIM Forwarding Information Base(FIB)として転送情報を保持するPresetモードを備えているため,全パケットにアドレスリストを添付する必要がない.Presetモードでは,送信者アドレスとグループのマルチキャストアドレスの組を転送情報検索のハッシュキーとして利用することで,効率の良い経路表検索を実現している.また,自動的に分岐点ルータ間を結ぶSIMトンネル機構により,転送情報の保持と全受信者に対する経路表検索を行うルータ数を減らし,パケット転送処理の高速化を図っている.本論文では,これらの機構をもつSIMは少人数グループが多数存在する通信において有効であることを示す.
著者
川瀬 成一郎 澤田 史武
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1000-1009, 2001-06-01
被引用文献数
15

静止衛星の電波を受けて衛星の軌道経度を直接的に計測する技術を開発した.口径1.8mのアンテナ2基による長さ13mの基線をもつ干渉計が, Ku帯衛星電波を受ける.その際, 基線を特定の方位に向けると, 干渉計の位相は直ちに衛星経度を表す.衛星ごとに定まる特定の方位に基線を向けられるように, 衛星電波は可動反射板を介してアンテナに導くようにした.このような干渉計の構成により, 大口径アンテナに頼らずに諸衛星の軌道位置とその動きを千分の数度の精度で即時計測できるようになった.開発した技術は, 従来的に憂慮される静止衛星の混雑化に対処するための監視活動に役立てられる.
著者
野口 啓介 水澪 不雄 山口 尚 奥村 善久 別段 信一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.402-409, 1999-03-25
被引用文献数
7

小形アンテナの一つとして2線式メアンダラインアンテナ(2線式MLA)を取り上げ, その広帯域化について検討を行っている.素子を2線式にすることによりバランスモードとアンバランスモードの二つのモードの電流を流すことができ, 放射抵抗のステップアップとバランスモードのインピーダンスの反共振特性を利用することによってアンテナ自身で広帯域化が可能となる. 入カインピーダンスを放射抵抗, Q, 共振周波数を使って表し, その式において周波数の変化率を表すパラメータuを導入することにより広帯域化について考察している. 広帯域化に必要なバランスモードとしての平行2線の特性インピーダンスを20Ω程度まで小さくする必要があり, そのためにはストリップ導体を用いたメアンダラインの構造が有利であることを示している. 更に試作, 実験を行い, 高さ0.11波長の2線式MLAで, VSWRが1.5以下の場合において比帯域幅7.2%が得られている.
著者
星 仰 山田 貴浩 藤田 正晴
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.283-291, 1999-02-25
被引用文献数
1

近年, 合成開口レーダ(SAR)の画像データ解析において, 偏波特性を用いたボラリメトリーの技術が注目されてきている. 従来, ボラリメトリックSARは航空機搭載型のものがほとんどであったが, 1994年にスペースシャトル"エンデバ"に搭載されたシャトル搭載型映像レーダC(SIR-C)によって帰還衛星としては初めてL, Cバンドによる多偏波・多バンドの観測が実施されている. 本研究の目的は, テクスチャ特徴量の偏波特性から地表パターンの分類がどの程度可能であるかを究明することである. このために, SIR-CのLバンドとCバンドのデータを用いて, 偏波合成により作成される画像についてGLCM法によりテクスチャ特徴量を算出し偏波依存性を求め, また, テクスチャ特徴量の値と領域の平均ミューラ行列から算出される偏波シグネチャの値との対応をとる. このことから, 後方散乱係数のみでは分類が困難と思われる領域について, テクスチャ特徴量との2次元分布に拡張することによりカテゴリーの分布の分離状況を図示する.
著者
北村 強 飯塚 真規 佐久田 誠 西野 嘉之 笹瀬 巌
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.8, pp.1382-1393, 2002-08-01

マルチキャストトラヒック下におけるWDMシングルホップネットワークにおいて,競合する目的アドレスの少ないマルチキャストパケットを優先して送信することにより,平均パケット遅延特性及びスループット特性の改善を図るスゲジューリングアルゴリズムを提案する.提案アルゴリズムでは,他のデータパケットと競合する目的アドレスを多くもつマルチキャストパケットの送信を延期させることにより,競合する目的アドレスの少ないマルチキャストパケットを優先して送信する.競合する目的アドレスの少ないマルチキャストパケットを優先して送信することにより,スケジューリングが完了する次のタイムスロットにおける波長利用効率を向上することが可能となる.マルチキャストトラヒック下における平均パケット遅延特性及びスループット特性について計算機シミュレーションにより特性評価を行う.その結果,提案方式は平均パケット遅延特性及びスループット特性を改善できることから,提案方式の有効性を示す.
著者
赤瀬 謙太郎 小畑 博靖 石田 賢治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.624-632, 2009-03-25
被引用文献数
6

べストエフォートネットワークであるIPネットワークにおいて,高い通信品質を必要とする重要通信やリアルタイムアプリケーションに通常のTCPを用いると,必要な帯域が確保できないという問題が生じる.このようなアプリケーションに安定した通信品質を提供するためには,帯域の確保が有効である.現在,送信端末のTCPふくそう制御のみを用いて帯域確保を実現する技術が提案されている.しかしながら,従来方式では帯域確保のために積極的なウィンドウ制御を行うため,通信回線が重度のふくそうに至った場合,逆に帯域確保が困難になるという問題がある.そこで本論文では,背景フロー数が多い状況下や帯域確保TCPフローが複数本存在するといったネットワークのふくそう度が高い状況において,目標帯域を一時的に下げることでふくそうを回避し,その後ふくそうの度合が緩和された際に目標帯域の確保を目指すTCPふくそう制御方式を提案する.シミュレーション評価により,提案方式は従来方式に比べ,ネットワークのふくそう度が高い場合でもボトルネックリンクの帯域利用率を低下させることかく一定の帯域を確保できることが分かった.
著者
高瀬 柔郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.1393-1401, 2005-08-01

高齢社会で必要となる様々なソーシャルサービスを積極的に支援するために, ルータや管理サーバ等の設備投資を行わず, 地域の家庭や事業所及び公的機関等をノードとし, 各ノードの通信端末同士を直接連結することにより, 課金を必要としないオープンな近隣網が提案されている. 近隣網ではフラッディングが重要な役割を果たすが, MANETと異なり, 各ノードの通信端末が電源を切断しても網トポロジーは不変に保たれる. フラッディングの損失率が主要部だけで表される条件のもとで, 2ノード間の損失率の基本的な関係を提示する.
著者
粂川 一也 小久保 温 佐藤 和則 川島 隆太 山田 健嗣 福田 寛
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.308-313, 2000-03-25
被引用文献数
9

病院間における高速データ通信の需要には, コンピュータトモグラフィー(CT)等の画像データの転送や, ビデオ会議システムにより診断, 研究の議論を行うことなどがある.本論文では, 仙台市内の病院間に, 空間光伝送を利用した155Mbps ATM無線LANを構築し, 天候による影響を長期にわたって観測した.測定期間中, 霧及び降雪による回線断が発生したが, 降雨による回線断は観測されなかった.霧による回線断は早朝及び日没以降に発生しているので, 主な回線利用時間帯での影響は少ない.また, 全体を通して回線断の頻度は低く, 10Mbps以上での回線稼働率は99.4%であり, 空間光伝送によるLANの有用性が示された.
著者
横平 徳美 岡本 卓爾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1484-1493, 2001-08-01
参考文献数
7
被引用文献数
10

EDDコネクション受付制御方式では, コネクションの設定要求が発生した場合, そのコネクションを設定するものと仮定したときのそれに属するパケットの最悪の場合のend-to-end遅延を計算し, この遅延がそのコネクションの許容するend-to-end遅延以下のときのみその設定を許可し, それらの遅延の差(遅延余裕)を分割してそのコネクションの通過するリンクに割り当てる. この割当ては, 受付制御の容易化のために考えられたものであるが, ネットワーク内に同時に設定可能なコネクションの最大数(最大コネクション数)は, 割当てのし方に大きく左右される. 本論文では, ネットワーク内の特定のリンク群の利用率が他のリンク群の利用率より常時大きくなるようにコネクションの設定要求が発生するトラヒックパターンを対象に, 新たな割当法として, リンクの最悪遅延に比例して割り当てる方法(遅延法)を提案し, 従来の均等に割り当てる方法(均等法)及び利用率に比例して割り当てる方法(利用率法)と比較している. 数値例によれば, 最大コネクション数の面では, 遅延法は均等法及び利用率法に比して同程度か, あるいは, 最大でそれぞれ約1.30倍及び約1.48倍の性能が得られる. 受付制御の所要時間の面では, 遅延法は均等法と同程度であり, 利用率法より格段に優れている.
著者
川瀬 徹也 系 正義 小菅 義夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.10, pp.1777-1786, 2002-10-01
参考文献数
10
被引用文献数
5

旋回目標追尾アルゴリズムであるM^3フィルタは複数の定数加速度モデルを定義し,各運動モデルの予測位置を中心とした確率密度分布の観測位置における値を評価することにより,各運動モデルの信頼度を算出する.サンプリング間隔が短い近距離レーダの条件下では良好な追尾性能が得られるが,広範囲を捜索するためにサンプリング間隔の長い遠距離レーダの場合,追尾精度が劣化する場合がある.これは,予測値間に各運動モデルの確率密度が極めて低い領域が生じ,モデルの信頼度計算が適切に行われないためである.そこで本論文では,各運動モデルの確率密度分布の重なりを表す指標として誤差楕円体重複度係数を提案し,計算機シミュレーションによる解析を行った.その結果,上記係数が一定の値を下回る場合にモデル信頼度が増減を繰り返し,適当なモデルに収束しない信頼度発振現象が生じることを明らかにした.誤差楕円体重複度係数を監視することで,事前に信頼度の発振現象が生じる可能性を知ることができる.
著者
古樋 知重 橋口 正哉 大平 孝 浅田 峯夫 岡田 敏美
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.219-225, 2003-02-01
被引用文献数
20

雪山などにおける遭難救助のための探索システムとして,腕時計型の小型電波発信機(マイクロ波ビーコン),及びエスパアンテナを利用した電波到来方向探知機の試作及び検証を行った。本システムはマイクロ波帯の利用により従来システムに比較して探索の位置精度(分解能)を大きく向上させた.更に,直接拡散型スペクトラム拡散方式(DS-SS)により耐干渉性を向上させたうえ,短パルスでも方向探知が可能なように方向探知機のアルゴリズムを改造することにより,マイクロ波ビーコンの電池寿命を大幅に延ばした.積雪地での実験により見通しで最大600m,マイクロ波ビーコンを湿った雪の下1mに埋めたときには30m離れた地点からの探知が可能であることを確認した.
著者
玉真 哲雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.2076-2081, 2001-12-01
被引用文献数
1

全球航法衛星システム(GNSS)は, 米軍のGPSを基軸としつつも露軍のGLONASS, また将来は欧州連合の非軍用「ガリレオ」構想等の要素も含めて, 民生面で広範な応用と巨大な市場とを生み出し, 21世紀情報化社会の基本インフラとなりつつある.反面, 特定国の軍用システムに世界の民生が依存してきたことの懸念及び「敵性利用」の脅威が指摘され, 民生/安保を横断する課題として世界的に関心が高まっている.これを背景として, 日米政府間では1996年以来「GPS協議」が着手され, 最近2001年2月の「日米GPS全体会合」に至る種々の会合がもたれてきた.本論文ではこれら経緯を概観するとともに, 日本の航法衛星問題対処において縦割り性及び民生/安保の断絶が見られること, 航法衛星の有用性のゆえに起源の軍用・非軍用を問わず敵性利用がありうること, 国際的には敵性利用への対策が利用国の責任である等民生/安保の不可分性が認識されていることを述べ, 日本のGNSS研究開発にかかわる諸兄姉が, 航法衛星問題の民生/安保を横断する広範性を理解され, 敵性利用等の安保面を含む課題への関心を認識されることが望まれる旨を提言する.
著者
田中 大輔 大鐘 武雄 小川 恭孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.82, no.11, pp.2133-2141, 1999-11-25
被引用文献数
39

同一チャネル干渉除去技術として基地局にアダプティブアレーを用いたSDMA方式を検討した.SDMA方式においては,所要の誤り率特性を得られない場合も起こりうるので,チャネルの割当可否を事前に,かつ容易に判断する手法が必要となる.ユーザからの信号が特定の到来方向を有する場合には,アレーの応答ベクトルによって与えられる空間相関を用いる手法が考えられる.本論文では,2ユーザ及び3ユーザにおけるチャネル割当基準を検討した.このとき空間相関値はそれぞれ一つまたは三つ与えられるが,2ユーザの場合は各ユーザの平均SNRと相関値が割当基準となり,3ユーザの場合は各ユーザの平均SNRと三つの相関値の積と2乗和の関係が割当基準となることが明らかとなった.また,3ユーザの場合に孤立セルにおいて呼損率特性を評価した結果,SDMAを用いない場合と比較して収容トラヒックはおよそ3.5倍まで上昇することが明らかとなった.
著者
浅田 峯夫 岡田 敏美
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.89, no.7, pp.1318-1324, 2006-07-01

山岳遭難者の探索システムとして,登山者が携帯する400MHz帯小型発信器(ビーコン)から発信される電波を利用して捜索する方法が提案されている.そこで,遭難時を想定してビーコンを大地付近に設置あるいは積雪中に埋設した場合の伝搬距離と電波の減衰の関係について理論的な検討及び実証実験を行った.その結果,無雪時において400MHz帯ビーコンを地上高約1.7λあるいは0.4λ付近に設置した場合は,大地反射の影響によって電界強度は12dB/octで減衰し,一方,やや湿った均質な積雪中にビーコンを埋設した場合は約16dB/octで減衰することを実証し,更に,雪の誘電率,ビーコンの埋設深さなどによって周期的に変動することを見出した.