著者
岸本 久太郎 中山 真義 八木 雅史 小野崎 隆 大久保 直美
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.175-181, 2011 (Released:2011-04-22)
参考文献数
16
被引用文献数
10 22

現在栽培されている多くのカーネーション(Dianthus caryophyllus L.)品種では,芳香性が低下傾向にある.強い芳香や特徴的な芳香をもつ Dianthus 野生種は,非芳香性品種に香りを導入するための有望な遺伝資源であると考えられる.我々は,花き研究所に遺伝資源として保持されている Dianthus 野生種の中から,芳香性の 10 種と,それらとの比較のためにほぼ無香の 1 種を選び,嗅覚的評価に基づいて 4 つにグループ分けした.GC-MS を用いた解析の結果,Dianthus 野生種の花の香りは,主に芳香族化合物,テルペノイド,脂肪酸誘導体に属する 18 種類の化合物によって構成されていた.最も強い芳香をもつグループ 1 の甘い薬品臭は,芳香族化合物のサリチル酸メチルに由来した.グループ 2 の柑橘様の香りは,テルペノイドの β-オシメンや β-カリオフィレンに由来した.グループ 3 の青臭さは,脂肪酸誘導体の (Z)-3-ヘキセニルアセテートに由来した.ほぼ無香のグループ 4 では,香気成分がほとんど検出されなかった.これらの花における放出香気成分の組成と内生的な香気成分の組成は異なっており,蒸気圧が高く沸点の低い香気成分が効率的に放出される傾向が認められた.また,グループ 1 の D. hungaricus の主要な芳香族化合物は花弁の縁に分布し,グループ 2 の D. superbus の主要なテルペノイドやグループ 3 の D. sp. 2 の主要な脂肪酸誘導体は,花弁の基部や雄ずい・雌ずいに分布した.この結果は芳香性に寄与する花器官が,Dianthus 種によって異なることを示している.本研究において,嗅覚的に良い香りで,芳香性に対する寄与が大きいサリチル酸メチルや β-オシメンや β-カリオフィレンを豊富にもつグループ 1 やグループ 2 の Dianthus 野生種が,カーネーションの芳香性育種に重要な遺伝資源であることが示唆された.
著者
清野 義人 中谷 明光 西川 恒夫 吉田 長作 末松 章雄 東村 一東 伴 義之
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.304-311, 2008 (Released:2008-08-06)
参考文献数
8
被引用文献数
5 5

ラベンダーオイルの品種特性の評価手法を開発するために,ラベンダーおよびラバンジンオイル中の香気成分の解析を行った.材料は茨城県つくば市で栽培した Lavandula angustifolia 9 品種,lavandin(L. angustifolia × L. latifolia)6 品種,北海道北広島市および長崎県雲仙市で栽培した lavandin 3 品種を用いた.開花直前のがくのエーテル抽出物を質量分析検出器付ガスクロマトグラフィー(GC-MS)で分析した.得られた香気成分定量結果から,ラベンダーオイルの特徴的な香気成分であるリナロールとその誘導体である酢酸リナリル,ラバンデュロールとその誘導体である酢酸ラバンデュリルおよびボルネオールと,ラバンディンオイルの特徴的な香気成分である誘導体のカンファーの含有比を算出した.同じ栽培地では採取日により含有比に経時変化が認められたが,品種間の含有比における相対的位置関係には変動がなかった.栽培地や栽培年を変えた場合,同じ品種の含有比に差がみられるが,品種間の含有比における相対的位置関係に変動はなかった.このことから,がくの発育ステージを揃えて同栽培地で同日採取することにより,含有比によるラベンダー品種特性の評価が可能であると考えられた.
著者
立澤 文見 土岐 健次郎 大谷 祐子 加藤 一幾 斎藤 規夫 本多 利雄 三位 正洋
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.259-266, 2014 (Released:2014-07-31)
参考文献数
14
被引用文献数
6 7

2 種類の主要アントシアニン(色素 1 と 2)が青色花弁のネモフィラ(Nemophila menziesii ‘Insignis blue’)およびその変異系統の紫色花弁から検出された.これら 2 種類のアントシアニンを青色花弁から単離し,化学およびスペクトル分析による構造解析を行った結果,ペチュニジン 3-O-[6-O-(シス-p- クマロイル)-β- グルコピラノシド]-5-O-[6-O-(マロニル)-β- グルコピラノシド](色素 1)とペチュニジン 3-O-[6-O-(トランス-p- クマロイル)-β- グルコピラノシド]-5-O-[6-O-(マロニル)-β- グルコピラノシド](色素 2)であり,色素 1 は新規化合物であった.さらに,2 種類の主要フラボノール配糖体(色素 3 と 5)と 2 種類の主要フラボン配糖体(色素 4 と 6)も青色花弁から単離され,ケンフェロール 3-(6- ラムノシル)- グルコシド-7- グルコシド(色素 3),アピゲニン 7,4′- ジグルコシド(色素 4),ケンフェロール3-(2,6- ジラムノシル)- グルコシド(色素 5),そしてアピゲニン 7- グルコシド-4′-(6- マロニル)- グルコシド(色素 6)と同定された.これら 4 種類のフラボノイドの内,色素 4 と 6 は紫色花弁からは検出されなかったことから,これらの違いにより花色が異なることが示唆された.
著者
吉田 裕一 本村 翔
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.26-31, 2011 (Released:2011-01-21)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

イチゴ高設栽培の普及にともなって,ポット育苗からトレイ育苗への転換が進んでいる.空中採苗したランナー子株をトレイに挿し苗することによって,省力的な促成栽培用イチゴ苗の育苗が可能であるが,トレイで育苗した苗はポット苗と比較して開花が遅れる株の割合が高くなることが多い.挿し苗育苗した苗はクラウンが深く埋もれることが多いことから,クラウンの深さ,挿し苗時期と苗の大きさがイチゴ‘女峰’の開花に及ぼす影響について検討した.その結果,培地から露出したクラウンより深く埋もれたクラウンの茎頂分裂組織付近の温度が高く,花芽分化が遅れることが明らかになった.また,小さなランナー子株を遅い時期に挿し苗した場合には,特に開花が不揃いになりやすいが,クラウン周辺の培地を取り除いて露出させることによって茎頂分裂組織付近の温度が低下し,開花が早く斉一になった.以上のように,深く埋没したイチゴのクラウン周辺の培地を取り除いて露出させることにより,花芽分化が安定したイチゴのトレイ苗を効率的に生産できることが明らかになった.
著者
山田 明日香 谷川 孝弘 巣山 拓郎 松野 孝敏 國武 利浩
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.296-303, 2008
被引用文献数
5

トルコギキョウの初秋出し栽培における切り花品質の向上を目的として,4 種類の赤色光(R; 660 ± 30 nm):遠赤色光(FR; 730 ± 30 nm)比の高い光源を用いた長日処理について検討した.赤色蛍光灯,カラー蛍光灯(R-type),電球型赤色蛍光灯および電球型昼光色蛍光灯の R:FR 比はそれぞれ 62.0,100.0,8.8 および 8.5 であった.'ダブルピンク'の苗を 7 月 11 日に定植し,定植直後から発蕾まで上記の光源を用いて暗期中断を行った.その結果,平均発蕾日は無処理の 8 月 11 日と比較して光源の種類により 2~5 日間遅れた.いずれの光源を用いた暗期中断も,無処理と比較して開花時の主茎の節数,側枝数および花蕾数が増加し,切り花長が長くなった.カラー蛍光灯(R-type)および電球型赤色蛍光灯を用い,トルコギキョウの 3 品種に対して暗期中断を行った.'キングオブスノー'の暗期中断区での平均開花日は無処理と同じであったが,'ダブルピンク'および'ピッコローサスノー'の平均開花日は,カラー蛍光灯(R-type)または電球型赤色蛍光灯で無処理よりも 3~6 日間遅れた.さらに,これらの光源により 3 品種とも無処理と比較して主茎の節数が増加し,茎長および切り花長が長くなった.'ダブルピンク'を供試し,実用上最も使用しやすい電球型赤色蛍光灯を用いた長日処理を日の出前 6 時間,日没後 6 時間,暗期中断 6 時間および終夜電照で行い,併せて無処理区を設けた.平均発蕾日と平均開花日は,すべての処理の中で終夜電照により最も遅れた.しかし切り花長は,日の出前電照により他の処理よりも長くなった.以上の結果から,定植直後から主茎の発蕾まで,電球型赤色蛍光灯を用いた午前 0:00 から明け方 6:00 までの長日処理により,初秋期出し栽培での切り花品質を向上させることができる.<br>
著者
Motoyuki Ishimori Saneyuki Kawabata
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.172-180, 2014 (Released:2014-04-29)
参考文献数
48
被引用文献数
2 5

MADS-box 遺伝子ファミリーは植物において最も大きい転写因子遺伝子ファミリーのひとつであり,様々な発達段階で必要である.花の発達に関する多くの研究が,特に MIKCc-type MADS-box 遺伝子が正常な花器官の発達に必須であることを示している.私たちはトルコギキョウの花で発現している MIKCc-type MADS-box 遺伝子を同定し,それらの特徴を調べた.計 23 遺伝子が同定され,10 の系統に分けられた.それらは保存された特異的モチーフにより特徴づけられていた.系統樹解析により,AG/PLE,AP3/DEF,PI/GLO,SEP クレードにおける多様化と最近の遺伝子重複の発生が示唆された.花器官特異的な発現パターンは,AP3/DEF と SEP 系統に属する遺伝子内では部分的に多様化している一方で,AG/PLE と PI/GLO 系統の遺伝子の発現パターンは保存されていることが明らかとなった.これらの結果はトルコギキョウの花器官のアイデンティティの規定には,保存的な発現と多様化した発現を有する遺伝子の両方が寄与していることを示唆した.
著者
太田 智 遠藤 朋子 島田 武彦 藤井 浩 清水 徳朗 國賀 武 吉岡 照高 根角 博久 吉田 俊雄 大村 三男
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.295-307, 2011
被引用文献数
9

カンキツトリステザウイルス(CTV)は,カンキツに重大な被害を引き起こす重要病害の一つである.カンキツ属との交雑が可能であるカラタチ[<i>Poncirus trifoliata</i>(L.)Raf.]は,広範な CTV の系統に対して抵抗性を示す.これまでに,カラタチの CTV 抵抗性をカンキツ属に導入するために育種計画が実行され,中間母本が育成されたことで,経済品種の作出に道が開かれてきた.本研究では,マーカー選抜により効率的に CTV 抵抗性をカンキツ属に導入できるように,CTV 抵抗性に連鎖した 4 つの DNA 選抜マーカーおよび各連鎖群上のカラタチの対立遺伝子を識別する 46 のマーカーを開発した.CTV 抵抗性連鎖マーカー 4 つのうち,1 つは共優性マーカーである Single Nucleotide Polymorphism マーカーで,3 つは優性マーカーの Sequence Tagged Site マーカーであった.これら全てのマーカーで,2.8%の例外を除き,後代における CTV 抵抗性・感受性とマーカーの有無とが一致した.さらに,これらのマーカーは高度にカラタチ特異的であり,検定したカンキツ属 35 の全品種・系統に対して適応可能であった.カラタチ由来の対立遺伝子を排除するための判別マーカーでは,46 のうち 9 マーカーが CTV 抵抗性の座乗する第 2 連鎖群に位置した.また,他の 31 マーカーを残りの 8 連鎖群におくことができた.これらのマーカーは,カンキツ属 35 品種・系統のうち少なくとも 1 つ以上の品種・系統に対し,カラタチ由来の対立遺伝子を識別することができた.本研究で開発されたプライマーセットは,戻し交雑により CTV 抵抗性を様々なカンキツ属系統に導入するためのマーカー選抜に利用可能と考えられた.<br>
著者
小枝 壮太 佐藤 恒亮 富 研一 田中 義行 滝澤 理仁 細川 宗孝 土井 元章 中崎 鉄也 北島 宣
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.244-251, 2014
被引用文献数
19

カリブ海在来のトウガラシ'No.80'は果実の持つ非辛味性および強い芳香性の観点から,果菜類としての非辛味芳香性トウガラシ品種の育種において有望な素材である.本研究では'No.80'の非辛味性,揮発性香り成分および品種の来歴を,同様に非辛味性であるが芳香性の弱いブラジル在来の'No.2'との比較のもと解析した.両品種において <i>acyltransferase</i>(<i>Pun1</i>)の発現およびタンパク質の推定アミノ酸配列は辛味品種'Habanero'と比較して異常が認められなかった.一方,'No.80'および'No.2'の <i>putative aminotransferase</i>(<i>p-AMT</i>)コード領域には,それぞれフレームシフト変異を引き起こす 7 塩基および 8 塩基の挿入が認められた.'Habanero'と'No.80'あるいは'No.2'との交雑後代 F<sub>1</sub> および F<sub>2</sub> における非辛味性と塩基配列の挿入が連鎖したことから,両品種の非辛味性は独立して生じた <i>p-AMT</i> の変異に起因すると考えられた.さらに,両品種の分子系統解析を行ったところ,ブラジル在来の'No.2'と遺伝的に非常に近縁な関係にある'No.80'は,南米大陸に起源を持ち,カリブ海に持ち込まれたことが示唆された.芳香性の強い'No.80',芳香性の弱い'No.2'およびその交雑後代 F<sub>1</sub> の果実における揮発性香り成分を同定・定量した.'No.80'は芳香性に寄与する成分を'No.2'と比較して多量に発散していた.さらに,交雑後代 F<sub>1</sub> は揮発性香り成分の多くを中間あるいは両親以上に発散していた.以上の結果を踏まえて,本研究では多様な非辛味芳香性トウガラシ品種の育種に向けた今後の可能性について考察した.
著者
本杉 日野 山本 恭久 鳴尾 高純 山口 大介
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.271-278, 2007 (Released:2007-10-19)
参考文献数
30
被引用文献数
9

コルヒチン処理により作出したブドウ台木 ‘Riparia Gloire de Montpellier’(‘Gloire’, Vitis riparia Michx)および ‘Couderc 3309’(‘3309’, V. riparia × V. rupestris)の四倍体に接ぎ木した‘巨峰’(V. × labruscana Bailey × V. vinifera L.)ブドウ樹の成長と果実品質について,もとの二倍体台木に接ぎ木した‘巨峰’と比較した.組織培養により育成した台木と‘巨峰’を試験管内で接ぎ木し,発根させた.接ぎ木後の発根期間と順化期間において四倍体台木に接ぎ木した‘巨峰’は二倍体台木のものと比べ新梢長および節間長が短かかった.ポット育苗期において,四倍体台木における成長はもとの二倍体台木より弱くなる傾向が認められた.圃場定植後においても,四倍体台木に接ぎ木した‘巨峰’における主梢摘心後の副梢成長量,幹断面積および剪定枝重は二倍体台木と比べて小さくなった.四倍体台木に接ぎ木した‘巨峰’樹の果実は二倍体台木に比べ濃い着色を示した.
著者
尾森 仁美 細川 宗孝 芝 勇人 漆川 直希 村井 耕二 矢澤 進
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.350-355, 2009
被引用文献数
21

キク(<i>Dendranthema grandiflorum</i>)に感染するウイロイドとしてキクわい化ウイロイド(CSVd)が知られている.CSVd がキクに感染するとわい化などの症状がみられ,切花栽培において大きな問題となる.しかし,これまでに CSVd に強度の抵抗性を持つキクに関する報告はない.本研究では CSVd 濃度を定量し,キク 6 品種から CSVd の濃度上昇が緩慢な品種として'うたげ'を選抜した.次に,'うたげ'を自殖し,得られた後代 67 個体より RT-PCR 法,nested-PCR 法,micro-tissue(MT)direct RT-PCR 法および real-time RT-PCR 法を用いて CSVd 抵抗性を持つ植物体の探索を行った.67 個体のうち,RT-PCR 法で明確なバンドがみられない 9 個体を一次選抜した.この 9 個体のうち,接ぎ木後 5 か月目においても CSVd 濃度が'うたげ'の約 1/240,1/41000,1/125000 倍である 3 個体(C7,A30 および A27)を強い抵抗性を持つ植物体として選抜した.C7 では MT direct RT-PCR 法および <i>in situ</i> ハイブリダイゼーションにより最も若い完全展開葉において CSVd の局在がみられた.A27 および A30 では,植物体全体で CSVd はほとんど検出されなかった.これら 3 個体は CSVd 抵抗性機構の解明に寄与するものと考えられた.<br>
著者
サルカー シャハナッツ 切岩 和 遠藤 昌伸 小林 智也 糠谷 明
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.143-149, 2008
被引用文献数
4

本実験では,培養液施用システム(点滴および底面給液)と培養液組成(修正園試処方および静大処方,EC 4 dS·m<sup>−1</sup> に調整)の組合せが高糖度トマトの生育,収量等に及ぼす影響を調査するために,2005 年 9 月から 2006 年 2 月に所定のシステムにて栽培を行った.生育,収量および果実サイズは,培養液組成にかかわらず底面給液システムで減少した.一方,可溶性固形物含量は,点滴給液より底面給液システムで,修正園試処方より静大処方でそれぞれ高かった.吸水量は,点滴給液に比較して底面給液で抑制された.培地のマトリックポテンシャルは,点滴給液より底面給液で高かった.培地溶液の EC は,点滴給液より底面給液で,また修正園試処方より静大処方で高かった.組み合わせ区では,底面給液×静大処方区で 29.6 dS·m<sup>−1</sup> ともっとも高く,点滴給液×修正園試処方区で 16.1 dS·m<sup>−1</sup> と最も低かった.葉中プロリン濃度は,11 月 7 日,12 月 2 日ともに培養液組成にかかわらず,点滴給液より底面給液において高かった.これらの結果から,底面給液における生育,収量の低下は,水ストレスではなく,主として塩類ストレスに起因するものと思われた.<br>
著者
森谷 茂樹 岩波 宏 古藤田 信博 髙橋 佐栄 山本 俊哉 阿部 和幸
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.279-287, 2009-07-01
被引用文献数
1 29

カラムナータイプリンゴの育種を進展させるため,ゲノム上の <i>Co</i> 周辺領域について連鎖地図を構築し,実際の育種においてカラムナータイプの実生を正確かつ効果的に選抜できる DNA マーカーを同定した.3つのマッピング集団においてリンゴ第10連鎖群の連鎖地図を構築し,2つの集団,'ふじ' × 8H-9-45 と'ふじ' × 5-12786 において <i>Co</i> がマッピングされた.<i>Co</i> 近傍にマップされた DNA マーカーである SCAR<sub>682</sub>,SCAR<sub>216</sub>,CH03d11,Hi01a03 について,カラムナータイプの33品種・系統と,カラムナータイプではない日本のリンゴ育種における7つの祖先品種のマーカー遺伝子型を決定した.Hi01a03 の 174 bp の増幅断片は全てのカラムナータイプ品種・系統および'旭'で検出されたが,その他の祖先品種では検出されなかった.SCAR<sub>682</sub> の 682 bp,CH03d11 の 177 bp の増幅断片は1系統を除く全てのカラムナータイプ品種・系統および'旭'において検出されたが,その他の祖先品種群では検出されなかった.また,18 交雑組合せから得られたカラムナータイプ個体全 170 個体において,<i>Co</i> 近傍にマップされたマーカーを検出した結果,SSR マーカー CH03d11 の 177 bp のアリルが全ての個体で検出されたことから,CH03d11 が <i>Co</i> と最も近接するマーカーと考えられた.これらの結果より,CH03d11 がマーカー選抜においてカラムナータイプとカラムナータイプでない個体を区別する最も信頼できるマーカーであると考えられた.5-12786 などの,果樹研究所における現在最も改良の進んだ 2 つのカラムナータイプ選抜系統は,いずれもカラムナー性の起源品種'Wijcik'に由来する CH03d11 の 177 bp と Hi01a03 の 174 bp(<i>Co</i> 連鎖アリル)を保持していることから,育種プログラムにおいてこれらの系統をカラムナータイプの交雑親として用いる際は,CH03d11 と Hi01a03 によってカラムナータイプ個体を効率的に選抜することが可能となる.<br>
著者
Sayumi Matsuda Mitsuru Sato Sho Ohno Soo-Jung Yang Motoaki Doi Munetaka Hosokawa
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
pp.MI-009, (Released:2014-09-20)
被引用文献数
3 15

For determination of the endogenous and exogenous causes of somaclonal variation in in vitro culture, a bioassay system was developed using the variegated Saintpaulia (African violet) ‘Thamires’ (Saintpaulia sp.), having pink petals with blue splotches caused by transposon VGs1 (Variation Generator of Saintpaulia 1) deletion in the promoter region of flavonoid 3',5'-hydroxylase. Not only true-to-type but also many solid blue and chimeric plants regenerate in vitro-cultured explants of this cultivar. Using multiplex PCR that enables the determination of these variations, we attempted to evaluate the effects of four candidate triggers of mutation: pre-existing mutated cells, shooting conditions in vitro or ex vitro, cutting treatment of explants, and addition of plant growth regulators (PGRs) to the medium. The percentages of somaclonal variations among total shoots regenerated from leaf segments and stamens were 46.6 and 56.5, which were higher than the percentages expected from pre-existing mutated cells (3.6 and 1.4, respectively). These results indicate that pre-existing mutated cells are not a main cause of somaclonal variations. The percentage of somaclonal variation was independent of culture conditions for mother plants; the mutation percentages of adventitious shoots regenerated from ex vitro- and in vitro-grown leaves were 9.2% and 8.5%, respectively. In addition, the percentage of somaclonal variations of adventitious shoots regenerated under in vitro conditions from the in vitro grown mother plants was also low, at 4.9%. This indicates that the in vitro condition itself is not a main cause of somaclonal variation. However, when adventitious shoots were regenerated from 10 × 5-mm cut-leaf laminas on a PGR-free medium, the percentage of somaclonal variation was 26.4%. In addition, the percentage of somaclonal variations dramatically increased when PGRs were added to the medium for both leaves and leaf segments (39.9 and 46.6, respectively). The bioassay system using Saintpaulia ‘Thamires’ will enable the screening of many environmental factors because of its rapidity and ease of use and will facilitate the development of a new tissue culture technology for avoiding mutation.
著者
Yasushi Kawasaki Satoshi Matsuo Yoshinori Kanayama Koki Kanahama
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
pp.MI-001, (Released:2014-09-03)
被引用文献数
4 27

Low-cost heating is needed to reduce chilling injuries, heating costs, and CO2 emission during greenhouse tomato production. To acquire information about the physiological and morphological effects of root-zone heating, an economical option at low air temperatures, we grew tomato plants on a nutrient film technique hydroponic system in a heated nutrient solution. We investigated the effects of short-term root-zone heating after transplanting and long-term heating until harvest. We measured short-term plant growth, nutrient uptake, root activity (xylem exudation and root respiration rates), root indole-3-acetic acid (IAA) concentration, internal root structure, and long-term fruit weight and dry matter distribution. The minimum root-zone temperature was maintained at 16.6°C, while the minimum air temperature (5.9°C) and the minimum root-zone temperature in the control (5.8°C) were lower than optimal. After 7 days of root-zone heating, root dry weight and relative growth rate increased compared with those of the control, accompanied by increased mineral nutrient uptake and xylem exudation. These changes may explain the increased shoot growth after 21 days of heating. In roots, development of the epidermis and stele, including the xylem, was promoted by heating, in contrast to previous research on root-zone cooling at high air temperature, which promoted xylem-specific development. Although the proportion of dry matter distributed to the fruit was not changed by root-zone heating, individual fruit size and total yield were higher than in the control due to a higher total dry weight in the heating treatment. Our results suggest that root-zone heating is an effective low-cost heating technology at low air temperature because of its effects on root activity, growth, and fruit yield, but that the mechanisms may differ from those in root-zone cooling at high air temperature.
著者
Satoru Murakami Yoshinori Ikoma Masamichi Yano
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
pp.CH-104, (Released:2014-09-02)
被引用文献数
2 11

Premature softening during low-temperature storage is a major issue in the red kiwifruit (Actinidia chinensis Planch.) cultivar ‘Rainbow Red’. The objective of this study was to investigate the effect of low temperature on ethylene sensitivity in this cultivar. We demonstrate how ethylene preconditioning at 4°C and 25°C interacted with more rapidly ripening at the lower temperature in ‘Rainbow Red’ kiwifruit. The expression of ripening-related genes ACS1, ACO3, EIL4, ERF14, and PGB was at the basal level during ethylene preconditioning at 4°C and 25°C, and rapidly increased with ethylene treatment following ripening. These results suggest that low-temperature storage enhances ethylene sensitivity in ‘Rainbow Red’.
著者
Kana Nikaido Tatsuru Jishi Tomoo Maeda Takashi Suzuki Hajime Araki
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
pp.CH-113, (Released:2014-09-02)
被引用文献数
7

Asparagus has a short shelf life. A temperature of 0–2°C with a relative humidity of 95–100% is well known as the ideal storage environment for asparagus spears. The quality of spears stored in a snow vault and snow mount (Snow) was compared with those stored in an electric refrigerator (Refrigerator). Asparagus spears of ‘Grande’ and ‘Gijnlim’ were stored in Snow and Refrigerator for 0, 2, 5, 10, and 20 days; then, 1) physical and external appearance characteristics such as hardness, weight, and surface color, and 2) features of internal quality such as Brix, sugar, ascorbic acid, and rutin content in the spears were investigated. Although temperature and relative humidity fluctuated largely in the ranges of 3–6°C and 65–85% in Refrigerator, those in Snow were almost completely stable at 0–1°C and 100%. In ‘Grande’, the weight of the spears stored in Refrigerator decreased dramatically compared with that of spears stored in Snow. The external appearance of ‘Gijnlim’ spears was preserved until the 10th day, but loose tips were observed on the spears in both Snow and Refrigerator on the 20th day. ‘Grande’ spears stored in Refrigerator turned slightly brown and wilted at the surface of the basal part compared with Snow-stored spears. No loose tips were observed on ‘Grande’ spears. There was also no significant difference in the internal quality of spears between those stored in Snow and Refrigerator, in both varieties. CO2 emissions in snow storage were reduced to half of those in refrigerator storage in LCA analysis and no CO2 emissions were identified during the storage period in Snow. From the perspectives of energy utilization and quality preservation, snow appears to be one of the better alternatives for spear preservation than use of a refrigerator.
著者
Yukio Ozaki Yoko Takeuchi Miyuki Iwato Satomi Sakazono Hiroshi Okubo
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
pp.CH-073, (Released:2014-07-18)
被引用文献数
1 4

The origin of a spontaneous triploid asparagus plant from crosses of 2x × 2x was investigated by SSR and flow cytometric analyses. One hundred and twenty-four progeny were obtained from crosses between a diploid female ‘Gold Schatz’ and a diploid male ‘Hokkai 100’. SSR analysis proved that two and one genes were transmitted from the maternal and paternal parents, respectively, at each SSR locus of one progeny, 07M-61, whereas one gene each was from the female and male parents in the other diploid progeny. Triploidy of 07M-61 was confirmed by flow cytometric analysis. It was suggested that the triploid plant was derived from fertilization between an unreduced egg and reduced sperm nuclei, given its SSR genotypes. It was also suggested that the unreduced maternal gamete was derived from first division restitution (FDR) or second division restitution (SDR) with chiasma occurrence during meiosis. There were no noticeable morphological differences between the triploid and diploid progeny.
著者
Yuichi Yoshida Nobuyuki Irie Tran Duy Vinh Mitsuo Ooyama Yoshiyuki Tanaka Ken-ichiro Yasuba Tanjuro Goto
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
pp.CH-107, (Released:2014-07-04)
被引用文献数
2 14

To understand the factors affecting the incidence of blossom-end rot (BER), the effect of the Ca/K ratio (4/12–12/4, in me·L–1) in nutrient solutions and Ca concentration in fractions in the distal part of young tomato fruits immediately before BER symptoms appear were investigated for three seasons. The rate of BER incidence increased with a decrease in the Ca/K ratio in the supplied solutions in the summer and spring, but little difference was observed in the winter. Ca concentration was highest in winter and lowest in summer, and the concentration in fractions decreased with a decrease in the Ca/K ratio of the solutions. When the results of all three experiments were pooled, among the fractions, water-soluble Ca concentration was found to have the highest significance in the relationship to BER incidence. The risk of BER incidence in rapidly growing tomato increased to a critical level when water-soluble Ca in the distal part of the fresh fruit decreased to less than 0.20 μmol·g–1 FW. Multiple-regression analysis revealed that the concentration of water-soluble Ca, which is predominantly recovering apoplastic or cytoplasmic Ca2+, and total Ca, which has been translocated during fruit development, are significantly affected by solar radiation and Ca concentration in the supplied solution rather than air temperature.
著者
Sota Koeda Kosuke Sato Kenichi Tomi Yoshiyuki Tanaka Rihito Takisawa Munetaka Hosokawa Motoaki Doi Tetsuya Nakazaki Akira Kitajima
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
pp.CH-105, (Released:2014-05-10)
被引用文献数
3 19

‘No.80’ (Capsicum chinense) from the Caribbean is a valuable genetic source from the aspect of its non-pungent and highly aromatic traits. In the present study, the non-pungency, volatile components, and phylogenetic origin of ‘No.80’ were analyzed with another C. chinense cultivar, ‘No.2’ from Brazil, which is also non-pungent but less aromatic. Expressions and deduced amino acid sequences of acyltransferase (Pun1) of ‘No.80’ and ‘No.2’ were normal compared with a pungent cultivar, ‘Habanero’. Insertions of 7-bp and 8-bp resulting in frameshift mutations were found in the coding regions of putative aminotransferase (p-AMT) of ‘No.80’ and ‘No.2’, respectively. Co-segregation of these insertions with the non-pungent phenotypes in F1 and F2 populations obtained from crossing ‘No.80’ or ‘No.2’ with ‘Habanero’ suggested that non-pungency in these cultivars arose from genetic mutations of p-AMT that occurred independently. Moreover, molecular phylogenetic analysis suggested that ‘No.80’, a close relative of ‘No.2’, originates from capsicums migrated from the South American mainland. In addition to pungency, we assessed the volatile components of the highly aromatic ‘No.80’, the less aromatic ‘No.2’, and their F1 hybrid using gas chromatography. ‘No.80’ contained higher levels of aroma-contributing volatiles than ‘No.2’, which correlated with the stronger and weaker aromas of two cultivars. Further, the fruit of F1 progenies emitted a number of volatile compounds between or higher than their corresponding parents. Based on these results, the approaches for breeding highly aromatic non-pungent cultivars are discussed.
著者
Tadahisa Higashide Akimasa Nakano Ken-ichiro Yasuba
出版者
園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
pp.CH-048, (Released:2014-05-09)
被引用文献数
2 19

To improve the yield of a Japanese tomato (Solanum lycopersicum) cultivar and determine how fruit yield changes as a result of grafting, we investigated the effects of a Dutch rootstock [‘Maxifort’ (S. lycopersicum × S. habrochaites): Mx] on the dry matter (DM) production and fruit yield of Dutch and Japanese cultivars. The Japanese cultivar (‘Momotaro York’: My) grafted onto Mx (My/Mx: scion/rootstock) had significantly higher fresh and dry weights of fruits per unit area than My/My. Fruit fresh weight yield per unit area was highly correlated with fruit dry weight (DW) yield (r = 0.96–0.97, P < 0.001), and DW yield was significantly correlated with total aboveground DM (r = 0.71–0.96, P < 0.001) and with DM allocation to the fruits (r = 0.52–0.75, P < 0.01). Total aboveground DM (TDM) was significantly and highly correlated with light-use efficiency (r = 0.98, P < 0.001). However, there was no significant correlation between light-use efficiency and the maximum photosynthetic rate, stomatal conductance, or the light-extinction coefficient. Although stomatal conductance significantly (P < 0.05) differed between the rootstocks at 57 and 119 days after transplanting (DAT), there was no significant difference in the maximum photosynthetic rate between the scion/rootstock combinations at 57 and 119 DAT. These results indicated that the fruit yield of My could be improved by grafting onto Mx, and that the increases in yield and TDM were mainly determined by the increase in light-use efficiency.