著者
佐藤 修彰 桐島 陽 秋山 大輔
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.591-603, 2018-12-15 (Released:2018-12-15)
参考文献数
21
被引用文献数
1

2011年3月に発生した東京電力福島第一発電所事故に関して,燃料デブリの性状評価や含まれている核燃料物質や核分裂生成物,マイナーアクチノイドの炉内への移行挙動評価,環境中の汚染状況評価とデブリを含む廃棄物の処理・処分についての研究例を紹介した。さらに,当該研究の核燃料サイクルのおける位置づけと,研究展開に必要な核燃及びRI使用施設の在り方についても述べた。
著者
亀山 義郎
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.36, no.10, pp.542-551, 1987-10-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
43
被引用文献数
2 4 4
著者
田上 恵子 内田 滋夫
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.71-78, 2006-02-15 (Released:2011-03-01)
参考文献数
10
被引用文献数
6 11

日本全国から採取した農耕地土壌82試料 (水田土壌37, 畑土壌45) のウラン (U) 及びトリウム (Th) の定量をICP-MSで行った結果, 水田土壌中のU及びTh濃度の幾何平均値はそれぞれ2.75mg kg-1及び5.56mg kg-1, 畑土壌中ではそれぞれ2.43mg kg-1及び5.17mg kg-1と, これまでの測定値の範囲内の濃度であり, かつ水田土壌と畑土壌間では有意差はなかった。更にU/Th比を計算すると, 水田土壌で0.53, 畑土壌で0.49となり, 日本の地殻 (0.28) , 非農耕地土壌 (0.23) や河川堆積物 (0.20) に比べて有意に高いことがわかった。主に農耕地土壌に施肥されるリン鉱石を原料とするリン酸肥料に含まれるUが全U濃度上昇に影響していると考えられた。そこでその寄与分を施肥が行われていない非農耕地土壌のU/Th比を用いて算出したところ, 現在の日本の水田土壌中のUは平均50% (4~78%) が, 畑土壌では平均48% (4~74%) となり, 日本の農耕地の半分は施肥により人為的に添加されたUであることが推定された。
著者
河野 孝央 安藤 佳明 泉 雄一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.621-630, 2015-10-15 (Released:2015-10-29)
参考文献数
17
被引用文献数
2 1

天然の40Kを含むインスタントコーヒーで16個のコーヒーブロック線源を製作した。形状と放射線強度に製作差はほとんどなかった。1分間測定で放射線防護の3原則に関する模擬実習を5回繰り返した。全体的には防護の3原則を説明できたが,個々のデータは変動が大きかった。しかし,5分間測定又は5人の1分間測定を平均した計数値では,ばらつきが減少し,放射線防護の3原則を無理なく説明できた。
著者
三宅 定明 日笠 司 浦辺 研一 原口 雅人 大村 外志隆
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.753-757, 2008 (Released:2008-12-29)
参考文献数
28
被引用文献数
1 3

埼玉県内で生産されたキノコの放射能調査を実施した。137Csは全ての試料から検出され,子実体は0.012~2.1Bq/kg生,培地(菌床)は0.080~1.8Bq/kg乾であった。子実体の137Cs濃度はキノコの種類によって異なり,ヒラタケ及びエノキタケが低く,シイタケ及びマイタケが高い傾向がみられ,種類別の平均値でみると30倍以上異なった。また,137Csの濃度比(子実体/培地)は0.11~0.53であり,他の野菜等の移行係数に比べ高い傾向を示した
著者
河野 孝央
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.559-569, 2018-11-15 (Released:2018-11-15)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

減塩しおでは,塩分の過剰摂取を防ぐため,塩の主成分である塩化ナトリウムの30あるいは50 wt%程度が,塩化カリウムに置き換えられている。カリウムには天然の40K(0.0117%)が含まれているため,減塩しおからは放射線が放出される。そこで減塩しおに圧縮成形法を適用して自然放射能線源を製作し,形状や1分間計数を調べるとともに放射線防護の三原則に関する測定試験を行って,線源教材としての実用性を評価した。
著者
小川 雅之 細田 正洋 福士 政広 小柏 進
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.313-320, 2008 (Released:2008-05-29)
参考文献数
17

東京では通勤手段として地下鉄の利用率が高いことから,地下鉄車内の線量率を把握しておくことは保健物理学的に重要である。そこで,都内の地下鉄12路線について空間γ線線量率の測定を行った。その結果,最大値(36.5nGy/h)は最小値(23.3nGy/h)の1.6倍であった。また,車内の線量率は,車外より33%低い値であった。更に,地下鉄線内の線量率は深さに依存せず,地下構造物やホームの構造物中に含まれる天然放射性核種濃度に依存すると考えられた。
著者
谷 幸太郎 栗原 治 小佐古 敏荘
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.461-469, 2014-10-15 (Released:2014-10-29)
参考文献数
34

体内に摂取した放射性ヨウ素の甲状腺への摂取率は,安定ヨウ素剤の投与によって抑制することができる。本論文では,放射性ヨウ素摂取時及び安定ヨウ素剤投与時の体内動態モデルを使用し,日本人を対象とした131Iの急性吸入摂取に対する甲状腺残留率を解析した。安定ヨウ素剤投与時の解析にあたっては,安定ヨウ素を過剰に摂取した場合に一時的に甲状腺ホルモンの合成が阻害されるWolff-Chaikoff効果の影響を新たに考慮した。解析した安定ヨウ素剤投与の有無に対する甲状腺残留率を比較することにより,131I甲状腺摂取率抑制効果を評価した。その結果,抑制効果は2日前の投与で50%,1日前から直前までの投与で80%以上であった。一方,131Iを摂取した後に遅れて安定ヨウ素剤を投与した場合には,抑制効果は急激に減少し,12時間後で20%,1日後で7%未満であった。
著者
鍋師 裕美 堤 智昭 植草 義徳 松田 りえ子 穐山 浩 手島 玲子 蜂須賀 暁子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.45-58, 2016-02-15 (Released:2016-02-15)
参考文献数
19
被引用文献数
10

牛肉,山菜類,果実類,キノコを用いて調理前後の放射性セシウム濃度を測定し,除去効果を検討した結果,調味液へ浸漬してから牛肉を乾燥させた場合や山菜類をあく抜きした場合では,調理前の80%以上の放射性セシウムが除去され,調味液への浸漬やゆで調理,及びこれらの工程後の水さらしが放射性セシウム除去に有効であることが示された。しかし,牛肉及び果実の単純な乾燥,果実類のジャム,焼きシイタケ,山菜類のてんぷらでは,放射性セシウムはほとんど食品から除去されなかった。調理法によっては,放射性セシウムの総量に変化はないものの,水分除去等により濃度が上昇することがあるため注意が必要である。
著者
高田 大輔 佐藤 守 阿部 和博 小林 奈通子 田野井 慶太朗 安永 円理子
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.293-298, 2014-06-15 (Released:2014-06-27)
参考文献数
10
被引用文献数
1 3

事故翌年における果実発育期間中の果実中の放射性セシウム濃度の変化を調査した。放射性セシウム濃度は満開後15日で最も高くその後低下し,50日以降はほぼ一定であった。モモの果実と葉の放射性セシウム濃度と40K濃度の動態には差異が生じた。福島県内の24園地より採取した満開後60日果実と収穫果実の137Cs濃度を比較することで,摘果果実を用いた成熟果の放射性セシウム濃度の予測の可能性について検討した。
著者
後藤 駿一 斎藤 恭一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.15-22, 2016-01-15 (Released:2016-01-22)
参考文献数
9
被引用文献数
3 1

汚染海水から放射性ストロンチウムを除去するのは次の2点から難度が高い。(1) 海水にもともと約8 g/m3溶けている非放射性ストロンチウムに,原発事故で生じた極微量の放射性ストロンチウムが追加されて溶けている。(2) 海水にはストロンチウムと同族のマグネシウム,カルシウムが,それぞれモル濃度で600, 100倍の濃度で溶けている。したがって,放射性ストロンチウムにとっては,非放射性ストロンチウム,マグネシウム,カルシウムが吸着材への競合物質である。本稿では,ストロンチウム除去用の吸着繊維の作製法や性能について解説する。
著者
西連寺 永康
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.275-288, 1960-12-01 (Released:2010-07-21)
参考文献数
36
被引用文献数
2 1 1

1) 106Ru+106Rhの0.48μcをマウス腹腔内に注射し経日的に体内の放射能分布および排泄をしらべた。投与したトレーサー溶液中にはルテニウムのラジオコロイドの生成は認められず, またロ紙電気泳動によって〔RuCl5 (H2O) 〕-2, 〔RuCl4 (H2O) 2〕-1および〔RuCl3 (H2O3) 〕0などのイオン種の存在が推定された。2) 投与後1日目の血液中における106Ruはその約93%が血漿中にあり, ロ紙電気泳動によって蛋白の分画をおこなうと, アルブミン, β-グロブリンおよびγ-グロブリン相当部分にそれぞれ52%, 34%および14%程度の放射能が認められる。3) 噛投与されたルテニウムは臓器全量については実験開始後10日目頃までは血液, 骨, 筋肉, 皮膚など全身における存在量の大きいものおよび肝臓, 腎臓などに多く, 投与量の10数パーセントないしは数パーセント程度である。中期においてもやはり筋肉, 皮膚, 肝臓, 腎臓, 骨などに多くみられ, この傾向は本実験の終了に至るまで同様であった。4) 臓器内への濃縮度は一般に腹部臓器に高い値を示すものが多く, 副腎, 腎臓, 膵臓, 月刊蔵ならびに脾臓などに濃縮が著しい。ことに腎臓は実験: の全期間を通じて高い値を示した。睾丸, 卵巣などの生殖腺も比較的大きい値をとっている。筋肉, 皮膚, 骨などはそれほど高い値を示してはいない。5) ルテニウムの尿および糞中への排泄は, 最初の2週間以内が急激で投与量の約65% (尿; 約50%, 糞; 約15%)が出される。本実験の終了までの総排泄量は投与量の約80% (尿; 約60%, 糞; 約20%) であ窮つねに尿中への排泄が糞中へのものよりも相当大きい割合で約3~4倍程度であった。これは体内からのルテニウム排泄の主要系路が, 腎臓をとおって尿中へ出されるものであることを示す。6) 体内のルテニウムの残存量を算出して, それによりルテニウムの生物学的半減期と106Ruの有効半減期を求め, それぞれ1, 8, 100日および1, 7.6, 78.5日をえた。またそれらの半減期の部分が占める割合はおのおの30%, 45%および251%程度である。そのほかの臓器についても同様の解析をして生物学的半減期と有効半減期を求めてある。このうち腎臓では24日および22.5日, 骨では2日, 150日および2.0日, 106日 (骨中における総量の約28%に当る部分) であった。これらの値はいずれもICRP勧告のものに比べてかなり長い部分を含んでいる。終りに本研究の実施にあたり終始ご指導とこ激励をたまわった日本大学歯学部長鈴木勝教授: に深く感謝申し上げます。また実験に関して種々有益なご助言をいただいた東京大学理学部斉藤信房教授ならびに東京教育大学理学部池田長生助教授, 本稿のこ校閲をたまわった日本大学医学部森信胤教授に厚くお礼申し上げます。本実験にたいしては本研究室の鈴木智哲氏, 大附敏海氏その他の方々のご助力を得た。また要した費用の一部は文部省科学研究費より支出した。記して感謝の意を表する。
著者
杉山 英男
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.669-671, 1998-08-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
14
被引用文献数
1
著者
難波江 靖 辻本 聖也 宮下 直 中島 覚
出版者
Japan Radioisotope Association
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.573-581, 2018-12-15 (Released:2018-12-15)
参考文献数
23

福島第一原子力発電所(FDNPP)からの放射性セシウムの移行経路を同定するため,新潟及び山形県の沖合において海底土を採取し,放射能を測定した。福島第一原子力発電所に由来する134Csは酒田沖及び加茂沖の海底土から検出(0.16±0.03〜0.68±0.02 Bq/kg)されたが,直江津沖の海底土からは検出されなかった。これらの結果より,FDNPP事故由来の放射性セシウムの流出源が直江津の北東地域から阿賀野,最上川を含む酒田までの地域である可能性が示唆された。