著者
永川 栄泰 鈴木 隆司 金城 康人 宮崎 則幸 関口 正之 櫻井 昇 伊瀬 洋昭
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.467-472, 2011 (Released:2011-11-29)
参考文献数
13
被引用文献数
8 10

2011年3月11日の東日本大震災に伴い,福島第一原子力発電所の事故が発生した。この事故後から東京都内(世田谷区深沢)で大気浮遊塵,農畜水産物,浄水の放射能濃度及びγ線の空間線量率のモニタリングを行ってきた。5月31日までの測定結果を基に132Te,131I,132I,134Cs,137Csの5核種による内部被ばく線量及び空間線量率による外部被ばく線量を試算した。その結果,測定開始から1年間の積算線量は425.1μSvとなり,ICRPの定める一般公衆の年間被ばく限度(1mSv)を超えないものと推定された。
著者
斎藤 公明 遠藤 章
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.585-602, 2014-12-15 (Released:2014-12-27)
参考文献数
32
被引用文献数
2 3

環境中における適切な外部被ばく線量評価に必要な基本情報を提供する。まず,環境中に分布する典型的な線源から放出されるγ線の基本的な性質について説明するとともに,この性質を考慮して行われた被ばくシミュレーションにより得られた,広い年齢層に対する線量換算係数をまとめて紹介する。さらに,様々な要因による被ばく線量の変動の様子,また,空間線量率の測定値と被ばく線量の関係についても議論する。
著者
市川 有二郎 中田 利明 井上 智博 行方 真優 本田 恵理 石井 栄勇 飯村 晃 藤村 葉子 内藤 季和 田中 勉 高橋 良彦
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.221-235, 2016-05-15 (Released:2016-05-13)
参考文献数
23

手賀沼を流末とする柏市内の調整池の水中ならびに底泥中における放射性セシウムの分布状況と環境動態を検証した。福島第一原子力発電所事故から約4年が経過した時期の底泥から10 kBq/kg以上の放射性セシウムが検出され,調整池は下流域に対する放射性セシウムの供給源の1つであることが裏付けられた。台風などの豪雨時において,水中放射性セシウムの懸濁態の存在割合が平水時と比較して上昇することから,豪雨は放射性セシウムの下流域への流出に関与していることが示唆された。
著者
河野 孝央
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.123-131, 2015-02-15 (Released:2015-02-27)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

昆布は放射線を放出する天然の40Kを含むため,自然放射線や放射性同位元素を説明するための非常にわかりやすい教材といえる。本研究では18種の乾燥昆布に圧縮成形法を適用して自然放射能線源を製作し,線源材料としての適性を評価した。その結果,線源の形状はどの昆布もほぼ同じだが線源強度には3倍以上の差があった。そこで線源を製作する前にできあがった線源の強度を推定するため,昆布を袋詰めのまま測定する方法を検討した。
著者
小藤 久毅 山本 政儀
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.263-265, 1999-04-15 (Released:2011-03-10)
参考文献数
12
被引用文献数
4 2

Uranium concentrations in some natural mineral waters sold in Japan (domestic 20 and foreign 9) were measured by ICP-MS. The U concentrations were found in a wide range, differing by a factor of 40000, about 0.4-1.6×104ng/l. The values over guidance level (2μg/1) were observed in two domestic samples and one foreign one. Occurrence of such a high U concentration indicates the need of further survey of U concentration of mineral water to consider uranium intake.
著者
長岡 和則 本田 幸一郎 宮野 敬治
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.665-674, 1996-11-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
9
被引用文献数
4 5

現在, 環境γ線モニタリングには各種の測定器が使われている。しかし, 得られた測定結果は必ずしも一致しない。それはそれぞれの測定器の特性の違いが原因となっているが, 中でも宇宙線に対する感度の違いが最も大きく影響していると考えられる。今回, 各種測定器の宇宙線に対するレスポンスを明確にするため, 宇宙線強度の異なる環境場として富士山で高度を変えて, NaI (Tl) シンチレーションスペクトロメータ, ステンレス鋼製加圧型電離箱線量計, 空気等価電離箱線量計, TLD, 蛍光ガラス線量計およびNaI (Tl) シンチレーションサーベイメータの比較測定を行った。3″φ球形のNaI (T1) シンチレーション検出器の3MeV以上の計数率と各測定器の宇宙線寄与線量率との間には明らかな相関が得られた。同計数率を測定することで, 各測定器の測定結果への宇宙線の寄与線量率を推定することが可能と考えられる。同計数率から各測定器の寄与線量率への換算係数 (nGy/h/cpm) は, 空気等価電離箱, 加圧型電離箱, TLD, 蛍光ガラス線量計およびNal (Tl) シンチレーションサーベイメータ (TCS-166およびTCS-121C) では, それぞれ0.33, 0.32, 0.25, 0.24, 0.06および-0.01であった。また, 東京大学宇宙線研究所鋸山施設で測定を行い, 自己照射線量率を評価した。TLDと蛍光ガラス線量計は約6nGy/hの自己照射があり, 環境γ線線量率を測定する際には考慮する必要があると考えられる。これらのデータは, 環境γ線線量測定において, 宇宙線寄与分および自己照射線量の評価に有用であると考えられる。
著者
井上 智博 市川 有二郎 内藤 季和 高橋 良彦
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.481-488, 2014-10-15 (Released:2014-10-29)
参考文献数
9

本調査は,千葉県立柏の葉公園内の野球場の芝地において,線量率と芝・土壌中放射性セシウム濃度の経時変化について解析した。採取した芝と土壌を別々に分離して放射性セシウム濃度を定量した結果,全ての調査期間においてサッチ層(芝の根部周辺に位置する芝の刈りかすや枯れた芝の堆積物)に,その下に位置する土壌よりも放射性セシウムがより多く蓄積していることが確認された。芝の深刈りを地表面から20mm深さで均一に行い,サッチ層を取り除いたことで除染効果が得られた。
著者
松葉 満江 石井 紀明 中原 元和 中村 良一 渡部 輝久 平野 茂樹
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.346-353, 2000-07-15 (Released:2011-03-10)
参考文献数
11
被引用文献数
5 6

誘導結合プラズマ質量分析法を用いて61種の海洋生物中のウラン濃度を定量するとともに沿岸水も分析して被曝線量推定に重要なパラメータである濃縮係数を算定した。海洋動物の軟組織中においてウラン濃度は, 湿重量当たり0.077から5040ng/g生の範囲にあり, 生物種の違いや部位でウラン濃度が大きく異なった。頭足類のエラ心臓には高濃度のウランが含まれていた。特にマダコのエラ心臓が最も高い値を示したが, 沿岸水のウラン濃度の平均値は3.1ng/mlであったので濃縮係数は1.6×103と計算された。海産魚の硬組織中のウラン濃度は軟組織よりも高く, 硬組織の存在割合が個体中のウラン濃度を支配していると考えられた。海藻中のウラン濃度は湿重量当たり2.0-310ng/g生の範囲にあったが, ワカメが最も高い値を示し濃縮係数は102と計算された。
著者
市川 有二郎 井上 智博 内藤 季和 田中 勉 高橋 良彦
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.521-533, 2015-08-15 (Released:2015-08-28)
参考文献数
38
被引用文献数
1 2

降雨による土壌中の放射性セシウムの移行状況を確認するために,2013年度の梅雨期前後と台風後の千葉県柏市内の土壌を対象に調査した。本調査は,福島原発事故から約2~3年後に行われたが,地表面から深さ5cm以内に95%以上の放射性セシウムが含まれ,降雨による放射性セシウムの鉛直方向への浸透はほとんど進行していないことが示唆された。水平分布については,同一敷地内でも最大で2~3倍程度の差があることが確認された。本調査では,放射性セシウム濃度が明確な粒径依存性を示さなかったが,関東ロームの特異性が影響している可能性がある。
著者
植田 真司 長谷川 英尚 近藤 邦男
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.683-689, 1999-11-15 (Released:2011-03-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2 5

To determine the recently accumulated state of the radiocesium137Csin surface sediment in the brackish-water Lake Obuchi, surrounded by facilities reprocessing spent nuclear fuel in Rokkasho Village, we investigated concentration of137Csin the sediment and speciation of137Csin the sediment according to standard procedures of sequential extraction. Concentrations of137Csin the sediment, the silty types (8.0 -13.8Bq kg-1dry) were higher than the sandy type (0.2Bq kg-1dry) . Concentrations of137Csin the sediment tended to be higher in the smaller particle sizes. Moreover, we observed a high correlation coefficient between137Csconcentration in the sediment and amount of organic matter. We found that most137Csin the sediment were the speciations (contained within the crystal structures of minerals etc.) that non-eluted under a natural condition; however, the137Csbonded to organic matter in the sediment were only about 5 % of the sum total of each extraction. This suggests that organic matter acts as a carrier in137Csaccumulation on the lake bottom. Also, 137Csin the sediment can more readily exist in a stable state when bonded to minerals, possessing a crystal structure, rather than to organic matter.
著者
小橋 浅哉
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.427-435, 2005-10-15 (Released:2011-03-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

紙類に含まれる放射能のレベルを知るため, 我が国で製造された雑誌, 新聞, コピー用紙等の紙類について天然放射性核種 (226Ra, 228Ra, 228Th及び40K) の放射能をγ線スペクトロメトリにより定量した。また, それらの放射性核種の源を明らかにするため, 試料のX線回折測定を行った。文庫本の226Ra, 228Ra, 228Th, 40Kの平均含有量は, それぞれ6.4, 21.5, 23.7, 18.8Bqkg-1であった。他の種類の試料については, それらの核種の含有量は, 文庫本並みかそれ以下であった。228Thの濃度は, 228Raの濃度よりいくぶん高かった。紙類の製造過程において原料から228Raが228Thより優先的に水に溶出したのであろう。天然放射性核種の濃度は互いに相関していた。X線回折測定の結果は, 試料にはカオリナイト, 滑石及び方解石が含まれることを示した。試料のカオリナイト含有量は, 天然放射性核種の濃度と相関があり, このことは, 紙類に含まれている天然放射性核種の大部分は, 紙類の填料又は塗工用顔料として用いられているカオリナイトによりもたらされていることを示している。データの回帰分析の結果は, 填料用カオリナイトの天然放射能含有量は, 顔料用カオリナイトの天然放射能含有量より高いことを示した。
著者
斎藤 公明 山本 英明
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.519-530, 2014-11-15 (Released:2014-11-28)
参考文献数
17
被引用文献数
2

放射線防護において外部被ばくの線量評価及び測定に用いられる諸線量のうち,福島事故における環境放射線測定・評価で頻繁に使用される線量に焦点をあてて,基本的な意味と特徴について説明する。この中で,基本的な物理量である吸収線量,放射線防護の判断基準となる実効線量と等価線量,放射線測定に使用される周辺線量当量H*(10)と個人線量当量Hp(10)を取り上げ,それらの関係等についてわかりやすく解説する。
著者
松井 浩
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.19, no.11, pp.539-545, 1970-11-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
2

β線放射粒子からなる塵埃の放射能および粒度分布を測定する方法の1つとして, オートラジオグラフィによる方法を検討した。X線フィルムと原子核乾板のβ線に対する黒化特性を比較し, 分布測定上の問題点を調べた。X線フィルムの現像時間および温度の変化に対する黒化径の誤差は, それぞれ±0.1分, ±0.5℃のとき2~3%であり, 無視できる程度であった。線源と乾板の間の隔離層としてライファンを使用した場合50μ (~5mg/cm2) 程度までは核分裂生成物からのβ線に対して黒化径の変化を示さなかった。オートラジオグラフィによるβ線放射粒子の放射能分布および粒度分布決定における誤差, および実用上の要点について考察し, 測定例を示した。
著者
岩岡 和輝 米原 英典
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.733-739, 2010 (Released:2010-12-29)
参考文献数
41
被引用文献数
1 1

タバコに含まれる210Poや210Pbは喫煙の燃焼によって揮発して人体に取り込まれるため,喫煙者はこれら核種によって被ばくする。本稿では,喫煙者の線量評価に関する様々なパラメータのレビューを行い,それらのデータから喫煙者の年間実効線量を評価した。喫煙者の年間実効線量はおよそ0.2mSv y-1であり,商品の輸出入の際に用いられるICRP Publ.82の介入免除レベル(1mSv y-1)よりも低かった。