著者
弓削 類 青景 遵之 中川 慧 波之平 晃一郎 田中 英一郎
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.36-40, 2010 (Released:2016-04-15)
参考文献数
10
被引用文献数
1

モビルスーツ型自立歩行支援ロボットを使って,免荷時のロボット使用時の歩行と通常歩行の健常者における脳活動を比較し,脳機能の視点から月面歩行のシミュレーションとしての可能性を検討した.月面歩行のシミュレーションを歩行と捉えるか,ジャンプと捉えるかでシミュレーションの方法が変わってくるものと考えられる.月面歩行のシミュレーションの技術開発は,ニューロリハビリテーションやスポーツ医学等の隣接学術領域にも多くの知見を与えるものと思われる.
著者
星川 秀利 木村 裕一 玉木 啓一 藤本 浩志 中村 好男 村岡 功
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.173-182, 1993-08-01 (Released:2016-10-31)
被引用文献数
1 2

The purpose of this study was to investigate the influence of training level on indices of effectiveness (IE). Six male cyclists and non cyclists performed pedalling bouts for I minute using a cycle ergometer against the work load of 1 50, 200 and 250W. The subjects were directed to maintain 90 rpm of pedalling rate during the cycling bouts. Rotary encorders and triaxis force sensors were mounted on the ergometer for measuring crank angle, both pedal forces and both pedal angles. Using these data, the resultant pedal force (FR) and the force perpendicular component of the crank force (FE) were calculated. IE represents the ratio of the force component perpendicular to the crank to the appplied force to the pedals and was calculated by FR and FE . IE was not different between cyclist and non cyclist groups. On the other hand, peak FR during 250W was significantly lower in cyclists than non cyclists ( 344.9±37.6 [N] and 398.4±24.6 [N] respectively, p<0.05). Those results suggested that pedalling skill would be reflected by the lower pedalling force which was related with a reduction of negative force during up phase rather than its efficiency converting to effective torque.
著者
吉田 正樹
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.174-176, 2002

福祉機器は,生活の質のための機器であり,使用者のニーズによって開発され,使用者によってその価値が判断される.したがって本当の意味での最適な開発者は,その機器を必要としている障害者である. WHOの国際障害分類が改定され,社会的不利は参加となった.これによって,今まで以上に福祉機器の幅が広がることを確信する.また現在の福祉機器の必要性は,社会環境の未整備,周囲の偏見や理解不足,生活環境によって作り出されていると考えられる.したがって,普遍的に必要な福祉機器の開発は大変な仕事であると思う.
著者
結城 匡啓
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.76-81, 2000
被引用文献数
1

長野オリンピック直前にスラップスケートが国際舞台で採用され始め,メダル獲得の期待がかかる短距離種目でこれを用いるか議論された.本稿では,筆者がスラップ使用による力学的・解剖学的な利点を説明しスラップ採用を主張するとともに,500mでの課題,滑走技術およびトレーニング方法への示唆を行った日本スケートチームに対する一連のバイオメカニクス的サポート活動を紹介する.また,研究者の立場で競技力向上を意図して用具開発を発案した2つの事例を報告し,用具開発において選手・コーチと開発メーカーとの間をとりもつゴーディネータとしての研究者の役割について考察する.
著者
小島 輝明 高本 後一 森岡 賢次 山本 晋平 綿貫 雅也 長谷川 光彦 三宅 仁 塩野谷 明
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム
巻号頁・発行日
vol.16, pp.231-241, 2002-06-25

It is effective to determine running pace in advance, based on individual ability, in order to demonstrate the highest performance in long-distance running. The evaluation indices for a long-distance runner are maximum oxygen uptake, lactate threshold (LT), and ventilatory threshold (VT). These, however, are mostly used stastistically, so results may differ from real ability in a personal equation. The purposes of this study were to construct an energy-metabolism model and to optimize the running pace of long-distance running using a genetic algorithm (GA). The energy-metabolism model constructed in the study was composed of an anaerobic energy feeder structure, an aerobic energy feeder structure, and the section to be run. These elements were expressed as differential equations and restricted inequality formulas. The running speed for each subject, calculated from the best time for 300 meters, the amount of oxygen uptake, and running speed at the VT in each subject were used as parameters for the energy-metabolism model. VT was measured by a gradually increasing speed exercise using a treadmill because it was difficult to measure during field running. There are many differences between treadmill running and field running, however. In this study, the subject ran continuously on a treadmill with traction to his back using a rubber tube. The running speed for treadmill running was adjusted to that in field running based on heart rate. The energy-metabolism model had two controlled variables, and running speed could be controlled by these variables. We tried to optimize the energy-metabolism model by determining the two controlled variables using a GA. The spurt start point was also determined during optimization. The GA determined the spurt start point based on the energy-metabolism model. The running speed in 5000-meter races was optimized as follows: (1) speed ascends immediately after the start of the race, and then descends by a constant degree; (2) speed ascends again at 1000 to 1400 meters before the goal; and (3) almost 1 minute later, running goes to maximum speed then descends again by a constant degree all the way to the goal. This optimization result corresponded closely to the actual racing of the subject, who trained for improved ability in long-distance running.
著者
真田 樹義
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 = Journal of the Society of Biomechanisms (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.98-106, 2011-05-01

一般に体組成の加齢変化としては,体脂肪の増加とともに全身筋量の低下が認められる.すなわち,高齢者は「肥満」と「やせ」の問題を同時に抱えていることになる.現在の生活習慣病対策では,国民の医療費適正化対策の一環として,メタボリックシンドロームの基準値に基づいた特定保健指導が義務付けられているが,介護予防の観点から考えると,加齢による筋量およびそれに伴う筋機能の低下,すなわちサルコペニア対策も重要であると考えられる.本稿では,サルコペニアおよびメタボリックシンドロームと運動・身体活動,体力,遺伝との関連について解説し,生活習慣病予防のためのテーラーメイド運動処方プログラムの可能性について言及する.
著者
服部 元史
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.137-141, 2002
被引用文献数
1 1 1

身体の動きが表現する感情を,速さや大きさなどの基本的な運動要因によって説明したいという工学的な問題意識から,日本の伝統芸能である文楽人形の動きをmotion capture で測定して解析した.人形の動きを,慣性主軸の動きという主要な部分と,慣性主軸に対する相対運動という副次的な部分に分解し,表現したい様々な情緒に応じて国立文楽劇場の人形遣いが軸の動きを,どのように使い分けているのかを解析すると,局所的な時間的な伸縮やフレーズごとの振幅の大きさといった簡単な概念によって,かなりのレベルまで説明できた.舞踊学における動きの速遅・大小・直曲の解析も指針としながら,本稿の成果をさらに深めて行きたい.
著者
松本 浩司
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.42-47, 2009-02-01
被引用文献数
1

折りたたみ式ベビーカーで開閉時に乳幼児が手指を挟みあわや切断という事故が2件相次いで寄せられた.一方,現在販売されているベビーカーの多くはフレームが交差する構造などを有した折りたたみ式のものがほとんどであるが,その折りたたみ可動部分は手指挟み等の危害を招きやすい部分でもある.しかし,危険を回避できない乳幼児が手指をあわや切断するなどの重篤な事故が発生していることから,可能な限り製品自体の安全対策が必要と考えられた.そこで,構造を工夫することで手指挟みを防止できるのか,また,万が一挟まれても傷害の程度を軽減させることができるのかなどを調べ防止策を提案し公表した.なお,本報は,公表資料をもとに挟んだときの力に応じて変形する模擬指を用いて検討した部分を抜粋したものである.
著者
水野 幸治
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.35-41, 2009-02-01
被引用文献数
2

子どもは人体計測や解剖学的構造が大人とは異なるため,自動車衝突時に子どもに特徴的な傷害が発生する.子どもの生体力学データは限られているため,大人からのスケーリングによって子どもの傷害基準値が求められている.衝突時に子どもを保護するための拘束装置としてチャイルドシートが用いられており,事故データからもその有効性が確認されている.最近はチャイルドシートの車体への取付方法として誤使用の頻度の少ないISOFIXが普及し始めている.
著者
宮崎 信次
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.32-39, 2002
被引用文献数
3 1

独居高齢者の孤独死を防ぐ目的で,緊急警報システムを設計しその基本性能を調べた.エレクトレットコンデンサマイクロフォンを用いて撓骨動脈遠位の皮膚上から脈波信号を検出する.信号は増幅・フィルター処理された後,2つの比較器に入力される.第1の比較器(低い閾値をもつ)では脈波を検出し,それが5秒以上現れなかった場合に心停止の警報を出す、第2の比較器(高い閾値をもつ)は体動に由来するアーチファクトを検出し,それが15分以上現れなかった場合に意識不明の警報を出す.4人の被験者による第1段階の実験の結果は本システムの可能性を強く示唆するものであった.