著者
中村 孝文 黒岡 紀哉 田内 雅規
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.43-53, 2013

目的:車いすのティッピングレバー(TPL)は前輪の上げ下げに用いられるが,現状のTPLは形や位置の面から前輪上げ下げ操作がしやすいとはいえない.そこで本研究では,前輪上げ下げ時のTPL位置と操作時に感じられる身体的負担の関係を調べ,負担を軽減できる最適なレバー位置について検討した.<br>方法:被験者は介助操作に慣れた健常成人12名とした.介護用車いすの左右のTPL先端部にアダプターを取り付けてその間に棒(バー)を渡し,床からの高さを75~175 mm,後輪軸からの水平距離を110~230 mmの範囲でその位置を調整出来るようにした.車いすには被験者が前輪上げが可能と感じる質量の70%の重りをシート上に乗せた.被験者はバーを踏んで前輪上げ下げ動作を行い,その際の腕,脚,腰の負担を記録した.<br>結果:前輪上げ動作では,バーの後輪軸からの水平距離の増加に伴い腕,脚,腰の負担はどれもほぼ直線的に減少した.バーの高さの変化に対しても腕,脚,腰の負担特性は類似していた.3部位の負担はバーの高さが低い場合は減少するが,その関係は線形ではなく,後輪軸からの距離に依存して変化した.前輪下げ時の特性は上げ時と類似していた.車いす後部空間における前輪上げ下げ時の負担の結果から最も効果的なTPL位置は水平距離225 mm,高さ125 mmであった.<br>結論:TPLを置くべき位置は腕,脚,腰の負担及び走行時の妨げの少なさの観点から,後輪軸から水平距離225 mm,床からの高さ125 mmが適当と考えられた.
著者
長谷 和徳 梶 大介 松山 幸弘
出版者
一般社団法人 日本人間工学会
雑誌
人間工学 = The Japanese journal of ergonomics (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.61-67, 2010-02-15
参考文献数
7
被引用文献数
2

我々は,草鞋の機能を模擬したとされる足部装具が歩行運動や立位姿勢に与える影響を明らかにするため,光学式運動計測装置,床反力計などを用いた運動力学計測を以前において行った.本研究ではさらに,足部装具の装着方法を変化させ,筋骨格モデルや足圧分布計などを用いて,より詳細に足部装具,足指の運動,歩行の関係を明らかにすることを目的とする.実験では被験者10名に対して,第1・2指間刺激,第2-5指拘束,全指拘束の3種類の装着法にて足部装具を装着させ,歩行動作と立位姿勢の運動力学計測を行った.また別途,足圧分布計上での歩行実験を行った.第1・2指間刺激の方法では足指の屈曲位,足指間距離の増大などが見られ,足関節まわりの筋活動が増大した.他の装着法でもそれに応じた足部形状の変化,歩容の変化が見られ,これらの結果に基づき本装具が身体動作に与える効果について議論した.