著者
須田 力 室木 洋一 中川 功哉 安藤 義宣 西薗 秀嗣 吉田 敏雄
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.255-265, 1988

The purpose of this study was to evaluate the maintenance of fitness with aging. The subjects were 59 men of 49-55 years of age, who entered to Hokkaido University and once had been examined for their fitness between the years of 1950-1952. They were reexamined to determine the maintenance of fitness with age in 1983. After 31-33 years, declination of the mean values in fitness shows from 50.9 to 42.1cm in vertical jump, from 154 to 143kg in back strength, from 4.35 to 3.73L in vital capacity and from 8.4 to 3.2 times in pull-ups. Grip strength was increased from 44.0 to 47.1kg. The correlation coefficients of the values between the time they were freshmen and the present time, were relatively higher in vertical jump (r=0.61, p<0.01), moderatory higher in back strength (r=0.50, p<0.01), grip strength (r=0.48, p<0.05) and vital capacity (r=0.46, p<0.05), but lower in pull-ups (r = 0.17, not significant). Back strenght and grip strength were maintained better in a group who had been engaged in daily physical activity than those who had been inactive. But the differences in the rate of decline were not significant in vertical jump; pull-ups and vital capacity. It was noticed that 14 (23.7%) of the 59 subjects indicated that walking was felt to be the most effective factor to maintain fitness.
著者
岩瀬 裕子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.23_1, 2016

<p> 2020年の東京オリンピックを控えて、ポスト・オリンピックの議論も喧しい。未来を議論するに当たり、しばしば参照されるのが1964年の東京オリンピックと1998年の長野オリンピックである。だが、我々は2つのオリンピックについてどれだけ知悉しているのか。アジアで初めて開催された先の東京オリンピックでは、1961年に日本体育協会と五輪組織委員会の共催によりカール・ディームが招かれた。オリンピックの思想と意義について、他ならぬディームから学ぼうとしたのである。そのディームから多大な影響を受けたのが、大島謙吉であった。2 人に今さら安直な美辞麗句を捧げる必要はないが、今日の冷静な視点から見ても、彼らの思慮深い言動は学術的な検討に値する。</p><p> 日本で3度目のオリンピックは長野であった。低成長時代に開催されたという点では、長野オリンピック開催前後の様々な社会経験は、現在に通じるものがある。長野には様々な意味でポスト・オリンピックを意識させる建物や政治文化や人々の行動が残っている。</p><p> 本シンポジウムでは、2人の「哲人」と1つの隣接する地域社会に焦点を当てつつ、スポーツを文化として根づかせるために求められる論点や課題を探りたい。</p>
著者
中山 健二郎 松尾 哲矢
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.79_2, 2018

<p> メディアによる伝達を通じて歴史的に生成されてきた高校野球の「物語」は、人々の高校野球に対する解釈を規定しているとされ、主に神話論的アプローチによって、その構造を捉える試みがなされてきた。しかしながら、高校野球の「物語」は固定的な構造というよりも、種々の力学関係の中で流動的に再生産されているものとみられ、その変動を読み解く研究が求められているといえる。そこで本研究は、朝日放送テレビのドキュメンタリー番組『熱闘甲子園』を対象として、特に投手を主題化した映像および言説を分析することで、高校野球の「物語」が変動する過程について考察することを目的とした。</p><p> 競技特性上、「物語」の中心として主題化されやすい投手に関して、甲子園大会の戦術は近年、「先発完投型」から「継投型」へとシフトしてきている。分析の結果、『熱闘甲子園』ではこうした戦術の変化によって、投手を描く主題を「精神力」から「友情」へと置き換えていく様相がみられるなど、メディアに具現化される「物語」の変化が看取された。この結果から、高校野球の「物語」が、実践における変化によって変容しつつ構造化される過程の一側面が示唆された。</p>
著者
野上 玲子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.28_2, 2018

<p> 昨年度の議論を引き継ぐかたちで、オリンピックと反・反知性主義が織り成すオリンピック希望論を考えてみたい。反知性主義とは、知性主義への反感から知性や理念を批判し引きずり降ろそうという態度であると理解し、ここからもう一度、オリンピックにおける平和への理念(オリンピズム)や権威(IOC)を現代版として立て直すとすると、どのような提言が可能なのか。今や、自国でのオリンピック開催を歓迎する声は少ない。不透明なIOCの体制、膨大な費用のかかる大会、金メダル至上主義など現代のオリンピックに平和への理念は見出せない。広く世界に向けた平和な地球社会に寄与する姿勢も見られない。本発表では、普遍であるはずのオリンピックの理念がいかに時代の趨勢や流行に流され空虚なものであったかという批判的視点から出発し、その様相とカントの平和哲学を援用解釈しながら、平和理念の再構築を目的としたオリンピック希望(改革)論を提示する。その際、平和のためのオリンピックは誰の平和のためのオリンピックなのか、オリンピックが体現しうる平和への理念と私たち人間およびIOCの組織改革を含む平和への努力の方向性を体育・スポーツ哲学の立場から提言していく。</p>
著者
宮﨑 明世
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.268_2, 2018

<p> 2020東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、全国各地でオリンピック・パラリンピック教育が進められている。開催都市である東京都では、すべての学校で教育推進が求められており、ここ数年で具体的な教材も蓄積されてきた。2020東京大会の開催を前にオリンピック・パラリンピックムーブメントの全国への普及が望まれるが、地域による差が大きく、十分に浸透していないのが現状である。スポーツ庁が2015年度に調査研究事業として委託し、2016年度から「オリンピック・パラリンピックムーブメント全国展開事業」として継続されている事業では、拠点3大学が全国の道府県及び政令指定都市と連携して、オリンピック・パラリンピックムーブメントの普及を進めている。本研究では、本事業の対象となっている自治体の報告書から、学校におけるオリンピック・パラリンピック教育プログラムが行われている時間や形態、具体的な活動の内容について、2016年度と2017年度の実績を比較することで大会開催まで2年となった現在の実態を明らかにした。これをもとに、大会開催までの2年間で効果的に教育を推進し、大会後もレガシーとして存続するための課題を検討した。</p>
著者
小右原 美保
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.301-311, 1991

The purpose of the present paper is to examine the literary image of athleticism. In this paper, "Tom Brown's schooldays" by Thomas Hughes published in 1857 is analyzed. This work may be regarded as educational literature written with didactic intent. This intent of the novelist must be considered in relation to the structure of his novel. By concentrating on the concepts of "manliness" in this work, the main findings are summarized as follows: (1) The author preach to boys readers: to be free from class consciousness,quit themselves like men,learn to box, and find the true friendship in their schoollife. (2) These points are carefully constructed as his narrative plan; Manly exercises and achievements are emphasized in Part One, and manly characters: truthfulness, responsibility,consideration for others; are emphasized in Part Two, by novelist's choice of incidents. (3) Both concepts of "manliness" are attained by Tom through his public schoollife and games serve the important function of developping his character. (4) Behind the teaching moral manliness lay the stress of self-control against sexuality and bodily sensations, which reflects the victorian morality.
著者
大田 穂 木塚 朝博
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.256_2, 2016

<p> ソフトボールは、野球よりも塁間が約9m短い(ソフトボールの塁間は18.29m)ために、走者が塁に達するまでの時間も野球以上に短い。内野手は、走者が塁に達するまでの時間的制約下でゴロ処理、つまりゴロの捕球から送球までを完了しなければならないため、ゴロの捕球および送球の正確さのみでなく素早さも求められる。したがって、ソフトボールにおいて内野ゴロを正確かつ素早く処理できる技能を向上させることは重要な課題である。このような背景から、本研究ではソフトボールのゴロ捕球技能に着目し、実戦的な速いゴロを捕球できる選手の特徴を明らかにすることを目的とした。技能レベルが低程度から中程度の女子ソフトボール選手を対象として、2種類の速度(約40km/h・約70km/h)で転がされるゴロを捕球する課題を実施し、それらの課題の成功率および捕球時の動作を評価した。その結果、約40km/hの速度のゴロではほとんどの選手で高い捕球成功率であったが、約70km/hの速度のゴロでは捕球成功率に差がみられた。この差には、目線の高さが影響していることが示唆された。</p>
著者
竹内 秀一
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.105_2-105_2, 2016

<p> 運動部活動などを舞台に物語が紡がれるスポーツ漫画は、我々とスポーツとの関わりを映し出すひとつの鏡といえる。例えば、1990~96年に井上雄彦氏によって連載された『スラムダンク』は、多くの若者をバスケットボールへと駆り立てた。このような現象を松田(2009)は、「マンガに描かれたスポーツ世界のリアリティが、逆に現実世界のスポーツのリアリティ感覚の受皿となる」と述べる。すなわち、スポーツ漫画は単なる表象文化ではなく、他方スポーツに新たな現実を生起させる循環装置にもなっているのである。ところで、漫画が世代ごとの「アイデンティティ」を確認する役割を担うという報告(諏訪、1989)もある。ここより、スポーツ参与者の同一性(=プレイヤー・アイデンティティ)を基底している言説、あるいは揺らぎのダイナミクスをスポーツ漫画から捉えることができるのではないか。そこで本研究では、スポーツ漫画におけるキャラクターの表象について、「アイデンティティ」という補助線を用いて考察していく。そして、そこから透けてみえる運動部活動における現代的な力学の様相を明らかにすることを目的とする。</p>
著者
三島 隆章
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.352_1, 2016

<p> 中高齢者において加齢関連認知低下(AACD)と判定された場合、認知症へ移行するリスクが高いことが認められていることから、AACDの早期発見は認知症への移行を予防するうえでたいへん重要である。そこで本研究では、神経心理学的スクリーニングとスマートフォンを使用した運動機能および認知機能の測定結果との関連性について検討することを目的とした。被験者は介護認定を受けている中高齢者の男女60名であった。スマートフォンを使用した運動機能の測定項目としてTimed up and goテスト、認知機能の測定項目としてTrail making test-Bおよび数唱テストを実施した。神経心理学的スクリーニングとしてファイブコグテストを行い、年齢、性別、教育年数を考慮した総合ランク得点を算出し、問題なし群、AACDの可能性群、認知症の可能性群の3群に分け、比較した。Trail making test-Bおよび数唱テストにおいて、問題なし群と認知症の可能性群との間に有意な差異が認められたが、AADCの可能性群と他の2群とは有意な差異は認められなかった。</p>
著者
和田 浩一
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.67_2, 2017

<p> 本研究の目的は、国際オリンピック委員会(IOC)会長を辞任した直後に立ち上げた万国教育連盟における教育改革の中で、オリンピック・ムーブメントの一要素として位置づけた芸術と美を、ピエール・ド・クーベルタン(1863-1937)がどのように展開していったのかを、連盟の具体的な活動内容とそこでの彼の問題意識とから明らかにすることである。芸術と美に関するクーベルタンの行動と問題意識の一端を明らかにすることは、2020年東京大会に向けて進められている文化プログラムの根源的な意味の問い直しにつなげられよう。本研究で用いた主な史料は、万国教育連盟が4年間に渡って発行した計4冊の機関誌『万国教育連盟報』(1926-1929)である。クーベルタンは「現代都市の教育学的役割」をテーマに開いた1926年の会議(ローザンヌ)では、民衆芸術をトピックの一つとして取り上げ、1928年には美を全体テーマにした会議をエクス・アン・プロヴァンスで開催した。『万国教育連盟報』ではこれらの会議の予告・報告がなされるとともに、ユーリトミー(eurythmie、調和・均衡)をキーワードとした芸術論・美学論が展開されていた。</p>
著者
和田 浩一
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.86_3, 2016

<p> オリンピズムへの無理解に危機意識を募らせつつ1925年にIOC会長を辞任したピエール・ド・クーベルタン(1863-1937)は、その直後に万国教育連盟を創設した。本研究では、4年間に渡って発行された計4冊の連盟報のうち、連盟の活動が総括されている第4号(1928-1929)を取り上げ、IOC会長辞任後にクーベルタンが示した問題意識を明らかにし、オリンピズムの内実を再検討する。連盟報第4号によれば、万国教育連盟の活動には2つの目的があった。1)中等教育や成人教育に対して、従来とは異なる原理に基づいた新しい教育改革プログラムを示すことと、2)「現代都市」が未来の教育学の中枢機関として機能するよう、特定の仕組みや取り組みを示唆することである。オリンピズムとの関連で特に注目すべきは、(1)一般教養はすべての人間が学べるように、そして人生を通した学びとなるようにしなければならない、(2)早期からの専門教育をやめ、「全体を考慮しながら学ぶ」必要がある、という2つの指摘である。IOC会長辞任後に示されたこれらの指摘は、当時のオリンピック・ムーブメントにおいて理解に至らなかったオリンピズムの内実を描くものであると解釈できる。</p>
著者
和所 泰史
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.88_2, 2016

<p> 第二次世界大戦終結後、日本は1948年開催のオリンピック大会(ロンドン)に招待されず、次の1952年オリンピック大会(ヘルシンキ)の参加を目指すこととなった。当時の日本がオリンピック大会に招待されるための条件の1つは、日本のNOCがIOCから承認を受けることであった。先行研究によると、日本のNOC承認は1951年IOCウィーン総会であったとされている。しかし、このウィーン総会に出席した東龍太郎の報告および総会の議事録を見るかぎり、IOCはこの総会で日本の1952年オリンピック大会参加を認めたものの、NOCを承認したという記録は存在していない。そこで本研究では、ウィーン総会の約1年前にあたる1950年IOCコペンハーゲン総会の議事録に着目し、日本のNOCがいつIOCによって承認されたかを明らかにすることとした。本研究の検討結果、日本のNOC承認に否定的な意見を述べるIOC委員が存在していたものの、IOC会長エドストロームやアメリカのIOC委員らの援助もあり、日本のNOC承認は否決されることなく、可決し、大会への参加を議論すべきとの報告がIOC副会長ブランデージからなされていたことが明らかとなった。</p>
著者
案浦 知仁 青柳 領 田方 慎哉 小牟礼 育夫 川面 剛 大山 泰史
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.267_1, 2019

<p> 2点シュートはボール落下までの時間が短く、ゴール下付近にボールが落下する傾向がある。反面、3点シュートは時間的に長く、大きく跳ね返る傾向がある。そのため、ディフェンスリバウンドを獲得するためには均等に選手が配置されることが望ましいが、両者にはそのコート占有には違いが見られると考えられる。そこで本研究は2点シュートと3点シュートのディフェンスリバウンド獲得に対する自チームと相手チームのコート占有の影響について検討する。対象となったのはK地区大学バスケットボール選手権大会で行われた30試合で見られた1677ディフェンスリバウンドである。その際、ゴールからの距離と方向によりコートを6分割し、区画ごとに「自チームのみ」「相手チームのみ」「両者が存在」「両者ともに存在しない」区画数を獲得の成功・失敗とともに記録し、全ての組み合わせについて獲得と非獲得間の区画数についてt検定を行った。結果、2点シュートでは10個の有意差がみられ、「自チームのみ」で獲得し、「両者が存在」で非獲得の傾向がみられた。しかし、3点シュートでは2個しか有意差がなく、3点シュートのコート占有の影響は2点シュートより少ないと考えられた。</p>