著者
鈴木 啓央
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.111_3, 2017

<p> 本研究では、熟達化の機序を検討するため、スノーボードにおける学習過程を事例的に分析した。スノーボードを初めて経験する学習者が指導のもとターンができるようになるまでの全過程をビデオにより撮影した。具体的には、全日本スキー連盟が認定するスノーボード指導員を指導者とし、2名の学習者に対して1名の指導者が指導にあたり、計4名の学習者について3日間のレッスンの様子が全て撮影された。これらの映像について、指導者による各学習段階における言語的な課題の説明と身体的なデモンストレーションを入力とし、また、学習者による発話と各課題に対する試行を出力とし、これらの入出力関係を定性的に記述することにより分析した。結果、各学習段階の入力に対して、出力には、課題を達成するために学習者が多様に動きを探索する局面と、その探索により獲得された動きが安定する局面が観察された。加えて、各学習段階に応じてこれらの2つの局面が繰り返される傾向がみられた。この結果から、熟達化は直線的に進行するのではなく、動きの探索に応じて運動がゆらぐ局面を経て突然に技能が上達するという階段状に熟達化が進行することが示唆された。</p>
著者
レフ・パヴロヴィッチ・マトヴェーエフ
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会号
巻号頁・発行日
vol.54, pp.20-21, 2003

オリンピックや世界選手権大会など、世界のひのき舞台で日本選手は目を見張るような活躍を示しています。しかしスポーツ界全体の流れから見れば、まだまだ世界の壁は厚いように思えます。今回の講演では、旧ソ連時代から現在に至るまで息長く選手養成問題に取組み、多くの業績をあげて理論面で世界をリードしてきたマトヴェーエフ博士をお招きし、これまで科学的なアプローチが困難とされてきた長期トレーニングの課題と展望についてお話ししていただくことになりました。同博士が提唱した『ピリオダイゼーション(周期化)』の理論をはじめとし、『目標-モデル化理論』や『スポーツ・フォーム(長期にわたってベストコンディションを維持すること)』などの概念についてわかりやすく解説してもらいます。講演の中心課題はつぎの3点です。1)マクロサイクルの最終目標とする競技会においてねらうべき自己記録をどう設定するか。2)「スポーツ・フォーム」の変動をどうコントロールするか。3)マクロサイクルを構成する基本要素をどうモデル化するか。
著者
大坪 菜々美 海老原 修
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.88_3, 2018

<p> 国民の誰しもが経験する身体検査や体力・運動能力テストにより暗黙裡に身につけた性向は、同じく誰もが参加する運動会で強化され、さまざまな男女別の区分けに敷衍される。この区分けへの疑義をもたず、アプリオリな制度としてジェンダーの論議の蚊帳の外にある。文部科学省「体力・運動能力調査報告書」のありようが論議されるセクハラやジェンダー・バイアスの源流にあたる可能性を秘めるかもしれず、そこで、本研究では平成27年度調査報告書にテスト項目ごとの加齢に伴う男女の差の変化傾向を手掛かりにこの論議の端緒を求めた。そこには長座体前屈を除くすべての種目で、男子が女子よりも高い水準を示しているという文言が記載され、女子は男子よりも体力・運動能力が低いと判定される。体力・運動能力テストはもとよりスポーツが男女別に運営・管理される理由が再生産される。しかし、積極的な運動能力における男女の差は、全体の平均値のみで求められる調査が多く、男女の差が存在するのかは定かでない。そこで、社会的・文化的な要因によって、男女の体力・運動能力に差が生じたと仮定し、体力・運動能力調査報告書を傍証に、その要因が何であるかを検証する。</p>
著者
日比野 幹生
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.193_2, 2019

<p> 近年、オリンピックをはじめとする国際競技大会においては、多くの参加国・地域がメダル獲得のために争奪戦を繰りひろげている。このような中にあって、デンマークは小国であるにも関わらず、リオデジャネイロオリンピックでは金メダル2個、銀メダル6個、銅メダル7個、合計15個のメダルを獲得している。なぜ、デンマークはこのような成功を収めることができたのか。我が国では少子化と言った人口構造の変化からアスリートとなり得る年代の人口減少は間違いなく起こることとなる。昨今、教員の負担軽減などから運動部活動の規模縮小の方向性が打ち出された。2020年東京オリンピックに向けた競技者の育成強化では従来にはない巨額の強化費が投入されているが、大会終了後に同様の強化費が確保できるとは考えにくい。そこで、本研究では、デンマークのエリートスポーツ政策に焦点をあて、その特性を明らかにすることで、我が国の今後のエリートスポーツ政策の推進に資することを目的とした。本研究の結果、デンマークのエリートスポーツ政策の特性から、効率的・効果的な施策・事業の展開やそのための諸アクター間の連携・協働などが明らかになった。</p>
著者
林 卓史 奈良 隆章 島田 一志
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.248_2, 2019

<p> 本研究では、大学野球リーグ戦において「特徴のある投手」とはどのような投手であるかについて検討した。また、「特徴のある投手」が複数名在籍することが、継投の選択肢に与える影響を検証した。対象は、著者が投手コーチを務めたK大学野球部であり、期間は2018年リーグ戦(春季・秋季)とした。投手を①リリース速度②回転速度③投球腕(左腕)④変化球の割合について基準を設定し、4項目の内、2項目を満たす投手を、「特徴のある投手」とした。リリース速度と回転速度については、練習での投球を、トラッキングシステムを用いて計測し、140km/h、2300rpmを基準とした(林・佐野,2019)。K大学には、2018年春季リーグ戦において、4項目の内2項目以上を満たす投手が7名存在した。同リーグ戦では継投を多用し、チーム防御率はリーグ1位となった。一方、2018年秋季リーグ戦では、2項目以上を常時満たす投手は1名であり、同リーグ戦では、1名の投手に依存し、チーム防御率はリーグ5位となった。このことから、上記の4項目の内2項目を満たす「特徴のある投手」を多く育成することが、継投の選択肢を多様にすることが示唆された。</p>
著者
橋本 佐由理
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.249_3, 2017

<p>【目的】子育てをめぐる社会問題は多く、不安やストレスを抱える母親が増加している。そこで本研究では、妊娠期や育児期(乳幼児)の母親を対象に子育て支援講習会を開催し、参加者の自己イメージ認知、支援認知、育児自信感や不安感などに変容がみられるか否かを検討した。【方法】講習会は1回2時間、内容は、1回目は気質コーチング法による「自分とパートナーの性格の良さを知り子育てに活かそう」(参加者8名)、2回目は情緒安定法とあるがままの自己法による「子育ての不安やストレスと上手につき合うコツ」(参加者7名)である(分析対象は7名)。本研究は研究倫理委員会の承認と参加者の同意を得て行った。【結果と考察】2回の講習会の前後で、自己イメージや支援認知の向上、育児自信感の向上と育児不安感の低下が見られた。家族への支援認知の向上は、気質コーチング法による人の性格のコアである気質理論の知識活用によりパートナーへの認知が変容し、その良さを認識できたことによるのであろう。さらに情緒安定法とあるがままの自己法により、自己や自己を取り巻く環境への感受性が変容し、自己イメージや育児への自信や不安が良好に変化したと考えられる。</p>
著者
岩嶋 孝夫 髙橋 仁大
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.283_1, 2019

<p> テニスラケットのグリップエンド部に装着するだけで様々なデータを取得できるテニスセンサー(以下センサーとする)であるが、その信頼性についての検証はまだなされていない。そこで本研究では、ドップラー効果を応用することで打球データを測定することができるトラックマンを用いて、センサーで得られた球速データとの比較及び検討を行った。測定にあたっては、レベルの異なる男女9名にひとりあたりフォアハンド、バックハンドそれぞれ30球ずつ打球させた。</p><p> その結果、全打球におけるセンサーの球速データとトラックマンによる球速データの間に有意な相関関係が見られた。さらに打球者のレベルや球速域の違いによる相関や誤差について比較、検討しながら、センサーデータの信頼性について考察していく。</p>
著者
池田 英治 内山 治樹
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.263_3, 2019

<p> 本研究の目的は、Collective Efficacy Scale for Basketball for Offense(CESBO、Ikeda et al.、2014)と有意な関係性を持つバスケットボールにおける「パフォーマンス指標」について検討することであった。対象は、国内の大学バスケットボール部及びトップリーグに在籍するチームのうち、それぞれのカテゴリーでのリーグ戦におけるパフォーマンス指標が収集できるチーム(37チーム)及びその対象チームに所属するリーグ戦に出場機会のあった選手(414名)とした。分析に際しては、得られた個々のデータをチームの値として合計し、1つのチームを1サンプルとして捉え、計37チーム(37サンプル)のCESBO及びパフォーマンス指標を算出した。パフォーマンス指標については、単純なゲーム・スタッツの項目以外に、複雑な回帰式等を用いた詳細な客観的指標(アドバンスド・ゲーム・スタッツ)を求め、相関分析の項目として採用することとした。分析の結果、「シュートに関する項目」、「勝敗に関する項目」、「客観的で精度の高い指標」(Bray and Whaley, 2001)が、バスケットボール版CE尺度(CESBO)との強い関係性を表すパフォーマンス指標として導出された。</p>
著者
山口 拓
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.329_3, 2019

<p> 1991年の東西冷戦構造の終焉によって期待された世界平和の願いは、各地の被支援者が抱える開発課題に切り込むなど、多様な支援事例を増加させた。その際、これまで着手されなかった多くの取り組みが導入された。「スポーツを通じた開発(IDS)」もその一つである。</p><p> 現在、加速度的な成長を遂げるIDSであるが、文化要素を多く含むスポーツを通じた開発を検討するには、文化接合の諸現象を明らかにした上で支援効果の議論を重ねていく必要がある。しかし、幾つかの研究は散見されるものの、スポーツの文化接合に関する研究は極めて少ない。またUNESCOは、古典的なIDSである体育の新たな概念「質の高い体育(QPE)」を打ち出して国際的な支援を開始しているが、応用論的な議論に留まり、その世界展開を考察する際に行なわれるべき文化接合、或いは、その基盤となる文化史研究の蓄積に着手できていない。</p><p> そこで本研究では、フランス及びカンボジアの公文書図書館に所蔵されている史料を分析し、近代教育導入前期(1925年)のカンボジアに関する教科体育の文化史を叙述した。</p>
著者
岸 秀忠 前鼻 啓史 鈴木 宏哉
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.229_1, 2019

<p> 2018年に日本アンプティサッカー協会はフィジカルフィットネス測定を開始した。アンプティサッカーの競技力向上に関する研究はこれまでほとんど行われていない。したがって、本研究ではアンプティサッカー競技の日本代表選考に対する体力の影響を検討することを目的とした。対象者は日本代表候補選手の男性アンプティサッカー競技者18名とした。基本属性とする身長、体重、年齢、競技歴とともに、体力テストとして基礎的体力を測定する握力、足趾把持筋力、立ち幅跳び、メディシンボールスロー、専門的体力(クラッチ操作技能を含む)を測定する30mスプリントテスト、5m×5シャトルランテストを行った。統計解析には、日本代表に選出された選手10名(選出群)と選出されなかった選手8名(非選出群)の2群に分け対応のないt検定を行った。その結果、基本属性に関して両群の間に有意差は認められなかったが、体力テストでは、30mスプリントタイムおよび5m×5シャトルランテストにおいてのみ、選出群は非選出群よりも有意に高い値を示した(p < 0.05)。したがって、クラッチ操作技能を含む専門的体力がアンプティサッカーの日本代表選考に影響を及ぼすことが示唆された。</p>
著者
山下 秋二 山形 修 出村 慎一 中 比呂志 郷司 文男
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-13, 1995

本研究は, ヘルス/フィットネスクラプの経営に従事する組織単位間の相互依存性の研究である. これらクラブ経営体は, 各々自己の関与する組織間関係システムにおいて, 互いに役割モデルとして認識し合ったり, あるいはまた, ビジネス目的の効率的達成にむけて, 諸資源の結合・連関(ネットワーキング)の仕方を模索している. 本研究では, かかる意味の組織相互依存性と組織の内部持性との関係を分析した. 調査データは, 現在の我が国で展開されているヘルス/フィットネスクラブの上級管理職(支配人)から求めた. データ源となったクラブはいずれも多種目複合型の運動施設であり, 39都道府県下に分散し, 総計205箇所である. 分析の結果, 1)組織構造の複雑性, 経営資源力, 経営資源独自性の高さがクラブ間における役割モデルとしての期待を高めること, 2)経営資源力が相対的に小さく, かつサービス産出量(顧客数)の多いクラブほど同業者間ネットワークへの依存度が高くなること, 3)異業種(とくに一般サービス業及び関連スポーツ施設への)依存は, 市場への伝達情報量, 施設サービス革新の数, サービス産出量の多さ, 及び市場情報の信頼性のなさなどが影饗すること, そして4)ネットワーキングの実際上の形態は, そのプロセスからみて計画的なものと創発的なものとに類型化でき, 前者に参加するクラブは後者に参加するクラブに比べて, 組織が複雑で公式化されており, 経営資源力が優位で, 組織構成員の量も多く, また, 市場情報の信頼性のなさを強く感じていること, などが明かとなった.
著者
仲田 直樹 三嶋 康嗣 横山 喬之
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.915-928, 2020

Judo, which has become popular in more than 200 countries and regions, has developed while merging with both national and ethnic sports. Among them, chidaoba practiced in Georgia is a remarkable example of anethnic martial art. However, no literature in Japan has yet described the technical form and historical background of chidaoba in detail. Therefore, the purpose of the present study was to clarify the essence of chidaoba by considering its historical and cultural background. The author has mastered basic Russian language skills and performed a search for academic essays and websites using keywords such as chidaoba or Georgia and ethnic martial arts in Russian. To ensure accurate translation from Russian into Japanese, the text was checked by several Japanese with native-level Russian language skills. Chidaoba matches were held on Christian holidays such as Saint George's Day and the Svetitskhoveli Cathedral Holiday. Thus, chidaoba took root in cities and rural areas as an irreplaceable festival event. Later, when the Christian church banned some forms of ethnic entertainment and physical exercise, only chidaoba was exempt. Before a match, competitors were obliged to perform the traditional dance, kartuli or palavnuri. In chidaoba, any type of grasping from the waist and upper body is allowed, while grasping below the waist is prohibited. There are a wide variety of techniques in chidaoba, such as throwing from close contact, foot throwing, foot sweeps, reaps, and hooks. Due to the diversity of Georgians, ethnic groups vary from region to region. Moreover, there are several different forms of martial arts in the mountainous areas of Georgia, which are very different from chidaoba. In 2018, chidaoba was registered as an Intangible Cultural Asset. The results of this research should serve as a basic material for clarifying the outline of the Georgian ethnic martia art chidaoba.