著者
川端 昭夫 木村 吉次
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.69_1, 2017

<p> 本研究の目的は、大正11年から昭和3年まで陸軍戸山学校教官であった大井浩を取りあげ、その欧州体育・スポーツ視察並びに体育論を検討し、また、大正・昭和初期の日本の社会体育促進との関わりについて考察する。主な資料は、「体育と武道」、「研究彙報」、「皆行社記事」、「陸軍大日誌」に収録された論文論説、また陸軍戸山学校関連書籍並びに朝日新聞を調査した。得られた結果を以下に示す。1)大井浩は、欧州諸国の視察の結果、軍隊体育、体育・スポーツ事情について度々報告した。軍隊体育における運動競技(スポーツ)の日本に適した様式による導入、日本における武道精神を含めた武道の普及、国民の軍事予備教育を意図した国民体育、特に青年体育の推進を奨励した。2)欧州諸国の視察報告を通して、日本の社会体育の普及の必要性を提言した。3)欧州諸国における女子体育・スポーツの隆盛を報告して、日本でのその普及を期待した。4)欧州諸国の新しい体操の趨勢や集団体操(マスゲーム)の隆盛を報告し、実際に第2回明治神宮競技大会のマスゲームの部の創設や戸山学校生による集団体操の演技参加を行い、日本で初めての公的なマスゲームの大会を実現した。</p>
著者
真田 久
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.19_2, 2016

<p> 今日のオリンピック・ムーブメント、パラリンピック・ムーブメントは、多様な価値を認め合い、融合・共生(インクルージョン)を図る、という潮流になっている。多様な価値を認めていくことは、必然的にそのムーブメントの質と量を変容させる。ネガティブ面では、競技大会の肥大化につながる。多様な価値を認めつつ、肥大化による経費の増加や質の低下をいかに防ぐということが今後のムーブメントの大きな課題となる。</p><p> ユーロセントリズムの強かったIOCで、多様性を主張したIOC委員は嘉納治五郎であった。1940年のオリンピックを東京で開催する理由として、オリンピックを欧米の文化にとどめるのではなく、真に世界の文化にしたいのなら、アジアで行うべきであると彼は主張した。嘉納は、女性の講道館入門を1893年に許可し、また留学生にも体育・スポーツを経験させるなど、早くから多様性を認めていった。また東京高等師範学校附属小学校の校長時代に特殊学級を設置し、体育に力を入れ、障害があっても社会の中で自立できる人間の形成を目指した。嘉納が多様性を認めていった背景には、実践知と科学的熟慮の裏付けがあった。この点に、ムーブメントしての多様性やインクルージョンを考えていくヒントを見出したい。</p>
著者
小林 好信 橋本 佐由理
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.231_2, 2018

<p> 本研究は、大学陸上競技選手のスポーツ傷害と心理社会的要因との関連を明らかにすることを目的に、自記式質問紙による前向き調査(1回目調査は2016-2017年、2回目調査は1年後に実施)を行った。分析対象は1回目調査時点にて傷害のない男女陸上競技部員(n=172)とした。1年間に、試合出場は可能であるが傷害を負った選手が13名、傷害により出場不能となった選手が22名であった。そこで、試合出場可能と不能とに分け、1年間の傷害発生の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。性別で調整した結果、出場可能な傷害の発生では、健康管理の自信感のオッズ比が0.67(p<0.01)であった(判別的中率89.6%)。軽傷な傷害を予防するには、日常生活の健康管理を行う自己効力感を高めることが重要であることが示唆された。また、出場不能となる傷害の発生では、二次元レジリエンス要因尺度の楽観性のオッズ比が0.72(p<0.05)、他者心理の理解のオッズ比が1.58(p<0.01)であった(判別的中率87.9%)。不安を感じずに楽観的でいることが傷害予防には有用であり、外交的な傾向が怪我の可能性を高めることが示唆された。</p>
著者
金 賢植 原田 健次 馬 佳濛
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.162_3, 2018

<p> 本研究では、幼児を対象に、1日の外遊び時間と1日のTV視聴時間に影響を及ぼす個人的、家族的、社会的、環境的要因との関連性を検討した。3歳~6歳の幼児713名を対象に(男児362名、女児351名)、アンケート調査により、1日の外遊び運動時間(推薦群:28.5%、非推薦群:71.5%)と1日のTV視聴時間(推薦群:56.4%、非推薦群:43.6%)を調査した。また、外遊び運動時間とTV視聴時間に影響を及ぼす要因の検討するため、幼児に抱えられている要因の分析は、ロジスティック回帰分析を用いて分析した。個人的要因は、睡眠時間(OR = 3.54)、家族的要因は、親のTV視聴時間(OR = 5.30)、運動遊びの重要性(OR = 1.77)、社会・環境的要因は、徒歩通園(OR = 7.73)、遊ぶ場所(OR =6.23)、寝室TV有無(OR = 1.98)で有意な関連性が確認された。本研究の結果より、幼児の推薦運動遊び時間の確保とTV視聴時間の減少させるため、個人的要因より、家庭のメディア利用時間を減らすこと、ルールを決めること、運動遊びの重要性を認識すること、安全に遊ぶ場所と徒歩通園できる環境の整備が必要であることが示唆された。</p>
著者
中山 雅雄
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.35_1, 2016

<p> 担任制で授業を行う小学校には運動を苦手とする教員もおり、特に手でボールを扱うスポーツに比べ、足でボールを扱うサッカーは教えにくい運動の一つです。一方で、サッカーはルールが比較的簡単で、特別な道具を必要としない手軽さがあり、ゲームそのものにおもしろさを感じられるスポーツでもあります。</p><p> JFAが蓄積してきた経験や知見に基づき、教員の方々にサッカーの楽しさや価値を理解してもらいサッカーの授業の進め方を提案できないかを模索しながら、これまでに約70回、約1800名の教員を対象にした研修会を行っています。また、教員が『すぐに使える教科書』というコンセプトで作成した書籍を発刊しました。</p><p> 子どもたちがサッカーそのものを楽しむ、サッカーの良さを感じることができる授業が展開できるように、1時間ごとの指導案を例示してあります。単元が進むにつれて、子どもたちが向上していくようにスモールステップの展開にしてあり、実践した教員が「これならできそうだ」「ほかの体育でも活用できそうだ」というような場の設定や声かけ、グルーピング、苦手・得意な子への対処などの指導法にも触れています。</p>
著者
湊 柊一郎 芳地 泰幸 岩浅 巧 水野 基樹
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.102_1, 2017

<p> 従来の組織研究においては、リーダーとは唯一無二の存在であり、そのリーダーの資質や行動特性などから、フォロワーに対して有効なリーダーシップの研究が展開・蓄積されてきた。しかし、スポーツチームを対象とした小川ら(2007)の報告によると、「個々の選手も指導者と同様の価値ある情報を持つようになったため、伝統的なトップダウン型のチームでは成果をあげにくく、新たなチームの形が求められている」と報告されている。つまり、メンバー一人ひとりがチームを牽引することの重要性が高まっている。このような中、従前のリーダーシップ研究とは一線を画す「シェアド・リーダーシップ」という概念が提唱され、注目を浴びている。石川(2013)はシェアド・リーダーシップの度合いが高いチームとは、リーダーを含むチームメンバーそれぞれが、チーム目標達成に向けて必要なリーダーシップを双方向的に発揮している状態であるとしている。以上を踏まえ本研究では、大学野球組織を対象に、シェアド・リーダーシップを醸成するための組織風土と従来のリーダー(監督)の役割を(競技レベルの差異を含め)質問紙調査による量的分析から検討することを目的とする。</p>
著者
梅林 薫
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.21_1, 2016

<p> 文部科学省が作成したスポーツ基本法に関わるリーフレットの表紙には「スポーツの力で日本を元気に!」とある。そして基本法前文には「スポーツは、世界共通の人類の文化である」という言葉にはじまり、「スポーツは、心身の健全な発達、健康及び体力の保持増進、精神的な充足感の獲得、自律心その他の精神の涵養等のために」と続き、私たちが生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営む上で不可欠なものであると記述されている。スポーツが心と体に何らかの影響を及ぼすことはアスリートのみならず多くの人が実感している。スポーツ界では心技体という言葉もよく耳にする。昨年現役を引退した澤穂希は「心と体が一致してトップレベルで戦うことが難しいと感じてきたから」と引退理由を説明した。</p><p> 本シンポジウムは「こころとからだをつなぐスポーツ」と題して3人の演者から、最新のエビデンスを交えた基本から最先端の話題や、女子テニス界トップアスリートの知られざる心と体の習慣などのご紹介など、それぞれの切り口でご講演を頂く。今後、より一層スポーツの力で心も体も、多くの人を元気に、私たちが取り組んでいくべき課題のヒントになるような企画としたい。</p>