著者
田中 嵐
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.79_1, 2018

<p> 子どもの遊びにおける時間・空間・仲間が減少している(仙田,1992)と言われて久しい。同時に、鬼ごっこやかくれんぼなど代々共有され受け継がれてきた「伝承遊び」も子どもの間で消えつつある。しかし、実際に今日でも多くの幼稚園や保育所で保育・教育教材として導入されている(穐丸ら, 2007)が、本来子どもによる遊びの伝承のプロセスは、自主的で自由な活動である(西村,2009)との指摘もある。そのような中、けん玉やビー玉などの伝承遊びが玩具メーカーによりリメイクされ、現代の子どもに受け入れられている様子がしばしばみられる。このような形で遊びが伝承される背景を読み解くこと、また伝承遊び・リメイク版それぞれにおける子どもの他者関係について考察することは、子どもの遊びにおいて新たな示唆を与える可能性があると考える。そこで本研究では、伝承遊びの一つである「ベーゴマ」と、ベーゴマをリメイクした一般玩具である「ベイブレード」に注目する。現在ベイブレードは特に男児の間でブームとなっており、2年連続で日本おもちゃ大賞を受賞している。この事例から、現象の持つ社会学的意味について検討したい。</p>
著者
五代 孝輔 西谷 憲明
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.315_3, 2016

<p> 「ねこちゃん体操」を始めとする山内実践に学びつつ、児童の認識内容を深めることが技能獲得へつながると考えて実践してきた。しかし、筆者の学級ではうまくいかないことが多かった。そこで、体の外側への働きかけと同時に体の操作を大切にすることで、みんなが共有できる内容が広がり、技能獲得につながるのではないかと考えた。かかえ込み跳びの技能獲得を目指し、「マット跳び越し」を教材にした。その理由は、マット跳び越しは跳び箱から落ちるなどの恐怖心を避けることができ、マット上で起きている体の操作に学習を焦点化しやすいと考えたからである。この学習を通して、クラス全員がかかえ込み跳びを跳べるようになった。グループ内異質集団での対話を通して浮かび上がった技能獲得と認識内容の関係性を整理したので報告する。また、技能獲得では「トン・キュッ・ポン・ピン」などの合言葉で、「踏切・体を固めること・着手・着地」の一連の動作を表した。児童一人ひとりの体の使い方はそれぞれであるが、グループ毎の合言葉が生まれ、合言葉を中心に学習を進めることで、かかえ込み跳びのリズム感覚が養われ、技能獲得につながったように思える。</p>
著者
小西 康仁 植村 隆志 西 葉月 小河原 慶太
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.238_1, 2017

<p> リオデジャネイロで行われた第31回オリンピック競技大会の男子体操競技において、日本は団体総合優勝、個人総合優勝という素晴らしい成績をおさめた。しかし、前年の世界体操競技選手権大会で好成績を残し、メダルの期待が高まっていた種目別鉄棒においては、決勝進出を果たすことができなかった。そこで本研究は、種目別鉄棒における上位選手の演技構成が、世界的にどのような傾向であるか明らかにすることを目的とした。調査の対象を、2013年から2016年までに行われた世界体操競技選手権大会とオリンピック競技大会の種目別鉄棒における上位3名とした。各大会の映像から公益財団法人日本体操協会公認1種審判員免許を有する審判員がDスコアとEスコア、組み合わせ加点、決定点、手放し技の難度点などを算出し、各得点の推移と演技構成の傾向について分析した。その結果、DスコアとEスコアが年々低下しており、それに伴い決定点も僅かながら低下している傾向がみられた。しかし、手放し技の難度点については、2015年から2016年にかけて得点が高くなっていた。このことから、種目別上位選手は、高難度の手放し技を演技構成に積極的に取り入れている傾向が明らかになった。</p>
著者
荒川 勝彦
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.260_2, 2019

<p> 本研究の目的は、1896年第1回アテネ大会から2016年第31回リオデジャネイロ大会までの、競泳種目における男女の優勝記録の変遷を調査することであった。競泳種目は50m自由形、100m自由形、200m自由形、400m自由形、女子800m自由形、1500m自由形、100m背泳ぎ、200m背泳ぎ、100m平泳ぎ、200m平泳ぎ、100mバタフライ、200mバタフライ、200m個人メドレー、400m個人メドレー、4×100m自由形リレー、4×200m自由形リレー、4×100mメドレーリレーであった。全ての種目で、4年毎の優勝記録は、短縮する傾向を示した。日本選手の優勝者は19名、日本リレーチームの優勝は2回であった。優勝記録の変遷には、世界新記録やオリンピック新記録を樹立できるような、卓越した才能や身体能力をもつ選手の出現。競泳技術やトレーニングの進化。スイミングウェアーの開発。スポーツ医科学、情報等のマルチサポートが関係していると考えられる。</p>
著者
水島 宏一 島田 貴也
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.194_2, 2018

<p> 本研究の目的は、平行棒の懸垂前振り上がり開脚抜き伸身かつ水平位で懸垂(以下「バブサー」と略す)の運動経過を分析し、その類似技である倒立から伸膝で振り下ろし懸垂前振り上がり開脚抜き倒立(以下「チッペルト」と略す)の技術と、異種目である鉄棒の懸垂前振り伸身背面とび越し懸垂(以下「トカチェフ」と略す)の技術の類似点をバイオメカニクス的視点から探り、高難度の技を効果的に習得するための基礎資料を得ることである。</p><p> 被験者は、バブサー、チッペルト、トカチェフの3つの技を実施できる3名と、バブサー、チッペルトは実施できるが、トカチェフを実施できない1名である。各技をビデオカメラで撮影して角度、軌跡、速度を算出した。各技の離手局面までの運動経過を比較したところ、バブサー、チッペルト両者の肩関節及び股関節角度の変化と肩、腰、膝の軌跡は、鉄棒のトカチェフともかなり類似していた。また、肩、腰、膝、足首の速度もトカチェフと類似した変化が見られた。これらのことから、同種目の同系統の技だけでなく、異種目間であっても同系統で類似する技術を有する技であれば、効果的に技を習得するための指標になることが示唆された。</p>
著者
平山 大作 小林 優希 吉田 雄大
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.274_2, 2016

<p> スキー・モーグル競技においては、ターン技術および2つのエアでのジャンプ技術が競技力に大きく影響する種目である。モーグルの得点は、ターン点60%、エア点20%、スピード点20%の割合で構成されている。エア点は、技の完成度を示すジャッジ点と技の難度(エア難度)の積によって算出される。本研究の目的は、国際大会における予選通過群と予選不通過群の得点を比較することによって予選通過者の特徴を明らかにすることとした。対象は、FISフリースタイルスキーワールドカップ2016秋田たざわ湖大会モーグル予選出場のモーグル男子および女子選手とした。予選通過群と予選不通過群の比較において、男子女子ともに、ターン点、第1エア点、第2エア点に有意な差が認められ、スピード点に有意な差は認められなかった。エア点において、男子は、第2エアジャッジ点、第2エア難度に有意な差が認められた。女子は、第1エアジャッジ点、第2エアジャッジ点に有意な差が認められた。これらから、今回の大会において、男子は第2エアで挑戦する技の難度に違いがあり、女子は第1エアおよび第2エアでの技の完成度に違いがあると考えられる。</p>
著者
村上 祐介
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.507-522, 2011

Previous studies have suggested that children with developmental disorders often display clumsiness when attempting tasks that require higher body coordination ability. Long rope skipping is one such activity, but while it is usually difficult for such children, it is also effective for helping develop body coordination ability and fostering cooperative attitudes. Thus, it is important to make the most of the benefits of long rope skipping for children with developmental disorders. However, appropriate teaching methods in this context have not been well established, nor have the developmental levels of jumping movement in long rope skipping been adequately addressed. Accordingly, the purpose of this study was to investigate the developmental levels of jumping movement in long rope skipping for children with developmental disorders.<br> The subjects were five children with developmental disorders who participated once a week in private physical activity sessions. The sessions were conducted by members of a laboratory for adapted physical activity. Specifically, body coordination ability in long rope skipping was evaluated in terms of the number of double bounce movements (jumping twice during one rotation of the rope), the interval of movement, the ground and foot interval, the trunk inclination motion angle, the hip joint flexion motion angle, the knee flexion motion angle, and the number of times that the children jumped with both legs.<br> The results indicated that there were several different movement forms in the five studied children. These forms were classified into five levels: step movement (the first level of long rope skipping movement), side jumping movement (second level), double bounce movement via large jumping movements (third level), double bounce movement via a small movement space (fourth level), and double bounce movement via small jumping movements (fifth level). These findings can be used to devise an effective approach for teaching long rope skipping to children with developmental disorders.<br>
著者
冨田 幸祐
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.73_2, 2019

<p> 本研究は1988年第24回夏季オリンピック大会の名古屋招致について、その活動の展開及び大会構想に関する基礎的検討を行う。1977年8月に浮上した名古屋招致構想は、当初名古屋市、愛知県、愛知県体育協会によって検討が行われた。1978年になると、より多くの関係者を包含したオリンピック問題協議会が設立され、一般市民への周知や関係各所との調整、大会構想について協議が重ねられた。一方で、開催に伴う財政的な負担や県や市主導の招致活動に対して一般市民による反対運動も展開される。だが名古屋招致構想は1980年11月に日本政府から閣議了解を得て、同月IOCに対し1988年第24回夏季大会の立候補を申請し、1981年1月には名古屋オリンピック招致委員会が設置された。1988年夏季大会には他にもソウルとメルボルンが立候補したが、メルボルンが辞退しソウルとの一騎打ちとなる。メルボルンを最大のライバルと考えていた名古屋であったが、1981年9月の第84次IOC総会での投票はソウルが52票、名古屋が27票であった。1988年夏季大会はソウルが開催地として選ばれ、名古屋は落選したのであった。</p>
著者
髙見 采加 成瀬 九美
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.100_1, 2018

<p> 私たちはモノを把握する時、対象物の大きさや形状を認知し、把握経験による運動感覚と対応づけることで、脳内で自分にとって適切な手の形を表現している。静止物把握の把握様式には個人差がみられる(鎌倉、1978)ため、把握動作の分析により、その人が外界物をどのように予測して動作を遂行しているかを推測できる可能性がある。本研究では、棒状物が前額面で回転する課題を用い、把握手(順手 / 逆手)の変化を分析した。大学生女子28名を対象とし、棒状物を30°ごとに回転させた6種類の刺激写真をプロジェクターで提示した。第1実験では刺激写真をランダムに提示した。30°と60°では順手・逆手把握の両方がみられ、把握手一貫性は低かった。第2実験では、0°から右回り又は左回りに順に連続提示した。把握手一貫性の低い30°や60°を中心に身体的制限による把握手の切り替えが観察された。また、切り替え回数及び切り替えを行った角度の使用数をもとにクラスター分析を行った。切り替えを行った角度の使用数が多い群は、少ない群と比較してTAIS下位尺度のBET(注意の広さ)やINFP(情報処理能力)の得点が有意に高かった(p<0.05)。</p>
著者
波照間 永子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会号
巻号頁・発行日
vol.53, 2002

本シンポジウムでは、民族スポーツが東アジアの国において、文化政策との関連でどのように位置づけられ、展開されてきたのか、ということについて議論する。民族スポーツは周縁的な存在と取られがちであるが、現実には近代国家によって、国家を構成する諸民族の統合のためや、自らの文化的アイデンティティを創造し認識させるために、政策的に展開されてきた一面も存在する。一方、民族スポーツの担い手が、それによってさまざまに自分たちの文化を解釈し、再創造しながら今日に至っている面もある。それらの視点から各国の民族スポーツの事例を取り上げ、文化政策を基軸に概観する。